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2014年6月19日 (木)

記念の…

「この『皮』は私です。記念にもらってください。」
そう言って、彼女は去っていった。もう二度とこの「姿」で僕と会うことはないという意思表示なのだろう。

彼女は何枚も『皮』を持っているらしい。恋人が変わる度に携帯を変えるみたいに、その「姿」を変えているらしい。
「らしい」としか言えないが、彼女の事を本当に知っている者は誰もいないのだ。
唯一、僕の手元に残された『皮』が、彼女が『皮』の常用者であった証となっている。

 

『皮』は都市伝説みたいなもので、僕も本物を見たのはこれが初めてだった。
『皮』はヒトの姿をコピーしたもので、『皮』を着ればその人に成りきる事が可能だそうだ。
どのようにして『皮』が作られるか知らないが、『皮』は魔法のように、着る者の身長・体重を無視して『皮』の方に合わせてしまうのだ。

だから、別の『皮』を着た彼女に再会しても、僕は決して彼女であるとわかる事はないのだ。
僕はもう、二度と彼女に会う事はできない…

 

いや、彼女の「姿」に会う事は可能だ。なぜなら、彼女の『皮』が僕の手元にあるから…
だが、この『皮』を着て彼女の代わりをしてくれと言っても、引き受けてくれる娘なんている訳もない。
金を払って「仕事」としてならやる娘もいるかも知れない。がいくら払えば良いのだろうか?
それ以前に、そんな事をしてまで彼女に会いたいと思っているのだろうか?

是!!

僕は彼女の笑顔に、幾度となく癒されてきたのだ。「彼女」の笑顔であれば、中身がどうであろうと…
そう、中身に拘る必要などないのだ!!
僕がこの『皮』を着て鏡の前に立てば、いつでも「彼女」がそこにいるのだ♪

僕は早速、服を脱いで全裸になると、彼女の『皮』に手足を通した。
頭を被り、目鼻の位置の調整が終わると、『皮』がぎゅっと締めつけてきた。
みるみる視点が低くなってゆく。背が縮んでいるのだ。
手足が細くなり、ウエストが引き締まる。余った分なのか、胸に肉が集まり、二つの膨らみができる。その質量を実感できた。
鏡を見ると、そこに全裸の彼女がいた。頬を紅潮させ、全身に汗をかいている…かなり艶かしい。
僕としては、ノーマルな彼女の笑顔に癒されたいのだ。その為には「全裸」ではだめだ。何か着るものは…

(そうだ)
彼女はいざという時の為に、僕の部屋に着替えを置いていたのを思いだした。
確かに彼女の服が下着から一式が揃っていた。
僕は彼女の服を身に着けていった。今の僕は彼女の『皮』を着ているので、当然だが、サイズはぴたりと合っていた。

服を着て、鏡を覗いた。が…どこか違う。
それが化粧であることに気づいた。
彼女は服と一緒に化粧ポーチも置いていた。中から口紅を取り出して塗ってみた。
…多少は近付いたが、やはり本格的にやらないと駄目なのだろう…
僕は化粧ポーチの中を全て確認してみた。下地クリームやアイシャドウ、マスカラなどもあった。
彼女の顔を思いだし、クリームで一旦のっぺりとした顔に、眉や目の周りを描いていった。
多分慣れれば、もっと早く、もって綺麗に出来るであろうが、初めての「お化粧」ではあったが、何とか彼女の顔に近付いたようだ。

 
ふと気付くと外は大分暗くなっていた。
何も食べていなかった事に気付くと、無性にお腹が空いてきた。
元々自分では料理しないのだ。冷蔵庫にある食材は、彼女が料理する際に買ってきたものだ。彼女なら余り物でもパパッと何か作ってくれると思うが、僕にはそれはできない。
結局、外に食べに行くしかない。が、折角化粧までして「彼女」になったのだ。
食事の為だけに『皮』を脱ぐのも勿体ない気がした。ここには彼女の靴もバックもある。
このまま外に出て不味いことは何もないだろう…

 

 
近くの洋食屋でパスタを食べた。ここの店員は顔見知りだったので、彼女がいつも注文しているのにした。
『皮』の所為で味覚も変わってるのだろうか、以前味見させてもらったときはそう美味しいとは思わなかったが、今日はツボに入ったかのように美味しかった。

即に帰る気分ではなかったので、僕は商店街をプラプラと歩いていた。
何故か視線はショーウィンドウに飾られたドレスに引かれてしまう。彼女が着たら…というよりは、「彼女」になった今の自分が着たら可愛く見えるかな?などと考えてしまう…

「やぁ、『皮』を使ったんだね♪」
突然、背後の頭上から男の声がした。
振り返ると、そこに「僕」がいた。
「似合ってるね。可愛いよ♪」
彼の「可愛い」っていう言葉に、何故かキュンとなる。
彼は僕の『皮』を着た彼女に間違いはない筈だが、本来の「僕」より数段カッコ良く見える。
「あんたはオシが弱かったからね。その分、女の子になると可愛さが増すみたいだね♪」
僕は何と答えて良いかわからなかった。
「良かったら、このまま付き合わない?」
などと言ってくる。
「もう会わないって言ってなかった?」
と聞くと、
「君が男のままだったらね♪こんなに可愛い女の子なら話は別だよ。」
と言ってくる。僕はそのまま、流されるように彼と一緒にいた。

 

 
ホテルの一室で、僕は彼女の手で服を脱がされていた。
部屋に入るなり彼女は服と一緒に「僕」の『皮』も脱いでいた。
「いきなり男とスルのは勇気が要るでしょ?」
と全裸の彼女に抱き締められた。彼女の手で首筋が撫でられると、全身が痺れたようになる。
「この体、気持ち良いでしょ?」
この『皮』は元々彼女のものなのだ。どこを責めれば感じるかを一番知っているのだ。
「さあ、貴女の啼き声を聞かせて頂戴♪」
僕は彼女に良いように弄ばれた。
否!!「彼女」だけではない。
再び『皮』を着た彼女=彼にも弄ばれる。
僕は「女」として男性に貫かれ…快感に酔い痴れてしまっていた。

 
「また抱いて欲しくなったら連絡してきな。いつでも相手してやるよ♪」
そう言って、僕はホテルのベッドに独り残されていた。
僕が彼を呼び出さなければ、彼は僕以外の女の相手をするのだろう。その時事を考えると、僕の内に嫉妬心のようなものが芽生える。
僕が「僕」に戻れば、嫉妬に心を掻き乱されることはないだろう。

でも、僕はもうこの『皮』を脱ぐ事はないと思う。

毛布の下で、僕は自らの股間に手を伸ばしていた。
そこはまだ、しっとりと濡れていた…

実験

俺の目の前のベッドには、全裸の少女が眠っていた。

少女は少しだけ胸を上下させ、息をしている…ように見せている。
この少女は「人間」ではなかった。高度な科学技術により造られたアンドロイドである。

少女アンドロイドは、造られてからこの方、ずっと眠り続けていた。
何故ならば、この少女には「魂」がないからだ。
色々と研究を重ねてきたが、「魂」だけは人工的に造り出す事ができなかった。
造れないのであれば、他から持って来れないだろうか?
「魂」はそこいら中に浮遊しているものと考えていたが、これを捕まえる手段がなかった。
ならば、生きている人間の魂を使う事はできないだろうか?魂を完全に抜き取ってしまうと、命に拘わる筈である。その魂の一部でも切り取る事はできないか?
との思いで出来上がったのが、今俺が装着している装置だ。

俺はアンドロイド体を前に、装置を起動させた。
想定通りであれば、俺の魂の一部を取り込んだアンドロイドは瞼を開いてくれる筈だ…

が、アンドロイドに変化は見られない。
装置の感度を調整してみる。
装置が唸り始めた。
アンドロイドに変化はない。
唸り音が高くなる。
これ以上は危険だ。
俺は装置を停止させようと手を動かした…

 

 
辺りがザワついていた。
俺は気を失っていたようだ。気を失っている間に、俺はベッドに運ばれていた。
が、ザワつきは俺の周りではなく、少し離れた場所にあった。
ゆっくりと目を開く。そしてザワつきの源を確認する。
どうやら、俺はまだ実験室の中にいるみたいだ。
俺のいた「装置」の周りに人垣ができていた。
彼らの囲む「装置」の椅子の上にはぐったりとした、意識を失ったような人物…「俺」がいた。

(?)

俺は、今自分のいる場所に思い当たる。
実験室にベッドは一つしかない。
そのベッドにはアンドロイドが寝かされていた筈だ。
誰かがアンドロイドを別の場所に移動し、俺をそこに寝かせてくれたのだろうか?
否、「俺」はまだ装置の椅子の上にある。

つまり、俺は俺の魂とともにアンドロイドの中にあるという事なのだろう。
ベッドの上で起き上がってみる。見慣れてはいたが、アンドロイドは少女の姿をしている。その胸には膨らみがあり、俺は自分の胸にその膨らみが存在している事を改めて確認した。

ベッドから降り、その端に掴まりながら足を屈伸してみる。
バランスが取り辛いが、日常動作には問題ないようだ。
裸足のまま、彼らの元にゆく。
俺は彼らの背後から声を掛けた。

「ああ、えへん。君たち。実験の成果は確認してもらえないだろうか?」
彼らの視線が一瞬で俺に集中する。
「俺の魂のほとんどがこちらに移ってしまったようだ。今は俺の意思でこの体を動かしている。どうだ?この体が動いているのを見るのは?」
彼らは何も動けなかった。
真っ先に呪縛から立ち直ったのは主任研究員の渡瀬だった。
「本当に教授なんですか?」
「嘘を言って誰が得するんだね?」
「ああ、本当に教授なんですね?」
「判ったのなら、実験の確認を始めてくれないか?こうなっては、俺自身が指揮を取るのは難しいからな♪」
「わ、判りました。が、その前に何か着てもらえませんか?見慣れていたとはいえ、普通に動かれてはどうも生々し過ぎるので…」
とりあえず、俺は渡瀬の差し出した白衣を羽織った。
(この先、俺が女の下着を着け、スカートを穿く事になるとは考えもしていなかった)

 

「教授の体は機能的にはノーマルです。」
「俺の体…というより、アンドロイドの体だろう?」
「そうですが、これはもう教授ご自身の体と考えていただいた方が良いと思います。元の教授の肉体は完全に心肺停止してしまいました。脳内細胞の崩壊も始まっています。元に戻られるのは不可能かと…」
「冷凍保存も間に合わなかったのか?」
「対応が遅すぎました。いくつかの部位は保存が可能ですが、移植臓器としての扱いとなります。」
「実験に事故はつきもの…仕方ないという事か。」
「はい。もし、反対がなければ教授の精子だけでも冷凍保存させていただきたいのですが?」
「俺の遺伝子を残すためか…好きにしてくれ。」
「いえ、単に教授の遺伝子を残すだけではありません。提供卵子と受精させ、教授ご自身で出産していただく事も考えております。」
「お、俺が?」
「機能的に問題がない事は教授もご存じの筈ですよ。もっとも、当初は人工受精ではなく…」
「み、皆まで言うな。それのテストもしなければならないのだろう?まさか、俺が男に抱かれるとは…」
「どなたかご希望の職員はおいでですか?教授の精神的負担はなるべく減らしたいと考えています。」
「なら、お前に頼む♪」
何故か俺は、そう即答してしまっていた。

 
「な、何なんだ??この感覚は!!」
「気持ちが良ければ、声を出すと良いですよ。教授♪女の子は快感を我慢する必要などないんですから。」
その違和感は到底「快感」とは言い難かった。が、声が出そうになるのを我慢していたのはその通りだった。
言われるがまま、喉の緊張を解く…
「んあん…っあ!!、ああ~ん♪」
俺の口から出てきたのは、愛らしく淫らなオンナの媚声だった。

