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2013年12月24日 (火)

クリスマスの夜

雪が降っていた。
まだチェーンをする程ではないが、このまま降り続ければ、明日の朝は交通マヒになっているかも知れない。
サンタのように空を飛ぶソリにでも乗っていれば、地上の渋滞は関係ないだろうが、サンタのように防寒具に身を包まなければならないのも面倒である。

 

などと妄想を膨らませていられるのも、クリスマスイブを独りで過ごす童貞男の特権なのだろうか?

ホワイトクリスマスだと言ってムードが先行する女に、寒い街中を引きずり回されるより、暖かな部屋でネットサーフィンに興じている方が、どんなに幸せだろう?
と、強がりを言ってみた所で、彼女が居ない事実は変えようもない。
女の子に声を掛けられずに二十数年…PC越しであれば、少しは…とは言うが、相手が本物の女の子であるとは限らない。
結局、彼女がいないまま、またひとつ年を越すことになるのだ。

 

〈そんな寂しいコト言ってないで、声を掛けてみれば良いのに♪〉
画面に現れたのはミカからのメッセージだった。
彼女?がネカマと言われる存在である事は、かなり早い段階で知らされていた。
「お前に言われてもなぁ…リアルの女性なら少しは信じられるんだけどな♪」
〈言ってくれるわねプンプン!!ネットの中のあたしはリアル女なのよ(`_´メ)〉
「ネットの中ならって…そこが問題なんだってorz」
〈じゃあ、あたしとイブを過ごさない?〉
「このままネット越しと言うのもなぁ…やはり、彼女の温もりを感じてたいな♪」
〈だから、外で会わない?もう夜だし、コートを着れば体型も誤魔化せると思うの♪〉
「女装なんてするのか?」
〈ネットの中のあたしは本物の女の子なんだから、今もスカート穿いてお化粧だってしてるのよ♪〉
「本格的なんだなァw(゜o゜)w」
〈じゃあ一時間後に駅前で♪〉
それだけ言って彼女は落ちていった。

 

 
「あのぉ~ミカさんですか?」
一時間後、俺は雪の中待ち合わせ場所に居たそれらしい女性に声を掛けた。
彼女は縦に首を振ると、一枚のカードを俺に見せた。
〈声を出すと「男」ってバレちゃうからね♪〉
「わかりました。で、どこかに移動しましょうか?」
〈カラオケBOXが良いわ。防音になってるからあたしの声を他の人に聞かれる事がないの♪〉
「了解。じゃあ行きましょうか♪」

こんな俺逹でも、童貞男逹が羨むような「カップル」に見えるだろうか?…などと考えながら、繁華街に向かって行った。

 

 
「改めまして。ミカです。」
彼女?の声はやはり「男」だった。
「カラオケっていうのがイマイチだけど、イブの夜を女の子と過ごせて幸せでしょ?」
っとか…男声でなければ何とか我慢できるんですが…

カラオケなんで、一応は歌を歌う。
ミカは好んで女性シンガーの曲を選ぶが、男の声では興醒めする。
が、他人の事を言える義理でもない。
俺は音痴で、普通の曲でさえ、まともに歌えないのだ。故に、マイクはミカが握りっぱなしになる。

「これなら歌えるんじゃない?」
とポピュラーなデュエット曲が流れ始めた。
何を間違えたか、ミカが男性パートを歌い始めた。
「はいっ♪」
と振られたのは女性パートだった。
慌てた俺はメロディーに合わせて歌い出していた。
そしてサビの部分。
綺麗にハモッていた…

(って、俺…女声出していた?)

