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2013年7月27日 (土)

他人の部屋


キラキラとした輝きを見た…

 

 
目が醒める。
見ていた夢の内容がほとんど思い出せなかったが、気にしない事にする。
起き上がり、身支度を整えてゆく。
朝ご飯はカップ一杯の牛乳で済ませる。
時刻を確認し、まだ十分な余裕があるとわかり一息吐いた。

(?)

その一瞬。ボクは何か得体の知れない違和感に触れた。
「何?」
首を振り、周りを見回した。…が、当然の如く、この部屋にはボクしかいない…

(当然…って、ここはボクの部屋じゃナイだろ?)
そこはボクの知る筈のない部屋の中だった。だから、ここには本来の住人がいる筈…どこかに隠れている?
いや、ボクが身支度するのにうろついた範囲では、他に誰かいる気配はなかった。
しかし…と、ボクは立ち上がり、部屋の中にある扉を開いてみた。

そして、トイレにも風呂場にも、クローゼットの中にも隠れていない。
と、目の端に時計が写った。
(ヤバイ!!)
予定の時刻を過ぎてしまっている。
慌てて机の上に置いておいたバッグを引っ掛けて玄関に向かう。
靴を履き、ドアを開けてドアを閉める。バッグから取り出した鍵で施錠する。
腕時計で時間を確認し、少し駆け足で待ち合わせの場所に向かった。

 

「ご、ゴメン♪遅れちゃって。」
「良いよ。気にしてないから♪それより、面白い経験だったでしょ?」
「面白い?」
ボクはまだ頭の中が整理できていなかった。
「どうかした?」
と彼がボクの顔を覗き込む。
(彼?)
ボクはホモではない。が、何故か彼を自分の恋人のように感じている。
「まだ安定していないようね♪」
彼の方はカマっぽい喋りだ。…と言う前に、彼って誰だ?
ボクの記憶は「恋人」という単語に彼の名前が掻き消されかけている。
「まあ良いか♪どっちにしろヤるコトは決まってるんだし♪」
とボクの手を引いて歩きだした。

「ち、ちょと…」
もともとボクは早く歩く方ではないが、彼のスピードに付いていくには早足以上にピッチを上げなければならなかった。
ただでさえ、歩き難い靴を履いているのだ。バランスが乱れる度に彼にしがみつく始末だ。
(何でこんな靴を選んでしまったのだろう?)と自省してみても始まらない。
いつもの歩幅であるけなうのも、この服に合う靴を選んだボクに非があるのだ。

(?)

再び違和感に襲われた。
この服…
この靴…
(これってボクのだったっけ?)
いや、それ以前にコレって「女物」だろう?
何で今まで気付かなかった?
「ちょ、ちょっと待って!!」
ボクはその場に立ち止まった。
「何よ?」と振り返る彼。
その顔は…

「ボク」だった。

彼が「ボク」ならボクは誰だ?
って、決まってるだろう?ボクの彼女だ。
「彼女」なんだから、当然ボクは女の子で、だから女物の服を着ているのだって何の問題もないじゃないか?

「落ち着いた?」
と彼が聞いてきた。
「人格交換て、慣れるまでに時間が掛かる事があるって言われてたものね。まだ気分が悪いなら、しばらくここにいようか?」

 

「人格交換」のキーワードでボクは思い出した。

 

「ねぇ、ちょっと変わったことしてみない?」
彼女に言われ渡されたネックレスを首に掛けて昨夜は寝たのだ。
「このネックレスを着けると人格交換ができるの。明日のデート、立場を替えてみるのも面白くない?」
彼女はそう言っていた。
言われた通りに、寝る前にネックレスを着けたのだ。その時は確かに「ボク」の部屋だった事を覚えている。

そして、目覚めたのは「彼女」の部屋だった。が、人格を交換しただけで、脳内の記憶はそのままなのだ。
だから、無意識の行動は「彼女」自身として滞りなく行われていた。殆ど矛盾を感じずに、ボクは下着を着け、スカートを穿き、お化粧もしていたのだ。

 

ボクは互いの首に着けられたキラキラと輝くネックレスを確認した。
「うん♪もう大丈夫よ。落ち着いたわ。」
「良かった。何か問題があったのか心配しちゃったわ。」
「さあ、人格交換を楽しみましょうか?」
「そうね♪」
「ダメ。ちゃんと成りきらなきゃ。おネエ言葉じゃおかしいわよ♪」
「あっ…」
「それからもう一つ♪もう少しゆっくり歩いてくれない?女の子の歩幅じゃ付いていけないわ♪」
「ごめん♪気付かなかったわ…きづかなかったぜ。」
「無理に語尾を変えてめ不自然なだけよ♪」
「そうみたいだね♪」
ひとしきり二人で笑った後、当初の目的地「ラブホテル」に向かって歩き始めた…

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