そして、違和感が快感に変わった。

突かれる度に快感の波が広がってゆく。波は乳首の先端で折り返され、新たに起こった波とぶつかり合い、更なる刺激をもたらしてくる。
頭の中が真っ白になってゆく。これ以上快感に晒されていると、俺が俺でなくなってしまいそう…
「怖い…」俺はそう呟いていた。
「大丈夫♪その先には幸せが待っています。イッとしまいなさい♪」
「イクの?これってイッちゃうってコト?」
(もう、何も考えらんない!!)
「あぁ…、イクの…イッちゃう~~!!」

 
彼に頭を撫でられていた。
厭な感じはしない。むしろ心が落ち着いてゆく気分…
(これがオンナの幸せ?)
「お願い…」彼の顔を見る。
次を言おうとする前にキスされた。
「何?」と彼…
俺=あたしは恥ずかしげにこう言っていた。

「もう一度シて♪」

 

入れ替わり

発車ベルが鳴り、ドアが閉まった。
列車は動き出し、ホームが遠ざかっていった。

僕は座席に座り直した。周りからはあからさまに不審がる視線が突き刺さってくる。が、僕は一切を無視して流れ過ぎてゆく景色に見入っていた。
しかし景色と言っても、そう面白いものが見える訳ではない。外は闇に包まれ、街の灯りが途切れてしまえば、点々と続く街路灯が見えるだけだ。
…いや、外が闇に包まれると、窓ガラスは鏡と化して車内の様子を写しだす。
そして、最初に目に入るのは僕自身の姿だった。
肩まで延びた髪は少し茶色に染まっている。垂れてくる前髪がヘアピンで止められていた。
赤み掛かったフレームのメガネが小さな鼻の上に乗っている。唇が紅くテラテラと輝いていた。
僕は童顔なので、よく女の子に間違われてきた。
でも今は、お化粧もして、ワンピースを着ているので、誰が見ても「女の子」にしか見えない。
不審がる視線が集まるのも当然だ。

普通、女の子が独りで夜行列車になんか乗ることはない。ましてや、ひらひらしたスカートのワンピースなど着て乗るような時間帯ではない。
だけど、僕にはこの格好でこの列車に乗っている必要があった。
今の僕は「高木透」ではなく、その妹の「高木遙」なのだから…

 

親友の武藤裕司が僕の妹と付き合うようになったのは、ごく自然の成り行きだったのだろう。
海外赴任している父の世話をしに、ちょくちょく母が家を留守にしていた。
裕司は僕の友達として頻繁に家に出入りしていたし、僕のいない時でさえ、家に上がり込んでいることもあった。
当然、僕がいない時は妹の遙と話をしていたりする。親密な関係を深めてゆくには十分な時間があった。

「遙ちゃんが妊娠したみたいなんだ。」
唐突に裕司からそう告げられた。
僕もそうだが、二人はまだ未成年だ。
「俺達、駆け落ちする事にした。来週、お前と旅行することになっていたろう?お前、遙ちゃんと代わってくれないか?俺達は旅先で行方を眩ます。」
「ち、ちょっと待て!!いくら何でも、駆け落ちっていうのは不巧ぞ。少し頭を冷やせよ。」
「これが、二人で考え抜いた結論なんだ。」
「とにかく、旅行は遙と代わってやる。旅先でもう一度じっくり考えてみろ。」

そう言って僕の代わりに遙が旅行に行くことになったのだが…
「お兄ちゃんが旅行に行ってる間、あたしは四国のお婆ちゃんの所に居ることになってるから、お兄ちゃんがあたしとして行っておいてね♪」
そう。丁度僕らの旅行の期間、母は父の所に行っている。年頃の娘を独り家に残しておく訳にもいかないので、遙はその間、四国の祖母の家に居ることになっていた。
「ちょっと待て。お前として行くってどういうことだ?」
「旅行に出ているのは高木透なのでしょ?お兄ちゃんがお兄ちゃんのままでいたら高木透が二人いることになっちゃうじゃない?だから、お兄ちゃんは高木遙になってもらわなくちゃ♪」
「そ、そんなことできるかよ!!」
「お婆ちゃんにはあたしが行くって言ってあるし、お兄ちゃんなら少しお化粧するだけであたしに成り切れるわよ♪」
と、俺は遙のワンピースを着せられ、お化粧を施されて、四国行きの夜光列車に乗せられたのだ。

 

いつの間にか、列車は瀬戸内海を渡っていた。
四国のお婆ちゃんの所には、小さい頃に行ったことがあるのだが、殆ど記憶になかった。お婆ちゃんと会うのも本当に久ぶりだった。
「しょっちゅう顔を合わせてるんじゃないから、あたしたちの違いなんか気付かないわよ♪」
遙は何の心配もないかのように言ったが、僕としてはどうしても巧くいくとは思えなかった。
「これを飲めば、少しは気分が落ち着く筈よ♪」
と遙から渡された薬をポシェットから出して飲み下した。
家を出てから、もう何粒飲んだだろうか?ポシェットの薬瓶が空になったので、網棚に乗せた鞄を下ろして薬袋から小分けしておいた。

(?)僕は下ろした鞄を再び網棚に上げようとした。が、その行為は最後まで届かなかった。
鞄の重さに勝てなかったのだ。列車に乘った時には軽々と乗せられたのにだ。
荷物が重たくなる筈もない。導き出される回答は、僕の筋力が落ちた…ということなのだろう。列車に乘ってから、ずっと座っていたのだ。エコノミー症候群というやつなのだろう。
瀬戸内海を渡る前に乗客は大分減っていたので、このまま鞄を隣の席に置いておいても迷惑は掛からない筈と、僕は鞄を網棚に乗せることを断念した。

夜行列車から、ローカル線に乗り継いで行くのだが、次の出発まではまだ時間があった。
駅のトイレで小便をしようとして一瞬躊躇した。男性用と女性用のどちらに入ればよいか?だ。が、今の僕は「高木遙」なのだ。誰が見ても今の僕は「女の子」だ。
男性用側に入る訳にはいかない。僕は荷物を抱えて女性用に入った。
当然、男性用にある小便器は存在しない。個室の扉が並んでいるだけだ。
そのひとつに入り…立ったまま用を足す訳にもいかないので、スカートを捲り、ショーツを下ろすと便座に腰掛けた。

シャーッと小便が迸り出てゆく。
(?)女の子の格好をしているからだろうか、何か違和感を感じた。
飛沫が太股に跳ねていたので、ロールペーパーを千切って股間を拭いた。
(後から思えば、既にその時には僕の肉体の変化はかなり進んでいたに違いない)
洗面台の鏡に顔を写す。そこに写っているのは遙の顔でもなければ本来の僕の顔でもない。女の子の僕の顔が写っていた。
ポシェットから口紅を取り出し、取れ欠けた部分を補修しておく。
しばらくして乗り換えのローカル線が入線してきた。
ここでも乗ってくる人が少なかったので、荷物は網棚に上げず、隣の座席に置いておくことにした。

電車は川に沿って山の中に入ってゆく。
陽も昇って気温も上昇してきたようだ。次第に体が暑く感じてくる。
特に、胸元の形を整えるためにと、ブラの下にタオルを詰め込んでいたのが効いている。
それに、胸も締め付けられる感じが強くなってきていた。
幸いにも、この車両には僕ひとりしか乗っていなかった。
駅に停まり、次の駅に向けホームを離れたタイミングで、僕はワンピースの胸元をはだけた。
キャミソールをたくし上げると、僕の胸に遙のブラジャーが巻かれている。タオルを詰めたカップがパンパンに膨らんでいた。

(?)再び違和感を感じた。
カップの中からタオルを抜き取った。が、想定に反してブラのカップはペシャンコにならず、かろうじてであるが、その形を維持していた。
(何で?)と胸元を覗き込んだ。
想定に反して、僕の胸元には「谷間」が存在していた。
「谷間」があると言うことは、その両脇には厚みがあると言うことで、その厚みは何かと言えば、女の子のバスト以外の何物でもないのだ。
(僕の胸が膨らんでいる?)
いや、それは胸だけの問題ではなかった。さっきのトイレのことを思い出してみる…
僕はスカートの上から股間を圧してみた。…が、よく判らない。
そこで、スカートの中に手を入れ、ショーツの股間に掌をあてた。
そこは「平ら」というか、少し凹みがあった。縦に筋があるみたいで…おちんちんの存在を感じる事ができなかった。
(何で?)と、更にショーツの中に手を潜り込ませた。指が割れ目に嵌まった。そこは少し湿度が高いようだ。奥の方が更に高く、指を湿らす位…するりと指がナカに入ってゆく?!
(これって女の子の「膣」じゃないのか?)
自分の体に膣が存在する驚きと、男として女の子の膣に触れたという高揚感。そして入れられた異物に刺激される違和感。
やがて、違和感が「快感」の一種であるとわかる…
(これが女の子の?…)

 

〈間もなく○○駅に到着します…〉
車内アナウンスに我に帰った。
慌ててスカートの中から手を抜き、裾を元に戻した。はだけた胸元も直す。
僕は何事もなかったかのように座り直した。
何も考えないようにして幾つかの駅を見送る。
アナウンスがお婆ちゃんの家の最寄り駅の名前を告げた。
僕はもう一度服に乱れがないか確認しすると、荷物を持ってドアの前に移動していった。

「遙ちゃん♪こっち!!」
改札を出ると即に声が掛かった。
お婆ちゃんの家に同居してある宏おじさんだ。
「遠い所をようこそ。いやー、遙ちゃんもママに似て美人になっちゃったね。おじさん、別人かと思ったよ♪」
(はい。美人かどうかは別として、別人であることは間違いありません。)
宏おじさん…母の年の離れた兄の所の長男は僕の手から荷物を引き取ると、軽トラックの荷台のカゴに放り込んだ。
僕を助手席に乗せ、一路お婆ちゃんの家に向かった。
「遙ちゃんてお転婆なイメージがあったけど、もう年頃なのかな?おしとやかになったね。」
(いやぁ、遙は小さい頃のまま、何も変わってないよ♪)
とは言っても、今は僕が「遙」なのだ。本人とあまり違ってるのも問題だろう。
「そ、そんな事ないです。ちょっと疲れが出てるだけですから。」
「そうだね。もうすぐ着くからね。今日はゆっくり休んで、積もる話は明日にしよう♪」
取り合えず、今日はなんとかなりそうだが、明日は質問攻めにあいそうだ。
(遙として答えるなんてできそうにないよ~;)

 

 
「良く来たね。二階に部屋を用意しといたからね。荷物を置いたらお風呂沸いてるから入ってしまいなさいな♪」
出迎えてくれたお婆ちゃんに挨拶し、二階に上がった。
荷物は宏おじさんが運んでくれた。
「じゃあ、俺は残してきた仕事を片付けてくるから。晩飯の時にまたね。」
と荷物を置くなり、さっさと出ていってしまった。
僕は遙がいつも家で着ている部屋着て替えの下着を鞄から出して、風呂場に向かった。
ワンピースを脱いで下着姿になる。
はっきりと胸が膨らんでいるのが判った。更にブラジャーまで外す。乳首がぷっくりと飛び出ている。
この体が女の子になっている事を改めて実感する。
そして、ショーツの縁に指を掛け、引き降ろした。

股間にあった筈のモノは無く…代わりに縦に刻まれた深い溝があった。
 
これ以上見ていても、それで元に戻れる訳ではない。今はこの体である事を受け入れるしかないのだ。
風呂に入る。
洗い場で体にお湯を掛け、泡立てた石鹸を全身に塗り付けてゆく。
手足や背中はいつもと変わりはない。
胸の膨らみをなぞるように…意識しなければ、そんなにいつもと違う訳ではない。ちょっと太って肉がだぶついたと思えば良い…

