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2013年9月27日 (金)

帰還

突然降りだした雨に、野外ステージの周りに集まった人々は為す術も無かった。
殆ど身動きが取れない中で人の流れに逆らわず、倒れないように足を進めるしかなかった。
「落ち着いてください。係員の指示に…」
スタッフの叫び声は雑踏に呑み込まれてしまう。
折り畳みの傘は持っていたが、到底差せる状況ではなかった。
雨は服を濡らし、どんどん体温を削ってゆく…

 
ビカッ!!

 
一瞬、空が明るくなる。
人々は緊張し、息を飲む…

 
どどん!!

 
大音響が地面を揺らす。
「「きゃー!!」」
そこら中で悲鳴が上がり、収拾が着かなくなる。
揉みくちゃにされ、不意に足元から地面が消失する。
群衆は、倒れた人間に構う余裕などない。
腕を、足を、頭を、腹を…いくつもの靴が踏みつけてゆく。
服は泥にまみれ、肌はそこらじゅう痣だらけに違いない。
幸いにも、骨が折れたような痛みはなかった。

 
どどん!!

 
再び大音響が地面を揺らす…

そして、辺りは静まりかえっていた…

 

 

ゆっくりと身を起こした。
降りしきる雨が泥を流してくれる。
黒雲に閉ざされているとはいえ、目が慣れれば様子が判る。
が、そこには誰もいなかった。
いや、ここがさっきまでの場所であるのかも定かではない。
野外ステージかと思った影は、木立の集まりだった。
街路灯をはじめ人工物が確認できない。…ゴミさえも見当たらないのだ。

いや、少し離れた所に何かあった。
最初は小さな茂みか岩かと思った。
しかし、それが人の姿であると判るのに、そう時間はかからなかった。
近づき、手を触れてみる。
「う、ううん…」
とそいつは反応した。
「大丈夫か?生きてる?」
声を描けるとそいつは身動きを始めた。
手を突き、上体を起こす。
「ああ…目の前に天使がいる。俺は死んでしまったに違いない♪」
「な、何をバカな事を言ってるんだ?まだ心臓は動いているのだろう?」
「そうだな。今、凄くドキドキしている。これは生きている証なのか?」
「多分俺逹は生きてはいるのだろう。が、ここがどこなのか見当がつかない。俺逹のいた野外ステージの会場でないことは確かなようだ。」

そう言うと、奴は不思議そうに俺を見ていた。
「な、何だよ。俺が何かおかしな事でも言っていると言うのか?でも、この状況は他に説明できないだろう?」
「ああ。状況はだいたい判った。気になったのは、何で君みたいな可愛い娘が〈俺〉って言うのかって事だ。」
「な、何だよ。その〈可愛い〉ってのは?俺は武藤大毅。もう20年近く男をやっている。」
「?、それは奇遇だ。俺も20年近く男をやっている武藤大毅という者だ。が、君は俺の知る武藤大毅とはかけ離れた容姿をしている。」
俺は俺と同じ「武藤大毅」と名乗る奴の姿をもう一度見た。
そして、その姿が俺の知る「武藤大毅」と寸分も違わない事を確認してしまった。
「なら、俺は何者なんだ?」
「俺の目には、俺好みの可愛い女の子にしか見えないんだがな♪」
「女…の子?」

俺はゆっくりと掌を胸に宛た。
指を曲げ、それを掴むとムニュっとした感触が伝わる…
慌てて、残りの手を股間に伸ばす!!
(ナイ…)
長年連れ添ってきた男のシンボルは、そこには存在していなかった。

と同時に、今自分の着ている衣服についても知る事となった。
脚はストッキングに包まれ、短いスカートが辛うじて股間を隠している。
胸にはブラジャーが大きなバストを包み、支えていた。
キャミソールの上に丈の短いジャケットを着ていた。
足にはハイヒールのサンダルを履いていた。足の爪が青く塗られている。
爪先が露出しているということは、脚を覆っているのはストッキングではなく、レギンスというものなのだろうか…

 

