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2013年9月27日 (金)

景品に当たったので…

その日、一通の通知が届いた。
「当選おめでとうございます。これから一年間、貴女のビューティーケアを無償で支援させていただきます。つきましては、一度弊社の下記センターまでお越しいただけないでしょうか?平日・休日を問いません。24時間対応しております。」
そして、いくつかの住所が記載されていた。

文面に「貴女」とあったが、俺は女ではない。かといって、この通知に心当りがない訳でもない。

たまたま買った歯磨きの景品として応募券が付いていたのだ。
最近の景品は際限が無くなっているみたいだ。
ものは試し、当たる筈もないが…
と、軽い好奇心から応募したやつだった。

 

金曜の夜、会社の帰りに「センター」とやらに立ち寄ってみる事にした。たまたま途中下車すれば良い場所にあったのだ。
流石に営業時間は過ぎているので正面の出入り口はシャッターが降りていた。
脇にインターホンがあったので押してみた。
「当たった景品にこちらに来いとあったので伺ったのですが…」
〈お待ちしてました。お迎えに伺いますので暫くお待ち下さい。〉
と、程なく建物の裏手から人影が現れた。
「上村省吾様ですね。」
女性の声が俺の名を呼んだ。
何で俺の名が?と思ったが当選者のリストが存在していてもおかしくはないと思い直した。
「わたくしどもの支援内容等について説明させていただきますので、こちらにお願いします。」
と建物の裏に誘導された。
そして、そこに停まっていたワンボックスカーに乗せられた。
「用件が済みましたら、この車でお送りします。」
と車は発進した。
「先ずはこのビデオをご覧ください。」
ワンボックスカーの中は普通のシートではなく、ふかふかのソファが置かれていた。
正面には大きなスクリーンがあり、用意されていたビデオがスタートした。
俺を案内してきた女は、俺の脇、ふかふかのカーペットが敷かれた床に直接座っていた。
車の窓は潰され、カーペットと同色のカーテンに囲われていて、今何処を走っているかもわからない。
外の景色が見れないとなると、視線の落ち着き先は正面のスクリーンか脇に座る彼女かに限られる。
俺としては彼女をじっくりと眺めていたかったが、彼女は俺にスクリーンを見るように促す。
スクリーンにはこの会社の商品のテレビコマーシャルが映されていた。
俺自身は歯磨きでしか知らなかったが、様々な女性用化粧品、薬品から生理用品まで扱っているようだ。
(男の俺には一切関係がないがな♪)


……
「着きましたよ♪」
と女の声に我に返る。うとうとと半分寝てしまっていたようだ。
「最初に身体計測しますから、診察着に着替えてください。」
とロッカールームに案内された。
渡されたのはピンク色の診察着だった。
一瞬「何で?」と思たが、女性向けの商品を扱っているのだから男性用は置いていないのかも知れない。と納得した。
(診察着なんて色以外に男女の違いはないのだろう?)
と俺は服を脱ぎ、ピンクの診察着に着替えた。

人間ドッグのように、詳細に俺の身体が診られていった。
また、オーダーメイドの服を誂えるかのように、様々な寸法が測られていった。
そして、3D画像を撮るからと、全裸にされて機械の中に放り込まれた。

…そして…

「先ずは一週間のエントリープログラムです。」
応接室のような所に案内され、小冊子が手渡された。
「そして、これが一年後の貴女です♪」
机の上のPCのモニタに写っていたのは、純白のウェディングドレスを着た美しい女性だった。
「我々の支援の元、貴女はこの一年間で美しく生まれ変わるのです。」
「って、これは女性向けのプログラムなんでしょ?俺は男ですよ。」
「問題ありません。美しさの追求には男も女も関係ありません。」
「そ、そんなモノなんですか?」
「お気に召さないようでしたら、随時プログラムに変更を加えてゆきます。先ずは試しに余分な脂肪の吸引をしてみませんか?」
「試しね…」
「全ては無料で提供されます。アフターケアも万全ですので、何の心配もありません♪」
「じゃあ、試しに…」
そして俺は処置室に案内された。

「余分なお肉を吸引していきますね。残したい所、増やしたい所があればおっしゃってくださいね♪」
機械が起動し、腹からの吸引が始まった。
それは存外に気持ち良く、またしても俺は居眠りに落ちていってしまった。