手は胸から腹に降りてくる。その先は…

股を広げる。
何もない股間に石鹸の泡を付ける。
しみないように、やさしく付けてゆく。
(これくらいで良いかな?)
再び手桶にお湯を汲んで体に掛け、股間も洗い流した。

 
湯舟に浸かっていると、気分が解れてゆく。
そう、緊張の連続だったのだ。最初は「女装」が見破られ、男だとバレないかを気にしていた。
今は何故か女の子の体になっている。取り合えず「女装」の心配はなくなったが、今度は親戚の中にいて、僕が「遙」ではないことがバレないようにしなければならないのだ。

風呂の中で独りになっていれば、気を使う事はない。
僕の内にあったモロモロがお湯の中に溶けだしてゆく。
お湯の中で、僕は僕であって、僕ではなくなってゆく。自我が混沌としてゆく。
何もかもがリセットされる…そして、再び僕の中に自我が生まれ「僕」が再構成されてゆく。
が、その「僕」はやはり「女」のままだった。

 
お婆ちゃん、宏おじさん、そして僕の三人で夕食を囲んだ。
当たり障りのない会話を心掛け、早々に部屋に戻っていった。
遙のパジャマに着替え、布団に潜り込む。(明日は大丈夫かな?)との思いでなかなか寝付けない。
ポシェットの瓶から薬を取り出し、飲み下す。
すーっと意識が落ち着き、僕はあっという間に眠りの中に引き込まれていた。

 

 

 
小鳥たちの鳴き声とともに目覚めを迎えた。
何か気持ち良い。
あたしはカーテンを開き窓を開けた。心地好い空気が部屋の中に流れ込んでくる。
(やっぱり都会とは違うわね♪)
あたしは鞄から鏡とヘアブラシを取り出し、日課となっているブラッシングを始めた。
(確か、もっと長かった筈よね?いつ切ったんだっけ?)
何か引っ掛かるものを感じてはいたが、鏡の中には「いつものあたし」が写っている。
(気のせいよね?)
と自分で納得させていた。

パジャマから部屋着に着替えて居間に降りてゆくと、お婆ちゃんと宏おじさんがテレビを食い入るようにして見ていた。
「あ、遙ちゃん!!」
と宏おじさんがあたしに気づいた。
「透君が…透君の乗っていた飛行機が墜落した…」
しばらくテレビの画面を見ていると、乗客名簿に「高木透」と「武藤裕司」の名前が並んで出ていた。
「高木透」…それがあたしの…僕の名前である事に結び付くまでしばらく時間が掛かった。

「遙ちゃん?」
声を掛けられて我に帰る。
「ママたちには?」
「もう連絡を取ってある。飛行機も手配済みだ。碧さんからは、遙ちゃんはここを動かないようにって言われている。」
ママと顔を合わせれば、僕が遙でない事はすぐにバレるだろう。だけど、この変ってしまった体では、僕が「透」だと言っても信じてはもらえないだろう…
「何か判ったら知らせてあげるから、部屋で休んでいなさいな。」
そう言われ、僕は再び階段を上がった。
(とにかく、今は落ち着かなくては。)
僕はポシェットの薬を飲み下した…

あたしは部屋着のまま、ベッドの上にいた。
今朝からまだそんなに時間は経っていない。まだ、頭の中が混沌としているようだ。
ポシェットの薬瓶の中が空になっている。
鞄の中の薬も、瓶に入れた分で最後になってしまった。
(この薬…だれかからもらったものだけど、だれからもらったんだっけ?)

 
陽が傾いていた。
朝から何も食べてないけど、お腹は空いていない。
(事故はどうなったんだろう?)
あたしは居間に降りていった。
宏おじさんが電話をしていた。お婆ちゃんは疲れたみたいでぐったりしている。
テレビからは事故現場からの中継が流れている。
「あっ!!」
っと、あたしに気付いた宏おじさんが、テレビのリモコンに手を伸ばした。
プッと画面が消える。
「また後で連絡するよ。」と宏おじさんは電話を切っていた。
「遙ちゃん、そこに座って。」
宏おじさんの言葉に従ってその場に座った。
「碧さんから連絡が入ってきた。透君の死亡が確認された。」

あたしの中で様々な記憶が渦巻いていた。
ようやく「透」があたしの兄の名前であることに結び付いた。
「お兄ちゃん?」
その響きが遠くに感じる。
「お兄ちゃん…死んじゃったの?」

 

 

あたしは黒い喪服を着て、お墓の前にいた。
あたしは封印していた記憶を全て取り戻していた。
今、お兄ちゃんは「お兄ちゃん」としてお墓に納められた。これで良かったのだとあたしは思う。
突然「あたし」の姿になって現れたお兄ちゃんは、あたしと立場を交換して欲しいと言ってきた。
あたしが「お兄ちゃん」になって、お兄ちゃんが「あたし」になった。
「あたし」になったお兄ちゃんは、全くの「女の子」だった。
即に自身の親友である武藤さんと恋仲になっていった。肉体関係を持つまでに時間は掛からなかったようだ。
武藤さんもお兄ちゃんとの入れ替わりを知っていたようで、時々「親友」のあたしに「悪いね」と言ってくれた。

あたしは「女の子」を満喫しているお兄ちゃんを見ていられなかった。
(本当ならあたしが…)との思いに耐えられなくなる事もあった。
そんな時、「記憶を封印してくれる薬があるんだ。」と黒い錠剤をもらった。
「封印を解く薬もあるけど、どうする?」と聞かれ、その時は「いらない」と言っていたと思う。

 

その時の白い錠剤が、あたしの記憶を徐々に取り戻させていった。
実際、あたしの体は女の子のままだったのだ。黒い薬が自分の体が男の子だと錯覚させていたのだ。
あたしが「お兄ちゃん」だった間、よく思い出せば、立っておしっこをした事がなかった。

あたしは「高木遙」に戻ったのだ。いえ、あたしが「お兄ちゃん」だったって事は誰に言ったって信じてもらえるものではない。
全てはお兄ちゃんの死とともに地の下に埋めてしまおう…

 
お線香の煙が、空に消えていった。

サプライズ

後から思えば、それが全ての始まりだったのだろう。
俺は雄司に組み伏せられながら、そんな事を考えていた…

 
それは、一枚のチケットだった。

 
「今度の休み、空いてるか?」
と雄司が声を掛けてきた。
金曜から三連休だったが、彼女もなく、これといった趣味もない俺が暇をもて余している事は周知のことなのだろう。
「遊園地のタダ券が手に入ったんだ。独りで行くのも何なんで、お前も一緒に行かないか?」
そのタダ券がペアチケットで、独りでの入場ができないと言う事は当日まで知らされていなかった…

係員が渋面を見せていた。チケットの事で揉めているようだ。
当然だろう。俺もゲートの前で初めてチケットを見せられて絶句してしまったものだ。
そのデザインは明らかに男女のペアを想定したものであった。なにやら様々な特典も用意されているらしい。
雄司が係員とやりあっている間、俺は少し離れた所にあったベンチに座り、バンフレットを眺めていた。
しばらくして雄司が勝ち誇ったように歩いてきた。
「大丈夫だ。入れるよ。チケットにはどこにも男女に限定すると書かれていない事を納得してもらったよ♪」
雄司に手を引かれ、俺達はゲートを通過した。
「結構特典があるんだ。アトラクションも並ばないで入れるぞ♪」
と、その行く手を係りの人に遮られる。
「まず、記念写真をお願いします。本遊園地のシンボルであるファンタジーキャッスルを背景に一枚お願いします。後程デジタル合成を行いますので、立ち位置とポーズはこちらで指定させていただきます。
何か嫌な予感はあったが、入り口で雄司がかなり無理を言ったと思うと素直に従わざるを得ないのだろう…

いくつかのアトラクションを堪能すると、お昼の時間になった。
「特典でスペシャルメニューが用意されているらしいよ。」
パンフレットでそのレストランの位置を確認した。
レストランに近づくにつれ、何か俺達を注目する視線が増えているような気がした。
いや、それは気の所為ではなかった。
「あの人じゃない?」
あからさまに俺達…いや、「俺」を指差す客が何人もいた。

レストランの入り口に「本日のベストカップル」と掲げられたパネルがあった。
その下には等身大に引き延ばされた写真=入って即に写された俺達の記念写真=が飾られていた。
そう、それはデジタル合成処理がされ、俺達は「王子」と「お姫様」のコスチュームに包まれていた。
その「お姫様」のドレスを着せられていたのが「俺」だったのだ!!
「タダで楽しめるんだ。これくらい我慢しろよ。それに結構可愛く撮れてるんじゃないか♪」
「そ、それ以上写真に関わる事は言わないでくれ…」
俺は一気に力尽きていた。
出された食事はカップル仕様であったが、俺にはもうコメントする気力もなかった。

 
「お二人にはパレードに参加していただく事になります。」
どこからともなく現れたスタッフに、俺達はバックヤードに連れて来られた。
「しばらく彼とは別行動となります。が、パレードでのサプライズにご期待ください。」
パレードのスタートまでにはまだ時間があった。「サプライズ」は…もし、俺が「女性」で雄司の「彼女」だったらそれを期待して待ち時間も気にならなかっただろう。
俺は先ず、別室でエステを受ける事になっていた。多分、カップルの「女性」を磨きあげるためのものであろう。
男の俺がエステを受けても…とは思っていたが、案外気持ちが良い事が判った。
が、その先はあまり言いたくはない。

服を脱がされ、コルセットで胴を絞めあげられ、「お姫様」のドレスを着せられた。
勿論、下着もフリルの沢山付いた女性用の下着であり、ブラジャーも付けさせられた。
美容院に連れて来られ、大量の付け毛を施された上で天高く結いあげられた。
ティアラが飾られ、耳にも装飾が施された。
そして、顔には様々な化粧品が塗り込まれていった…
不安定なハイヒールを履かされてスタート前のパレードの隊列に誘導されていく。
フロートは馬車をイメージしたようで、中のベンチに座れるようになっていた。
ドレスの裾の形を整えられ、扉が閉まるとパレードがスタートした。

 
先頭には白馬に跨がった「王子さま」…雄司がいた。
軽快な音楽に乗り、パレードが進んでゆく。
俺は馬車の窓から手を振ってやる。
「綺麗♪」
「あたしもお姫様になってみたい♪」
女の子逹が口々に勝手な事を言う声が聞こえてくるようだ。

パレードはファンタジーキャッスル前のメインステージで一旦停止した。
白馬を降りた王子さま=雄司が馬車に近付き、扉を開ける。
差し出された手に俺の手を重ねると、馬車から降ろされた。
ステージの中央に向かって、遊園地のキャラクター逹がレッドカーペットを囲むように並んでいた。
雄司に手を引かれ、ステージの中央に立った。
カチャカチャと雄司が足元を動かした。どうやら器具があり、彼の靴を床面にしっかりと固定したみたいだ。

ガクン
と床が動き、直径1m程の円盤となって、宙に浮き始めた。
雄司はこの事を聞いていたのだろう。余裕の笑みを浮かべている。
だが、しっかりと固定された雄司と違い、俺の方はちょっとでも油断すれば落ちてしまいそうだ。
必然的に、俺は雄司にしがみつき、王子さまはしっかとお姫様を抱き寄せ、身体を密着させる形になる。
ステージの上ではキャラクター逹のダンスが繰り広げられていた。
「あれこれ考えない方が良いぞ。今は純粋にこの状況を楽しむしかないよ♪」
そして、円盤がジェットコースターのように勢い良く動きだすと、
「きゃーっ!!」
と、俺は女みたいに叫んでいた。

曲調が変わり、しっとりとしたワルツになっていた。
スポットライトがメインキャラクターのカップルに注がれる。
華麗なステップでステージの上を縦横に舞い跳んでいた。
着ぐるみと言う事さえ忘れさせる美しさがそこにあった。
そして、間奏になった。

