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2013年6月 7日 (金)

航行士

光の速度を超えて宇宙を飛び回るには、一つの制約があった。
人間の脳内にある退化した器官の一つに空間把握能力を司るものがあった。
それは、人類が外宇宙からやってきた生命体の末裔であった証であるとともに、人類が再び宇宙に戻るために必要な「鍵」でもあった。
超光速航行には、空間把握能力者の存在が欠かせなかったのだ。

彼等の脳波が干渉して、空間転移の座標が固定されるのだ。そして能力の大きさが、そのまま移動可能距離に反映される。
だが、その能力の大きさは訓練である程度増強することは可能であるも、器官自体のキャパシティには個人差がある。
本人の努力の如何に依らず、持って生まれた器官の性能に左右されてしまうのは仕方ないことであった。
だから、惜しまれながらも能力を持っていても宇宙に出たがらない人がいる一方で、その能力だけで世間を渡り歩く輩も無視できない位には存在していた。

 

 
(宙軍航行科)
俺の配属先は端から決まっていた。
俺の脳内には十分な大きさの器官が認められていたのだ。他に能のない俺は、必然的にココに配属となる。
何も珍しいことではないし、ここにはそんな奴等が何人もいた。

数十時間の訓練の後、実物の艦艇に配属される。
最初は見習いのため、先任航行士逹の元で実運用を体験する。搭乗する艦艇も宙軍の主力巡洋艦だったりする。
が、ここまでがお客様扱い…一航海を終えるなり、配属されたのは使い古された貨物船だった。
勿論、航行士は俺一人である。
「お前がヘタこいて貨物の到着が遅れたりしたら、損害分はお前の給料から差っ引くからな。」
と最初に船長から言い渡されてしまった。
(軍隊の場合、遅れるとどんだけの損害になるのかな?)
とりあえず任務地が最前線でないことにほっとしていた。

 

貨物船〈合歓木103号〉はダ・カン船長以下、航海士のヘ・サント少尉、機関士のクア・タイラ伍長、執務士のミィ・カン兵長…そして俺の5名しか搭乗していない。
俺は何とかミスをせずにいた。他の乗組員とも少しは打ち解ける事ができたと思う。

「跳躍ポイントに入ります。」
俺は機関士に超光速エンジンへのエネルギー充填状況を確認すると、航海士から操舵を引き取った。
コンピュータの吐き出した航路予測を頭に焼き付け、超光速エンジンに干渉を掛けながら出力を解放する。

一瞬後、貨物船は今までとは別の宙域を進んでいた。
「座標確認。所定のポイントです。」
と、ここまでが俺の仕事だ。
後は航海士に操舵を返し、次の跳躍に必要なエネルギーが蓄積されるのを待つことになる。

艦橋に居ても何もすることがないので、自室に戻っているとミィが珈琲を持ってきてくれた。
「何してるの?」
「別に…」
何か趣味でもあれば空いた時間を趣味に充てれば良いのだが、生憎と俺は無趣味のため本当に何もすることがなかった。
「良かったらあたしの持ってる本でも読む?」
別に断る理由もなかったので、彼女の本を借りることにした。
「女の子」の本…と思っていたが、渡されたのは執務士の資格取得のテキストだった。
執務士は航行士の能力がない場合に誰もが選択する資格である。執務士は実際の艦艇の航行には関与しないが、長期の航海での乗組員の日常生活を支援するのが主な仕事となる。

テキストをペラペラ見ていると「美味しい珈琲の淹れ方」なるタイトルがあった。
ミィの淹れてくれた珈琲が美味しいのはコレなのか?と、テキストに従って淹れてみた。
…GJ♪
ミィのと同じ味になった。

貨物船の航行士は暇である。
定期的な物資の運搬のため、急ぐ必要がないのだ。故にエンジンへのエネルギー充填も効率重視となる…
つまり、航行士の待機時間が長くなるのだ。

暇潰しにテキストの他のページも試してみた。

 

