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2014年1月28日 (火)

12時を過ぎたら…

時計の針は、あと少しで12時を指そうとしていた。
(魔法が解けてしまう!!)
俺は王子様の手を振り解き、慌てて舞踏会の会場を後にした。

 

母や姉逹が着飾ってはいそいそと出掛けてゆく「舞踏会」とはどんなものなのか?
俺は好奇心を抑えきれず、隣の叔母さんに訊ねてみた。

「へぇ~、舞踏会に興味があるんだ。百聞は一見にしかず。お前さんも行ってみないか?」
「お、俺が?可能なのか?」
「まあ、ちょっと魔法で変装してもらうことになるけどね♪」
隣の叔母さんは魔法使いだった。
俺が同意すると、叔母さんが魔法の呪文を唱えた。
すると、俺の体が煙に包まれる…
腹の周りが締め付けられる。
髪の毛が引っ張られ、頭の上にまとめられる。
かかとが持ち上がり、足元が涼しくなる。

煙が晴れると、俺は姉逹が着ていたような「ドレス」に身を包まれていた。
「服に合うように、顔や体も少し弄ってあるから、夜中の12時までには戻って来なさいね。そうしないと大変な事になるからね。」
そう言って、魔法で呼び出した車で俺を舞踏会の会場に送り出してくれた。

 

舞踏会はドレスで着飾った女逹で溢れていた。
俺は何喰わぬ顔で、彼女逹の中に埋もれていた。
クラシカルな楽器がワルツを奏でている。
フロアの中央では数人の若い男が曲毎にパートナーを変えて踊っている。
女逹は彼らに誘ってもらおうと、必死にアピールしている。
中でも人気があるのが「ナイト」と「王子様」と呼ばれる二人だった。
そのうちの一人、王子様が俺に近づいて来た♪
「シャルウィ、ダンス?」
優しげな声とともに、俺に向かって手が伸ばされた。
「えっ?あ、はい♪」
俺は彼の差し出した掌に自分の手を乗せ、フロアに歩み出ていた。

ダンスなんか踊った事なんかないのに…
あたしは王子様にリードされて華麗なステップを踏んでいた。
曲が変わっても、王子様はパートナーを変えず、更にあたしとの距離を詰めてきた。
抱き締められ、ピタリと体が密着している。
太ももに彼のおち○ち○を感じる。そして、それはどんどん硬くなっていった♪
「姫♪君が気に入ったよ。一緒に外に出ないか?」
彼が耳元で囁く。
あたしは…

 
何で一人称が「あたし」になってるんだ!?
俺は我に返っていた。
そして、その目の端に時計が映った。
(えっ?もう12時!?)
時計の針は、あと少しで12時を指そうとしていた。
(魔法が解けてしまう!!)
俺は王子様の手を振り解き、慌てて舞踏会の会場を後にした。

が、慣れないハイヒールに足を取られバランスを崩す。
倒れ込んだ先は王子様の腕の中だった。
「大丈夫。怖いことはない。優しくしてあげるからね♪」
彼の声とともに、時計の針は12時を指し、時報を告げていた。

 

俺は王子様に抱かれたまま、舞踏会の会場脇の小部屋に連れ込まれた。
そこには大きなベッドが据えられていた。
「僕に身を任せていれば良い。姫を快感の渦で溺れさせてあげるから♪」
手際よくドレスが脱がされていた。
「さあ、横になって♪」
下着も外され、ストッキングだけを身にまとうだけになっていた。

俺の思考回路は完全に凍結してしまっていた。
何が起きようとしているかを把握はしていたが、それを自分の身に起こる事だとは理解できていなかった。

俺の上に全裸となった王子様が伸し掛かってきた。
熱い接吻に全身が熔けてゆく。
俺の肉体は快感に敏感になっていた。

王子様の指が触れる。
それだけで「ああ♪」と快感の吐息を漏らしてしまう。
全身が性感帯になってしまったかのようだ。
早くも股間からは愛液が滴り始めていた。

(!?)

今になって、俺は俺の肉体が完璧に女のそれになっている事に気がついた。
ドレスの胸元を美しく見せるためだけに胸が膨らんでいただけではなかった。
乳房と呼べる胸の膨らみの先端には「乳首」が存在しており、快感に硬く尖らせている。

下腹部を美しく見せるために、股間の邪魔者が消えただけではなく、そこには深い溝が穿たれていた。
細く括れたウエストの奥では、体内器官も大きく変貌していた。
俺の肉体は「男」を受け入れる事を前提とした完全な「女」の肉体に変容していた。

男の愛撫に素直に感じて股間を濡らしてしまう。
男が愛撫したくなる魅惑的な容姿。
男を寄せ集めるフェロモンもたっぷり振り撒いていたのだろう。
このような状態に導いたのは「俺」であり、彼には何の非もないのだ…

 

「いくよ♪」
王子様の手が俺の脚を広げ、腰を割り込ませてくる。
王子様のモノが俺のナカに入ってくる。
俺は快感に支配されてしまう。
「んあん。いいわぁ♪キテ♪もっと激しくぅ~!!」
俺は牝獣と化して、王子様からの快感と精液を貪っていった…

 

 

 

夜が明け、王子様がいなくなると、魔法が解けていた。
母や姉逹にコキ使われる毎日に戻っていた。
昼過ぎに隣の叔母さんとであった。
「どうだった、舞踏会は?」
俺は彼女にどう話したら良いか迷った。
そして、迷った末に俺はこう言った。

「まだ良くわからなかったので、次の舞踏会にも行かせてもらえませんか?」

海底人

海には未来があった。

幼い頃に読んだ本には今頃は海底に都市が造られ、イルカやクジラばかりでなく、様々な魚逹との会話もできていた。
が、現実は昔とそう変わってはいない。
確かに海中で作業する機械が数多く造られていた。しかし、海底都市は「夢」からも失われてしまったかに思える。
その事情は宇宙開発と同じであった。が、打ち上げ花火の如く、一つ一つの成果が注目される宇宙開発とは異なり、海洋開発は地味でなかなか注目されるものでもない。
否。注目がないからこそ、【極秘裏】に各国が研究開発に注力するに好都合であった。