と同時にスポットライトは俺達に注がれていた。
「大丈夫。君にはお姫様になれる魔法が掛けられているんだ。さあ、脚を一歩踏み出してご覧♪」
円盤は床に戻り、雄司が俺をステージの中央に誘う。
間奏が終わると俺は雄司にリードされ、ワルツのステップを踏んでいた。
(知らない筈なのに…)これが雄司の言った「魔法」なのだろうか?
俺達はメインキャラクター逹に負けないくらい華麗にステージの上で舞っていた。
次の間奏が入ると、カップルになったキャラクター逹がステージに繰り出してきた。
俺達とメインキャラクターがステージの中央で踊り、その周りを綺羅雅やかに演出する。

そしてステージはフィナーレを迎える。
盛大な拍手が沸き起こる。
その中心に俺逹がいるのだ。
「楽しめたかい?」
「何か夢の中にいるみたい。自分が自分でないみたいな…」
「魔法はまだまだ続くんだよ。さあ、馬車に乗ってパレードの再開だ。」
今度は雄司も一緒に馬車に乗り込んだ。

 
馬車が動き出すまでにはまだ時間があった。
ステージから馬車の中まで繋ぎ続けていた手が解かれた。
雄司が俺を見つめている。
奴の手が俺の背中に廻った。
(キス…しようとしているの?)
俺には「男同士だ」という感覚が欠如していた。瞼を閉じ、少し首を傾けていた…
 彼の唇が触れる。
俺は女がそうするように、彼の舌の侵入を許し、俺の舌を彼の舌に絡ませていた。

…頭の中が幸福感で一杯になりそうだ…

気付くと、馬車は動きだし、彼の唇は離れていた。
「さあ、笑顔で手を振ろう♪」
パレードの見物人が俺達の乗った馬車に注目していた。
(ここで不機嫌な顔はしていられないよね。パレードが終われば、またキスしてもらえるよね♪)
俺が笑顔を見せると、観客逹の笑顔もワンランクアップするみたいだ。
俺はパレードが終わるまで、一生懸命に手を振っていた。

 

パレードが終わると、「シャワーでも浴びて夜のイベントまでゆっくりしててください。」と遊園地に併設されたホテルの最上階に案内された。
その日は天気も良く、かなり遠くまで見渡すことができた。
「夜景も綺麗だと言う話だよ。」
と窓から外を見ていた俺の隣に雄司が立っていた。
「先ずはお疲れ様でした。」
と俺を抱き寄せる。俺が上を向き瞼を閉じると、彼の唇が俺の唇を塞いだ。
また、あの快感が戻ってきた。
脚から力が抜けて立っていられなくなったが、雄司がしっかりと俺を支えてくれた。そして、雄司が大きく動くと、俺はお姫様だっこをされていた。
(今の俺はお姫様だら、文字通りだね♪)

そのままベッドに運ばれた。
「疲れただろう?しばらくここで休んでいよう。その前にシャワーでも浴びないか?」
「賛成♪でも、この服を一人で脱ぐのは難しそうよ。」
「手伝うよ。背中を向けてくれ…」
彼にファスナーを下ろしてもらう。袖から腕を抜き、ドレスから解放された。
「セクシーだね♪」と彼…
「み、見るなよ!!」と俺は両腕で胸を隠した…
って、男同士で俺は何を恥ずかしがっているんだ?

確かに、女性用の下着を着ているのを見られている。が、男の俺がお姫様の格好にされた時点で恥ずかしさのメーターは振り切れていた筈。何を今さら下着で…
とは思ったが、今の恥ずかしさはそれとは別物のようだ。コルセット等で絞めあげられた体は正に「女」だった。
くびれたウエストから腰にかけてのライン。お尻の形も整えられ、股間もすっきりしている。
そして、胸はブラジャーを満たしてあまりある位に膨らんで…
(な、何で補整下着だけで胸まで膨らんでいるんだ?)
「形の良いオッパイになったね。もっと良く見せてよ♪」
と雄司にブラジャーを剥ぎ取られた。
「イヤッ!!」
と可愛らしい悲鳴をあげてしまった。
が、そこには確かに豊かなバストがあり、先端には綺麗な色をした乳首まで乗っていた。
「お姫様になる魔法はちゃんと効いているようだね♪」
と雄司が乳首にキスをした。
その触れられた感触が俺の胸から伝わってくる。
「ぁあんっ♪」
乳首を噛まれて艶声が漏れた。
「身も心も《お姫様》になれたかな?」

お姫様ってことは「女の子」で、このバストは「女の子」の証…
(他はどうなっている?)
俺は下半身に手を伸ばした。が、補整下着越しでは判別がつかない。俺は下着の下に手を入れ、直接股間に触れてみた。
(…ない…そして、ある?)
なかったのは俺のぺニスだ。そこに突起物はなく、肉の割れ目があった。更に奥に指を伸ばすと、熱く湿った洞があった。勿論、排便のための穴ではない…それが、最終的な「女」の証だ。

「僕にも見せて♪」と下着が剥ぎ取られる。ベッドに押し倒され、股間が広げられた。
「てらてらと卑しく輝いているね♪こんな可愛くて淫らな女の子を前にして、僕はもう我慢できないよ♪」
彼が何をしようとするのか、その一瞬では理解すれことができなかった。
可愛い娘を前に男が我慢できない事は解る。
が、その「可愛い娘」が俺自身である事に、なかなか結び付かなかった。
次の瞬間には、俺は雄司に組み敷かれていた。
ようやく、彼の欲望の対象が俺自身である事に気づく。

彼の股間が、俺の下半身に近付いてくる。
硬くなったソレの先端が触れ…俺は一気に貫かれていた…

 

 

花火が上がっていた。
外はもう「夜」になっていた。
「花火とともに魔法は解けていくんだって。」
俺は膣の中に彼の存在を感じながら、ただぼーっとしていた。
この半日、俺は「お姫様」として「女の子」として雄司に愛されていた。
それが心地よいものだという事は認めよう。だが、魔法が解けたあと、俺はどのように雄司に接すれば良いのだろうか?
ゆっくりと乳房が縮んでゆく…
付け毛が解けてシーツの上に散らばっていく…
俺の身体は「お姫様」から元の姿に戻ろうとしていた。

「嫌っ!!」

俺は叫んでいた。
(まだ、このままでいたい!!)
俺は雄司に股がったまま、ぎゅっとしがみついた。
「雄司!!もっと愛して♪」
俺の圧し開かれた股の間で雄司は腰をくねらす。
俺の膣で雄司のぺニスが一段と暴れた。
(ずっとこのままでいたい♪)
花火がクライマックスに向けて激しさを増すように、
俺も快感のクライマックスに向けて昇り詰めてゆく。
そして、盛大な花火とともに俺は、盛大な嬌声とともにイッていた…

 

 

「時間だよ。悪いけどシャワーを浴びる時間もないようだ。」
雄司に声を掛けられ、慌てて起き上がると股間に滴る名残りをタオルの端で拭き取った。
時間が無いと言われても、ブラシで短い髪を整え、乱れたお化粧だけは直させてもらう。
「お姫様」になる魔法が解けてしまったあたしは「普通の女の子」に戻っていた。

(?)

「戻った」のが「女の子」で良かったのかしら?
この身体はお姫様のようなナイスバディとは言えないけど、あたしの=「女の子」の身体である事に間違いはない。
(どこか間違っていた?)
どうせ、あたしはAカップのブラでも余ってしまう貧乳だけど…
(って、少し大きくなってる?)
着てきたのはトレーナにジーンズ。少しも女の子っぽくないけど、下着は可愛いのを選んできたのよ♪
(って、あたしこんな可愛い下着持ってたっけ?)
何か記憶があやふや…

「さあ、帰ろう♪」
と雄司が差し出した腕にあたしの腕を絡める。
「今日は素敵な一日をありがとう♪」
「楽しんでもらえて、僕も嬉しいよ♪」
出口ゲートには係りの人逹が並んでいた。
何かあたしを見て、意味ありげに微笑んでいる。
そんな係りの人逹に見送られて、あたし逹の遊園地デートが終わりを迎える。
(デート…だったのよね?何か違った気もするけど…)

「ま、楽しかったからどうでも良いんじゃない?」
と自分に言い聞かせる。
「どうかした?」
と雄司。
あたしは雄司に抱き付くと、もう一度キスをした♪

半身

(魂が引き裂かれている…)

俺の目の前で「俺の魂」が悪魔の手で二つに引き裂かれていった。
悪魔はその一方を俺の肉体に戻すと、もう一方を俺の足元に横たわる「女」の肉体に押し込んだ。

この「女」が何者であるか、俺は知らない。
可愛い顔をしていたので声を掛け、食事をし、その後で情事に及ぼうとした。
その時、女が急に暴れだしたので大人しくさせようとしたが、どうにも収まらないので俺の手で殺したのだ。
その「女」の肉体に、俺の「魂」の半分が収められた。

(ガッ!!)

突然、強烈な痛みが俺を襲った。
勿論、俺の肉体にそのような痛みを発する要因は何もない。
その痛みは「女」の肉体からのものだった。
「お前にも同じ痛みを…というのがこの女の望みだそうだ。お前は魂の半分で女と感覚を共有する事になる。」
俺は言葉を発する事ができなかった。
「この女は、お前が生きている限り生き続ける。お前に殺された痛みと共にな♪」
悪魔が女の腕を踏むと、踏まれた痛みが俺にまで伝わってきた。
「女の魂は頂いて行く。つまり、お前が管理していないとどんな事故に会うかもわからないからな♪車に跳ねられたいのなら、お好きに…」
そう言って悪魔は消えた。

 

後には俺と女の身体が残っていた。
俺は女の傍らに座り、恐る恐ると女の腕に触れてみた。

俺は腕に触れられた感覚を得た。
踏まれた場所にもまだ痛みはあった。
そこを摩ると幾分か痛みが和らぐ。

女の腕は暖かかった。
(生きている?)
俺が女の胸に手を当てると、心臓の鼓動を感じた。
それと同時に、俺は胸に手を当てられていた。その胸は「女」の胸であり、形の良い乳房がそこにあった。
俺が胸を掴むと、乳房が掴まれる感覚があった…

 

痛みより好奇心が勝った…

 

俺は何の抵抗もしない「女」の服を脱がした。
俺は何の抵抗もできずに服を脱がされていた…

俺は女の上に被さり、乳首を舐めあげた。
俺の上に伸し掛かってきた男に乳首を舐められた。乳首を中心に快感が広がる。ジュンと股間が濡れた…

乳首を舐めただけで、女は股間を濡らしやがった。感度が良いのだろうか?抵抗がない事を良い事に、俺は女の股間を押し広げて一気に突入した。
「んあん♪」俺は思わず媚声を漏らしていた。俺の股間に男のペニスが挿入されていた。「男」であれば経験することのできない感覚なのだろう。しかし、それは快感として俺の脳を揺さぶった…

 
(脳…俺の脳?)

