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2014年1月28日 (火)

海底人

海には未来があった。

幼い頃に読んだ本には今頃は海底に都市が造られ、イルカやクジラばかりでなく、様々な魚逹との会話もできていた。
が、現実は昔とそう変わってはいない。
確かに海中で作業する機械が数多く造られていた。しかし、海底都市は「夢」からも失われてしまったかに思える。
その事情は宇宙開発と同じであった。が、打ち上げ花火の如く、一つ一つの成果が注目される宇宙開発とは異なり、海洋開発は地味でなかなか注目されるものでもない。
否。注目がないからこそ、【極秘裏】に各国が研究開発に注力するに好都合であった。

海面からは覗き得ぬ深海では、人々の知らぬ間に様々な研究施設が立ち並んでいた。
地上との連絡は船や潜水艦などではなく、海底下に敷設されたリニアモーター軌条のチューブで耐圧カプセルを高速で往き来させている。
勿論、地上側の施設はごく普通の研究施設を装っているが、内部のセキュリティは厳重で、連絡カプセルで往き来を許されている人間は、ほんの一握りであった。

 

俺が地上から海底に連れて来られてから、ほぼ三ヶ月が経っていた。
二度と地上に戻れないことも了承している。
俺は彼等の人体実験の被験者として志願したのだ。
何の実験かと言えば、この施設の特異性から即に解ると思う。

そう。彼等は海底人を造ろうとしているのだ。

水中でも呼吸でき、強大な水圧に耐え、更にその水圧の変化にも対応できる肉体を持った人間である。
これまではロボット技術を応用したサイボーグ化を目指していたらしいが、そこに限界を感じたのか、別のアプローチをする事になったらしい。
俺は毎日、注射を打たれては身体測定を受けるという日々が続いていた。

身体測定の時間以外は、与えられた部屋で残りの一日を過ごした。
部屋はかなり広かったが、調度は食事をするテーブルとベッドだけであった。部屋の2/3を占めるのは温水プールであった。
水温は適度な暖かさがあり、一日中浸かっていても問題なかった。海底人を造ると言う目的を考えれば、当然の設備であろう。
俺も、食事と寝る時以外は湯船の中で過ごすようにしていた。
勿論、ここでは「服」の支給などない。身体測定はここに来る前から全裸で行われていたので、全裸を気にするような他人の目はない。
始めのうちは流石に食事の時はタオルを腰に巻いていたが、全裸で過ごすようになった。
 
長い間水の中に居たので、結構脚の力が衰えていった。
身体検査に向かう途中で何度か支えてもらう事があった。その後は、行き帰りは車イスを使うようになった。
ベッドには這うようにして上がるようになっている。まるでトドかアシカのようだ。
トイレも立ってする事が辛いので、小をするのも座ってしていた。

変化があったのは「脚」ばかりではなかった。
人工の光の下で暮らしていた所為か、肌が生白くなっていた。体毛も髪の毛を残して無くなってしまっていた。
「眉毛が無くて鏡を見るのが辛いなら、自分で書き込んでみないか?」
と女の化粧道具が差し入れられた。その中の黒のペンで眉毛を描くのだろう。
鏡を見ながら描いてみた。

鏡の中に俺が映っている。体毛は抜け落ちたのに、髪の毛は予想外に伸びていた。
髪の質も変わったようで、黒さ・艶やかさが増しているようだ。

それは、単なる出来心だった。

化粧道具の中には口紅もあった。
俺は無意識にキャップを外し、底を捻り、自分の唇に塗っていた。
鏡の中にいたのは「女」だった。
「…これが、俺?」
背中まで伸びた髪に囲まれた顔は「女」みたい…いや、「女みたい」ではない。男性性の欠片もない、本物の女がそこにいた。
俺は慌てて化粧を落としていた。

 

(自分が女みたいだ…)
そんな思いが生まれると、様々な事が気になりだした。
…この白い肌は女みたいだ。
…胸が思春期の少女くらいには膨らんでいないか?
…ペニスが縮んでいるんじゃないか?前回、マス掻きしたのは何時だ?

俺は慌ててペニスを掴んだ。が、
(弄っても勃起しない?!)
小学生並みに縮んだペニスは擦っても反応がない。
そして、その奥の袋も縮んでいて、もう「袋」とも呼べない。
(袋の中の存在も失われている?!)
更に、袋だったあたりの中央に裂け目があった。
それは、その奥に続く「穴」であった。
それは、便を排出するものとは別物であった。
それは、まるで女の「膣」のよう…

そこに差し込んだ指先にどろりとしたものが絡まった。
指を目の前にかざすと、赤い雫が落ちていった…

 

 