「凄い!!キレイな声じゃない。音痴だって思ってたのは、キーが合わなかっただけなのよ♪」
「キーが合わなかった…って、そういう問題じゃないだろ?」
「じゃあ、試しにコレ歌ってみて。勿論、女の子声でね♪」
ミカは俺に一歩も退かせない勢いだった。
前奏が終わった。

(…)

あっと言う間に歌いきってしまった。
何か、いつもより歌い易い?
「次コレね♪」
ミカのレパートリーだった曲が続いた…

「もうちょっと雰囲気盛り上げない?」
とミカがレンタル衣装を注文した。
店員は俺がミカに着せるものと勘違いしているに違いない。
アイドル風のステージ衣装を着て、ミカのカツラを被され、お化粧までされてしまった。
「ミカちゃん可愛いよ♪」
小さなステージに立ち、マイクに歌声を乗せる…

 

「ほら♪」
と見せられた写真には可愛い女の子が写っていた。
俺が歌っている間に、何度もフラッシュが焚かれていた…
つまり、この女の子が俺自身って事になる。
「羨ましいね。可愛い声が出せて♪これなら誰も男だなんて思わないよ。」
と、俺の前に居たのは「ミカ」だった男…化粧を落とすと、それなりのイケ面。俺が女の子なら即に恋してしまいそうだ♪って…
「お、おい!!何で俺の服を着てるんだよ?」
「ミカちゃん♪女の子が〈俺〉だなんておかしいよ。〈あたし〉って言うか、せいぜい〈ボク〉じゃないと♪」
「ミ、ミカはお前じゃないか?俺は男だ!!」
「残念だが、俺も男なんだよ。この店に入ったのは男女のカップルだ。出る時に男同士だと変に思われるだろ?」
「それは、お前がミカに戻れば良いだけの話しじゃないか!!早くその服を返せっ!!!!」
と、その時内線電話が鳴った。
「はい。延長はなしで。今彼女に着替えさせてますから。」
と奴が勝手に答えていた。
「と、言うことだ。さっさと着替えてくれないか?」
とミカの服を寄越した。
時間が迫っている事を盾に、俺が着替えるのを急かす。
仕方なくミカの服を着て部屋を出た。
奴が「俺」の財布から金を出して会計を済ませていた。
「お、おい!!それは俺の金だろう?」
「ミカちゃん。声、声。気を付けないと変に思われるよ♪」
「だ、だから…」
仕方なく、俺は声のトーンを上げた。
そして、
「全部あたしの財布から出したの?」
と慣れない女言葉を口にした。
「いやぁ、御免ごめん。ここは割勘だったね。じゃあ、ミカちゃんのバックを開けてくれないか?」
とわざとらしく俺が肩に掛けていたバックから女物の財布を取り出した。
「これで良いね♪でも、この先は僕に払わせてよね。」
とミカの財布に入っていたクレジットカードを抜き取り、ちらつかせた。

 

外はまだ雪が降っていた。
ブーツは暖かいが、厚手のタイツを穿いていても太股あたりはかなり寒い。
「どこに行くんだ?」
「先ずは食事だな。その後は俺の部屋にでも来るかい?」
「お前の部屋に行ったって男同士じゃ虚しいだけだろ?」
「俺にしてみれば、彼女の温もりを感じながらイブを過ごす事になって嬉しいんだけどな♪」
「良い加減、俺を帰らさせてくれないか?これ以上お前に付き合ってはいられないよ。」
とは言っても、服を元に戻してもらわないと帰るに帰れない。

奴も手詰まりのような顔をした。そして…
「なら仕方ないか…サンタにもらったこのカードを使うしかないか♪」
「なによコレ?」
あたしは渡されたカードを見た。
「〈一日彼女券〉?!」
「そう。これを受け取った人は今日一日、俺の彼女になってもらえるんだ♪」
「バカじゃないの?いつあたしがあんたの彼女じゃなくなったって言うの?」
なんかチョット違和感があったけど、あたしはカードをバッグに入れ、彼の腕に身を絡めた。
「先ずは食事に行くんでしょ?それよりも、もっと早くクリスマスプレゼントが欲しいの?」
「プレゼント?そんなのいつ買ったんだい?」
「買った訳じゃないわよ。今年のプレゼントは…あ・た・し♪」

 

 

恋人と過ごす夜は暖かい。
それがクリスマスのイブならなおさら♪
外でどんなに雪が降り積もっていても、あたし逹には関係ナイ…

あたし逹はクリスマスのプレゼントに心行くまで悦しんでいった♪

 

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