海面からは覗き得ぬ深海では、人々の知らぬ間に様々な研究施設が立ち並んでいた。
地上との連絡は船や潜水艦などではなく、海底下に敷設されたリニアモーター軌条のチューブで耐圧カプセルを高速で往き来させている。
勿論、地上側の施設はごく普通の研究施設を装っているが、内部のセキュリティは厳重で、連絡カプセルで往き来を許されている人間は、ほんの一握りであった。

 

俺が地上から海底に連れて来られてから、ほぼ三ヶ月が経っていた。
二度と地上に戻れないことも了承している。
俺は彼等の人体実験の被験者として志願したのだ。
何の実験かと言えば、この施設の特異性から即に解ると思う。

そう。彼等は海底人を造ろうとしているのだ。

水中でも呼吸でき、強大な水圧に耐え、更にその水圧の変化にも対応できる肉体を持った人間である。
これまではロボット技術を応用したサイボーグ化を目指していたらしいが、そこに限界を感じたのか、別のアプローチをする事になったらしい。
俺は毎日、注射を打たれては身体測定を受けるという日々が続いていた。

身体測定の時間以外は、与えられた部屋で残りの一日を過ごした。
部屋はかなり広かったが、調度は食事をするテーブルとベッドだけであった。部屋の2/3を占めるのは温水プールであった。
水温は適度な暖かさがあり、一日中浸かっていても問題なかった。海底人を造ると言う目的を考えれば、当然の設備であろう。
俺も、食事と寝る時以外は湯船の中で過ごすようにしていた。
勿論、ここでは「服」の支給などない。身体測定はここに来る前から全裸で行われていたので、全裸を気にするような他人の目はない。
始めのうちは流石に食事の時はタオルを腰に巻いていたが、全裸で過ごすようになった。
 
長い間水の中に居たので、結構脚の力が衰えていった。
身体検査に向かう途中で何度か支えてもらう事があった。その後は、行き帰りは車イスを使うようになった。
ベッドには這うようにして上がるようになっている。まるでトドかアシカのようだ。
トイレも立ってする事が辛いので、小をするのも座ってしていた。

変化があったのは「脚」ばかりではなかった。
人工の光の下で暮らしていた所為か、肌が生白くなっていた。体毛も髪の毛を残して無くなってしまっていた。
「眉毛が無くて鏡を見るのが辛いなら、自分で書き込んでみないか?」
と女の化粧道具が差し入れられた。その中の黒のペンで眉毛を描くのだろう。
鏡を見ながら描いてみた。

鏡の中に俺が映っている。体毛は抜け落ちたのに、髪の毛は予想外に伸びていた。
髪の質も変わったようで、黒さ・艶やかさが増しているようだ。

それは、単なる出来心だった。

化粧道具の中には口紅もあった。
俺は無意識にキャップを外し、底を捻り、自分の唇に塗っていた。
鏡の中にいたのは「女」だった。
「…これが、俺?」
背中まで伸びた髪に囲まれた顔は「女」みたい…いや、「女みたい」ではない。男性性の欠片もない、本物の女がそこにいた。
俺は慌てて化粧を落としていた。

 

(自分が女みたいだ…)
そんな思いが生まれると、様々な事が気になりだした。
…この白い肌は女みたいだ。
…胸が思春期の少女くらいには膨らんでいないか?
…ペニスが縮んでいるんじゃないか?前回、マス掻きしたのは何時だ?

俺は慌ててペニスを掴んだ。が、
(弄っても勃起しない?!)
小学生並みに縮んだペニスは擦っても反応がない。
そして、その奥の袋も縮んでいて、もう「袋」とも呼べない。
(袋の中の存在も失われている?!)
更に、袋だったあたりの中央に裂け目があった。
それは、その奥に続く「穴」であった。
それは、便を排出するものとは別物であった。
それは、まるで女の「膣」のよう…

そこに差し込んだ指先にどろりとしたものが絡まった。
指を目の前にかざすと、赤い雫が落ちていった…

 

 

「生理だね。水の中ならどういう事もないが、気になるのならばタンポンを支給してあげるよ。」
彼等は涼しげに言った。
「な、何で俺の体が女になってるんだ?」
と聞いたが、
「最近、水の外にいるのが辛くないかね?勿論、脚が弱っているのは知っている。体が乾いていると、息苦しさを感じたりしないかい?」
と問い返された。
確かに、髪の毛が乾いている時などにそう感じていた。最近、寝ている時に髪の毛の先端を水に浸けていると気分が安らぐのを発見した事もある。
「このような肉体の変化がある事は当初から想定していた。が、実際に君の胎内に子宮の存在を確認した時には、我々も言葉を失ったくらいだ。」
「つまり、かなり前から俺の体が女になってゆくのを黙って見ていたということか?」
「我々としては想定内の変化にしか過ぎないからね。君は着実に海底人…人魚に近づいていっている。」
「人魚?」
「ジュゴンなどの海獣ではないぞ。ヒトの容姿をもった本物の人魚だ。」
「人魚は不死と言われている。その超大な生命力が水中での活動を可能にしていると考えられた。」
「その人魚の血を与えられた人間は人魚と同じ生命力を手にできる可能性があった。すなわち被験者は人魚と同じように、海底での自由な行動が可能となると考えられたのだ。」
「人魚の血…」
「だが、人魚の血は被験者に生命力を与えるだけでなく、その存在を人魚に…我々の捕らえた人魚と同じ姿に変えてしまう力を持っていた。」
「我々の捕らえた人魚は牝であった。ゆえに、君もまた女性となったのだ。」
「まだ変化は続いてゆく。そう、君は人魚になるのだ。君の脚は魚状の下半身に変わってゆくだろう♪」
俺は「女」になってしまった事実でさえ受け入れがたい状態であった。
更に「人魚」にまで変化してゆくなど…俺の頭は爆発してしまいそうだった。
俺は考える事を放棄していた…

 
いつの間にか、俺は部屋に戻され、水の上に浮かんでいた。
…いや、水ではない。これは海水だ。
最初は適度な暖かさを持ったお湯であったが、俺の人魚化が進むのに合わせて温度が下げられ、塩分が追加されていったのだろう。
俺は全く気付く事なく、お湯のつもりでこのプールに浸かっていたのだ。

 
長い髪の毛が水中に広がる。俺は髪の毛を通して水中から酸素を吸い込んでいたのだ。
水中呼吸が可能になったことで、肺の機能が低下しているのだろう。髪の毛が乾くと途端に息苦しくなるのはその所為だったようだ。
試しに水中に潜ってみた。息苦しさはない。肺で呼吸しなくても体内への酸素の供給が滞ることはないようだ。
俺はいつまでももプールの底に身を沈めている事ができた。

(しかし、何で「女」なんだろうか?)

