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2013年4月25日 (木)

「これって動物なの?」
僕は「ソレ」が生き物であることが信じられなかった。
「ジャングルの奥、密林に囲まれた湖に浮かぶ孤島。そこにだけ棲息している、未だ世間に知られていない珍獣だ。」
「そんなモノ持ち込むなんて犯罪じゃないの?」
「まあ、そこには色々な大人の事情があるんだ…ムフフン。」

 

そう言って語尾を濁した叔父さんは、世界中を飛びまわる「自称」冒険家だった。
海外から帰ってくると、様々な珍しい土産物とともに面白い話を僕にしてくれる。
今回はジャングルの奥に分け入ったという事らしい。

確かにその「動物」は生きているようだった。
「こいつは絶対に女性に近付けてはならないんだ。こいつは女性に限らず、哺乳類の牝を見付けると、見境なしにその子宮に卵を産み付けてしまうんだ。」
と叔父さんはそいつの首を摘まみ上げた。
「今は牡がいないから無精卵が育つだけだが、有精卵が孵るとこいつの小さいのが腹からうようよと出てくるらしい。」
(そんな物騒なモノは持ち込まないでもらいたい…)
とは思っても、この叔父さんに何を言っても無駄な事は、僕よりも付き合いの長い両親からくどいくらいに聞いていた。

「そうだ。美味しいお菓子があったんだ。持ってくるからこいつを持っててくれないか?」
と叔父さんはソレを僕に渡すと席を立って行った。
僕が叔父さんの所に来る理由は、面白い話も勿論だが、それ以上に叔父さんのお土産の食べ物にあった。
叔父さんの舌は確かで、今までに不味いものはおろか、美味しさの足りないものを出してきた事がない。
その「お菓子」の美味しさを想像し、僕はソレをぎゅっと抱き絞めていた。

 

…?

僕の太股の上で、そいつがモゾモゾし始めた。下の方から何かが延びてきて僕の股間を突っついている。
どうなっているのか確かめよいにも、こいつを逃がさないように押さえ込むのがやっとだった。
ビリッと布が裂ける音がした。
こいつの下から延びてきたモノが僕の内股に直に触れている。
そいつの先端はパンツの中に入り込んでいた。
おぞましさにオチンチンが縮み上がる。
それは僕の股間を一通り撫でまわすと、オチンチンの裏側の根本に止まった。
ギュッと圧し付けられた後、掃除機のホースのように吸い付いてきた。
しかし、掃除機とは比べ物にならない桁外れの吸引力に、僕の股間が吸い取られてしまったような錯覚に陥っていた。

頭がボーッとしていた。
いつの間にか吸引は終わっていた。
そいつは僕の腕から逃れ自由を手にしていたが、いまだ僕の太股の上にいた。
そう、掃除機のホースのように伸ばしたものは、まだ僕の股間に密着していた。
吸引を終えたそいつは、今度は吸い取った僕の股間を埋めるように、何かを吐き出していた。
ボーッとしたままの僕はそれを阻止する事はできなかった。
そいつは吐き出すものを全て吐き出し終えると、そのまま動かなくなっていた…

 

「…くん、まーくん?」
叔父さんの声に意識が戻ってきた。
美味しそうなコーヒーの匂いが漂っていた。
「大丈夫か?」
そう聞かれる。
「まだ、頭がふらつくけど、それ以外は何ともないよ。」
と答えていた。
肉体的には問題なかったが、あいつが居た僕の太股のまわりが盛大に濡れていて、不快感この上なかった。
「こんな事になるとは思ってもいなかったよ。着替えを用意しておくから、シャワーを浴びてきなさい。立てるね?」

 
バスタオルを体に巻いて戻って来ると、叔父さんが着替えを渡してくれた。
「わたしの服では大き過ぎるからね♪」
それはどこかの民族衣装なのだろう。カラフルでとても可愛かった。着るのも楽で、着心地もよかった。
そして僕を待っていたのは美味しいお菓子と薫りの良いコーヒーだ。
「いただきまーす♪」
お菓子はほっぺたが落ちそうなくらい甘くて美味しかった。

