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2013年11月30日 (土)

※逹の声

「いくら何でも、それは無いでしょう?」
(既に、お手元に商品は届いており、返品可能期間も過ぎております。武藤様との売買契約は成立しております。)
電話の向こうからは涼しげな声が流れてくる。
部屋の中を見れば、買った覚えのない女性用の衣料・雑貨が山と積まれていた。
(わたしどもとしても、リサイクル品としてお引き取りすることは可能ですが、元々の購入金額の補填には到底及ばないことは確実です。それでもよろしければ、お見積りに伺いますが?)
俺は「そんな暇はない」と電話を切っていた。

 

俺の名は武藤春樹。37才独身。
当然のように、年齢と彼女イナイ歴が均しい。
ここにある女物の品々を使ってもらえる知り合いなど存在しない。
忙しい仕事の毎日で、寝るためだけに帰ってくる部屋が、また一週間、この品々に部屋を占領されるのだ。

もちろん、この品々に悪意はない。
どこかでクレジットカードの番号などが悪質者の手に渡り、インターネットから勝手に注文されたのだろう。
普通はこれらの品々は俺の所には届くことなく換金され、その悪質者か関係者の元に入っていた筈だ。

だが、現状はこの通りだ。
明後日の朝、仕事に出るまではこいつらと一緒に過ごす他はない。
(俺が部屋を出てれば良いと言う奴もいるだろうが、俺は疲れている。明日は丸一日寝かせておいてもらいたいのだ!!)

幸いにも、俺の部屋は万年床で、品々に占拠されて布団が敷けないという事はない。
布団に掛かっているものを避ければ寝るスペースは確保できるのだ。
が、俺のクローゼットは埋もれてしまっていた。着替えのパジャマを取る事もできない。
背広を着たまま寝る訳にもいかないので、下着一枚で寝る事にした…

 

変な夢を見た。
夢の詳細は思い出すことができなかったが「変」であることだけは俺の記憶に刻まれていた。
その夢の断片を繋ぎあわせると…

|「出してくれ!!」
|と声がしていた。
|部屋に積まれた段ボール箱の中から服逹が声をあげていたのだ。
|煩くて仕方なく、俺は段ボール箱を開けてやった。
|すると今度は、
|「着てくれ!!」
|と騒いでいた。

 

朝起きると洗濯機が終了のチャイムを鳴らしていた。
記憶にはないが、昨夜のうちにタイマーを描けていたのだろう。
中には昨日着ていた下着とシャツが入っていた。
これらをベランダに干すには、先ず替えの下着を穿く必要がある…が、
俺の着替えは届いた品々に埋もれて取り出せなかった筈だ。
しかし、昨日の下着が洗濯されているのに、今の俺は全裸ではなかった。

洗濯機の脇は洗面台になっており、その鏡に「俺」が写っていた。
俺はヒラヒラの女物の寝間着=ネグリジェを着ていた。
更に薄い生地が透けて下着まで見える。

俺は女物の下着まで着ていた…

 

流石にネグリジェは脱いだが、下着については考えなくてはならなかった。
今、手にできる男物の下着は、たった今洗濯を終えたやつ一枚しかないのだ。
下着などなくともズボンは穿ける…着けていないと落ち着かないものである。
で、結局見えるものではなので下着はそのまま。そして、その上に着れそうな物を探した。
Tシャツは女物なので派手な柄だが、着れないことはなかった。
更に、バミューダパンツのようなものがあったので、それを穿いた。
ちょっと見、スカートのようだが「ズボン」には違いない。別に外を歩く訳ではないのだ…と自分を納得させた。
(乾けば明日はこれを着れる)
と洗濯機から取り出した物をベランダに干した。

疲れが溜まっていたので、再び寝ることにした…

 

気が付くと、台所から良い匂いがした。
ナベにシチューが出来上がっていた。
外は夕暮れが迫っていた。
この時刻まで寝ているつもりはなかったが、また変な夢を見ていたのだ。

|「出してくれてありがとう。」
|「着てくれてありがとう。」
|とそいつらは言った。
|「お礼に何かしましょう。」
|「料理が良いんじゃない?」
|「良いね、良いね♪」
|そしてエプロンを着けた女が現れた。

|冷蔵庫の中を覗く。
|「何にも無いわね。買い出しに行かなくちゃね♪」
|女は段ボール箱を更に開け、出掛ける支度を始めていった。
|花柄のトートバックに、俺の財布から抜いた金を入れた小銭入れを放り込む。
|サンダルを出して玄関に並べる。
|そして、テーブルの上に化粧品を並べて化粧を始めた。

|鏡に写った彼女の顔は、何と俺そっくりだった。
|それが、化粧が進んでゆくうちに、どんどん「女」の顔に変わってゆくのだ。
|(もしかすると、俺が女装したらこんな感じになるのだろうか?)
|そんな事を考えていた。

|買ってきたもので、彼女は料理を作っていった。
|出来上がったサラダを冷蔵庫に入れ、ナベのスープを仕上げてゆく…

 
旨そうな匂いが、俺の思考を停止させる。
誰が作ったのかは問題ではない。
いや、夢に出てきた彼女が作ってくれたのだ。
その証拠に冷蔵庫の中にも彼女の作ってくれたサラダがあった。
ありがたくサラダとスープを戴く。
その美味しさに、あっと言う間に食べきってしまった。