自問しても答えが出てくる訳でもない。
「女になるのは厭なの?」
どこからか女の声が聞こえた。
俺は水面に顔を上げ、あたりを見回したが部屋には誰もいない。
(そうだ。声は水中を伝わって届いたようだ)
俺は再び水中に身を沈め「声」に耳を澄ませた。
(だ、誰だ?)
「ようやく聞こえるようになったのね?」
再び女の声がした。
「私が貴女に血を分けた囚われの人魚よ。貴女の血の半分はもう私と同じ。貴女はもう私の娘も同然ね。私の事はママって呼んでくれると嬉しいわ。」
(な、何がママだよ。俺は人間だ。人魚の親なんかいらない。)
「そうムキにならないでね♪でも、貴女はもう人魚なのよ。人魚として知っておくべき事はいろいろあるの。私にはそれを貴女に教える義務があるのよ。」
(お、俺は人魚なんかにはなりたくはない。それに、女だなんて…)
「でも、貴女は彼等と契約した。そして、今の貴女が人魚であること。女であることは動かしようのない現実なのでしょ?」

 

更に数ヵ月が過ぎた。
俺の肉体は完全な成人女性=それも、かなりプロポーションの良い=になっていた。
男逹の舐めるような視線を煩わしくも感じる。
俺の肉体の変化は止まっていた。彼等は俺の下半身が魚状に変化するのを期待していたようだが…
下半身の形状変化についてはママから聞いていた。自分の脚を使わずにいると変化が始まるらしい。
それを聞いて、俺は努めて脚を使うようにした。今では検査の行き帰りに使っていた車イスも不要になった。
脚と同じように、肺呼吸も衰えないように努力した。
何故か…
このまま人魚の形態に進んでしまうと、それはもう「人間」ではない。
俺が目指したのは「海底人」なのだ。「女」になってしまったのは想定外だが、俺は人間の形態を保つ事を固持した。

注射と身体測定の日々は終わり、海中での作業能力試験に入っていった。
最初は施設内のプールを使ってであったが、試験が進むと施設の外に出る機会が増えてきた。
施設の外に出る際に、俺はこの施設に来て初めて服の支給を受けた。
ダイバーズスーツではあるが、久しぶりの「服」には違和感があった。
「その体になってからは初めてでしょ?皮膚とかの感じ方が大分変わっている筈よ。」
とママのアドバイスがあった。
(違うね。これが「女物」の服だからだろう?)
これから先、俺が着ることのできる服は「女」の服しかないのだろう…

 

次第に行動半径が広がってゆく。
やがて、俺は「海面」に顔を出した。
肺呼吸に切り替える。

本当に久し振りに俺は「外の空気」を吸った。
廻りに島影などない海洋の真ん中である。空を仰いでも鳥の姿もない。
ただ、青い空と白い雲であったが、俺は「外」の世界を久し振りに堪能した。

 

海底と海面の気圧差に、この体が容易に順応する事が判ると、試験はもっぱら施設近辺の海底での作業となり、海面にでてゆく機会がなくなってしまった。
一度、空を見てしまった事で、俺の中に里心が芽生えてしまったようだ。
このまま、一生を暗い海底か人工の光の中で暮らさなければならない事に疑問が浮かんでいた。
「逃げ出すの?」
その想いをママに隠すことはできなかった。
(逃げても、その先が続かないよ。お金も何も持っていないんだよ。)
「お金?女なら身体を売るって手もあるらしいわよ♪」
(身体を売る…って、男に抱かれるって事か?)
「単に抱かれるだけじゃないわね。脚を開いて女陰にオトコを咥え込むのよ。」
俺は改めて股間にある女性器の存在を感じた。
「でも、それだけではないわ。抱かれるためには綺麗に着飾り、オトコを勃たせるための行為を行う必要があるわ。」
(オトコを…って、アレを口に咥えたりするってことか?)
「そこまでしなくても良いかも知れないけど…それができれば何とかなるんじゃない?」
男に抱かれる…女として男とSEXする…俺の股間に…
俺は想像する事さえ拒否したかった。
「少しはお化粧してみたら?地上の女性はお化粧しないで他人前に出ることを忌みしているのでしょう?」
確かに化粧ひとつで抱きたくなる女とそうでない女の違いがでる事は経験がある。
(その「抱かれる女」が俺自身というのに難があるのだが…)

 
「お前、化粧してるのか?」
食事を運んできた男は、普段は何も言わずに食事を置いてはさっさと行ってしまうのだが、今日はチラチラと俺を見ながらテーブルの上に料理を並べてくれた。
「ありがと♪」
と微笑んでやると、男は一瞬硬直し、そして腰を引いた姿勢のまま部屋を出ていった。
(俺を見て勃起した?)
俺は複雑な気持ちだった。

食事を終えた後、水の中に入りリラックスする。
先程の男の反応を思い出した。俺を見てチンポを勃てるなどとは「男」としては屈辱ではあったが、俺の化粧の出来映えの評価としては十分なものだろう。
彼のズボンの下で硬くなっていたモノが、いつの日か俺の股間に突き立てられるのだ。
ズボンの下にあったモノの長さ、太さ、硬さを想像していた。

ズン!!

俺の下腹部の奥で何かが反応した。
それが俺の腹の中にある女性器であることは容易に想像がついた。
子宮や膣が熱を帯びていた。
うずうずと疼きが沸き起こる。
それらが「男」を求めているのだ。
俺は疼きを抑えようと内股を締め付けたが、疼きは治まる気配をみせない。
「指で弄ってあげなさいな♪」
ママのアドバイスが届く。
俺は少しづつ股間を広げ、その奥に指を差し込んでみた。
一本ではもの足りない。
二本差し込んで膣内を擦りあげた。
「んあんっ♪」
女の艶声が俺の口から洩れていった。
(これが女の快感なのか?)
指を入れただけでこの感覚である。本物のペニスを突き入れられたらどんな風になってしまうんだろう?
何度か指を動かしていると、快感を生み出すポイントが見つかった。
そこを中心に激しさを増してゆく。
「んあん!!ああああ~ん♪」
俺は初めてオンナとしてイッてしまった…

 

 

 