「まーくん。本当に何ともないんだね?」
しつこいように叔父さんが聞いてくる。
「そんなにしつこいと女の子にモテないわよ♪」
叔父さんの困ったような顔を見て、僕は笑ってしまっていた。
「できれば、もう少し詳しく調べた方が良いと思う。今日はここに泊まることになるが構わないかね?」
僕としては何も問題はない筈だった。
「別に構わないわよ♪」
それ以上に、もっと叔父さんと一緒にいれる事が嬉しかった。

 
いつもは使われていない奥の部屋に入った。
明かりが点けられると中の様子がわかる…そこは病院の手術室のようだった。
叔父さんはいくつかの装置を中央のベッドな近くに移動した。大きなモニタの前に椅子を置きスイッチを入れると、そこに繋がれた装置逹が一斉に動き始めた。
「診てみるから服を脱いでベッドに横になって。」
僕がパンツ一枚でベッドに上がると、叔父さんは僕のお腹にクリームを塗った。
そして装置から延びる器具を僕のお腹に圧し当てる。叔父さんはモニタを見つめながら器具を上から下に、下から上に移動させる。
時々、僕に「息を吸って…」とかの指示を出す以外は、独りで唸っていた。

「落ちないように固定するから、少しの間我慢してね。」
お腹のクリームをタオルで拭き取った後、叔父さんはベルトで僕の胴体と腕を固定してしまった。
「脚を持ち上げるよ」そう言って、新たにベッドにセットした台の上に脚が乗せられ、これもまたベルトで固定された。
左右の脚が固定されると、股間が広げられた形になった。
「ちょっと御免ね♪」と叔父さんが言うと、ジョキリと布が裁断される音がした。パンツが切られ剥ぎ取られたようだ。
恥ずかしいが、手足を固定された僕には何もできなかった。
「ちょっとひんやりするかも知れないからね。」
と金属のヘラのようなものが僕の股間に触れた。
「ふ~む。この短時間にここまで進行するかね?」
叔父さんは別の器具に持ち換えた。僕の股間が更に押し広げられる。
「今、クスコが挿入されている場所が判るかな?まーくんの股間には膣ができているんだ。そして、その奥に卵が産み付けられている。」
僕の体にあいつの卵が産み付けられた。そこだけは理解できた…
「確かにこいつは哺乳類の牝の子宮に卵を産み付ける。が、牝がいない時には子宮を持った牝を造ってしまうまでは想像していなかったな。」
叔父さんの呟きの内容は僕には理解できなかった。

 

 

次の日、病院で僕のお腹から卵が取り出された。
卵も、叔父さんの家にいたあいつも、即座に焼却処分された。
しかし、卵が取り出されても、僕の体は元には戻らなかった。逆に、胸も一気に膨らんで、退院する時にはどこから見ても「女の子」だった。

しばらくして叔父さんから連絡があった。
(叔父さんはいつの間にか海外に逃亡してしまっていた。)
「わたしの所に来ないか?」
と叔父さんは言った。僕は叔父さんとずっと一緒にいたかったんだ。
女の子になった事で、そのことがよりいっそう明確になっていた。僕は叔父さんが「好き」なのだ。

当然、この一件の所為で両親は叔父さんを見限っていた。
叔父さんの所に行くとなると、家出同然となる。勿論、二度とこの家の敷居は跨げない。
でも、僕は叔父さんを選んでいた。

鞄に必要なものだけを詰め込み、両親への書き置きを残して家を出ていった。

 

 

 