「確かにこの体は女の子のものだ。が、精神は武藤大毅なんだ。」
「その顔で俺々言うのは勘弁してもらいたいな♪が、中身が〈俺〉なら無理な注文かも知れないな。」
と、奴は勝手な事を言う。
(まあ、俺が奴なら同じ事を言ったかも知れないが…)
「で、とりあえずお互いの状況は確認できた。が、このまま雨に打たれ続ける訳にもいかない。倒れていた分、大分体力を消耗している筈だ。」
「確かに。体が冷えきってしまっている。」
「そこでだ。あそこに大きな木がある。葉も生い茂っているんで多少は雨宿りの代わりになるんじゃないかと思っている。」
「俺も今、そう思っていた所だ…って、何だ?その手は。」
「い、いや…目の前にいるのが女の子なんでね。らしくはないが紳士的な態度を取ってしまった。」
「じ、自分で立てるから。女の子扱いはしないでもらいたいな。」
「気を付けておくよ。」

 

俺逹は目指す木の下に辿り着いた。
さっきの場所より視界が開けていた。
雨足も弱くなり、周囲の状況も見えてきた。

そこは何もない場所だった。
至る所に木々が生い茂り、人工物の欠片も見えなかった。
(…ん?)
俺は目を凝らした。
鬱蒼とした木々合間に屋根の一部のようなものが見えた。
「あれ、何だかわかるか?」
と俺が奴に声を掛け振り向くと、奴は上半身裸になっていた。
濡れた服を絞っていたようだ。
「どれ?」
と奴が俺に近づく。
裸の胸が俺の背中に触れた。
(ドキッ)
俺の胸が大きく脈動した。
「何か家みたいだな♪」
今の俺と比べると、奴の方が頭ひとつ高いのだ。(俺の方が縮んだだけなんだが…)
俺には一部しか見えなかった屋根も、奴にはそれを家の一部と認識できる程に見えているのだろう。
「雨が止めばよいが、多少降っていても夜になる迄にはあそこに辿り着けるようにしないとな♪」
「お、俺もそう思っていた所だ!!」
と、奴の腕を振りほどいた。
いつのまにか、奴は俺の肩に腕を廻していた。
その事を意識した途端、何故か俺は頬が熱くなるのを感じていた。

「な、何をするんだ?」
と奴が慌てたような声を上げる。
「お前と同じように、服を絞ろうとしているんだが?」
「って、こっちを向くな。ちょっと待て。俺が幹の裏側に廻るから。終わったら…終わって服を着たら声を掛けてくれ。」
何を慌てて…と思ったが、今の自分が「女」であることを思い出した。
目の前に女の裸体がちらつけば、理性を保つのに努力が必要となるのは俺も同じだ。
しかも、幹の裏側では奴も再び濡れてしまう。俺はさっさと作業を終える事に専念した。

 

「そろそろ行動しないとヤバそうだな。」
俺よりも一瞬、奴の方が口にした。
奴も「俺」なのだ。思考バターンが同じなのを再度確認することもない。
「ああ」
とだけ返し、俺達はその家に向かって歩き始めた。

女になった事で、俺の歩幅はかなり小さくなっていた。
いつもの調子で歩いていると、どんどん奴から離されてしまう。
少し小走りで距離を詰める事を何回か繰り返していると、奴は歩く速度を落としてくれた。
さらに
「その靴じゃバランスを崩し易いだろ?俺の腕に掴まったらどうだ♪」
と手を差し出した。
流石に俺も慣れない靴=ハイヒールのサンダルで、何度もコケそうになっていたので、その腕にすがることにした。

 
辺りはかなり暗くなってしまったが、俺達はようやくその「家」に着いた。
木造のその建物は、人の住む「家」というよりは「社」のように見えた。
実際、扉を開けて中に入るとがらんどうで何もなかった。ただ、奥まった一角に祭壇のようなものがあり、コケシのようなものが祀られていた。
「床に直に寝る事になるが、雨風はしのげる。これで善しとしないか?」
奴の言葉に「ああ」と返事をした俺は、祭壇に向かい手を合わせた。
(一晩お借りします。そして、一刻も早く俺が元の姿に、元の場所に戻れるようにしてもらえないでしょうか)
これまで俺は神仏を拝む事など殆どなかったが、流石にこの状態では見知らぬ神様であっても拝まずにはいられなかった。