俺はベッドの上で股を広げていた。
満足した男逹が残していった金で生活に困る事はなかった。
地上に戻った俺は「女」として身体を売る事でしか生きる事ができない事を実感した。
が、その事に対する嫌悪感は存在しなかった。
俺は男に抱かれる事で得られる悦感の虜になってしまっていた。

「時」は過ぎていった。
海は今も昔のままだった。
「海底人」の計画がどうなったのかは、俺が知るところではない。
もしかしたら、彼等が作り出した「人魚」逹が密かに海底で活躍しているかも知れない。

人気のない海岸で、俺は服を脱いだ。
昔と変わらない瑞々しい女体が露となる。
俺はそのまま、波の間に身を沈めた…

CMに乗せられ…

【靴】

この靴を履いて歩けば、シェイプアップ効果でモデルさんのような体型になれます。

って、確かに腹はへこんで体重も半減したよ。
でも、何で俺が女の体になってるんだよ♪

 

【レギンス】

引き締め効果で血行も良くなるようだ。
黒くて厚い生地は脛毛の存在も気にならない。
裏起毛で確かに暖かいから、ズボンを穿かなくても寒くないね♪

って、何で俺はスカートを穿こうとしてるんだ?

 

【ブラ】

ブラブラさせているのも気になっていた。
ガードルを穿けばピタリと押さえ込めるね♪

って、何で俺は女性の下着売り場にいるんだ?
…このブラ似合うかな?
「試着して良いですか?」

 

【メイク】

ここまで来たなら、しっかりとメイクまでして「女」に成りきってやろうじゃないか♪

って、そこのお兄さん意外とイケメンね。暇ならアタシとデートしない?
勿論、メイクラブもOKよ♪

僕の兄貴

僕の兄貴は燃える男だ。
「気合いだ~!!」
と正拳突きを連発する。

僕の兄貴は萌える男だ。
「気合いだ~♪」
とオタ芸に磨きを掛ける。

僕の兄貴は萌えられる男の娘だ。
「キアイって?」
とネイルに磨きを掛けている。

僕も気合いを入れて胸のサラシを締め上げる。
僕が女の子だって事はまだまだバレていないよ♪

秘湯(1/4)

バイクのエンジン音が霧の中に消えてゆく。
視界…ほぼ0m!!
体が覚えているコース情報だけで車体をコントロールしてゆく。

この霧の中、対向車がいる筈もないとたかをくくっていた訳ではない。
耳を研ぎ澄ませ、自のエンジン音以外の音を聞き分けていた。
石の跳ねる音
道路脇の谷に流れる風の音
谷の下に流れる川の水音さえ把握できていたのだ。

その先にトンネルがあった。
カーブを曲がる。
入り口にある赤ランプが灯っていた。
急ブレーキにタイヤが軋む。
トンネルの入り口は封鎖されていた。
入り口の脇に旧道が細く続いていた。
体勢を直して旧道に乗り入れる。
砂利が浮き、ブレーキにタイヤがロックしないよう、慎重に減速する。
勿論、俺のコース情報は旧道になど対応していない。
目で見てコースを確認するしかない…が、この霧である。

なるべく道路の中央に持って来る。
速度は歩いているのと大差はなかった。
左右に茂る叢に、道幅は更に狭まっていった。

 

登り坂があった。
かなりの急勾配である。
が、登りきった時、霧も晴れ、眼前に峠の絶景が広がっていた。

そこには狭いが駐車スペースがあり、展望者のための手摺と、休憩者のためのベンチが置かれていた。
尤も、これらはトンネルができる前、この道が幹線道路として使用されていた時代に置かれたもので、かなりくたびれた状態にはなっていた。
(ヒトは一服の絶景より、利便性を優先させるものなのか?)
などと達観したような台詞が、ついつい浮かんでしまう。

 
ヘルメットのシールドを下ろし、俺は先に進んでいった。

トンネルと橋を抜ければ、1分も掛からない場所である。
が、旧道は地形に沿って、大きく迂回してゆく。更に上下の移動もあるため、10分近く掛かってしまうだろう…

 

そんな目論見も、即に潰える事になった。
新道とは比べ物にならないが、そこには谷を渡る小さな橋があったと思われる。
道は崖っぷちで唐突に終わり、対岸には道の続きが連なっていた。
が、そこに在る筈の「橋」は存在しなかった…

が、よく見ると脇に獣道のようなものがあった。
崖の下に続いているようだ。
対岸の崖にも同じような「道」がある。
地元の人が通っているのだろうか?
(四輪では狭いが、二輪であれば通れるかも知れない♪)
狭い隘路を降って行き、浅い川を強引に渡っていった。

 
多分、下に着いた頃からだろう。再び霧が湧いてきていた。
対岸には辿り着いたものの、崖の上は既に霧の中にあった。
(この状況で隘路を昇ってゆくのは危険だ)
と判断し、隘路の入り口の脇にバイクを止め、エンジンを切りその脇に腰を下ろした。

静寂が訪れる。
人工的な音は消え、水音だけが強調される。
俺も、自然と息を潜めてしまう…

 

コォーーーーン…
コォーーーーン…
と遠くに聞こえていた獣の声が、所々に近付いて来る。

霧は深まり、何も見えなくなっていた…

 

 
「もし?」
と声を掛けられた。
女の声だった。

何時の間にか、俺の前に着物姿の女性が立っていた。
「どちらに行かれますか?」
「あ、ああ…」
俺は立ち上がった。
「この先の温泉に行こうとしたんだが、幹線道路のトンネルは封鎖されてるわ、旧道の橋はなくなってるわで、仕方なくここに降りてきたんだ。」
俺は崖の上を指し、
「ここを上って旧道に出ようとしたんだが、この霧でね。」
どうにもならない♪と俺は手を広げて見せた。
「その温泉。今はもう無くなっています。ここで引き返してもらえませんか?」
「無いって、どういう事だ?何れにしろ、この目で確認しておきたいな。」
「立ち入りが禁止されています。」
「理由は?何で貴女がそれを言う?役場なり警察なりそれなりの人に言われるんでなく。」
「そ、それは…とにかく、この先は危険なのです。」
「危険かどうかは俺が判断する。行ける所までは行ってみるつもりだ。」
「…そ、それは…」
「ああ、どうやら霧も晴れてきたようだしな♪」
「っえ?」
と彼女が振り返る。
谷の景色がうっすらと浮かびあがりつつあった。
「は、早く戻ってくださいね。」
そう言い残し、彼女は霧の中に消えていった…