「生理だね。水の中ならどういう事もないが、気になるのならばタンポンを支給してあげるよ。」
彼等は涼しげに言った。
「な、何で俺の体が女になってるんだ?」
と聞いたが、
「最近、水の外にいるのが辛くないかね?勿論、脚が弱っているのは知っている。体が乾いていると、息苦しさを感じたりしないかい?」
と問い返された。
確かに、髪の毛が乾いている時などにそう感じていた。最近、寝ている時に髪の毛の先端を水に浸けていると気分が安らぐのを発見した事もある。
「このような肉体の変化がある事は当初から想定していた。が、実際に君の胎内に子宮の存在を確認した時には、我々も言葉を失ったくらいだ。」
「つまり、かなり前から俺の体が女になってゆくのを黙って見ていたということか?」
「我々としては想定内の変化にしか過ぎないからね。君は着実に海底人…人魚に近づいていっている。」
「人魚?」
「ジュゴンなどの海獣ではないぞ。ヒトの容姿をもった本物の人魚だ。」
「人魚は不死と言われている。その超大な生命力が水中での活動を可能にしていると考えられた。」
「その人魚の血を与えられた人間は人魚と同じ生命力を手にできる可能性があった。すなわち被験者は人魚と同じように、海底での自由な行動が可能となると考えられたのだ。」
「人魚の血…」
「だが、人魚の血は被験者に生命力を与えるだけでなく、その存在を人魚に…我々の捕らえた人魚と同じ姿に変えてしまう力を持っていた。」
「我々の捕らえた人魚は牝であった。ゆえに、君もまた女性となったのだ。」
「まだ変化は続いてゆく。そう、君は人魚になるのだ。君の脚は魚状の下半身に変わってゆくだろう♪」
俺は「女」になってしまった事実でさえ受け入れがたい状態であった。
更に「人魚」にまで変化してゆくなど…俺の頭は爆発してしまいそうだった。
俺は考える事を放棄していた…

 
いつの間にか、俺は部屋に戻され、水の上に浮かんでいた。
…いや、水ではない。これは海水だ。
最初は適度な暖かさを持ったお湯であったが、俺の人魚化が進むのに合わせて温度が下げられ、塩分が追加されていったのだろう。
俺は全く気付く事なく、お湯のつもりでこのプールに浸かっていたのだ。

 
長い髪の毛が水中に広がる。俺は髪の毛を通して水中から酸素を吸い込んでいたのだ。
水中呼吸が可能になったことで、肺の機能が低下しているのだろう。髪の毛が乾くと途端に息苦しくなるのはその所為だったようだ。
試しに水中に潜ってみた。息苦しさはない。肺で呼吸しなくても体内への酸素の供給が滞ることはないようだ。
俺はいつまでももプールの底に身を沈めている事ができた。

(しかし、何で「女」なんだろうか?)

自問しても答えが出てくる訳でもない。
「女になるのは厭なの?」
どこからか女の声が聞こえた。
俺は水面に顔を上げ、あたりを見回したが部屋には誰もいない。
(そうだ。声は水中を伝わって届いたようだ)
俺は再び水中に身を沈め「声」に耳を澄ませた。
(だ、誰だ?)
「ようやく聞こえるようになったのね?」
再び女の声がした。
「私が貴女に血を分けた囚われの人魚よ。貴女の血の半分はもう私と同じ。貴女はもう私の娘も同然ね。私の事はママって呼んでくれると嬉しいわ。」
(な、何がママだよ。俺は人間だ。人魚の親なんかいらない。)
「そうムキにならないでね♪でも、貴女はもう人魚なのよ。人魚として知っておくべき事はいろいろあるの。私にはそれを貴女に教える義務があるのよ。」
(お、俺は人魚なんかにはなりたくはない。それに、女だなんて…)
「でも、貴女は彼等と契約した。そして、今の貴女が人魚であること。女であることは動かしようのない現実なのでしょ?」

 

更に数ヵ月が過ぎた。
俺の肉体は完全な成人女性=それも、かなりプロポーションの良い=になっていた。
男逹の舐めるような視線を煩わしくも感じる。
俺の肉体の変化は止まっていた。彼等は俺の下半身が魚状に変化するのを期待していたようだが…
下半身の形状変化についてはママから聞いていた。自分の脚を使わずにいると変化が始まるらしい。
それを聞いて、俺は努めて脚を使うようにした。今では検査の行き帰りに使っていた車イスも不要になった。
脚と同じように、肺呼吸も衰えないように努力した。
何故か…
このまま人魚の形態に進んでしまうと、それはもう「人間」ではない。
俺が目指したのは「海底人」なのだ。「女」になってしまったのは想定外だが、俺は人間の形態を保つ事を固持した。

