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2013年5月26日 (日)

選択(B)

(とにかく、こいつを何とかしなくては…)

俺の目の前に転がっている物体…「俺」の肉体をどうにかする必要があった。

 

確かに俺はドジを踏んでしまった。
その家の厳重な監視の死角を探し出し、まんまとお宝を手に入れた所までは良かった。
その家からの脱出の直前に、あろうことか、この家の幼い娘とばったり出会ってしまったのだ。
(半分寝ぼけている。お前の顔なんて覚えてはいないさ。)
と囁く声と
(見られたのなら殺してしまうしかないぞ。)
との二つの声の間で俺の心が揺らぐ。
しかし、今即決しなければ、リスクはどんどん高まってゆく。

俺は…

 

娘の口を塞ぎ、首を絞めあげた。しばらくすると娘はぐったりした。
俺は娘の心臓が止っている事を確認してから脱出した。
が…

やはり、人を一人殺したと言う事の事実は俺に重く伸し掛かっていた。
同じ犯罪でも、盗みとは次元が違う…
俺は夜も眠れなくなっていた。

 

枕元に「娘」が立っていた。
(あたしの人生を返して!!)
俺の頭の中に娘の声が響き渡る。
(何であたしが殺されなければいけなかったの?)
娘は責めるように俺を睨みつける。
しかし、俺にはもうどうしようもない。殺してしまった娘を生き返らす事など出来はしない。
(なら、あたしに新しい肉体を用意するのね♪)
「新しい肉体」?
どう言うことだ?
別の娘を捕らえて、「娘」の魂と入れ換える?そんなこと出来るのか?
そもそも「魂」などという非科学的なものなど存在しないのだ!!

では、枕元に立つこの「娘」はどういう存在なのだ?

 

枕元に立つ「娘」は無視できず、眠れぬまま朝を迎える。
そんな日々が続けば精神に異常を来すのも即であった。
朝から公園のベンチに座っていた。
公園には様々な人々がやってくる。赤ん坊を連れた若い主婦達に占拠されたかと思うと、学校の下校時刻に合わせて、各々の年代の子供達が代る代る公園を占拠する。
やがて夜になると、浮浪者が寝る場所を求めてやってくる。
二日目には「娘」と同じ年代の子供達を観察した。
三日目に、目を付けた娘を捕らえようとしたが、流石に不審に思われたか、警察官が近くを彷徨いていた。

 

(別に他の娘を連れて来なくても良いのよ♪)
と「娘」が言った。
(貴方は信じないでしょうけど、今のあたしは黒魔術の力で存在しているの。)
黒魔術?!
(所謂「悪魔の力」ね。貴方が契約に同意すれば、あたしの肉体は甦るわ。)
俺の同意が必要なのか?
(あたしを殺したのは貴方なんでしょ?)
そこまで言われて、拒否できるものではない。
(契約成立ね。じゃあ、あたしの肉体を再生させてもらうわね♪)

悪魔の力なのか、俺は身動きができなくなっていた。
「娘」は俺に近づくと、口から俺の中に侵入してきた。
勿論、実体があるわけではない。顎が外れる事もなければ、喉が詰まる事もなかった。
が、彼女が食道を通り、胃から俺の腹の中に入っていった感じが手にとるようにわかった。
腹の中に止まった彼女がそこで何を始めたかは解らないが、みるみるうちに俺の腹が膨らんでいった。
まるで妊婦のように膨らんだ腹の中には何かが存在した。
別の生き物のように、俺の腹の中で好き勝手に蠢いている。
そいつは、俺の血・肉を吸収してどんどん大きくなってゆくようだ。
逆に、俺の手足は痩せ細り、干からびていった。

血が足りなくなったか、俺の意識が混濁し、頻繁に途切れるようになる。
そして、そいつが俺の腹から産み落とされた。
それは陣痛だったのだろうか?強烈な痛みに俺の意識が途切れた。
そして次に意識が回復した時には、俺の目の前に「俺」の肉体があった。
それは俺の服を着ていた。最初は事態を把握できず、それが「俺」であるとは気付かなかった。
俺の目に、自分の腕が見えた。先程まで細く干からびていたものが、同じ細さでも全体が縮小された感じで、皮膚は健康的な瑞々しさに溢れていた。

これが自分本来の肉体ではないと解り、目の前の物体が「俺」の肉体であると認識できたのだ。
そして、今のこの肉体は「俺」の腹から産み落とされたものに違いない。

 

俺はゆっくりと立ち上がった。
(ご苦労様。ちゃんと再生できたようね♪)
娘の声が聞こえた。
全まで確認せずとも、この肉体が「娘」のものである事は確かであった。
(これであの人達の娘は蘇った。これからは貴女が彼らの「娘」だからね♪)
「ど、どう言うこと?」
俺の口を吐いたのは甲高い女の子の声であった。
(あの人達は娘を甦らせる事を悪魔と契約した。悪魔は因果の法により、貴方の肉体から「あたし」を再生した。)
「それで?」
(それで終わり。契約は完遂されたの。契約にはあたしの魂の復活までは含まれていなかったわ。)
「それじゃあ、君は?」
(あたしはこれで「ジエンド」。成仏すわね♪)
と、一瞬で彼女の気配が消えてしまった。
後に残されたのは俺と「俺」…

 

元に戻せ!!と言っても、聞いてくれる相手がいない。
いや、いたとしても、彼女にはどうする事もできないのだろう。

結論としては、俺はこの「娘」の姿で生きて行かければならないという事だ。
と、なった場合に問題となるのは…

(とにかく、こいつを何とかしなくては…)
俺の目の前に転がっている物体…「俺」の肉体をどうにかする必要があった。

このまま放置していると、ややこしい事になりかねない。
(彼女と同じように、フッと消えてくれれば良いのだが…)
と、俺が「俺」に触れた途端…「俺」の肉体なボロボロと崩れ落ち、塵の固まりと化していった。
ドアと締め切っていた窓を開けると、風が吹いてきて、何処かへと「塵」を運び去ってしまった。

結局、「俺」は行方不明となり、「俺」に誘拐されていた「あたし」は無事保護されて、パパとママの元に戻された。
そして、何事もなかったかのように、日々が移ろいでいった。

 

 

「信じる・信じないは貴方の勝手よ。」
あたしはベッドの上であたしを抱いている男にそう言った。
「つまり、俺が今抱いている君の中身は男だと言うのか?」
「萎える?」
「萎えないさ♪」
「貴方…ホモ?」
「違うよ。中身はどうであろうと、君の肉体は女の子な訳だろう?中身だってもう女の子に染まってるさ♪こんなに感度が良いお×んこに萎える訳ないだろう?」
「んあん♪あああ~ん!!」
あたしは彼の責めに媚声をあげることしかできなかった。

 

アナタは信じる?
    信じない?

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