 

 

バイクのエンジンを再起動し、俺は隘路を上り対岸の旧道に戻ってきた。
しばらく走ると幹線道路に戻ってきた。
霧は晴れており、俺の脳内ナビに頼らずとも、一本道を快適に飛ばして行けた。

目的の温泉の案内アーチを通過する。
山奥の一軒宿でしかない秘湯と言われるような温泉に全く不釣り合いな案内物である。
不釣り合いと言えば、この幹線道路もである。この先には目的の温泉宿があるだけで他には何もない。
それこそ民家ひとつもないのだ。
手前の集落から、ただこの温泉宿だけに作られているのだ。
だからと言って、その温泉が観光名所かと言えば、そうでもない。
日本の名湯百選なんかに選ばれた事もないのだ。
幾度となく訪れているが、宿の駐車場に車が溢れている事など見たことがない。
客が俺一人と言う事もあった事がある。

 
幹線道路が塞がれていたので、当然の事か駐車場には一台も止まっていない。
いつもの場所にバイクを置き、宿に向かった。

入り口の扉が閉まっていた。ただ閉めただけでなく、鍵を掛け「休業中」の貼り紙がしてあった。
裏手に廻ってみる。
人の気配は感じられない。
裏木戸から更に奥に続く道がある。
俺が目当てにしていた源泉がこの先にある。
石畳の小路を歩いてゆく。
道は途中で別れ、その源泉に向かう方には石畳はない。
崖際に小屋があり、いつもはここで脱いで、全裸で小屋の脇の洞窟に入ってゆくのだ。
小屋は記憶通りに存在したが、ここの扉も錠が掛けられていた。
俺は服を着たまま、洞窟に入った。
その奥には、俺の記憶通りに白湯を湛えた温泉が存在した。

俺は服を脱いだ。
変わり果てた俺の肉体が晒される。
この湯に浸かりさえすれば、半年程度ではあるが、俺は元の姿を取り戻せるのだ…

秘湯(2/4)

それは数年前に遡る。
「あなたの望みを叶えます。白湯に浸かって心身ともにリフレッシュしてみませんか?」
そんな文句が書かれたチラシが俺の手元に舞い込んでいた。
仕事、人間関係…様々な面から打ちのめされていたときだった。
決定打は、学生時代から付き合っていた彼女から「別れる」と言い渡されたのだ。

その日は金曜日。月曜は祝日で3連休となっていた。
俺はバイクに跨がると、夜の闇の中を突き進んでいた。

真新しい道路が、その温泉地にまで繋がっていた。
駐車場には数台の車が止まっていた。
まだ昼前であった。
辺りには観光案内の看板もない。
目に見える建物は温泉宿の一軒のみ…
(つまり、ここは本当に温泉に浸かるためだけに在るのか?)
俺はチラシを手に宿の入り口を潜った。
「すみません。突然ですみませんが、今夜宿泊できますか?」
俺はそこにいた、従業員と思われる着物を着た中年女性に声を掛けてみた。
「あ、お泊まりですね。少々お待ちください。」
彼女は番頭さ~ん♪と担当者を呼びに行った。
「ようこそいらっしゃいませ。」
と奥から出てきた老人は俺の手元を見た。
「そのチラシが届いたのですね。ならば、離れのお部屋が良いでしょう。こちらへどうぞ。」
と渡り廊下を伝って、一番端の部屋に俺を連れてきた。
「普通の温泉は母屋の脇になりますが、この先の裏木戸から出て暫く行った所に癒しの秘湯があります。後程私がご案内に伺いますので、浴衣に着替えてお寛ぎください。」

部屋は落ち着いた感じ…を通り越し、かなりくたびれた感じがしていた。
(秘湯かぁ…)
好奇心に駆られ、俺は番頭さんの案内を待たずに、下駄を履いて裏木戸から出て行った。
石畳の道が続いていたが、途中に脇道があった。
石畳はないが、秘湯の雰囲気が漂っていた。

その先に小屋があり、脱衣所になっていた。
(男湯・女湯の区別がないようだが、客の数を考えると、他に浸かりに来る訳ないな。)
と、早速裸になり、手拭い一枚を持って湯のありそうな方に向かっていった。
そして、洞窟の中の白湯を湛えた泉を発見した。
手桶も用意されている事から、これが目的の秘湯に違いないと確信した。

どんな効能があるかを聞き損ねたが、湯に浸かっているだけでリラックスできた。
抱えていた難問が、今なら解けそうな気がする。
ゆったりとした気分が、他人の些細な一言も気に止める必要などなかったんだと気付かせてくれた。
そして、別れた彼女の事…
女にしてみれば、仕事仕事でほとんど構ってくれない男から興味が失われていくのは当然だったのだろう。
一緒にいても、頭の中の半分以上は仕事の事を考えていたのではないのか?
彼女の目からは、どのように俺が写っていたのだろうか?
彼女は俺にどうして欲しかったのだろう…

湯船に浸かり、瞼を閉じていると、瞼の裏に男の姿が映っていた。
男は「俺」だった。
俺は彼女の視点で「俺」を見ていた。
「俺」が俺だけを見ていた。
ドキリと胸の鼓動が高まる。
俺はこんな風に彼女を見てあげていただろうか?
「愛してるよ♪」
その一言だけで頭の中が幸福感に満たされる。
彼が俺を抱き締める。
見上げるとそこに彼の顔がある。
俺がゆっくりと瞼を閉じると、唇が吸われた…

彼の手が俺の胸を揉みあげる。
今の俺は彼に抱かれる「女」であった。
膨らんだ胸の先では乳首が硬く尖っていた。
揉み上げる彼の手の指が乳首を摘まむ。
「ぁあん♪」
俺は快感に甘声をあげていた。
下腹部が熱くなる。
今の俺は「女」なのだから、その肉体には子宮も膣もある。
キュン♪と子宮が震えていた。
熱くなった膣からは愛液が溢れ、股間を濡らす…
彼の手の片方が股間に伸びてゆく。
「ああんっ!!」
割れ目に這わされた彼の指が敏感なクリに触れていた。
ぬっ…と彼の指が膣に入る。
そして…指だけで俺はイかされていた…

 