今、僕のお腹の中に在るのは得体の知れない動物の卵なんかではない。
僕と叔父さんの「愛」の結晶だ。
ピクリと僕の子宮の中で僕達の子が動いていた。

「幸せかい?」
と叔父さんが僕に聞く。
「ええ♪」
と僕が答えると、叔父さんは僕を優しく抱き締め、唇を合わせた…


童貞喪失

「こんにちわ♪」

玄関の前で綺麗な女の人が僕に声を掛けてきた。
勿論、僕は初対面だ。両親の…と言うよりは兄貴の客だろう。
「兄に用ですか?でも昨夜から帰ってないですよ。」
「わかってるわ。頼まれて来たの。部屋に上がらせてもらえないかしら?」
悪い人ではなさそうだったので、僕は玄関の鍵を開けると、彼女と一緒に家に入った。

彼女は以前この家に来た事があるのだろうか?真っ直ぐに兄貴の部屋に向かっていった。
変な事をしないか見ている必要を感じ、僕も兄貴の部屋に入っていった。
「ねぇ、SEXしない?」
彼女は兄貴のベッドの上に乗ると、妖しく僕を誘った。
「な、何をい、言ってるんですか!!」
僕の心臓はバクバクいっていた。
「言った通りよ♪こっちにいらっしゃいな。」
胸元を緩め、艶かしい胸の谷間を僕に見せ付けた。
僕はゴクリと唾を飲み込んでいた。
「さあ♪」
と彼女が僕の手首を掴み、引っ張った。
僕はバランスを崩し、彼女に…彼女の柔らかな胸の上に倒れ込んでしまった。
「そうね?貴方は何もしなくても良いわ♪」
彼女は僕をベッドに転がすと、あっと言う間にズボンを脱がしてしまった。
更に、パンツの中から既に勃起してしまっていた僕のペニスを取り出した。
そして、僕のペニスが暖かなモノに包まれた。
下を見ると、僕の股間に彼女の頭がある…僕はフェラチオをされていた。
「だ、ダメだよ。で、射ちゃうヨッ!!」
その声に彼女の動きが激しくなった。
僕は我慢できずに、あっと言う間に達してしまっていた。
「す、済みません…」
僕の股間から顔を上げた彼女に、それだけを言う。
「良いのよ。経験ないんでしょ?それより、若いから即に回復できるでしょ♪」
と彼女の指に包まれただけで、僕の股間は元に戻っていた。

「次はアタシを悦しませてね♪」
と彼女はスカートの中に手を入れると、下着を脱ぎ去っていった。
そのまま僕の上に跨がる…再び僕のペニスが暖かなモノに包まれていた。
今度は彼女の口ではなく「女性自身」なのだ。
(晴れて僕も童貞卒業♪)
と喜んだ方が良いのだろうか、半ば強引に奪われた感じがする。
しかし、本当に女の人のナカは気持ちが良い。射したばかりだというのに、もう我慢できなかった。
「っあ、ああ…」
彼女に警告を発する間もなく、僕は彼女の膣の中に射精していた。
「お、おい!!もうイッちまったのかよ?少しはこっちも悦しませろよ!!」
と、彼女は慌てて服を脱ぎ始めた。
みるみるうちに彼女の体が膨らんでゆく。
それは、脂肪が付いて膨らむんでゆくのではなく、硬い筋肉に覆われていくようだ。骨も太くなったように見える。
骨格が変わり、顔の造りも変わってゆく…そこには「美人」の面影はなく、武骨な男の顔が…
「あ、兄貴??」

 

兄貴の話によると、呪いのようなもので「女」を移されたらしい。移された女の膣に射すと「女」が移っていくのだそうだ。
そんな訳で、今は僕が「女の子」になっていた。
「なかなか可愛いぞ♪」と兄貴が言う。
洗面所の鏡で見てみたが、僕は僕好みの女の子になっていた。
そんな女の子が僕の前…鏡越しではあるが「全裸」を晒しているのだ。
(この娘とSEXしたい♪)
僕の頭の中は淫らな妄想に溢れかえった。

ジッ…

不意に股間に漏れ出すものがあった。
それは僕の内股を湿らす。
(何?)
と股間に手を伸ばした…そこには興奮しているにも関わらず硬く突き出たものはなかった。
ペニスの代わりに股間からの切れ込みがそこに延びていた。
指を圧し当てると、股間の湿り気が僕の指を濡らした…