それがミィの思惑だったのか、執務士の仕事が面白くなり、俺は頻繁にミィの手伝いをするようになった。
「どうせなら執務士の船内服を着てみたら?」
の提案にも乗せられてしまう。
エプロンが付いているので服を汚す心配はないが、どことなく女性的な体のラインをイメージさせるデザインに恥ずかしさがない訳ではなかった。
勿論、船長を始め他の乗組員には話していないので、執務士の服を着た俺をミィと間違うのも無理からぬ話であった。

 
「ああ、ミィ。上着のボタンが外れかけてるんだ。後で俺の部屋に来てくれないか?」
と通路の端から声を掛けてきたのはクアだった。
足りない香辛料を独りで倉庫に取りにいったときだった。
声を出すとバレてしまうので、手を振って判ったと合図しておいた。
ミィにそのことを話すと、
「あんたが行ってくれば?出来なくはないんでしょう♪」

 

結局、俺が行くことになった。
道具を片手にクアの部屋のドアをノックした。
「入って良いぞ♪」
とクア。
ドアを開け、中に入ったがクアの姿は見えず、ベッドの上に依頼のあった上着が置かれていた。
ベッドに近づき、上着を手に取ろうとした時…
「キャア!!」
と俺はすっとんきょうな声をあげていた。
尻が撫でられ、背後から抱き締められ、胸元の隙間に手が滑り込み、俺の乳首を摘まみあげようとしたのだ。
が、俺はミィではない。胸は平らで、乳首の出っ張りもない。彼の手は空振りに終わったのだが、その行為の勢いは惰性がついていた。
「クアさん。何をするんですか?」と抗議に振り向いた俺の唇が彼の唇に塞がれてしまった。
そのまま舌が入れられ、俺は何も喋れなくなってしまった。

頭がくらくらしだした頃、クアがようやく人違いに気付いたようだ。
「お、お前!!ミィじゃないな?」
「もっと早く気付いてくださいよ。いくら何でも、男だくらいは即に判るでしょ?」
「お、お前が紛らわしい格好をしているのがいけないんだ。それに俺が呼んだのはミィの筈だぞ。」
「ボタンの直しならできるわよねって、ミィから代わりに行くように言われたんだ。」
「な、なら。さっさと仕事して行け。」
それを邪魔したのはクアさんでしょう?との抗議はせずに、俺は作業に取りかかった。
その間、クアはチラチラと俺の方を窺っていた。

「終わりましたよ。」
と俺は上着をクアに渡し、道具を片付けた。
部屋をでようと立ち上がると
「ちょっと待ちな♪」
と俺をベッドに押し戻した。
「お前ならミィの代わりでも問題ないな♪」
とクアはギラついた眼で俺を見ていた。
「な、何なんですか?」
「お前ならミィの代わりに抱いても悪くない♪」
「抱く?ミィの代わり?…って、俺は男ですよ!!」
「気持ち良ければ、男も女も関係ない♪」
「俺はそうは思わない。だから止めてください!!」

俺の抗議は聞き入れられる筈もなく、ベッドに押し倒される。
執務士の船内着が簡単に剥ぎ取られた。
俯せにされ、下着も取られる。
「すべすべの良い肌をしているじゃないか♪」
とクアの指が背筋を撫であげた。
「あぁん♪」
と艶かしい吐息が漏れてしまう。
(男に抱かれたミィもこんな艶声をあげるのだろうか?)
ついつい、ミィならばどうするか?と考えてしまう。
「あんっ、ソコは駄目っ!!」
彼の指がお尻の穴の前を撫で擦る。
「嘘つけ。お前のマンコは挿れて欲しくてヒクヒク言ってるぞ♪」
「そ、そんなコトない…」
と否定している傍から、クアの指が侵入してきた。
「んあぁ、あああん♪」
俺はソコを責められた女のように喘ぎ声をあげていた…

 

 

次の日には、俺がクアに抱かれた事が皆に知れ渡っていた。
が、誰も俺の事を咎めたり蔑んだりしてはいなかった。
逆に家族の一員として迎え入れられたような優しさに満ちていた。