 
気が付くと、俺は白湯に浸かっていただけだった。
時計をもってきていなかったので、どれくらいの時間が経過していたか計ることはできなかったが、のぼせる程長くはなかったと思う。
(時間は十分にあるんだ♪)
俺は湯から上がり、脱衣所で着てきた服を着て、元の部屋に戻っていった。

部屋に戻ると布団が敷いてあった。
俺は服を着たまま潜り込んでいた。
そのまま、しばらくウトウトしていた。
番頭さんが来て、
「ご案内はどうしましょうか?」
と聞いてきたのに、
「今日は疲れたから、明日にしてくれ。」
と布団の中から答えていた。

秘湯の中での幻想を思い出す…
俺は「女」になって、「俺」を…男を受け入れていた。
「女」の快感に「男に抱かれている」という不快感も消し飛んでしまっていた。

彼の手を思い出し、胸に手をやる。
シャツのボタンを外し、下着をたくしあげて…
「んあ…ん♪」
俺が胸を揉みあげると、艶かしいオンナの吐息が聞こえた…

(な、何だ?!)

その異常事態に気が付くまで、しばらく時間が掛かった。
(何がどうなっているんだ?)
俺はズボンのベルトを外していた。
パンツの中に手を入れ…
「ああんっ!!」
再びオンナの淫声がする。
と同時に、俺の股間に発生した強烈な快感に打ちのめされていた。
(俺の体が女になっている?)

俺は布団を剥ぎ、半分脱いでいた服を全て取り去った。
そこに現れたのは紛れもない全裸の女体だった。

 
原因はあの「秘湯」である事は明白だった。
(望みが叶う?)
チラシの謳い文句が頭を過る…俺は彼女が俺をどう見ていたか知りたいと思った。
それは事実だが、俺は女になりたい訳ではないっ!!
(どうすれば元に戻る?)
あの秘湯は「望みを叶えてくれる」のではなかったか?

俺は浴衣を纏い…女の着方など知る筈もない…腰で帯を締め、下駄を履き、裏木戸を出た。

 

 

 
「それでは秘湯にご案内しましょう。」
番頭さんの後に付いて昨日2往復した路を歩いていった。
「何ぶん秘湯ですので、効能についての個人差にはかなり差があります。単にリフレッシュされるだけの方から、体質にもよりますが、大きな肉体的変化を伴う事もあります。」
俺はドキリとして足が止まった。
「そのような秘湯ですので、くれぐれも一日に一回に止めて下さい。」
その言葉に俺は青ざめていたのだろう。
「どうされました?」
と番頭さん…
「もし、一日に2回入ってしまった場合、どうなるのですか?」
その言葉に番頭さんの顔も青ざめる…
「昨夜、入ったのですか?」
そう聞く番頭さんに、俺は肯定の首を振った。

 

 
「ああっ…」
番頭さんが絶句していた。
その湯に浸かった途端、俺の肉体は女体へと変化していた。

 
「肉体の変化を起こすような人が、この湯に2度入ると、肉体の変化前の情報が上書きされてしまい、元の姿に戻れなくなってしまいます。」
番頭さんが説明をしてくれた。

通常、肉体の変化は一晩で元に戻るのだが、二度目の変化は半年近く維持されてしまう。更に、戻るのは最初に変化した時の姿であり、決して元の姿に戻る事はないのだそうだ。
俺の場合は二度目に変化した姿が本来の俺の姿であったので、少しややこしくなる。
幸いにも俺は元の姿に戻れた…と喜んでいたのだが、これは仮の姿でしかないのだ。
半年が過ぎると、俺は女の姿に「戻って」しまうのだ。
女の姿でもう一度この湯に浸かれば、また半年は元の「俺」に戻れるというのだ。

番頭さんの計らいで、俺はいつでも無料で宿に泊まれることになった。
俺は翌日、もう一度秘湯に入り「俺」の姿を取り戻してから宿を後にした。

 

秘湯(3/4)

白湯に体を浸した。
(いつもよりぬるい?)
それに、一向に肉体の変化は訪れなかった。
「ダメなの。」
俺のではない女の声がした。
谷で会った女だった。
「先日の地震で水脈が変化したの。その温泉の効能は失われてしまったわ。」
「き、君は一体…」
「貴女は宿の番頭さんを覚えているかしら?彼がもう一つのあたしの姿よ♪」
俺は二の句が継げなかった。
「元々のあたしは狐…妖かしの類でした…」
女の話は荒唐無稽であったが、俺自身の身に降り掛かってきた事を思えば、いきおい現実味を帯びてくる。
妖狐がこの秘湯を見つけた事から話が始まった。
常々「人間になりたい」と思っていた妖狐は、秘湯の効能で人間に…若い娘の姿になれた。
一夜限りの変身ではあったが、再び秘湯に浸かれば人間になれると解った。
人間の女に成れると、今度は人間の男に抱かれてみたくなった。
が、ここから人里に出向くには危険が多すぎた。
里人は「外」の人間を警戒する。一夜明ければ狐に戻ってしまうのだ。そんな短期間に彼等の警戒心を取り除く事は不可能だった。

 
そんな時に一人の旅人が秘湯に近付いてきました。
あたしは急いで秘湯に浸かり人間になると、その旅人の男を誘いました。
案の定、人間としてのSEXは言い様もなく素晴らしいものでした。
快感に気が緩んでいたのか、あたしは秘湯の事などをペラペラと男に喋っていました。

あたしの話を聞いた、男は秘湯の効能を確認したいと言い出しました。
翌日、狐に戻ったあたしに秘湯まで案内させました。
そして、あたしを人間にして効能を確認した上で、自ら若返りを体験しました。
「精力が段違いだ♪」
男は若い肉体であたしを貫きました。昨日より激しく貫かれ、あたしはヨガリまくっていました。
翌日、元の姿に戻った彼は再び秘湯で若返りました。
そして、こんな事を言いました。
「今の俺と同じ姿になれるか?」
あたしは彼の言う通りの姿となります。
それを見た彼は、再び秘湯に浸かります。
出てきた彼は、人間の姿になった「あたし」になっていました。
「お前があまりにも気持ち良さそうだったんでな♪」
前日とは逆に、あたしが彼=彼女を貫くのです。
彼女は歓喜にヨガリ狂っていました。