そして、腹が脹れると眠気がやってくる。
また、夢を見た。

|エプロンを着けた彼女が、俺が食べ終わった後の食器を片付けていった。
|片付けが終わる頃、風呂が沸いていた。
|彼女はエプロンを外し、風呂場に向かった。
|脱衣所の洗面台の鏡に彼女が写る。
|彼女は鏡を見ながら、服を脱いでいった。
|均整のとれた女体が鏡に写っている。
|下着を外しても、そのシルエットに変化はない。
|胸の膨らみ、腰のくびれ、魅惑的な尻の描く曲線に俺は興奮を覚えた。

|彼女はシャワーを浴び、汚れを落とすと湯船に浸かっていた。
|乳房が湯面にプカリと浮かんでいる。
|彼女の手が下から乳房を持ち上げ、ゆっくりと揉んでゆく。
|指が乳房の先端に延び、乳首を摘まんだ。
|「ぁ♪」
|小さく、彼女の甘い吐息が漏れる。
|ゆったりとしていた指の動きが一変する。
|彼女の指は確実に彼女の快感を捉えていた。

|彼女は湯船から出ると壁にもたれて座り込んだ。
|両脚を開き、本格的に自らを弄り始めた。
|吐息が喘ぎに、喘ぎが嬌声に変わってゆく。
|彼女は快感を求め、激しく指を動かしていた。
|風呂の湯ではなく、愛液が股間を濡らしてゆく。
|「あん♪ああ~ん!!」
|彼女は昇り詰めてゆき、やがて絶頂に達した。

夢の中で、俺もまた彼女と快感を共有していた。
男の何倍にも感じるオンナの快感は、止まる事を知らず、終にはその絶頂と共に俺の意識を焼き切っていた…

 

目覚めたのはベッドの中だった。
けだるさを感じながら、昨夜の快感を反芻する。
俺の指が腹の上を這い降りていった。
俺の股間は未だ暖かく濡れていた…

夢の中で彼女と共有していた快感が甦ってくる。
中指を曲げると、暖かな肉洞の中に潜り込んでゆく。
空いた手を胸に宛て、乳首を摘まみあげる。

ビクンッ!!

快感が全身を貫いていった。
「ああん♪」
俺は女のように喘ぎ声をあげていた。
それは「俺」の声ではなかった。
甲高い女の喘ぎ声だ。
俺は更なる快感を求め、指を動かした。
夢の中で彼女がしたように…
俺は俺の「女」の肉体を責めたてていった。

部屋の中にオンナの嬌声が響く…
あたしはただ、快感を求めるだけの存在になっていた…

 

 

再び夢を見た。

|あたしが「男」に貫かれている。
|あたしは「武藤春樹」の様子を見にきた彼の親友の野村秋人を組み敷いていた。

|「お前は誰だ?春樹はどこにいる?」
|部屋に上がり込むなり、あたしに迫ってきた彼を大人しくさせる為、手近にあったパンストで手足を縛ってやった。
|「春樹なんて知らないわ。あたしはここの住人♪」
|あたしは自分の名前なんかも思い出せなかったが、そんなことどうでもよかった。
|秋人のズボンを剥ぎ取り、トランクスの中からおちんちんを引き出す。
|まだ萎えていて力がない。
|けれど、あたしが触れたことで僅かだが、ピクリと反応していた。
|あたしは顔を近づけとそれを咥え込んだ。
|舌と口蓋で刺激を与えると、次第に硬さを増してくる。
|太さも、長さも十分になったところで、あたしは秋人の上に跨がった。
|あたしの膣に誘導しながら腰を降ろしてゆく。
|ゆっくりとあたしのナカに秋人が入ってきた。
|「んあん♪」
|快感に、あたしは甘い媚声をあげる。
|彼のペニスは硬さを維持している。
|奥まで入り込んだのを確認すると、あたしは腰を揺すり始めた。
|勿論、彼は身動きができない。あたしが動く事で彼のペニスがあたしの膣内で暴れまわるのだ。
|「ああ、イイわぁ♪」
|彼のペニスがあたしの膣壁を刺激してまわる。
|ときどきGスポットに当たるのか、大きな快感があたしを襲う。
|「ああん♪あーん!!」
|あたしが夢中で腰を上下させていると、彼も次第に昇り詰めてきているようだ。
|「止めろ。それ以上やると、射てしまうぞ…」
|「射してぇ~♪あたしのナカに。妊娠させるくらい精液を頂戴っ♪」
|あたしは膣口を締め付け、更に彼のペニスに刺激を与えた。
|「だ、ダメだ…限界…」
|彼がそう呟くと同時に、あたしの膣で彼のペニスが大きく膨れあがった。