 
雨はまだ降っていた。
闇の中、雨粒が屋根や壁を叩く音が響く。
俺達は濡れた服を脱いで床に転がっていた。
勿論、毛布等もない。
「寒くないか?」
暫くして奴が声を掛けてきた。
確かに体は冷えきっていた。
暖めるにはお互いの肌を触れ合わせるのが一番である。
が、奴は俺が女であることで、躊躇っているのだろう。
奴は「俺」でもある。肌かの女性と肌を触れ合わせた場合、理性を保ち続ける自信はなかった。
それは奴も同じという事…
だが、寒さはそれ以上に深刻だった。
「あ、暖を取るには肌を触れ合わせた方が良い…」
そう言って俺は体を反転させた。
奴と向かい合わせになる。
が、闇の中では良く判らない…

手を伸ばす。
指先が奴の腕に触れた。
奴の手が俺の腕を掴む。
奴がにじり寄る。
腕が背中に廻され、引き寄せられる。
互いの胸が触れ合う。
更に抱き締められ、密着する。
奴の体温が感じられる。
暖かさを感じる…

 
奴が不自然に腰を動かした。
俺の太股に何かが当たった。
「ご、御免…」
それは奴の勃起したペニスだった。
俺の全身がカッと燃え上がったかのように感じた。
心臓の鼓動が激しくなる。
燃えあがった熱が下腹部に収斂してゆく。
見知らぬ器官が疼いていた。
股間が汗を吹く。

「良いよ♪」

(?!! 俺は何を口走った???)

俺の声に応じて、奴が腰の位置を戻す。
丁度、二人の下腹部の間にソレが挟まっていた。
「良いのか?」
と奴
俺は何と答えるべきか?
答えの無いのを「諾」とみた奴が動いた。

ぬっ!!
と俺の内にそいつが入り込んできた。
俺には拒絶しようとする気が全く浮かんで来ない。
(俺は男なんだ。男になんか抱かれたくないんだ!!)
頭の中でいくら叫んでもどうにもならない。
「んあん…♪」
俺の口からはオンナの甘い吐息が漏れるだけだった。

 
俺は奴に組み敷かれていた。
脚を抱えられ、俺の奥深くまで肉棒を突き入れてくる。
俺はオンナのように、喘ぎ、悶え、嬌声をあげていた。
突かれる度に快感が俺を襲う。
膣からは蜜が零れ、淫らな音をたてている。
「おお、来たぞ♪」
奴が唸り、今宵何度目かの精を俺のナカに放出する。
子宮口を刺激され、俺もまた一気に昇り詰める…

 

 

いつの間にか夜が明けていた。
雨も上がり、板壁の隙間から朝日が差し込んでいる。
隣でイビキをかいている奴をそのままに、俺は起き上がった。
下半身が昨夜の穢れにまみれているが、シャワーで流す訳にもいかない。
そのまま、この体が着ていた下着と服を身に着けてゆく。
扉を開け外に出ると、空はすっかり晴れあがっていた。
そして、再度辺りを確認する。
そこには木々と下草に覆われた空き地が点在するだけだった。

(本当に、ここは何処なんだ?)

このような社があるのだから、どこかしらに人は居るのだろう。
が「社」である。この場所が神聖な場所として、特別な場合以外は人が足を踏み入れない場所である可能性もある。
「先ずは食い物の調達が必要だな♪」
いつの間にか起きていた奴が、俺の背後に立ってそう言った。
「ぁ、お早…」
振り返った俺は声を詰まらせた。
「お、お前…いくら何でも裸はまずいだろ?」
「見られる事なんかないだろう?」
「俺が目のやり場に困る!!」
確かに奴の体は、見慣れた「俺」の体である。が、昨夜…その股間にぶら下がっているモノに貫かれたのだと思うと…
再び股間が熱を帯びるのを感じた。
「どうした?顔が赤いぞ♪起き抜けに…」
「パンツくらいはさっさと穿いてくれっ!!」

 
俺は奴から離れると、社の奥の祭壇に向かった。
そこに祀られている御神体?に改めて対面した。
薄闇のなかでコケシに見えたモノは、かなりリアルな造形の「男根」であった。
「ありがちな土着信仰だね♪」
またも奴は俺の背後から口を鋏んできた。
俺は構わずに、その御神体に手を合わせた。
(とにかく今は食事にありつけること。そして、そう遠からず元に戻れますように…)