そして翌日、あなたも経験した事態が起こったのです。
あたしは一度浸かっただけだったので、翌日には狐に戻ってましたが、彼は女のまま…
彼が再び秘湯に浸かると若い男の姿には戻るのですが、湯から出てしばらくすると女の姿に戻ってしまうのです。
一週間程様子を見てみましたが、どうにもならなかったようでした。

彼=彼女は打ちひしがれたまま去って行きました。
そして、あたしはこの秘湯に関わることを止めた…

 

が、その半年後に彼=若い姿をした=が戻ってきました。
何人か手下のような男逹を連れ、秘湯脇に小屋を建てました。
そこで一年近く寝泊まりしながら秘湯の性質を確かめたようです。
その試行錯誤の結果、一日に二度入った時にこのようになる事が解ったのです。

その後、彼は秘湯から少し離れた場所に温泉宿を建てました。
彼には金と影響力があるようで、宿を建てたばかりか、ここに至る道までも整備してしました。

端で見ていたあたしに彼が声を掛けてきました。
この宿で働かないかと。そうすれば、彼と一緒の時間が持てる…なにより、夜を供にできるよ♪と…
しかし、その為には秘湯で妖狐の姿を捨てなければなりません。
あたしは悩みましたが、彼と生きる道を選びました。

しかし、秘湯の効能は「姿を変える」ものでしかありませんでした。
いくら姿が「若い」ままでも寿命は無慈悲に訪れてきます。
元々妖狐のあたしには寿命など関係ありませんが、人間である彼が死の際に立った時、自分が妖狐である事を呪いました。

彼の死後も、彼との繋がりのあるこの宿を閉めずに続けてきました。
最初は彼が連れてきた男逹に経営を任せていましたが、彼等にも寿命はあります。
そこで、あたしは番頭さんの姿を使い、自らこの宿を続けていくことにしました。

 
が、それも先日の地震までの事。
効能の無くなった秘湯、湯のない温泉…もう、宿を営む必要もありません。
宿を閉め、道を塞ぎ、この場所で静かに自らが朽ち果ててゆくのを待つことにしました。

秘湯(4/4)

彼女の話は終わった。
だが、俺はこの先どうすれば良いのだろうか?
平均寿命を考え、それまでこの先ずっと若い女の姿でいなければならないのか?
「人間の女性は、若く美しい姿のままでいられるなら、お金をいとまないと聞いたことがありますよ。」
「俺は女じゃない!!」
「見た目は立派に女性ですよ。もしかして、まだ女性として経験したコトが無いんじゃないですか?」
「経験?…」
「離れの部屋にはまだ布団が残っています。女同士ですが、あたしでよければ♪」

 

 


俺は「ハジメテ」を経験してしまった。
男に戻れないという事は、俺はいつでもこの快感を得ることができるということなのだ。
「気を付けないとハマってしまいそうだ。」
「ハマっても構わないんじゃないですか?貴女はもう女性なのですから♪」
「俺は…」
俺は、何と答えたら良いかわからなくなっていた。
「明日になれば世界は変わって見えますよ♪」
と彼女の手が俺の体に触れる。
「んあん♪」
快感に俺は女のように喘いでいた。
そして、彼女の手技で幾度となくイかされ…
俺は甘美な快感の中で意識を失っていた。

 

 
宿は離れを残し、跡形もなく消え失せていた。
雑草の生い茂る原っぱに、ポツリと俺のバイクが残されていた。
エンジンを掛ける。
まだ活きている。
排気音が俺を現実世界に引き戻してゆくようだ。

振り向くと、離れもまた消え失せ、雑草の生い茂る野に還っていた。

俺はクラッチを繋ぎ、バイクを走らせた。

 

いくつかのトンネルを過ぎて振り返ると、後ろは皆、霧に包まれていた…


(了)

2014年1月 1日 (水)

初夢

 
正月早々、コタツに寝転がってテレビを見ていた。
寒い中、初詣の人達が長い列を作っている。
「何で今日に集中して行くのかね?神様のご利益なんて、いつ行っても変わらないんじゃないか?いや、集中する分一人当たりのご利益が減っていたりして♪」

 
などと罰当たりな事を呟いていた俺の前に「神様」が現れた。
刺身の舟盛りに使うような舟状の物に乗っている。小さいながらも、七人いるからこれが七福神なのだろう。
女の人が弁天様で釣り竿を担いでいるのが恵比寿様。以下は名前と顔が一致しない。お爺さん逹は名前さえ忘れていた。

「こんな奴、放っておけば良いじゃろが!!」
と老人の一人が顔を真っ赤にして騒いでいた。
「まあ、良いではないか。年の瀬を西洋の神様に席巻されてしまったんじゃ。我々も何かアピールしておくべきだろ?」
と太った神様。
「わしらは人数で勝負できるが、この後お花祭りまで保たせられるかが問題じゃな。」
とは鎧を着た神様。毘沙門様だったっけ?
「まあまあ、やることやって早々においとましようではありませんか?」
と俵に座った神様。水戸黄門かい?
「ぶ、無礼なッ!このお方をどなたと心得る!!」
と毘沙門様が刀に手を掛ける。
「大黒さんの言う通り、さっさと済ませておいとましまへんか?」
と女性の声がその場を納める。
「さて…」
と俺に注目する
「この絵馬に望みを書いて枕の下に入れて寝てみなさい。きっと願いが叶いますえ♪」
弁天様の声が途切れると同時に舟と七福神逹は消え、彼等のいた場所に一枚の絵馬が残されていた。
「絵馬に願い事ねぇ…今更合格祈願もないし、家内安全も願いが叶ったかの確認が難しいよね。」

俺は手近にあったボールペンで…
〈嫁さんがホシイ〉
と書いてみた。

 
急に眠気が…

 

 
音楽が流れていた。
神事の時の雅楽というやつだ。
俺は上座に座り、左右に正装の人々が並ぶ。俺の側に並んでいるのは、両親を始めとする親戚一同だった。
巫女さんがやってきた。杯を持つように促される。

この状況は結婚式か?

いわゆる三三九度で杯に注がれたお神酒を飲んだ。
頭の上に重たい物が乗っているし、慣れない着物なんで動き辛い。
それでも、俺の「嫁さん」になる人を見ようと隣を見た。

(?)

何でそこに「俺」が居る?
隣にいるのは白無垢に包まれた「嫁さん」だと思っていたのだが…
和服に身を包んでいる男が隣にいるだけで異常な事には違いない。が、更にその男の顔はよく見慣れた「俺」の顔である。

自分と同じ顔の人間が出て来るのは、小説で読んだ事がある。ホラーなんかでは自分の死の予兆だとか言われる事がある。
が、新年早々縁起でもない!!