 

 

 

目が覚めると、そこは俺の部屋のベッドの中だった。
彼等はご丁寧にも、俺を送り届けるだけでなく、パジャマに着替えさせ、ベッドに寝かせてくれたようだ。

…パジャマ…
それは、俺が毎日着ているものよりも数倍も肌触りが良く、着ていても気持ちが良かった。
が、当然と言うか…そのデザインは女性用であった。
(まあ、誰かに見られるものでもないし、このまま使わせてもらっても良いか♪)
検査の間中、ピンクの検査着を着ていた所為か、女物を着ることにあまり抵抗が無くなっているみたいだ。

俺は昨夜の吸引の成果を確認する為に、起き上がると洗面所に向かった。
パジャマを脱ぐ。
鏡に写った俺の腹周りは想像以上に贅肉が削り取られていた。
女性ならくっきりとしたクビレが出来ているのに喜ぶのだろうか?
男である俺には、別段に喜びは無いが、以前から体重を減らせと言われていたのが、これで一気にクリアできた筈だ。

渡された小冊子にはこの先一週間のプログラムが記されていた。
とはいえ、簡単な運動と食事の注意点だけしか書かれていなかった。
運動は道具も要らず、全部で3分程度のものだった。やってみて、続けられそうな気がした。
何より、腹周りの贅肉がなくなったので、体前屈などが難なくできるようになっていたのに驚かされた。

食事の注意事項も簡単なものばかりだ。あれはダメ、これもダメと言う事はあまりなく、この日はヨーグルトを食べよう。とか、バナナを食べようとか、普段食べないものを食べるのが珍しかった。
食事の量も、贅肉を取った際に胃袋も萎縮してしまったのか、指定された量で丁度満腹になっていた。

 

次の金曜の夜。
センターに向かおうと駅を降りた所に、あのワンボックスかーが待っていた。
同じようにビデオを見せられ、目的地に着いた所で起こされた。
今日も診察着に着替えた。
最初に計測があった。先週と同じように様々な寸法が測られた後、3D画像を撮る機械の中に放り込まれた。
「今日は全身の老廃物を取り除きますね。毛穴等に溜まった垢も一掃されます。」
診察着を脱いでベッドに上がると、パンツも取られてしまった。
薬品が全身に塗られると、ポカポカ・ムズムズしてくる。
その上から泥のようなものが分厚く塗られていった。
そのまましばらく動かないように言われた。
むず痒さに慣れてくると、全身を包む暖かさに再びうとうとしてしまっていた。
流されているBGMが眠気を助長しているのかも知れない…

 

俺は毎週欠かさずにワンボックスカーに乗り、帰りにもらう一週間のプログラムを着実にこなしていった。
その甲斐あってか、肌は赤ちゃんのようにモチモチ・スベスベになり、腕や脚もスリムになった。
ウエストも引き締まり、その辺のズボラな女共よりも細くなっている。
そして、この胸♪
Eカップに張り出しているのは、吸引で余った肉を寄せ集めて造ったものだ。

吸引と言えば、俺の股間も吸引整形を施している。醜くぶら下がっていたペニスは吸引で小指の先よりも小さくしてもらった。
もちろんその下も綺麗にしてもらっている。余分なモノは全部吸い取って、形の良いクレバスが出来上がっている。
プログラムで指示されたように、この肉体をより魅力的にみせる服を着、俺をより魅力的にみせる化粧を施している。

 

当然と言うか、着飾ったまま会社に行くと、辞めるように言われた。
が、期間内の生活は全部面倒見てくれると言ってくれているので何の心配も無かった。
「勿論、最終ゴールは純白のウェディングドレスで結婚式よ♪後の面倒をちゃんと見てくれる旦那様を探さなくちゃね。」
今の俺なら、大抵の男共を落とす事など造作もない。が結婚となると誰でも良いという訳にはいかない。
俺は何度かお見合いパーティーにも出てみた。
俺の美しさに何人もの男が声を掛けてくるが…

「上村翔子さん?」
と声を掛けてきた男がいた。
その顔を見るなり、ビビッて電流が流れていったような気がした。
(一目惚れ?)
俺は声を掛けてきた男…下山龍治に誘われるように立ち上がっていた。