 
否。快感を感じていたのは女の肉体であり、この女の脳が感じた快感を俺の魂の半分が受け取っているだけだ。

「あん、ああ~ん♪」
俺は快感に媚声をあげ続けていた。
(ここを責められるともっと感じるのに…)
女の脳に刻まれた情報が、俺にそう思わす。俺がそう思うと、即にそこが責められる。
息吐く暇もなく、俺はどんどん快感の高みに昇ってゆく。
「ああん、あん、あんっ!!」
俺は叫び続けていた。
(あっ…何か来る!!)
それが「女」のアクメであることは判っていた。
「ああ、イくぅ…イっちゃう~~♪」
俺は自らそう叫んでいた。
膣の中にザーメンが放出された。
快感のバロメーターが振り切れる。
俺は意識を失っていた…

 

俺の下で女がぐったりとしていた。この女の中に俺の魂の半分が入っているらしい。
実際、俺はこの女の視点で「俺」に抱かれ、最後にはイかされてしまったのだ。

 
この女は俺が殺した筈だが、今も心臓は動いている。
女の魂は無くなっていたが、替わりに俺の魂の半分が入っているので生き続けているらしい。
だが、いつまでもゾンビの女と関わっている訳にもいかない。
俺は意識を失っている女を後に、その場を離れていった。

 

 
バーのカウンターで独り飲んでいると、不意に腕を掴まれた。
振り向いたが、俺の腕を撞かんでいる奴はいない。
更にぐいと腕を引かれバランスを崩した?いや、カウンターで椅子に座っていてバランスを崩すもない。
が、倒れかけた俺は抱き止められていた。と同時に胸が掴まれる…
それは、俺の胸に膨らんでいた乳房だ。…それは、俺の魂の半分が込められた女からの感覚だった。
女は気が付くと、ふらふらと外に出てきたのだろう。
繁華街で無防備な女がどのような目に合うか、あの女は知らないのだろうか?

いや、その可能性を考えていなかったのは俺の方だった。
今の女には彼女の魂=自我は存在しないのだ。俺が放っておけば、夢遊病者のようにふらふらと出歩く事になる思い至るべきだった。
放置した結果、女はレイプされ、その感覚が俺に届くことになる。…俺が女としてレイプされるのを経験させられるのだ。

既に、女は建物の影にでも連れ込まれているに違いない。
男の指がショーツの上から女の股間を責めている。その感覚…女が感じている…を俺の股間に感じていた。
勘定を済ませ、バーを飛び出す。どこに連れ込まれたかは解らないが、女を放置してきた場所からはそう離れてはいないだろう…

俺は口を広げられ、その中に太いソーセージのようなもの…男のペニスに違いない…を突っ込まれていた。
俺には抵抗ができない。ペニスは俺の喉の奥を突いてくる。
実際に突っ込まれているのは女の口であったが、その感触が生々しく伝わってくるのだ。
「うっ…」
と男が呻き、俺の喉の奥にザーメンを注ぎ込んできた。

男の呻き声は「俺」の耳で聞いていた。奴は近い。どこだ?
俺はビルの影になっている場所を探した。
シャッターの降りているビルがあった。その脇に路地がある。呻き声の聞こえてきた方向と一致する。
人の気配もある。一人ではない。何人かいるみたいだ。
(放っておけば、輪姦される?)

俺は路地に飛び込んでいた。
(…)
その直後、後頭部に打撃を受けた。
俺は地面に転がる前に意識を失って…

いや、俺の意識は覚醒したままであった。
ただ、現在の俺の自我は女の肉体の内にあった。

 

口の中に残ったザーメンを吐き出す。
既に服は破かれ、ブラジャーから片乳が溢れていた。
奴等の気が逸れていた。その視線の先にはぐったりとした「俺」があった。
「勝手な事すんな!!」
と立ち上がろうとした俺の髪の毛が掴まれ、引き戻される。
俺は逃げるタイミングを逸してしまったようだ。
「あいつ、お前のコレか?」
と中指と人指し指の間から親指を覗かせた。恋人か何かだと思ったのだろう。
俺は「ちがう」と言い返した。
「まあ、役に立たなかった事には変わりないな♪じゃあ次は本番にしましょうか?」
奴は俺のスカートの中に手を入れ、ショーツを引き下ろした。
「ケツを上げろ。」
奴は俺を地面に這わせ、バックで責めるようだ。
「早くしろ!!」
躊躇っていると、剥き出しの尻を叩かれた。
奴は気が短いのだろう、俺が動くより先に腰ごと吊り上げられた。そして、奴のペニスが俺の股間に突き入れられた。

奴の動きは俺の不意を突き、かつ、激しかった。それは最も感じる所に手の届いた「俺」とのSEXとはまるで違って゛いた。
これが本物のSEXなのだろう。「俺」とのは単なるマスタベーションでしかないと思い知らされた。
乱暴なSEXにも関わらず、俺は昇り詰めていった。
俺が感じている事が知られるのが悔しくて、艶声が漏れないように我慢していたが、最後にはどうしても淫声を漏らしてしまう。
「んあん…だ、駄目。それ以上は…イ、イっちゃう~」
「どうだ?あんなへなちょこ野郎とは比べ物にならないだろう?」
「ぁあん♪イ…イイっ!!」
「そんなに良いか?なら、これでイってしまえ!!」
奴のザーメンが俺の膣に放たれた。それと同時に俺は昇り詰めていた…

 
「誰か通報した奴がいる。ヤバイぞ!!」
誰かが叫んだ。
「散れっ」
奴が言い放つ。
「また会ったら、ゆっくり楽しもうぜ♪」
と俺に声が掛けられると、一瞬で奴等の気配が消えてしまった。
残されたのは気絶したままの「俺」とレイプの跡も生々しい「女」の俺だけだった。
俺は動かない「俺」を引きずった。勿論、遠くまで移動できる筈もない。
手近にあった建物の裏扉に鍵は掛かっていなかったので、その建物の中に転がり込んだ。
何人かの男が路地に入ってきた。
男逹は警官なのだろうか?だが、一分足らずで検分を終えると、路地から立ち去ってしまった。

 

(どうしよう?)

俺は次の行動が決められなかった。
とにかく「俺」の体に意識を戻さなくてはならない。
次にこの女を放っておく事ができない。どうやって俺の監視下に置くかだ。
やる事は決まっている。が「どうやって」が見当も付かない。
試しに「俺」を揺さぶったが、ピクリとも反応がない。
頬を叩いても何の変化もない…

ふと、他愛もない童話の一節が頭に浮かんだ…
俺は「俺」の頭を両手で固定し、その唇に俺の唇を触れさせた…
唇が吸われる。
口の中の空気や唾液と一緒に俺自身が吸い取られるような錯覚…
クラリと目眩がして、俺の上に重なる体重を感じた。

女の体を脇に退け、「俺」の体を起こした。
女も起き上がっていたが、半分寝ているようで視線が定まっていない。
(無意識の行動しかできないと言う事か?)
女をこのまま放っておけない事はハッキリしていた。
そして、いつまでもこの場所に居られるものでもない事も判っている。
俺は彼女を背中におぶって、俺の部屋まで連れて行った。

 
俺は部屋に戻り、落ち着くと、今後の彼女の扱いについて思案した。
彼女の体は俺の意思で自由に動かせることができた。
が、俺の意思が届かない時は勝手に動いてしまう。
また、俺が俺の体の制御を放棄すると、俺の意識は彼女の体に取り込まれてしまう。つまり、俺が彼女自身となってしまうのだ。
その時の「俺」の体はピクリとも動こうとはしない。
更に、彼女との距離に関係なく、彼女の体が感じたものは、全て俺に伝わってくるという厄介なおまけまである。
彼女の感じる痛みも快感も、そのまま俺に伝わって来るのだ。

(では、どうすれば良い?)

俺が「俺」として行動する時は、常に彼女を側に置いておかなければならないのだ。
ウザい事この上ない。
かといって「俺」の体を置いて行動するという事は、俺が「女」として行動する事になる。
(オカマじゃあるまいし、女のマネなんか出来るか!!)
とは思うが、背に腹は替えられない…
俺はソファに座って、律儀に俺の指示を待っている女の所に向かった。

息を吹き込むように、俺の意識を彼女の口の中に送り込んだ。
どさりと俺の上に伸し掛かってきたものがあった。
既に、俺はソファに座っていた。つまり、俺の意識は女の中にあり、伸し掛かってきたのが「俺」の体であることは即に理解した。
「俺」の体を脇に転がした。女の非力な肉体では、それだけで一仕事だった。
「俺」を転がしたまま、クローゼットを漁った。女の服はずたぼろであり、着替えが必要だった。
勿論、俺の部屋に女物の服などはない。とりあえず着れるものを着て近くのファッションスーパーで下着から一式を揃えてくるのだ。
とは言え、女が着れる下着は存在しない。素肌に直にトレーナーを被ってみた、
体格の違いからか、トレーナーはミニのワンピースに見えなくもない。
が、下着を着けていないので、そのまま外に出る訳にもいかない。ぶかぶかのジーンズをベルトで絞めあげ、裾をこれでもかと折り畳んでようやく形になった。

しかし、このまま即に外に出る訳にはいかない。
女には化粧が必要なのだ。
女のバックには化粧ポーチが入っている。それを取り出して、俺は顔を整えていった…

(待てよ。俺は化粧などした事ないだろう?それに、男の俺がオカマでもないのに、何で自分から化粧しようと思ったんだ!!)

それは、この女の無意識の行動なのだろう。女の脳に刻まれた過去の記憶が無意識に体を動かしているのだ。
(その無意識が俺の意識に干渉している?)

ぶかぶかのスニーカの紐を絞めあげて、なんとか外に出れる状態になった。
コンビニのATMで現金を用意してファッションスーパーに向かった。
カゴには無造作に女物の衣服が放り込まれてゆく。サイズは確認しているが、それがこの女の物であるかなど、俺が知る筈もない。
知っていたのは女の脳の方であり、女の無意識がサイズ等を確認して服を選んでいるのだ。
レジを済ませると近くの公衆トイレに向かった。今買った服に着替えるためだ。
俺の「男」の意識は一瞬躊躇っていたが、女性用の入り口からスッと中に入っていた。
トイレには誰もいなかった。空いている個室に入り、買ってきた服に着替える。着てきた服は一つにまとめて袋に入れた。
(コンビニのごみ箱にでも放り込んどけば良いわよね♪)

身軽なった足でドラッグストアに向かう。脳に刻まれた記憶にある化粧品を選んでいった。
他に足りないものは…生理用品を忘れる所だった。どんなオカマでも男であれば考える必要のないモノよね。生理の痛み、鬱陶しさを思い出してしまった。
ぶるぶると頭を振って厭な思いをふるい落とす。パウダーコーナーがあったので、お化粧を直して気を引き締めた。
(一旦、家に帰って落ち着こう!)

…って、あたしの家って何処だったっけ?
何か同時に二つの場所が頭に浮かぶ。
そのどちらもが自分の住みかだと主張している。
それに、バックの中には家の鍵が二つ入っている。
あたしは…

(おいっ!!女の記憶に呑まれてるんじゃないか?)
何が「あたしは…」だ!!俺は「俺」だ。
俺がこの女の家に戻ってどうするのだというのか?
確かに、お気に入りの服は揃っているし、面倒な事はみんなママがやってくれるのよ♪

ママ…って!!また女に呑まれ掛けてる!!
早く「俺」に戻らないと、終いには俺が俺でなくなってしまうかも知れない!!
俺は「俺」の部屋に戻るべく、足を早めた。

 

バックの中の鍵を取り出し、ドアロックを開ける。
「ゴメンください…」と中に入った。
この部屋を出た時と同じ格好で「俺」が転がっていた。俺は先ず第一に…と、俺と「俺」の唇を重ねる…

あたしの腕の中で「俺」が目覚めた。
彼はあたしを押し退けると、むっくりと起き上がった。
「む~~っ!!」
と伸びをする。彼は「俺」そのものだった。
(けれど、あたしが「俺」なのよね?)
何か腑に落ちない気がするけど、あたしは確認の問いを発した。
「あなた、誰?」
彼はまじまじとあたしを見た。
「えっ?まだ、俺の意識の一部がそっちに残っているのか?」
彼はあたしの問いには答えず、そんな事を言った。
「あたしが貴方だったのは理解しているわ。分割された魂がそれぞれ独立してしまったって事?」
「多分な。そっちの魂はかなり女の記憶に浸食されてしまったみたいだけどな?」
「浸食って?あたしはまだあたしの意識を維持しているわよ。」
「気が付いてないのか?お前の言葉が女言葉になってるって。自分の事もあたしって言ってるぞ。」
「えっ!?」
あたしは…って、既に自分の事をあたしって言ってる?!