 
(夢?)
俺は下半身から感じる違和感に意識を取り戻していた。
目の前に秋人の顔があった。
目が合った。
「退けよ。」
俺は全裸で秋人に跨がっていた。
秋人のペニスが俺の股間に挟まっている…いや…それは、俺の膣の中にあった。
今の俺は「女」だった。
俺のペニスは消え失せていた。
胸には乳房があり、股間に膣がある…
そこに秋人のペニスを咥え込んでいた。

「用は済んだんだろ?早く退いて、俺を自由にしろ!!」
秋人が俺を睨み付ける。

秋人に言われ、俺は体を離した。
俺の膣から秋人のペニスが抜けてゆく。
その後から放出された精液が滴り落ちてくる…
「あ、秋人…お、俺…」
俺は自分の事を訴えようとしたが、秋人の仕草が「早く戒めを解け」と言っていた。
「っあ、すまん。」
と手足を縛っていたパンストを解いていった。
解き終わると、秋人は手足を大きく回した。
(殴られる?)と身を竦める俺に
「よっぽどの事がなければ女を殴れないよ♪」
と秋人が言った。
「で?お嬢さん。春樹はどうしたんだい?」
やはり、秋人の目にも俺が「女」に見えるようだ。
「た、多分、信じられないと思うが、俺が武藤春樹…本人なんだ。何故か女の姿になってしまったんだ。」
「そうか?だが、春樹なら、奴は女になったからといって、やってきた親友を縛って無理矢理SEXを迫るような事はしないぞ♪」
「お、俺だってそんな事はしたくないよ。させられたんだ。」
と、俺は信じる信じないは別として、これまでの事を秋人に話した。

「にわかには信じられないが、お前が春樹であることには間違いなさそうだ。」
「あ、ありがとう。信じてくれて…」
女になって涙腺が緩くなったようで、即にも涙が溢れていった。
「で、元に戻すには先ず、こいつらを処分する事だな♪」
(えーーっ?!)と服逹が一斉に声をあげたような気がした。
「処分…って?」
「売り払うか焼却するかだな。こんな厄介な代物は焼いてしまった方がよいかも。」
「そ、そこまでしなくても…」
「お前、戻りたくないのか?」

そう言われ、俺は答えを躊躇した。
(女の体は本来の「俺」ではない。が、女の快感を…秋人に抱かれ貫かれる快感を手放したくはない…)
「か…考えさせてくれないか?」
俺はそう言って、風呂場に向かいシャワーを浴びた。
(俺はこのまま「女」になってしまって良いのだろうか?)
シャワーを浴びていると声が聞こえる。
(まだ着てない服がいっぱいあるよ♪)
(秋人を喜ばしてあげようよ♪)
余計な思念が割り込んでくる…
「あーっ!!俺はどうしたいんだ…」
うな垂れる俺の頭の上から、シャワーが降り注いでいた。

 

 

俺は下着を取り替え、新しい服に着替えた。
勿論、全て女物だった。
手慣れた手つきで化粧を済ませる。
「ちょっと外に出ないか?」
俺は秋人に声を掛けた。
「ん?ああ。良いよ。」
と秋人も立ち上がった。
外に出てしばらく歩くと公園があった。
そこに入り、周りに人がいないのを確認する。
「秋人。俺にキスしてくれないか?」
俺がそう言うと、彼は何も聞かずに俺を抱き締めた。
彼の顔が迫る。
俺が瞼を閉じると、彼の唇が俺の口を塞いだ…

「ありがとう…」
しばらくして唇を離して、俺はそう言った。
彼とのキスに俺は何の嫌悪感も感じなかった。
男同士という気持ちはまったく無く、女として受け身のキスを自然としていたようだ。
「あの品々からの影響が少しでも少なくなるようにココまで来てもらったけど、変わらないみたいだ。」
「男に戻りたくなるかって事か?」
「いや…」
俺は彼と視線を交わらせた。
「確認できたのは、俺が女として秋人を愛してしまった…という事だ。」
「…愛か…」
「迷惑かも知れない。俺が男だったことは…」
「まて、俺にも言わせろ。」
と秋人。

「俺は親友の部屋に居た可愛い女の子に一目惚れしてしまった。彼女が親友の恋人だと思い、身を引く覚悟はしていたんだ。」
秋人はそう言って、俺を抱き締めた。
「親友を失う事は辛い。が、俺もまた君を愛してしまっている事に気が付いてしまったんだ。消えないで欲しい。ずっと俺の傍にいて欲しい。」
再び俺の目から涙が溢れ始めていた。
俺は…
「うん」
と答えていた。

 

|(やっと私の出番が回ってきたようだね♪)
|一際大きな箱の中で呟いていたのは
|ウェディングドレス
|だった…

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コメント

YouTubeである外国の同人アニメショーン(蒼石猫)みたいな感じですね。
あっちは服に意識はなく、置物の猫の念力ぽいもので着せられるけどね。

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