そのまま会場となっているホテルの客室に向かう。
これから何が始まろうとしているか…俺は十代の小娘ではない。「大人の女」としての心得はプログラムの中で習得している。
が…男に抱かれるのは、俺にとって初めての経験である。
緊張しているのが感じられたのか、彼は優しく俺の肩を抱いた。
「無理強いはしないよ♪」
と彼…
「大丈夫…」
俺は髪止めを外し、結いあげた長い髪を降ろした。
彼の唇が俺の唇を塞ぐ。ディープキッス…頭がクラクラする。
彼の手が背中のファスナーを降ろす。俺の足元にドレスが落ちていった。
不意に足が床から離れる。俺は彼に抱き抱えられてベッドに運ばれていった。

「んぁっ…」
彼が俺の乳首を口に含み吸いあげた。
プログラムで学習していたが、俺は自然に喘ぎ声をあげていた。
下着が外されてゆく…
ショーツのクロッチは大分濡れていたに違いない。
彼の指が俺の股間の蜜を掬いあげる。
「感じ易いんだね♪」
彼の指が俺の股間を弄る。俺の喘ぎはどんどん大きくなる。
プログラムで得た知識など一気に消し飛んでいた。
俺は快感に支配され、喘ぎ、悶えるしかなかった。

彼が体を重ねてくる。
股間の肉棒が俺の胎内に突き立てられた。
(満たされてゆく…)
俺は彼の迸りを受け入れると同時に、快感の絶頂に放り上げられていた…

 

 

 
俺は彼と交際を続けた。
一方で結婚式に向けての準備も着々と進んでいった。
既に式場は押さえられていた。挙式は俺がセンターを訪ねた日の丁度一年後になっていた。

が、「上村翔子」という「女性」は存在していない筈ではなかったのではないか?
俺は、自分が「上村省吾」という「男性」であった事を思い出した。
「どうした?マリッジブルーかい♪」
顔を上げると、そこに彼がいた。
抱き締められ、キスされる。
一遍で、自分が何を悩んでいたのか忘れてしまった。

今日は婚約の報告のために俺の両親の元に向かっていた。
大学に入って独り生活を始めてからは殆ど実家に戻っていなかった事を思い出した。
このところ、記憶があやふやな思いをする事が多い。今も小さい頃の故郷での思い出がなかなか出て来ないのだ。

彼の腕が俺の肩に廻り、優しく包み込んでくれる。
(彼と一緒なら、何も心配ないでしょ♪)
気分が安らいでゆく。
(そうだ。俺は彼のことだけを考えていれば良いのだ♪)
俺は彼の肩に頭をもたれ掛けていた。

 

暫く見ない間に大分老け込んでしまった父と母。
「お前程には変わってないさ。」
「本当に美人になったわね。」
と両親が俺に言う。
「不束なな娘ですが、宜しくお願いします。」
二人揃って彼に頭を下げる。

…「娘」って誰のことだ?
…俺はあんた逹の「息子」じゃなかったか?
…でも俺は「嫁」に行くのだから「女」で良いんだよな?
…女だから「息子」ではなく「娘」で良いのか?

「どうした?真っ青な顔してるぞ。気分でも悪いのか?」
彼が俺に声を掛けてくれていた。
「緊張してたようね。疲れもあったんでしょう。この子の部屋で少し休ませてあげましょう。」
母の言葉に、俺は彼に抱かれると高校まで俺が使っていた部屋に運ばれていった。

この部屋のベッドに横になったのは何年ぶりだろうか?
部屋の中はあの頃のまま…まったくの「男の子」の部屋だ。
何で?
俺は「女」じゃなかったか?何で「男の子」の部屋を自分の部屋だったと懐かしく思うのだろう?

「っあ、兄と…この娘はずっと兄と一緒だったんで、こんな男の子の部屋に…」
母が何か言っている。
一人っ子の俺に「兄」なんか居ないだろ?