「お…俺は「俺」なのよ…なんだぞ。お、俺もそっちに戻れないかしら?…かな?」
「無理に男言葉を使おうとしない方が良いぞ。何を言ってるか判らなくなる。で、こっちに戻れるかって?試してみるかい?」
「ええ♪」
あたしは瞼を閉じ、彼の口づけを待った。

「どうしたの?」
ちっとも始めようとしないので、瞼を上げる。
「そんな仕草、本当に「女」なんだなぁっな♪」
「へ、変なコト言わないでよ。さぁ、早くぅ。」
あたしが急かすと、ようやく彼が顔を近付けてきた。彼の唇があたしの唇に触れる。
あたしはあたしの全意識を彼の中に送り込もうとした…

が、あたしの意識はあたしの肉体を離れようとしなかった。
彼も援助するかのように、あたしを吸い込もうとしてくれたが、あたしの体から力が抜けてゆくだけだった。

力の抜けたあたしを彼が抱き止めてくれた。
そのままベッドに押し倒される。意識を移す筈の口づけはディープキスに変わっていた。
「ちょっと!!何してるのよ!!」
彼を離そうとするが、力で敵う相手ではない。
「一つ判った事がある。」
と彼が言う。
「どうやら、魂のリンクみたいなモノが切れているようだ。お前の感じている感覚が俺に伝わって来なくなった。」
「どういう事?」
「俺自身としては、元の状態に戻ったって事だ。お前も「俺」だった事を忘れれば、お前自身として自由に行動できるんじゃないか?」
「あたしにこのまま、この女として生きろって事?」
「一度は死んだ体だ。新たな魂で続きを生きるのもアリじゃないか♪それが、殺してしまった彼女への償いにもなるだろう?」
「償いって、何であたしだけなのよ!!あたしに償わせて、あんたはのうのうとしているつもり?」
「責任を取れってか?まあ、お前とは相性良さそうだから、養ってやるよ。正式に結婚して、毎晩悦ばしてやるよ♪」
「な…何言ってるのよ!!」
口では反発していたが、あたしの肉体は彼の言葉に反応し、期待に濡れ始めてしまう…

「OKと言う事かな?」
再び体を重ねて来る彼をあたしは拒絶する事ができなかった。

荒野(1/4)

雲が流れて行く…

 

その先に何があるか?なんて、誰がわかるだろうか?
それでも、俺は歩き続けていた。

 

大きな戦争が終わって2年が過ぎていた。
世界の大半は荒涼としていたが、1年も経てばそこここに草木が芽吹きだしていた。
いずれは動物逹も戻って来るのだろうが、今ここで地表を動いているのは俺一人しかいないであろう。

いや、俺自身を「一人」と数えて良いものなのだろうか?
戦地で重症を負った俺は、軍の科学チームに良いようにその肉体を弄ばれてきたのだ。
今、俺の肉体に俺本来の血肉は一片も残ってはいなかった。
工場で組み立てられた骨格。人工的に合成された筋肉や皮膚。内蔵はこれらの人工物を稼働し機能を維持させるための機関に置き換わっていた。
脳にしても、生身の部分は何もない。「俺」の記憶と意識を刻み込んだ鉱物の塊に置き換わっている。

もはや「俺」は人間ではなかった。
だから、人間が生きて存在できない大地の上でさえ「俺」は動いていられるのだ。
勿論、飲み食いの必要もない。本来の心臓の所にあるモーターがエネルギーを生み出し、胃のあった場所に溜め込んで行くのだ。
フルパワーで活動すると、溜め込んだエネルギーを使い果たしてしまうので、再びエネルギーが溜まるまで活動が停止してしまうというおまけが付いている。(が、その機能のおかげで俺は人間並みの質量を実現できているのだ。)

俺の見た目は「人間」そのものだ。
勿論(と言って良いか?)、容姿は本来の「俺」とは全くの別物となっていた。
身長こそ変わらないものの、体重は半減している。つまり、手足は折れそうな程細く、腰まわりは蜜蜂と同じようだ。
…それは、一言で言えば「モデル体型」だ。無論、男性モデルではなく、女性モデルのそれである。

今の「俺」の姿は、どこから見ても「女」であった。
当初は敵方の高官を暗殺する事を目的としていたのだろうが、戦局は大きく変容し、どのくらいの開発費用が掛かったか知らないが、俺は慰安婦として最前線に送り込まれたのだ。
疲れを知らない人工の肉体。妊娠も性病も心配する事がない。そしてモデル並みの肢体と容貌…
俺は毎夜どころか、四六時中、兵士逹の相手をさせられていた。
俺の肉体には「安全装置」が組み込まれており、彼らに危害を加える事も、彼らから逃げ出す事もできないようになっていた。
彼らに命じられるまま、俺は奉仕するしかなかった。
また、喋る言葉も人工の声帯が艶のある女声を作りだす。そして、俺の言葉は強制的に女言葉に変換されてしまうのだ。

彼らは俺が男であった事など思いも依らずに、快感とともに俺の膣に精液を吐き出していった。

 

部隊が孤立してしまった事は最期まで知らさなかったようだ。
野営地の上を苦もなく敵の爆撃機が通り過ぎてゆく。
勿論その跡には爆弾の雨が降る。
あたりが土煙に覆われ、兵士逹が次々に倒れてゆく。
野営地一帯の酸素濃度が急激に低下していった。酸素が無ければ「人間」は生きていけない。

…沈黙が訪れていた。
部隊は全滅し、動くものは皆無だった。
見捨てられた部隊に救援など望める由もない。敵側とて、無力化された部隊にかまける余裕もない。
酸素濃度が自然回復したとて、この地に人が訪れることは当分ないであろう。

俺は軍人としての責務として、部隊の状況を報告しなければならないと感じていた。
近隣の部隊も、ここと同様な状況であることは容易に想像がついた。
俺は瓦礫を掻き分け、本国への帰途についた。

 

エンジンの掛かる乗り物を見つけては失敬し、燃料が尽きた所で乗り捨てる。
乗り物が見つからなければ本国の方向に向かって歩いてゆく。橋のない川は泳いで渡り、再び乗り物に出会うまで歩き続ける。
歩くだけであれば、俺の肉体が疲れる事はない。走ってまで急ぐ必要もないだろう。

大地はどこも荒廃していた。
軍の施設があったあたりは、放射線やガスが立ち込め、生命反応を確認するまでもなかった。

歩き始めて数週間が過ぎていた。
奇跡的に通信施設がかなり原型を止めて残っていた。勿論、施設の要員はみな腐敗した死体と化していた。
コンソールに座り、モニタを確認した。メールボックスは、助けを求めるメッセージで埋まっていた。俺は重要と思われる情報を漁った。
そして…
戦争が3日前に終結した事が判った。
既に、本国にも敵国にも、戦闘可能な兵士は殆ど残っておらず、ここ暫くは戦闘らしい戦闘は行われていなかったようだ。
双方手詰まりの中、開戦の口実もうやむやになり、仕方なくの終戦となったようだ。
(戦争が終わった今、俺が戻ったとして何になるのだろう?)
軍は既に崩壊している。俺は軍人としての責務から解放されているのだ。

今の俺に残されているのは科学チームから与えられた「女」の肉体と、従軍慰安婦として学習した「男」を悦ばせるテクニックである。
本国に戻ったとしても、奉仕する兵士はいない。だとすれば、他の場所に俺が奉仕すべき「男」を探せば良い♪
俺はモニタに向き直ると、助けを求めてきたメッセージを分析した。

 
西の山岳地帯にシェルターに避難した人逹がいた。生存している可能性が高い。
その他にも数ヵ所の候補を記憶し、俺は西に向かっていった。

荒野(2/4)

俺の服装は、軍から支給された扇情的な衣服である。
ボトムは極端に丈の短いショートパンツ。トップは辛うじて胸を覆うだけ。肌の露出面積が極端に高くなっていた。
軍内であれば、所属を示せばそれで済むが、民間人相手ではそうもいかない。
俺の皮膚は陽に焼けることはないが、少しでも奇異に見られないよう、マントと帽子を調達した。
靴もサンダルからブーツに変えようとしたが、川を渡った後に歩き辛くなるので、サンダルのままにすることにした。

山岳地帯に入ってゆく。
これまでの平面的な荒野と事なり、一直線で目的の場所に向かう事ができなくなった。
地形を確認する。
状況を確認しながら進む必要があるため、視界が確保できる日中にのみの移動となる。
一日に踏破する距離が極端に短くなっていた。

山岳地帯に近づくにつれ、荒廃の度合いが低くなる。尾根の影には幾分かの植生が残っていた。
荒廃した道路が見つかった。それは爆撃等による荒廃ではなく、その道を通るものがいなくなり、見捨てられ、何十年も整備されずにいたのだろう。
道は山岳地帯の中へと続いていた。いくつかの橋は落ち、隧道は埋もれていたが、なんとかその道を辿る事ができた。

道は崩れたダムの端で終わっていた。
シェルターは更にこの奥にあるのだろう。
干上がったダム湖の底に降り、細々と流れる川を上流に向かう。

シェルターの場所に近づいた。
俺の目の前には岩壁があり、滝が落ちていた。
滝の脇の壁面が登れそうだったので、迂回せずにそのまま壁面に手足を掛けてよじ登っていった。

滝の上には湖があった。
度重なる土砂の流入で塞き止められてできた湖だ。やはり、人工的に塞き止められたダム湖とは面持ちが湖となる。
湖岸には植生が残されており、湖の中には魚まで生息しているようだ。
多分この湖底にシェルターが隠されているに違いない。
まだ陽は高いが、俺は夜営地を確保し、翌日の探索に備えた。

 

「俺」は眠る必要はない。今日は岩壁のよじ登りをしたので、通常よりエネルギーの消費が多かったが「寝る」までもなく数時間立ち止まっているだけで回復する。
俺は大きな岩を背に座り込んでいた。

(?)
人の気配を感じた。
俺の存在に気付き、シェルターから出てきたのだろうか?
夜の闇に紛れて出てきたという事は、あまり友好的な接触とは思えない。とはいえ、殺意を感じた時点で抵抗を試みても余裕で対応できるので、俺は寝ているフリをする事にした。
足音が近づいて来る。
「本当に防護服もなしでここまで来たんだ…って、女じゃないか!?」
予想外の事態に男は困惑しているようだ。どうやら、俺に危害を加えるようにはみえない。
「誰?」
俺は眠そうな声をあげてみた。
「あんたこそ何者なんだ?何でここにやってきた?」
「貴男に逢いたかったの♪って、半分は本当よ。あたしは軍の特殊強化人間。だけど軍が崩壊してしまった今、軍の命令で動いている訳ではないの。誰もいなくなって、人恋しくなってしまったの。詳しくはシェルターの中で話したいわ。案内してくれるかしら?」
彼がどこまで理解できたかわからないが、どうやら俺をシェルターに入れてもらえるようだ。

岩影に開いた洞窟の入り口から湖底に向かって降りていった。
殆ど照明もない。彼のように隘路を把握できていないとまともに進めるものではない。
この洞窟は人工のものではなく、自然の風穴を巧く利用していた。単純に下降するだけでなく、上下を繰り返し、他の風穴からの空気の流れに干渉され、地表に有害ガスが撒かれたとしても、シェルターに及ぶことがないようになっていた。

洞窟の先に人工の構造物があった。
二重扉の向こうにシェルターがあった。
「話は明日に聞こう。今日はもう遅い。右手の部屋を使ってくれ。」
と彼がドアを開けるとベッドが置かれた部屋があった。
「シャワーはあるが、夜間は冷水しか出せない。それでもよければ使ってくれ。」
と俺を送り込み、ドアを閉めた。
カチャリと鍵の掛かる音がした。
「当然よね。でも、シャワーにベッドなんて何日ぶりかしら?」
薄暗い部屋の中で、俺はそう呟いていた。

