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2014年4月 7日 (月)


 

鏡の前に一式を並べた。
傍らには図解本を広げてある。
準備はOK。前髪を押さえて、僕は初めてのお化粧を始めた♪

 

 

大学に入り独り暮らしを始めてから間もなく、僕は「女装」に目覚めてしまった。
それは、この部屋の前の住人が残していったものなのだろう。女装道具の一式が詰まった段ボール箱が物入れの奥に隠されていた。
《コレを見つけた者に譲る》とのメモ書きまで入っていた。
僕自身も捨てずに捨てきれず、遂には好奇心に負けて、自らこれらを身に着けていた。

形のよい人工バストが僕の胸元を飾る。
くびれた腰の下にひらひらのスカートが広がる。
それだけで、可愛くなった自分に見とれてしまう。
セミロングのウィッグを被れば、僕はどこから見ても女の子だった。

 

女装に嵌まってしまった僕は、残されていた服だけでは満足できずに、ネットを使って女物の服や下着を買い揃えていた。
が、さすがに女装したまま、外に出る勇気はなかった。部屋の中では常に女装して過ごす毎日が続いていた。
お気に入りのワンピースを着てファッション誌のページを捲る…至福の時…

突然、ガシャッとドアの鍵が外れる音がした。
(何が起きてるの?)
僕の頭は何も理解できないまま、動けずにいると…
何者かが部屋に入ってきて「パシャッ」と機械が音をたてると同時に、あたりが一瞬「光」に包まれる。
(写真?)
僕がそれを理解するまでに、何度もフラッシュが焚かれていた。
「思った通り可愛いじゃないか♪」
「な、何だ?お前は!!」
声がひっくり返っている。
腰が抜けているのか、立つ事ができない。
「俺はこいつをお前にプレゼントしてやった本人なんだな♪」
奴の手が僕の胸を鷲掴みにする。つまり、女装道具一式をこの部屋に置いていった人物だ。当然、この部屋の合鍵を持っているのだろう…
「変な事は考えない方が良いぞ♪いざとなれば、この写真がお前の周りにばら蒔かれる事になる。」
とモニタ画面を見せる。
「髪は長いが素面だから、誰もがお前だと判る。お前が変態女装男だとな♪」
奴の言う通り、画面の中に女装姿を晒しているのが僕である事は間違いようがない。
「お前は今後、俺の言う事には逆らえない。わかるな?」
僕が何も反応しないでいると、もう一度「わかるな?」と念を押す。
僕は首を縦に振った。
「そうそう。素直な娘は可愛いぞ♪可愛い娘にはご褒美をやろう?」
(褒美?)
僕が訳わからずにいると奴が続けた。
「今度の日曜、デートしてやる。美味しいもんでもご馳走してやるから、目一杯お洒落してきな♪」
…つまり、女装したまま外に連れ出されるという事?
「それまでに頑張ってお化粧を覚えておくんだな。その顔のままだと、俺の撮った写真の意味がなくなる。」

 

 

そんな訳で、僕はお化粧をしてみる事にしたのだ。
しかし、してみると、それは感動的でもあった。
僕の目がぱっちりと大きくなった。
唇が輝き、女の子らしくなる。
眉毛が気になったが、男に戻った時に変に見られてしまうと思い、剃り落とすのだけはやめておいた。
爪にもマニキュアを塗った。
艶やかな爪は男にはない。
鏡の中の僕は完全に女の子だった。
「これなら外に出れるね?」
鏡の中の女の子に声を掛けた時、重大な事に気づいた。

声が男のままなのだ。

女言葉を使ったとしても、この声では男だとバレてしまう。
裏声を使っても、裏声は裏声でしかなく、女の子の声に聞こえる筈もない。
どうすれば良いか?…

が、日曜に外に出る時は自分一人ではない事に気づいた。
悔しいが奴が一緒なのだ。何か必要な事があれば、小声で彼に伝えて、彼に話してもらえば良い♪

ひと安心した僕は、その後も「研究」といいながら、落としてはお化粧をやり直すという事に没頭していた。

 

 

日曜日。
奴から「駅前で待ち合わせする」と連絡があった。
つまり、駅前までは僕ひとりで行かなければならない。
(声を出さなければバレない)
そう自分に言い聞かせる。

鏡の中の僕は、どこから見ても「女の子」だった。
踵の高い女物のサンダルを履く。
バックから鍵を取りだし、ドアを閉める。
通路にカツカツと、想像以上に音が響いた。誰かに見られてはいないか?と気になったが、何事もなく外に出ることができた。