 

 
どっちに向かうか?
奴は一本の棒を見つけてきていた。
勿論、俺と同じことを考えたのだろう。
「棒の倒れた方に向かう。で良いな?」
「ああ。」
そして棒は南(多分)を指した。

ぬかるんでいた地面も太陽の光と熱で、次第に乾いていった。
「道」として整備されてはいないが、木々に閉ざされることなく進む事ができた。

「波の音?」
それは細波のたてるささやかな水音だった。
俺の声に奴も聞き耳を立てる。
「こっちからか?」
奴がこれまで歩いてきた道なき道を離れ、木々の茂みを分け入って行った。
俺もその後に続いてゆく。
途端に歩き辛さが増す。
「おお!」
と少し先で奴が声を上げていた。
遅れて俺も奴の隣に並んだ。
「湖?」
「多分な。向こう側に山の連なりがある。潮の臭いもない。河か湖だろう。」
俺は少し離れた場所に船着き場があるのを見つけた。
「舟は繋がれてないようだな。」
舟は無かったが、ここに人が行き来している事が判った。
「しかし…」
奴も俺と同じ仮説に辿り着いたか?
「もし、ここが湖の中の島だとすると、誰かが舟で来てくれないと、ここから離れることができないな。」
「島かどうか確かめる?」
「それよりも、食えるものがないか探す方が先かもな。」
「食べれそうな果実のようなものはありそうだね。」
俺がそう言うと、奴は不思議そうに俺を見た。
「そんな事チェックしてたのか?」
つまり、奴はここの住人から何か食うものを貰う事だけを考えていたという事だ。
俺と同じ「俺」である筈の奴が、俺と異なる考を始めているという事か?
いや、以前の「俺」なら奴と同じ考えだった筈だ。変わったのは俺の方なのだろうか…
「とりあえず、何か口に入れよう。近くでは何があった?」
「木苺みたいなのが、ここに抜けてくる間にあったよ。」
「少し物足りない気もしないでもないが、それでも良いか。案内しろよ♪」
奴の言いぐさに少しだがムカついていた。
(何が〈それでも良い〉だ!!俺が見つけていなかったら、木苺も食べられなかったんじゃないか?)
まあ、俺だって何か食べたい気にはなっていたので、木苺のあった場所には連れていってやった。

その日は、ここが湖の中の小島であることを確認し、幾つかの果実を食べてから、社に戻ってきた。
夜になると社の中は闇に閉ざされる。
何もする事がないと判ると、奴は俺の肉体を求めてきた。
昨夜、訳も解らない内にではあるが、許してしまった事実がある。
今更拒絶する理由もない。拒絶したところで肉体の体力差に敵う筈もない。
それ以前に、昨夜の快感を思い出し、俺の内の「女」が疼きだしていた。

 

 

舟が無ければ対岸には渡れない…
俺は何度、船着き場を恨めしく眺めただろう。
小島の中を把握してしまった後では、奴とは別行動を取る事が多くなった。
今の俺は、奴と同じ速度で歩き廻ることは難しかった。
体力もそうだし、靴も違う。
俺は専ら社の回りで食料の調達に励んでいた。
俺は奴が何をしているのか知らない。
俺はもう奴の考えや行動に付いていけなくなっていた。

その日、奴はずぶ濡れで帰ってきた。
「湖に入ってみた。水深は精々腰くらいまでだ。頑張れば向こう側に渡れるぞ♪」
奴は上機嫌で俺に言った。
だが、今更向こう側に行って何をしようと言うのだろう。
(食料は何とか手に入っている。お社で風雨はしのげる。
元の世界に戻るには、この場所を離れない方が良いんじゃないか?)
俺はそう思ったが、口には出せなかった。
「明日、一緒に行ってみないか?」
奴の提案に
(勝手にどうぞ♪)
と言ってやりたかったが…
「俺の体力では、お前に付いていけないよ。足手まといになる。それよりも、舟を調達してきてもらえれば、俺も楽に向こうに行ける。」
奴は
「そうか?」
と言って話を打ち切った。