「跳躍ポイントに入ります。」
俺はシートに座ると、クアにエネルギー充填状況を確認した。
「いつでも良いぜ♪」
と親指を突き上げる。
俺は別のサインを連想して顔を赤らめてしまった。

サント少尉から操舵を引き取り、コンピュータの吐き出した航路予測を頭に焼き付ける。
いつも通りに超光速エンジンに干渉を掛けながら出力を解放する。

一瞬後、貨物船は今までとは別の宙域を進んでいた。
「座標確認。所定のポイントです。」
と、俺の仕事が終わる。
「良かったら珈琲を淹れてきてくれないか?」
船長が俺に言った。
「たまにはミィ以外の淹れた珈琲が飲みたくなるんだ♪」
俺はシートから立ち上がった。
「良いですけど、マニュアル通りなんでミィが淹れたのと味は変わりませんよ。」
「構わん。気分の問題だ。」
「あ、俺もな♪」
とクアが便乗する。
「少尉はどうします?」
と聞くと
「私も頼む。」
との事
「判りました。」
と俺が艦橋を出ようとすると、
「きゃ!!」
クアの手に俺のスカートを捲り上げられ、俺の可愛らしい叫び声が艦橋に響いた。
その後に沸き起こった笑い声を背中に、俺は艦橋を後にした。

 

 
最近、俺は執務士の服ばかり着ていた。
航行士として艦橋に入る時もである。
「軍」であれば規律が重んじられるものであるが、そこは末端の貨物船の中である。
執務士の第2船内着はワンピースで俺のお気に入りだった。
スカートの下は素足を晒すが、執務士のトレーニングで女の子のように綺麗になった脚を見せびらかしたかったのだ。

ミィからお化粧も教わっている。クアが「どんどん可愛くなっていくね♪」と言ってくれる。
寄港する度に可愛い服が増えてゆく。クアが買ってくれるのだ。
勿論、脚が綺麗に見えるミニ丈ばかりだ。だから、俺も下着のお洒落に気を使っている。
クアが捲るのは別としても、外に出れば風に捲られる事を想定していなければならないからだ。

 

「胸も揉めるくらいにはあった方が良いかな?」
とクアが言う。
俺も可愛い服でも胸元が開いているのが着れない事に不満を感じていた。
「ホルモンを使うの?」
「時間も掛かるし、個人差があるからな。手術で確実に膨らました方が形も良いらしいぞ。」
「普通の寄港じゃ入院してる時間なんてないんじゃない?」
「お前がその気ならいくらでも手はあるぞ。とりあえず次の寄港の前日は何も食わないようにしておけな♪」

そして、船が港に着くなり、クアは俺を車に乗せた。
「明日の朝には全て終わってるからな♪」
と病院には見えない建物に俺を放り込んだ。
「データは揃っていますから、即に施術に入りますね。」
案内の女性が部屋に案内する。
「効率を上げるため、滋養液に入りますので、全裸になってそこのベッドに横になっていてください。」
俺は言われるままに服を脱ぐと、ベッドに上がりそこにあった毛布で下半身を被った。
何故か、即に眠気が襲ってきた…

 

 
「気が付かれました?」
女性の声に意識が復活してゆく。
胸が締め付けられる感じがして、手を伸ばした。
(??)
「手術は滞りなく終わってます。もう朝ですよ♪」
俺の掌には膨らんだ「胸」の感触があった。
「もうすぐ、お迎えが到着するようですよ。急いで支度された方が良いと思いますけど?」
俺はベッドから降りた。既に服は着せられていた。
俺はバックから化粧道具を取り出すと、急いでメイクを施した。