駅に向かう道を歩いて行く。踵の高さにも大分慣れてきた。
誰も僕の事を変に見ている様子もなかったので、落ち着く事ができた。
スカートなのでズボンのように大股では歩けない。いつもより駅に着くまで時間が掛かってしまった。
それでも、待ち合わせの時間より早く着いていた。
奴はまだ来ていないようだ。

僕が待ち合わせの場所で待っていると、若い男の二人組がちらちらとこちらを窺っているのに気づいた。
約束の時間は過ぎているのに、奴はまだ来ない。
何度目か時計を確認していると
「カノジョ~♪カレシと待ち合わせ?」
と二人組がやってきた。
「見てると、待ち合わせ時間過ぎてるようじゃない?」
「きっとスッポカされたんだよ♪」
「代わりに俺たちと付き合わない?」
「色んな楽しい所、連れてってあげるよ♪」
俺が逃げられないように両脇に立ちはだかる。
僕は声を出すこともできず、その場で身を縮めているしかなかった。

 
「俺の彼女に何か?」
二人組の後ろから声が掛かった。
二人組は声を掛けてきた男を見て値踏みする…
「ま、また今度な♪」
二人組はすごすごと退散した。
「遅れてすまなかった。大丈夫か?」
「は、はい…」
ほっとして、彼の腕に肩を抱かれている事にも気付かなかった。
自分が本当にか弱い女の子なんだと錯覚していたのかも知れない。
僕は彼の胸に顔を埋める事で安らぎを覚えていた。

 

彼は約束通り、美味しい料理をご馳走してくれた。
彼と一緒だと、僕が直接声を出す必要がないので、安心して過ごす事ができた。
僕が独りになるのはトイレに入る時くらいだ。最初は彼についてもらって男子トイレに入ろうとしたが「お前はそっちだろ♪」と女子トイレに追いやられてしまった。

 
カラオケに誘われ、専ら女の子の歌ばかり歌った。
女言葉が自然と出てくるような気がする。彼とデュエットもした。
彼のとなりで肩を抱かれ、彼にリードされながらあたしも歌う。
キレイにハモると気分がイイ♪
お酒も入って、あたしは夢心地に浸り続けた。

 

 
いつの間にか場所が変わっていた。
エレベータから降りると、大きなベッドが置かれた部屋だった。
上着を脱いだ彼があたしを抱き締める。唇が塞がれ、彼の舌があたしの口の中を蹂躙する。
密着してくる彼の腰に不自然な塊があった。
このシチュエーションって、あたしの貞操の危機?
でも、彼にならあげても良いかも…

彼の手であたしの服が脱がされてゆく。
あたしはそれに抵抗することなんて考えられなかった。
「可愛いよ♪」
下着姿のあたしは彼に抱えられてベッドの上にいた。
彼も素早く脱いでいた。その股間にはペニスが屹立している。
グロテスクだけど、どこか愛しい。
あたしは口紅のついた唇で、それを咥え込んでいた。

 
「あん、あん♪」
淫らな女の声が部屋の中を満たしてゆく。
これはあたしの媚声…彼に貫かれる度に吐き出される。
もう、何度イかされただろう…あたしのナカは彼のザーメンに見たされている。
ああ…再び快感の頂に昇り詰めてゆく…
あたしのナカで彼が弾けると同時に、あたしは嬌声とともに意識を失っていた…
 

 

 

目覚めると、そこは僕の部屋だった。
どうやってここまで辿りついたか、一切記憶がない。
しかし「彼」に抱かれた…という記憶はしっかりと残っている。そして、その証しなのだろう。僕のお腹の中には、彼の精液がまだ残っているような気がした…

 

時計を見る。
今日は月曜。講義がある。起き上がり、顔を洗った。
顔には昨日の化粧の跡が残っていた。

(何か、素面で外には出たくないなぁ…)

僕は化粧水で肌を整えると、している事を気付かれないくらいの薄いメイクをしてみた。

(下着も見えないんだから良いよね♪)

あたしはショーツに穿き代え、ショーツとお揃いのブラを着けてみた。

(スカート穿きたいけど、まだ止めとく?)

 

 

 
あたしがしっかりとメイクし、スカートを穿いて大学に行くようになるまで、そんなに時間はかからなかった。

彼からは何の連絡もない。
もう写真をバラ撒かれてもどうってことないものね♪
だけど、彼とはもう一度SEXしてみたいって思うのは、微妙な乙女心かしら?

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