「省吾君の事は存じてます。」
と彼。
両親がハッと息を呑む。
(皆知ってるみたいだけど「省吾」って誰?)
「このお話しがあった時、担当の方からいろいろと伺っております。勿論、戸籍の方も確認しています。」
「…」
「翔子さんは素晴らしい女性です。過去はどうであれ、僕達は現在と未来が重要なんです。何も気にされる事はありませんよ。」
「そうですか。全てご承知の上だったんですね。」
「ですから、ご両親には何も気兼ねすることなく、僕達の結婚式を見届けて下さい。」
「む、娘…を宜しく頼みます。」
そんな父の言葉を聞いて、俺の中で緊張していた糸が、ふっと消えてしまった感じがした。
俺はそのまま、深い眠りに就いてしまったようだ…

 

 

 
披露宴はささやかなものであったが、俺達は充分に幸せを感じていた。
司会者に促され、席を立つ。介添えの人から花束を渡される。
部屋の反対側に両親が立っていた。
彼にエスコートされてその前に立つ。
メモを広げ読み上げようとするが、既に涙が溢れていて何も見えない。
「お父さん。お母さん。こんな私でしたが、育ててくれてありがとうございました。これからは、彼と暖かな家庭を作っていきます。本当にありがとう…」
花束を母に渡す。俺の目からは涙が止めどなく溢れていった。
司会の言葉で位置を変えようとして、足がもつれる。倒れそうになる俺を、彼がしっかり支えてくれた。
周りから暖かな拍手が沸く。
「今日ここに僕達は夫婦となりました。まだまだ未熟な僕達です。至らないところがありましたら、皆様のご指導ご鞭撻を宜しくお願いいたします。」
彼の逞しい声にうっとりして、お客様へのお辞儀を忘れそうになった。
「おめでとう。一年前のイメージ通りの姿を実現されましたね。我々の支援はここまでになります。これからはご主人とお幸せに♪」

 

映画のエンドロールのように、俺の頭の中にこの一年間が甦ってきた。
…俺は自分からあんな事やこんな事をしたんだ
…俺は男なのに
…彼を愛してしまった?
…女としと彼に抱かれ
…な、何で俺はウェディングドレスなんか着ているんだ?

 

甦ってきた記憶に俺は押し潰されていった。
俺は自ら「女」の性を選んだ事になっていた。
戸籍も「女」になり、名前も「省吾」から「翔子」に変えていた。
そして、今日正式に彼の「妻」となった。
俺自身の手で婚姻届けにサインをしたのだ。
会社も辞め、住む所も引き払っている。
俺はもう彼の妻として生きるしかないのか?

 

 

気が付いたのはベッドの上だった。
既にウェディングドレスは脱がされ、楽な格好になっていた。
(俺は何をしていたのだろう?)
まるで催眠暗示に掛かったかのように、俺は一直線に「女」に向かって突き進んでいっていた。
いや、確かに何かの暗示を掛けられていたのだろう。でなければ、「その気」のない俺なんかが「女」になんかなろうとする筈もない。

が、今更「無かった事」などにはできないのだろう。
俺はこの先も「女」として、彼の「妻」としてやっていくしかない。
「女」としてはこの一年間なプログラムで知識は持たされている。後半は実践もしてきた…問題はない。
「妻」としては…暗示により、彼を愛していたのだ。暗示の切れた今、俺は彼を愛する事ができるのだろうか?
男の俺が同性の彼を…?

 

カチャリとドアが開いた。
「起きていたのかい?丁度、写真が出来上がったと言うので取りに行っていたんだ。見るかい?」
手渡された台紙に貼られた写真は、一年前、PCのモニタに写っていたものと全く同じものだった。
純白のウェディングドレスを着た美しい女性が写っている。
これが今の「俺」なのだ…

「どうした?」
彼が声を掛けてくる。
どうやら、俺は写真を見て涙を溢していたようだ。
「な、何でもない。…これが幸せ…なのかな?って思っていたんだ。」
「これだけじゃないよ♪」
俺の手から写真が取り上げられた。
「これからの毎日、幸せは続いてゆくんだ。」
そのまま彼にベッドの上に押し倒される。
「愛してるよ。奥さん♪」
彼のキスが俺の内のわだかまりを一気に融かしてゆく。
俺は…

俺はもう「女」なのだ。
自分は彼に愛されている女でしかないのだ。
自分は女なのだから、彼の愛を受け入れるのにも何の問題もない。
それに…
あたしも彼を愛しているのだから♪

程なく、あたしの濡れた股間に彼が入り込んでくる。
あたしは悦びの媚声をあげる。
あたし逹のハネムーンが始まった…

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