勿論、そこに鏡があって俺自身を写している…なんてオチではない。
そいつは、俺の意思ではなく勝手に動いていた。

鏡…そう、鏡があれば今の俺の状態を見る事ができる♪
…が、ある程度は想像は付く…
上座に座っているのは奴と俺だけだ。
そして、どう見てもコレは神式の結婚式である。
俺は自分の着ている着物が白地である事を改めて確認した…

 

(夢だ!!これは絵馬を枕にして眠っている俺が見ている夢でしかない筈だ)
俺は即にでも夢から抜け出せる方法がないか考えた。
拘束具のような白無垢では大きな動作が難しい。そこで、重ねられた手に注目した。
手袋のようなものはしていない。
爪は綺麗にカットされ、磨きあげられていた。
その爪で、もう片方の手の甲をつねる。

「痛ぃ…」

声が漏れ、皆の視線が集まった。
「どうした?」
と小声で聞いてくる。
「これって、夢じゃないの?」
「そんなの夢に決まってるじゃないか♪」
その言葉と共に、俺の意識がスーッと消えていった…

 

 
扉の向こうでウェディングマーチが流れている。
目の前の扉が開くと結婚披露宴の会場だった。
俺は真っ赤なドレスを着ているようだ。
白いタキシードの「俺」に腕を引かれて歩き出す。
拍手の中、テーブルの蝋燭に火を移して回る。
「俺」の関係者は当然俺も知っているが、新婦側の関係者は知らない顔ばかりだ。
そんな彼等が、親しげに声を掛けてくる。愛想笑いを浮かべてやり過ごすしかなかった。

 
雛壇脇の大きな蝋燭に火を移すと、仕掛けが動き出し、ハートの形を浮き上がらせる。
拍手と歓声が沸き起こる…
「これも夢なのか?」
「そうに決まっているだろう♪」
誰にも聞こえない声で会話を交わす。
歓声の中、奴は俺を抱き締めた。
奴の顔が近づく…
歓声が一際高なる。
奴の唇が俺の唇を塞ぐ。
俺は、再び気が遠くなっていた。

 

「気がついたか?」
奴が声を掛けてきた。
俺はベッドに寝かされていた。
結婚式、披露宴と体を締め付ける服を着続けていたので、何も着ていないとこんなにもリラックスできるものか…と考えていた。

奴は風呂から出たばかりのようで、バスタオルを腰に巻いただけの姿だった。
その時、俺は自分の立場を思い出した。俺は「花嫁」で、昼間に結婚式をあげたばかりだ。
多分、ここはホテルの寝室であろう。
話の流れからすれば、新婚さんの初めての「夜」である。
都合良く、新婦である俺は全裸でベッドに寝ている。
そこに、風呂から上がった旦那様がいる…

奴の腰に巻いたバスタオルの前が大きく膨らんでいないか?

「今日は一日お疲れ様でした。でも、これで俺逹は晴て夫婦となれたんだね♪」
と、ベッドの端に腰掛ける。
「こ、これも夢だろ?」
「怖いのかい?大丈夫。優しくシてあげるよ♪」
「ゆ、夢なら…」
「それはまだだよ。僕逹は夫婦になったんだから♪」
と俺の隣に横になった。
素肌が触れ合う。
ぞぞっと悪寒のようなものが背筋を走ってゆく。
「そんなに硬くならないで♪」
彼の掌がゆったりと乳房を揉みあげた。
乳首がつねられる。
「んぁん♪」
俺の口からオンナの喘ぎ声が零れる。
「そうだ。快感に素直になれば良い♪」
耳元で囁かれる。
肉体が快感を訴えてくる。
彼の指が俺の裸体の上を這いまわり、快感を与え続ける。
その快感に堪え切れずに、喘ぎ声を漏らす。
「あん、ああん♪」
「良い媚声だ♪こちらも準備ができたかな?」
彼の指が股間に向かう。
いつの間にか、そこは俺の愛液に濡れていた。
「脚を開いて♪」
俺の肉体は彼の指示に素直に従う。
開かれた股間に彼の腰が割り込んでくる。
「いくね♪」
彼のペニスの先端が。俺の股間に触れ
…そして、俺のナカに侵入してきた。

そこは「膣」だった。
俺の股間に膣があり、彼を受け入れていた。
彼が腰を動かすと、膣の中を彼のペニスが往き来するのが判る。
そして、それはえも言えぬ快感を伴っていた…

「いくぞ!!」
と彼が言い、むっといきむ。
俺の膣の奥に何かが打ち付けられた。
「あ、あああっ…」
俺は快感に意識を失っていた。

 

女は男と結婚し妻となる。
妻はその身に夫の子を宿す。
子を産み、女は母となる。
女は…

 

俺の膣の奥に打ち込まれたのは、彼の精液である。
膣の奥には子宮があり、正常な女性であれば、そこに卵子を持ち、やってきた精子と結ばれる時を待っている。
受精した卵子は子宮の中で人間として育ってゆく。
そして、臨月を迎える…

 

このままであれば、俺は子供を産むことになるのか?!
いや!!これは「夢」なのだ。
夢から醒めれば、俺は元の俺に戻れるのだ。

「そうかな?」
彼の皮肉そうな顔が俺を覗き込んでいた。
「これが夢である事は認めよう。だが、正夢でないことは保証できないよ♪」

 

彼の言葉が終わると同時に、俺は覚醒した。
そこは「俺」の部屋のベッドの上だった。
俺はたっぷりと寝汗をかいていた。シーツも枕もぐっしょりと濡れていた。

(枕っ!!)

枕の下から絵馬を取り出す。
汚い字が更に読み難くなっていた。
辛うじて読み取ると…
〈嫁こ がホ゛ク〉
…だから、ボクがお嫁さんになった夢を見たのかな?
何か納得してしまったような気になってしまう。

 
プルプルと目覚ましが鳴っていた。
いつもの休日なら、まだ寝ている時間だけど、今日はそうも言っていられない。
もうすぐ初詣に迎えに彼が来てしまう。
いつもは男の子みたいな服しか着てないけど、正月くらいはおめかししようと決めていたのだ♪
もし、あれが正夢なら、プロポーズだってあり得るかも♪

 

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