翌日、奴は湖の中に踏み出していった。
俺は食料集めには向かわず、岸辺で奴を見送っていた。
湖に足を踏み入れる。水深は足首、脛、膝と一歩づつ深くなってゆく。
が、ある所で一気に腰までの深さになった。
その瞬間に、俺は「キャッ!!」と叫んでいた。
奴は振り替えると「大丈夫♪」と言うように、大きく手を振ってみせた。

奴は再び歩き始めた。
そこからは水深に変化はないようで、奴が遠くなるにつれ、その姿が次第に小さくなっていった。

太陽は天頂を過ぎていた。
俺はまだ、岸辺に立ち続けていた。
奴は一歩づつ対岸に近づいていた。
この分では陽が傾く前に辿り着けるような気がした。

 
対岸まであと少しだった…
不意に奴の姿が見えなくなった。
俺は目を凝らした。
少し離れた所に、奴の頭があった。
全身が水面下にある。
片腕が宙空に延びた。
どこか慌てている感じがする…

そして、奴の頭が水面下に没した。
伸ばしていた腕も見えない。
水面は鎮まりかえっていた。

「お、おいっ」
奴に呼び掛ける俺の声は小さく、震えていた。

何も見えない。

陽が傾く。

空も湖も紅く染まり…

だんだんと闇に包まれていった。

 

 
俺は岸辺に立ち続けていた。

が、ポツリと空からの滴が俺の肌に当たった。
滴は次から次へと降り注いできた。

雨になった。

俺の足は無意識の内に社に向かっていた。
扉を開ける。
濡れた服を脱いで水気を絞り出す。
俺は全裸のまま、社の床に転がった。

いつもなら…昨夜までは奴が体を擦り寄せて俺に迫ってくる。
が、今は俺独り…

条件反射のように、俺の肉体が疼きだしていた。
ソコに指を這わすと、指先に蜜が絡んだ。
自らの指で慰めてみたが、奴に責められ悦びを覚えてしまった肉体には「焼け石に水」でしかない。
(何か代わりのモノが欲しい…)

代わりになるモノ…
それは即近くにあった。
しかし、それを代わりにするには畏れ多い…
が、肉体の欲求は全てを無に帰す。
俺は祭壇に向かった。
手を伸ばし、ご神体を掴み上げる。
…元の場所に戻り
…股間を広げ
…ソレを

挿入した…

 

 

 
俺は泥だらけで地面の上に転がっていた。
あちこち踏みつけられた痛みが残っている。
上半身を起こし振り返ると、そこには野外ステージがあった。
俺はゆっくりと起き上がった。

既に雨は上がっていた。
が、朝の太陽には未だ地面に浮いた水を乾かす程の力はない。
立ち上がると、髪の毛やジャケットの端から泥水が滴ってゆく。
ぬかるんだ地面がサンダルのかかとを呑み込む。
その爪先もまた泥にまみれていたが、爪に塗られていた青いペディキュアは未だ剥げてはいない…

 

俺は元の場所に戻ったようだ。
小島では何日かが経過していたが、ここはあの日の翌朝のようだった。

 

場所は元に戻ったが、俺は…
……

胸はブラジャーが大きなバストを包み、支えている。
キャミソールの上に丈の短いジャケット。
ボトムはスカート…

その股間が「女」のままである事は、触れなくても判っていた。

 

(なぁ、あんたが神様である事は判った。元の世界に戻してくれた事も感謝する。でもな、何で「女」のままなんだ?)
俺は俺の股間に居座り続けるご神体に向かってそう言ったが、答えてくれる気配は一向になかった…

 

 

空にはいつもの青空が戻っていた。

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コメント

新作お疲れ様です。
結構前に野外コンサートで雷に打たれた事故の事がありましたが、それを思い出しました。
また最近のニュースで7月に家出した少女が近所の神社で衰弱して見つかったって話も
なにかしらつながっているって感じました。
暇なときにはちょくちょく見にてきますのでがんばってください。

紀子様
いつもコメントありがとうございます
「ここの小説はすべてフィクションで奈落の妄想の産物ですので…」
すが、野外コンサートでの豪雨は誘拐騒ぎなどもありましたので印象が強かったようです。

今後ともご贔屓に♪

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