天井を見上げる。
エネルギーの節約のため、夜間は照明を落としているようだ。微かな灯りは天井の窓からもたらされていた。
シェルターは湖底にあり、窓の外は湖の水である。
その先、湖面に差し込む月明かりが、弱々しくも部屋の中まで届いていたのだ。
「水はシェルターの外に沢山あるという事ね♪」
俺はありがたくシャワーを使わしてもらう事にした。

裸の肉体に毛布だけ掛けてベッドに横たわった。
「俺」がベッドの上で「寝る」のは任務遂行時…則ち男たちに快楽を与えるためである。シェルターの中には「男」がいた。
俺の肉体が「任務」を思いだし、準備を始めていた。
肉洞内の湿度が上がり、熱く潤み始める。「女」の器官が疼き「男」を求めている。
フェロモンが部屋の中に充満してゆく…
(今はダメだ。彼には何も説明していない。)
理性で抑えようとするが、肉体が「彼」を求めて止まない。
俺は少しでも鎮めようと、股間に手を伸ばして「彼」に代わって自らの指を挿入した。
俺の膣は餌を待つ雛鳥のように勢い良く指を咥え込む。更に奥に送り込もうとする。
抗うと…
「あ、ああん♪」
肉襞が刺激され、快感がもたらされる。快感に艶声が漏れる。
艶声に刺激され、肉体が更なる快感を欲する。俺は指先を曲げ、肉壁の感じる場所を探る…
「っあ…、あああんっ♪」
感じる場所が見つかると、集中的にソコを責めたてる。
「あん、あん、あん♪」
もう片方の手は乳房を捏ねあげ、乳首を刺激する。
「ああん。ああああん!!」
自らの手で登り詰めてゆく。
頂きが見え隠れしている。
「ああん♪イクのぉ…イクぅ…イッちゃう~~♪」

 

肉体の火照りが徐々に治まっていった。
快感の余韻に浸っていると、カチャリと錠が外れる音がした。
「ま、待って♪あたし今、何も着ていないの!!」
俺は毛布を手繰り寄せ、体を隠した。
「判ってるさ。監視カメラで見てたからな♪」
男が部屋に踏み込んできた。
勿論、カメラの件など俺が知らない筈もない。
「お願い。ドアを閉めてくれる?」
男は素直に応じてくれた。
部屋の中には俺が発したフェロモンが充満している。ドアから漏れでてしまったが、男の理性を消失させるには十分な濃度を保っていた。
「ずいぶんとご盛んだったな♪お前、かなりな淫乱だなぁ。男が恋しくてたまらないのだろう?」
「シてくれるの?」
「お前次第だな♪」
彼のズボンの前面は痛いくらいに膨れあがっていた。
「どうすれば良いの?」
俺は自らの裸体を晒し、男の前に歩んだ。
男のズボンのベルトを外し、下へと擦り降ろしてゆく。と同時に俺も男の前にひざまずいた。
目の前に張りきった男のペニスがあった。そこに、俺の細い指を絡める。
「シてくれるのか?」
俺はゆっくりと首を縦に振ると、それを咥え込んだ。
久しぶりのペニスだった。
が、じっくりと味わう前に彼が暴発してしまう。
「貴方もずっと禁欲していたんじゃない?」
男は答える代わりに、俺にベッドに上がるよう命令した。
「さあ♪いらっしゃいな。」
俺がベッドの上で股間を広げると、男はふらふらとベッドに上がってきた。
上着も脱がずに俺に伸し掛かってくる。彼のペニスは既に回復していた。

 

 

男は疲れはて、イビキとともにベッドの上にあった。
俺はシャワーを浴びると、いつもの服を着てシェルター内を確認してまわった。

日の出とともに太陽光発電が起動し、照明を始め各機器が動きだした。
通信装置も生き返っている。が、前回俺が確認した時から情勢に大きな変化は見られなかった。
しばらくはこの男を相手に任務に相当する行を行おうと考えた。

 
軍務とは違い、相手をするのはこの男一人である。当然四六時中を性行為に充てる訳にいかない。
また、生身の人間の生活のリズム、必要な行為等に合わせる必要があった。
当然のように性行為は宵の口にのみ行うこととなる。その後は彼の睡眠時間となる。
俺は寝る必要などないのだが、シェルター内の機器が動かなくなるので、何もできない。仕方なく、彼の隣で夜が明けるまで待機状態に置く事にした。
当然の事ながら、日中には性行為は行わない。何もしないでいるのも何なので、プログラムされた機能を使い彼の為の料理を作る事にした。
男に対し好感を得るためのスキルであると同時に裸エプロンなどの性行為シチュエーションの為にも料理のスキルは必要とされていた。
シェルターには食材は多くないが、前線での活動も想定されており、俺の作った料理には彼も満足してくれたようだ。

 
そして夜になり、各機器が停止し、最小限の照明の下で俺達は肉体を重ねていた。
俺は知る限りの全ての技で彼に快感を与えてやった。
…が、俺は「限度」というものを知らずにいた。
一部隊を相手にするのと、一人を相手にするのでは訳が違う。当初に予定されていた要人相手では、別の目的があり、達成すればそれで終わりであった。男に快感を与えるのは目的の為の手段であった。
が、彼に対しては快感を与えるのが目的となってしまっていた。際限のない快感を与え続けた結果…

彼は肉体の負荷に耐えきれず、命を落とす事になってしまった。

 

俺は彼を埋葬すると、シェルターを後にした。
この肉体は「男」なしではいられないのだ。他に生存者が残っていそうなシェルターは洗い出してある。
俺は、ここに辿り着いた時と同じ格好に戻り、次の目的地に向け歩きだした。

いくつかのシェルターは、既に生存者が存在しなくなっていた。
女しかいないシェルターもあった。
女たちはモデル並みの容姿を持った俺を快く思う事はなかった。特に男女数が均衡している場合は、自分たちの男が誘惑されないかと考える。
(俺の目的は正ににソレであるのだが…)
中には男女一組だけのシェルターもあった。
そのような場合は彼女らの生活を乱さないよう、即行で退散することにしていた。

荒野(3/4)

そのシェルターでは、女は奴隷のように扱われていた。
メイド服の下には荒縄が巻かれ、当然のように下着を着ける事は許されていなかった。
男には力があり、知識がある。女は養われているのだから、男に奉仕するのは当然である…という論理は「俺」の出現により瓦解するのだった。

シェルターの状況が解らなかった俺は、シェルターの入り口の近くで夜を明かすつもりでいた。
深夜になり、闇に紛れるかのようにシェルターの住人が俺を取り囲んだ。
何の警告もなしに(奴等は俺が寝込んでいると思っていただろう)槍状の武器に教われた。
俺は余裕で奴等の攻撃をかわし、槍状の武器の一本を掴んで奴等の動きを封じた。
「えらく剣呑なご挨拶だねぇ?」
俺の発した声に奴等の動きが凍る。
「お、女か?」
「女で悪かったわね♪でも、力の差は歴然でしょ?」
奴等はおし黙ってしまった。
俺が抑えていた武器を放すと、それを手にしていた男はフラフラとよろめき、その場に尻餅を突いていた。
「貴方たちのシェルターに案内してもらえないかしら?」
俺の申し出に奴等は顔を見合わせた。多分、奴等の中には決断できる者がいないのだろう。
「グズグズしない!!」
俺が奴等の一人の尻を蹴飛ばすと、ようやくシェルターに向かって歩きだした。

燃料も十分にあるようで、地下にあるにもかかわらず、シェルター内部は明るく照らされていた。
「こちらへ」
中から迎えに来た男が、応接室のような部屋に案内した。
ソファに腰掛けしばらくすると、このシェルターのリーダーらしき男が現れた。
男は俺に向かい合うように座った。
「ご用件は何でしょう?政府の方のようではないですよね。軍の方としても、我々に干渉する事はできないのでしょう?」
「軍関係と言えば、あながち間違っていないわね。尤も軍が機能していないのはそちらもご存じでしょう?」
「ならば、なおさら用向きをお聞かせいただきたい。」
「単に、観光に来ただけよ♪」
「観光…ですか?こんな何もない所に?」
「何だと思った?」
俺が問い返すと、男は一瞬思案した。そして、
「そう…観光…ですね。それでは、今日はもう夜も遅い。明日にはガイドを付けてあげましょう。」
「ありがとう。助かるわ♪」
二人は立ち上がると握手をした。

「こちらへ…」
メイド服を着た女性が現れた。
(何でメイド服?)と思いつつも、彼女に付いて寝室に入った。
「聞いても良いかしら?」
俺は案内が済んで出て行こうとする彼女を呼び止めた。
「はい。何でしょう?」
その時、俺は彼女のメイド服の下に何か不自然なモノが装着されているのに気付いた。
「その服の下、確認させてもらえないかしら?」
「いえ、これは…」
彼女が拒絶するのも構わずに、俺は彼女のスカートを捲った。
そして、その下に巻かれた荒縄と、彼女が下着を着けていない事を確認した。
「これは奴等に強制されて?」
「力のないあたしには何もできません…」
「ここの女たちは皆?」
「他の人たちは皆逃げてしまい、あたしだけが逃げられずに…」
俺は猛烈に彼女を助けたいと思った。

彼女がそわそわと時計を気にしていた。
「どうしたの?」
と聞くと
「ご奉仕の時間なんです。遅れるとまた酷いめに…」
「ご奉仕…って、夜の遅い時間に女が男たちに呼ばれるとなると、その内容は推して知るべしよね♪」
彼女は答えずに顔を真っ赤に染めた。

 

「遅いぞ!!」
扉を開けるなり、怒号が降り注いだ。
「お待たせしてすみません…」
俺はか細い声で謝り、男の股間にひざまずいた。
男のズボンの前を広げると、むっとした芳香が立ち込める。俺の肉体が反応し、フェロモンの分泌が始まる。
勃起したペニスを手に取り、指を絡めて刺激を与える。俺は即にでも咥えつきたい衝動を必死で抑え込んだ。
「お、お前!荒縄はどうした?」
漸く、俺がメイド服の下に荒縄を巻いていないのに気付いたようだ。
「リリスじゃないぞ?!誰だ?」
男たちは慌て始めたが、彼らは既に俺のフェロモンを大量に吸引してしまっていた。
「慌てないの♪ちゃんとイイ事はシてあげるからね♪」
俺はメイド服を脱ぎ去った。
「貴男たちも脱いでちょうだい♪」
俺は最初に準備を終えた男に跨がり、硬く勃起したペニスを俺の膣に咥え込ませた。
次の男は俺の両脇に立たせ、手で弄ってやる。もう一人を呼び寄せ前に立たせると、俺はそいつのペニスを咥え込んだ。
俺の技で、四人が同時にザーメンを放出する。そして俺は次の四人の相手をしてやる。
一晩ヤリ通しただけで、男たちは腰が立たなくなってしまった。

 

部屋に戻ると彼女=リリスが待っていた。一睡もしていなかったのだろう、目は真っ赤に腫れていた。
「今日は朝の支度はしなくても大丈夫よ。お昼までゆっくり寝てなさいな♪」
俺は俺の部屋のベッドにリリスを眠らせると、シェルターの中を確認してまわった。
確かにリリスが言ったように、以前は彼女以外にも女たちがいたようだ。今は使われていない部屋に、リリスのものではない女物の服などが大量に残されていた。

