« 秘湯(4/4) | トップページ | 秘湯(2/4) »

2014年1月28日 (火)

秘湯(3/4)

白湯に体を浸した。
(いつもよりぬるい?)
それに、一向に肉体の変化は訪れなかった。
「ダメなの。」
俺のではない女の声がした。
谷で会った女だった。
「先日の地震で水脈が変化したの。その温泉の効能は失われてしまったわ。」
「き、君は一体…」
「貴女は宿の番頭さんを覚えているかしら?彼がもう一つのあたしの姿よ♪」
俺は二の句が継げなかった。
「元々のあたしは狐…妖かしの類でした…」
女の話は荒唐無稽であったが、俺自身の身に降り掛かってきた事を思えば、いきおい現実味を帯びてくる。
妖狐がこの秘湯を見つけた事から話が始まった。
常々「人間になりたい」と思っていた妖狐は、秘湯の効能で人間に…若い娘の姿になれた。
一夜限りの変身ではあったが、再び秘湯に浸かれば人間になれると解った。
人間の女に成れると、今度は人間の男に抱かれてみたくなった。
が、ここから人里に出向くには危険が多すぎた。
里人は「外」の人間を警戒する。一夜明ければ狐に戻ってしまうのだ。そんな短期間に彼等の警戒心を取り除く事は不可能だった。

 
そんな時に一人の旅人が秘湯に近付いてきました。
あたしは急いで秘湯に浸かり人間になると、その旅人の男を誘いました。
案の定、人間としてのSEXは言い様もなく素晴らしいものでした。
快感に気が緩んでいたのか、あたしは秘湯の事などをペラペラと男に喋っていました。

あたしの話を聞いた、男は秘湯の効能を確認したいと言い出しました。
翌日、狐に戻ったあたしに秘湯まで案内させました。
そして、あたしを人間にして効能を確認した上で、自ら若返りを体験しました。
「精力が段違いだ♪」
男は若い肉体であたしを貫きました。昨日より激しく貫かれ、あたしはヨガリまくっていました。
翌日、元の姿に戻った彼は再び秘湯で若返りました。
そして、こんな事を言いました。
「今の俺と同じ姿になれるか?」
あたしは彼の言う通りの姿となります。
それを見た彼は、再び秘湯に浸かります。
出てきた彼は、人間の姿になった「あたし」になっていました。
「お前があまりにも気持ち良さそうだったんでな♪」
前日とは逆に、あたしが彼=彼女を貫くのです。
彼女は歓喜にヨガリ狂っていました。

そして翌日、あなたも経験した事態が起こったのです。
あたしは一度浸かっただけだったので、翌日には狐に戻ってましたが、彼は女のまま…
彼が再び秘湯に浸かると若い男の姿には戻るのですが、湯から出てしばらくすると女の姿に戻ってしまうのです。
一週間程様子を見てみましたが、どうにもならなかったようでした。

彼=彼女は打ちひしがれたまま去って行きました。
そして、あたしはこの秘湯に関わることを止めた…

 

が、その半年後に彼=若い姿をした=が戻ってきました。
何人か手下のような男逹を連れ、秘湯脇に小屋を建てました。
そこで一年近く寝泊まりしながら秘湯の性質を確かめたようです。
その試行錯誤の結果、一日に二度入った時にこのようになる事が解ったのです。

その後、彼は秘湯から少し離れた場所に温泉宿を建てました。
彼には金と影響力があるようで、宿を建てたばかりか、ここに至る道までも整備してしました。

端で見ていたあたしに彼が声を掛けてきました。
この宿で働かないかと。そうすれば、彼と一緒の時間が持てる…なにより、夜を供にできるよ♪と…
しかし、その為には秘湯で妖狐の姿を捨てなければなりません。
あたしは悩みましたが、彼と生きる道を選びました。

しかし、秘湯の効能は「姿を変える」ものでしかありませんでした。
いくら姿が「若い」ままでも寿命は無慈悲に訪れてきます。
元々妖狐のあたしには寿命など関係ありませんが、人間である彼が死の際に立った時、自分が妖狐である事を呪いました。

彼の死後も、彼との繋がりのあるこの宿を閉めずに続けてきました。
最初は彼が連れてきた男逹に経営を任せていましたが、彼等にも寿命はあります。
そこで、あたしは番頭さんの姿を使い、自らこの宿を続けていくことにしました。

 
が、それも先日の地震までの事。
効能の無くなった秘湯、湯のない温泉…もう、宿を営む必要もありません。
宿を閉め、道を塞ぎ、この場所で静かに自らが朽ち果ててゆくのを待つことにしました。

« 秘湯(4/4) | トップページ | 秘湯(2/4) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 秘湯(3/4):

« 秘湯(4/4) | トップページ | 秘湯(2/4) »

無料ブログはココログ