注射と身体測定の日々は終わり、海中での作業能力試験に入っていった。
最初は施設内のプールを使ってであったが、試験が進むと施設の外に出る機会が増えてきた。
施設の外に出る際に、俺はこの施設に来て初めて服の支給を受けた。
ダイバーズスーツではあるが、久しぶりの「服」には違和感があった。
「その体になってからは初めてでしょ?皮膚とかの感じ方が大分変わっている筈よ。」
とママのアドバイスがあった。
(違うね。これが「女物」の服だからだろう?)
これから先、俺が着ることのできる服は「女」の服しかないのだろう…

 

次第に行動半径が広がってゆく。
やがて、俺は「海面」に顔を出した。
肺呼吸に切り替える。

本当に久し振りに俺は「外の空気」を吸った。
廻りに島影などない海洋の真ん中である。空を仰いでも鳥の姿もない。
ただ、青い空と白い雲であったが、俺は「外」の世界を久し振りに堪能した。

 

海底と海面の気圧差に、この体が容易に順応する事が判ると、試験はもっぱら施設近辺の海底での作業となり、海面にでてゆく機会がなくなってしまった。
一度、空を見てしまった事で、俺の中に里心が芽生えてしまったようだ。
このまま、一生を暗い海底か人工の光の中で暮らさなければならない事に疑問が浮かんでいた。
「逃げ出すの?」
その想いをママに隠すことはできなかった。
(逃げても、その先が続かないよ。お金も何も持っていないんだよ。)
「お金?女なら身体を売るって手もあるらしいわよ♪」
(身体を売る…って、男に抱かれるって事か?)
「単に抱かれるだけじゃないわね。脚を開いて女陰にオトコを咥え込むのよ。」
俺は改めて股間にある女性器の存在を感じた。
「でも、それだけではないわ。抱かれるためには綺麗に着飾り、オトコを勃たせるための行為を行う必要があるわ。」
(オトコを…って、アレを口に咥えたりするってことか?)
「そこまでしなくても良いかも知れないけど…それができれば何とかなるんじゃない?」
男に抱かれる…女として男とSEXする…俺の股間に…
俺は想像する事さえ拒否したかった。
「少しはお化粧してみたら?地上の女性はお化粧しないで他人前に出ることを忌みしているのでしょう?」
確かに化粧ひとつで抱きたくなる女とそうでない女の違いがでる事は経験がある。
(その「抱かれる女」が俺自身というのに難があるのだが…)

 
「お前、化粧してるのか?」
食事を運んできた男は、普段は何も言わずに食事を置いてはさっさと行ってしまうのだが、今日はチラチラと俺を見ながらテーブルの上に料理を並べてくれた。
「ありがと♪」
と微笑んでやると、男は一瞬硬直し、そして腰を引いた姿勢のまま部屋を出ていった。
(俺を見て勃起した?)
俺は複雑な気持ちだった。

食事を終えた後、水の中に入りリラックスする。
先程の男の反応を思い出した。俺を見てチンポを勃てるなどとは「男」としては屈辱ではあったが、俺の化粧の出来映えの評価としては十分なものだろう。
彼のズボンの下で硬くなっていたモノが、いつの日か俺の股間に突き立てられるのだ。
ズボンの下にあったモノの長さ、太さ、硬さを想像していた。

ズン!!

俺の下腹部の奥で何かが反応した。
それが俺の腹の中にある女性器であることは容易に想像がついた。
子宮や膣が熱を帯びていた。
うずうずと疼きが沸き起こる。
それらが「男」を求めているのだ。
俺は疼きを抑えようと内股を締め付けたが、疼きは治まる気配をみせない。
「指で弄ってあげなさいな♪」
ママのアドバイスが届く。
俺は少しづつ股間を広げ、その奥に指を差し込んでみた。
一本ではもの足りない。
二本差し込んで膣内を擦りあげた。
「んあんっ♪」
女の艶声が俺の口から洩れていった。
(これが女の快感なのか?)
指を入れただけでこの感覚である。本物のペニスを突き入れられたらどんな風になってしまうんだろう?
何度か指を動かしていると、快感を生み出すポイントが見つかった。
そこを中心に激しさを増してゆく。
「んあん!!ああああ~ん♪」
俺は初めてオンナとしてイッてしまった…

 

 

 

俺はベッドの上で股を広げていた。
満足した男逹が残していった金で生活に困る事はなかった。
地上に戻った俺は「女」として身体を売る事でしか生きる事ができない事を実感した。
が、その事に対する嫌悪感は存在しなかった。
俺は男に抱かれる事で得られる悦感の虜になってしまっていた。

「時」は過ぎていった。
海は今も昔のままだった。
「海底人」の計画がどうなったのかは、俺が知るところではない。
もしかしたら、彼等が作り出した「人魚」逹が密かに海底で活躍しているかも知れない。

人気のない海岸で、俺は服を脱いだ。
昔と変わらない瑞々しい女体が露となる。
俺はそのまま、波の間に身を沈めた…

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