リリスが目覚めると、俺は彼女と一緒に男たちの食事を作った。
リリスはいつもリーダーの男から与えられた食材のみを使って調理していた。彼女はシェルター内の食材の備蓄がどのくらいあるのかも知らないでいた。
「大丈夫なんですか?勝手に材料を持ち出して来て。」
「男たちはお肉メインにしか考えないからね。使われてなかった食材もあるし、何より栄養のバランスを考えてあげないとね♪」

俺はリーダーを始めとし、男たちに言い渡した。
「彼女の人格を認める事。それから、常に彼女を補助する人を何人か選びました。三日間、あたしが集中して訓練します。その間はあたしもリリスも夜のご奉仕はなしです!!」
「三日間なら…」
と渋々合意させた。

「好きな服を着ても良いのよ。」
と言ったが
「何かこの方が動き易いし、気が引き締まる感じがするから♪」
とリリスはメイド服を着たまま、家事に勤しんでいた。(勿論、服の下には荒縄はなく、下着もちゃんと着けていた)
「訓練が終われば、貴女も楽になると思うから、しばらく我慢してね♪」
「ありがとうございます♪」
と彼女は笑顔を見せてくれた。

逆に、暗い顔をした男が二人、俺の前に並んでいた。リリスの補助をさせるために俺が選んだ内の最初の二人だ。
俺はこの肉体に秘匿されている機能を発動させた。
二人を部屋に入れると服を脱がせた。
「これから三日間、貴方たちには食事はありません。必要な栄養はあたしの体液で補充していきます。」
男たちの顔には諦めの表情しか浮かんでいなかった。
「先ずは少しリラックスしましょう♪」
俺も裸になると、フェロモンを放出しながら、彼らのペニスを弄り始めた。

 

昨夜の狂宴で尽き果ててしまった男たちであったが、まだまだやりようはある。昨夜はまだまだノーマルなSEXだったのだ。
「こうすれば…ほら♪硬くなったでしょ?」
俺は男の尻の穴に指を入れ、直腸側から前立線を刺激したのだ。
初めての刺激に、男たちはどう対処して良いかわからないようだ。
「快感には素直になった方が良いわよ。喘ぎ声を上げるのが女だけなんて決まりはないんだから♪」
フェロモンの効果に加え、暗示・洗脳のスキルを加味してゆく。
「んあ…、あああ…」
野太い声での喘ぎ声は聞くに耐えられるものではないが、今が我慢のし所だ。
「喉が乾いたでしょ?でも、普通の飲み物を与える事はできないの。もちろん水も飲んじゃだめよ♪」
俺は男の頭を俺の胸元に寄せた。
「この三日間、口にして良いのはあたしの体液だけって言ったでしょ?先ずはこれからね♪」
と、俺の乳首を男の口に咥えさせる。俺の体内で合成された薬液が男の喉を鳴らした。

 

三日目には男たちは従順になっていた。俺だけではなく、誰の命令にも素直に従ってしまう筈だ。
お尻の方も十分に開発してやった。リリスの代わりに男たちを受け入れ、自らも快感を得られるようになっていた。
俺の体液の効果はそれだけではない。俺は彼らの肉体さえも変容させていた。
栄養分をぎりぎりで制御し、二人の体重をそれぞれ30kgは落としている。スレンダーな肉体ではあるが、一部の贅肉だけは残し、逆に肉厚を増やしてやっている。
そう。二人は見た目には「女」だった。胸には立派な膨らみがあり、太くて濃い体毛は抜け落ち、肌は白く艶やかになっている。
ペニスは残されていたが、既に「男」としては使い物にならなくなっていたし、二人ともペニスから以上の快感を得る方法を身に付けていた。
更に、喉仏も焼失させているので、「女」の喘ぎ声を出せるようにもなっていた。これで化粧を施し女の顔を作れば、彼らが二人を抱くのにも殆ど抵抗はない筈である。

俺はリリスに二人を預け、次の二人を呼び込んでいた。
リリスには、二人に逃げていった女たちの服を着せ、化粧をしてやるように言っておいた。
従って、次の二人は三日後の自分たちの姿を想像することはできないでいた。

 

更に三日後に「女」となった二人をリリスに引き渡した。
リリスによると、前の二人はリーダー以下に好意的に迎え入れられたようだ。リリスの負荷も少しは軽減されたらしい。

二人をリリスに預けた後、最後の二人を呼び寄せた。が、その二人はなかなか来ようとしなかった。
当然であろう。
今まで男の奴隷でしかないと思っていた「女」に自分が変えられてしまうのだ。
容易に受け入れられるものではない。

だが、俺の計画では6人の「女」が必要だった。6人が揃えば、リリスに自由を与えることができるのだ。
是非ともあと二人を「女」に変えたかった。

喚き声が近づいてきた。最後の二人が4人の「女」に引き連れられてきた。
「大丈夫、何も怖くないわよ♪」
「貴女も即に「女」の素晴らしさを知ることになるのよ♪」
「女」たちは二人を安心させようと声を掛けているが、二人の耳には一切入って来ないだろう。
だが、俺のフェロモンの配下に入ってしまえば、洗脳も容易になる。
最後の二人が裸にされ、俺の前に差し出された。俺の手が二人のペニスを握った。
「さあ♪男としての最期の快感を味わわせてあげるわね♪」
俺は二人の精液を最後の一滴まで絞り出してやった。
「でも、これで終わりじゃないのよ♪これから、もっと凄い快感を味わわせてあげるわね♪」

 

 

さすがに、一気に6人もの改造を行うと肉体が休養を欲してきた。
俺はリリスと抱き合って眠っていた。
久しぶりの受け身のSEXだった。それも、相手が女の子だ。
男に抱かれる経験は数限りなかったし、男として女を抱いたこともあった。が、女として女に抱かれるのは初めての経験だった。
リリスは同性として「女」の感じる所を熟知しており、的確にその場所を責めたててくる。俺は何もできず、ただ喘ぎ悶え狂うだけだった。
男は性的な快感で射精する。萎えたペニスが復活するまでのインターバルがある。そして、放出する精液も無尽蔵にある訳ではない。
が、女同士ならそのような制約は一切ない。互いの体力が尽きるまで、繰り返しイき続けることができるのだ。
俺はこれまでになく、快感に意識が朦朧としていた。ただ、快感にのみ支配され、快感の渦に呑み込まれていった。

 
俺はリリスのシェルターを後にした。
勿論、リリスに別れを告げてはいない。が、これ以上このシェルターに俺が居ると何らかの問題が起きそうな予感がした。
今だ体力は十分とは言えなかったが、皆が寝静まっている時に、俺はここに着いた時の服に着替え、そっと抜け出していった。

荒野(4/4)

シェルターの通信設備を使い、次の目的地を幾つか候補に上げておいた。
先ずは手近な所から…と、俺はそのシェルターの方向を向き、真っ直ぐに歩き始めた。

 
その後、3つのシェルターを訪れたが、それらは皆廃墟と化していた。
4つ目のシェルターの前で一夜を明かし、物騒な事がないのを確認してシェルターのドアをノックした。

そのシェルターには老人が独り残されていた。
「エネルギーが尽きかけておるんじゃ。若い者は早々に出ていってしまったよ。」
迎え入れてくれた老人はそう語ってくれた。
「残されたのは老人ばかり。体力・精神力のない者から脱落してゆく。結局、わし一人が残されたという訳じゃ。」
老人は目が見えないのか、椅子に座ったまま操作パネルを撫でるようにして指示を与えてゆく。
「大したおもてなしはできないが、食料の在庫はまだある。先を急ぐのでなければ、ここで2~3日ゆっくりしていくと良いじゃろ。」
俺の肉体は食料を必要とする事はないが、折角の申し出である。俺は老人と食卓を供にすることにした。

エネルギーが枯渇しているので、シャワーも使えない。まあ、相手は老人だし、目も見えていないようなので、わざわざ俺の容姿を整える必要もないだろう。
老人の長い話に付き合い、老人が疲れて寝息をたてだすのを辛抱強く待っていた。

通信設備は容易に発見する事ができた。が、起動スイッチがどこにも見当たらない。通常スイッチのある場所に見慣れない機械が装着されていた。
その機械はよく見ると、このシェルターのそこここにある様々な装置に繋がっていた。
俺は通信装置に戻り、その機械が外れないか見てみたが、通信装置の奥にまで根を張るように繋がっていた。無理に外そうとすると通信装置本体が使い物にならなくなる可能性がある。

「そんな時には素直に、お祖父様。お願いします♪と言えば良いんじゃよ。」
いつの間にか、俺の背後に老人がいた。
「可愛い孫娘のためなら、なんだってきいてあげるよ♪」
老人の手が操作パネルを撫でた。その途端、通信装置が起動を始めた。
「どうだ?お礼の言葉はないのかね?」
俺は一瞬躊躇し…
「ありがとう。お祖父様♪」
と口にした。
「よかよか♪」
そう言って老人は去っていった。
(つまり、このシェルターの装置の殆どが、老人の許諾を必要としているのだろう)
気は重くなったが、通信装置が起動したので、俺は意識をそちらに向けた。

が、確認できたシェルターは全て既知のものであった。そして、時と共にその数が減っていた。
このシェルターも遠からず無人になるであろう。だが、そのきっかけが俺自身でないことを祈るだけだった。

 
俺の肉体は飢え始めていた。
飢えると言っても普通の人間のように食材を腹の中に落としても、その渇きが癒えることはなかった。
俺の肉体が欲しているのは「男」だった。俺の膣に男を咥え込んで、その中が精液で満たされるのを欲していた。
が、ここにいるのは老人である。肉体の欲求のままに行為に及べば、老人の肉体は耐えきれないであろう。

しかし、このシェルターを出るには老人の許可がいる。主要な扉には皆あの機械が組み込まれていた。
「ミミ。こっちにおいで♪」
と老人が俺を呼ぶ。
「はい。お祖父様♪」
俺は老人の孫娘を演じていた。ミミという名も老人の孫娘のものだった。
「背中が痒いんじゃ。掻いてくれないか?」
「はい♪」
俺は老人の背後に廻ると、シャツをたくし上げ露出した背中に痒み止めのスプレー薬を吹き付けた。そして、下ろしたシャツの上から掌で軽く摩ってやった。
「ああ、気持ちがよいぞ♪ありがとう。」

そして、老人は言葉を続けた。
「しかし、こうやっていつまでもミミをここに足止めしておく訳にもいかないのだろう?」
「いえ、あたしはいつまでもお祖父様の傍に…」
「もう良いんじゃよ。お前さんの正体も解ってきた。わしじゃあ、お前さんを満足させられないんじゃろ?」
この老人はどこまで俺の事を知っているのだろうか?
「確認してみると、かなりの数のシェルターにミミの映像が記録されていた。」
「見た…の?」
「わしの目はもうほとんど使い物にはならないが、通信装置からのデータを直接わしの脳に送り込めるようにしてあるんじゃ。目では見ていないが、ミミの顔は良く見えているよ♪」
俺は室内の監視カメラに顔を向けた。
「あれだけの男を相手にしてきたお前さんが、こんな朽ち果てた老人の前で、さぞや身を焦がしていたんじゃろうな。」
「そ、そんな…」

「ドアは全て解放してある。いつでも出ていけるよ。じゃが、できれば一つだけわしの頼みを聞いてもらえないか?」
「頼み?お祖父様のためなら、あたしは何だってしますわ。」
「いや、孫娘に頼めるモンじゃないさ。お前さんに頼むんじゃ。」
「は、はい…」
「ここしばらくご無沙汰していたが、無性にアノ感覚を再体験したくなったんじゃ。お前さんの手で、わしにもう一度オトコの快感を味わわあわせてもらえないかな?」

 

 

老人のシェルターを後にした俺は、再び荒野を歩き続けていた。
シェルターの通信網にはいくつかの空白箇所があった。そこにはまだ知られていないシェルターがあり、男たちが残されている可能性がある。

 

…俺は荒野を歩き続けていた。

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