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2013年6月 7日 (金)

疼き

手を前に伸ばす。
そこにある「鏡」の表面に掌を当てる。

が…、掌は鏡面をすり抜け、手首まで鏡の中に没してしまう。

更に前に進む。
腕は肘まで没し、俺の目の前に「鏡」があった。
顔を近づける。鼻も鏡面に触れることなく、その向こう側に没する。
そのまま、頭を鏡の中に突っ込ませた…

 

そこは「異空間」だった。

 

合わせ鏡がねじ曲げた空間の狭間に俺は入り込んでいた。
そこはどこでもなく、どこでもあった。
そこここにある四角い窓はどことでも繋がっていた。
それは俺の部屋であったり、隣の部屋かと思えば、地球の裏側の部屋に繋がっていたりする。
どこに繋がっているのかは、窓を覗き込んでみなければ解らないが、それは高い確度で俺の知っている部屋に繋がっていた。

 

その部屋は「女」の部屋だった。
たが、誰の部屋であるかは見当が付かなかった。
窓は花柄のカーテンで閉ざされている。ベッドにはぬいぐるみが並び、フローリングの床の上にはファッション誌が散らばっていた。
他に手掛かりはないかと身を乗り出した…

ゴロリ…

俺は狭間の空間から抜け出していた。
尻餅を突き、そのまま床に座った姿勢になる。
目の前には「鏡」があった…

それが「鏡」であることに気付くまで、しばらく間があった。
何故なら、そこに映っていたのは「俺」ではなく、この部屋の住人と思われる「女」だったからだ。
女は膝を合わせ、折り曲げた足先を広げて、その間に尻を降ろして直接床に付ける…女の子独特の座り方をしていた。
そして、俺自身が自然とその座り方をしているのに気付き、鏡に映っている女が今の俺自身であることが判ったのだ。

 

鏡に映る女の顔を見た。
見覚えはあるのだが、誰だったかが思い出せない。
強いて言えば、母の若い頃の写真と似ていなくもない。

(!)

あり得そうもない仮説が、ふと俺の頭に浮かんだ。
部屋の中を見回す。調度類はこの女の趣味で揃えたのだろうが、部屋の造りは変えようもない。
立ち上がった時、広く感じたのは、この女の背丈が「俺」よりかなり低いからだ。
何より、机の上の郵便物…ここの住所は「俺」の住むアパートのものであり、室番号までまったく変わっていなかった。

ここは「俺」の部屋であり、この女は…俺が女として生まれた平行世界の俺自身に他ならなかった。

 

 
ピピピピ。と電子音がした。
ユニットバスが入浴OKを報じたのだ。
俺は浴室のドアを開いていた…

(お前は何をしている?風呂に入るには裸にならないといけないのだぞ。お前は断りもなく、この女の裸体を見ようとしているのだぞ!!)
俺の頭の中で煩く騒いでいる奴がいたが、平行世界とは言え、この肉体が俺自身のものであることに間違いはないのだ。
自分自身の身体なのだから、見るのは自由。触るのも自由。エッチなコトをしても文句言われる筋合いはないのだ!!
俺は着ていた服を一気に脱ぎ捨て、掛け湯ももどかしく湯槽の中に身体を沈めた。

 
俺の目の前で双つの乳房がプカプカと浮いている。
これまで見た事のない光景だった。
ソレに触れてみる。と、ソコからは触れられた感覚が届いてくる。
この乳房は本当に俺の身体の一部なのだ…

俺の手は、そこから先…「股間」に進んでいった。
指先が割れ目に触れた。男であれば、そこにペニスが存在し、迂回を強いられる。
指先はそこから肛門の間に、男には存在しない器官に続く路を捉えていた。
膣口だ。
俺は指先を折り曲げ、その中に挿入していった。
俺の指先は「女」を責めていたが、俺の下半身は責められていると訴えている。
(止めて良いのか?)
と聞くと俺の内の「女」が、もっと激しく♪と訴えてきた。
俺が指先に勢いをつけると、女も感じてきたようで
「ぁん…あふぁん♪」
と甘い喘ぎ声を浴室内に響かせ始めていた。
愛液が膣から溢れ、お湯の中に広がってゆく。
指の動きとともに、温かなお湯が膣の中に入って来る。
チャプチャプという波音とオンナの喘ぎ声に浴室が満たされていた。
(な、何かクる?)
俺はオンナとして「俺」に犯され、イかされようとしているのだろうか?
(どお♪オンナの快感は?)
俺の頭の中で笑っている女がいた。
が、彼女もまた「俺」自身なのだ。
(女の子になって、女の快感を経験してみたいって思ったこと、無いとは言わせないわよ♪)
確かに否定はできない。だから、彼女は平行世界の俺ではなく、元々俺の内に居た「女の俺」なのだ。
(さあ、次は指では物足りないわよね?ほら、そこにスプレー缶があるわ。丁度良い大きさじゃない♪)
俺は洗い場に降り、そのスプレー缶を手にした。
(早く挿れて♪)
俺は俺自身に懇願していた。
「あん、あああっ…」
それは指より太く、硬かった。それがあたしの膣を蹂躙してゆく。
「あ、あ、あ…」
即にもイきそうになる。
空いた手で乳房を揉みあげる…
「だ、だめ…。イっちゃうのォ~~♪」
あたしが乳首を刺激した途端、
「ああああーーーっ!!」
あたしは押し寄せてくる快感に嬌声をあげていた…

 

 

朝になっていた。
夕べの記憶がはっきりしていなかったが、あたしはちゃんとパジャマを着てベッドで眠っていた。
(何があったの?)
自問しても答えは返ってこない。ただ昨夜、盛大にオナニーをしただろうことは股間の疼きが物語っていた…

あたしは無意識のうちに彼に電話を掛けていた。
「お早う。ねえ、今日シない♪」
あたしは今、無性に本物の「男」のペニスに貫かれたかった。
(ハジメテじゃないのに…)
まるで処女のように、彼に抱かれることに興味深々となっていた。
考えただけで股間が潤んでいる。
(どうしちゃったんだろう?)
考えても無駄なことはわかっていた。
あたしは彼とのデートに心を弾ませながら、お化粧を始めた…

 

 

 

 

 
…俺の手が空を舞った。
掴もうとした化粧水の瓶など「俺」の部屋にある筈もない。

俺は「男の俺」に戻っていた。

が、オンナの心地よい「疼き」をいまだに感じていた…

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