「わお♪見違えたよ。早速にもひん剥いてお胸を拝みたいが、出港時間が迫ってるからな♪」
とクアは服の上から新しい感触を確かめるに止めた。

船に戻ると出港の慌ただしさに巻き込まれていった。
航行士の俺は用がないので暇していても良いのだが、執務士の船内着に着替えてミィを手伝っていた。

やがて、惑星の重力圏を抜け出すと、本来の航行士の仕事が待っていた。
シートに座り、いつもの手順を繰り返す。
クアにエネルギーの充填状況に問題ないことを確認する。
「跳躍ポイントに入ります。」
コンピュータの吐き出した航路予測を頭に焼き付け、超光速エンジンに干渉を掛けながら出力を解放した。

一瞬後、貨物船は今までとは別の宙域を進んでいた。
「座標確認。…所定のポイントではありません!!誤差確認中…誤差5%です。」
すぐさま、操舵をサント少尉に引き渡す。俺の顔面からは血の気が引いていた…

「クア。お前から何か言う事はないか?」
船長は俺ではなく、クアに声を掛けた。
「な、何で…」
「航行士の肉体はデリケートだ。己の状態を把握していないと、正確な干渉はできないのだ。彼の胸を見て、様子を見るため最初の跳躍距離を抑えておいたんだ。」
(そんな…豊胸しただけで狂ってしまうもんなのか?)
「本人がその変化を意識していれば問題になる事はない。クア…彼に何か言う事はないか?」
船長に促され、クアが俺を見る。
「そ、その… 胸だけじゃないんだ。ついでに、下の方も処理してもらっているんだ。」
とクア…
「下?」
俺が彼の言いたい事を理解するまで、暫く時間が掛かった。
「つまり、お前の男性器を切除し、女性器を造築処理もやってもらっていたんだ。」
(つまり、俺はもう「男」ではなくなってしまったということ?)

気が付くと俺は自分の部屋のベッドに顔を埋め、涸れるまで涙を流し続けていた。

 

 

俺はスカートを穿いた時におかしくないように、ペニスを隠すようにしていた。
それが当たり前になっていたので、それが失われても気にはならなかった。
が、今は更に「男」を受け入れるための器官が造られている。
これをクアが使わない筈がない。今は船長の監視下にあるので大人しくしているが、いずれは…
俺はその「時」を迎えるのが怖かった。

「それはもう貴女の肉体の一部なんだから、早めに自分のモノにしておいた方が良いんじゃない?」
とミィが無責任な事をいう。が、
「無責任なんかじゃないのよ!!」
と反論された。
つまり、そこに「男」を受け入れて、始めて自分の肉体を隅々まで把握した事になるという事らしい。
確かに女性の進出も少なくない宙軍において、航行士に占める女性の割合は極端に低く、ましてや若い女性の航行士は皆無に等しかった。

「クア?」
俺はその夜、クアの部屋を訪れた。
「一応は覚悟してきたけど…」
俺はクアの前で服を脱いでいった。
「…ヤサシクしてね♪」
と裸体をクアに委ねた。

 

 

 
「跳躍ポイントに入ります。」
俺はシートに座ると、クアにエネルギー充填状況を確認した。
「いつでも良いぜ♪」
と親指を突き上げる。そのサインもマンネリかな?
サント少尉から操舵を引き取り、コンピュータの吐き出した航路予測を頭に焼き付ける。
いつも通りに超光速エンジンに干渉を掛けながら出力を解放する。

一瞬後、貨物船は今までとは別の宙域を進んでいた。
「座標確認。所定のポイントです。」
と、俺の仕事が終わる。
「お疲れ様。港までは少尉が連れていってくれる。今日はもう明日に備えてゆっくりしていなさい。」
今回の寄港は少し長めの休暇とセットになっている。
その初日は

俺とクアの結婚式になっていた。
俺がウェディングドレスを着ることになるとは、想像もしたこともなかった。
が、クアが
「責任を取る…とかいうんじゃない。俺はお前を愛している。生涯一緒にいたいんだ。」
とプロポーズしてきたのだ。
想いもよらない…ではない。俺もそんな事にならないかと期待していた所もある。
そのプロポーズに俺は即にYESを答えていたのだった。

 

父親代わりの船長にエスコートされ
俺はバージンロードを歩いていった…

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