「何だ、もうオナってるんだ♪」
兄貴の声にびくりとする。
「可愛い妹のオナニーならしばらく鑑賞していたい所なんだがな♪」
兄貴に恥ずかしい所を見られた?
「イヤッ!!」
僕はその場にしゃがみ込みながら叫んでいた。
「まあ、続けてても良いぞ。俺はちょっと買い物に行って来る。妹に可愛い服を買ってきてやるよ♪」
兄貴は僕の返事も待たずに出ていってしまった。

 

 

結局…
「弟の童貞は奪っても、妹の処女は奪えない!!」
と言う兄貴
「やっぱり女の子が欲しかったのよ♪」
と言う母
…何も言わない父
に囲まれ、僕は女の子のまま生活している。
母が持っていた制服がそのまま着れたので、学校にはそれで通っていた。
見た目が可愛いからか、誰も何も言わなかった。

しばらくして僕も「女の子の日」を迎えた。
その夜はお赤飯だった。

タンスの中がどんどん女の子のもので埋まっていった。
女の子の友達も増えていった。
日々が何事もなく流れてゆく…

 

「あの~、付き合ってもらえませんか?」
と僕に告白してきた男の子がいた。
女の子逹の間でも上位にランクされている男の子だ。
「僕で良いの?」
「もちろん♪」
彼の笑顔に胸がときめくのを感じた。
次の日曜日にデートする事になった。
その日の晩から着ていく服は何にしようかで頭が一杯になっていた。
日曜の朝は早くから目が醒めてしまった。待ち構えていたかのような母さんに捕まると、お化粧をされた。
薄いピンクの口紅が僕の唇をプルンと愛らしく仕上げてくれた。

 

彼に会ってからはボーッとして、何で遊んだのかの記憶も定かではなかった。
気が付くと、僕はベッドの上で裸になっていた。
その上に彼が伸し掛かって来る。
(コレは不巧いよ…)
とは頭を過ったが、何がいけないのかをなかなか思い出せなかった。
そうこうしているうちに彼が僕の膣に侵入してくる。
(ダメ…もう何も考えられないヨ!!)
僕が彼に全てを委ねようとした時…
「んあっ!!…出る…」
と彼が呻いた。
「だ、ダメッ。ナカに射しちゃ!!」
僕はようやく思い出したが、時既に遅く…「変化」は始まっていた。

 

 

僕は全てを彼=彼女に話した。
そして、元に戻るために僕は彼女の上に伸し掛かっていった。
久しぶりに復活した「僕」のペニスを硬くさせ、彼女の膣に挿入してゆく…
「痛いっ!!」
彼女は当然処女だった。女の子のオナニーもしたことがない。全てが「ハジメテ」だ。その痛みは相当なモノだろう。
しかし、ナカに射さない事には収拾がつかない。
「俺の事は良いから早く済ませてくれ。」
目に涙を浮かべて彼女が訴える。
「わかったわ。」と僕…
彼女は歯を食いしばり、痛みに耐えていた。

 

彼の姿が元に戻ってゆく…
痛みの果てに、彼は気を失っていた。
僕は着てきた服に身を包み、そのまま独りで家に帰っていった。

真っ暗な部屋でボーッとしていると、携帯にメールが入っていた。
〈ごめん。君の事、何も理解できなくて。でも、君を好きな気持ちに変わりはない。明日、声を掛けたらオハヨウと応えてくれるかな?〉
その文面を見ながら、あたしの目から涙が溢れていた。
あたしは携帯の通話ボタンを押していた…
「あたしこそ、ごめんなさい。あたしがちゃんと言っていれば痛いおもいをしないで済んだのに…」
「おあいこだね。電話を掛けてくれたって事は、この先も俺と付き合ってくれるって思って良いのかな?」
「こんなアタシで良いのなら…」
「じゃあ来週もデートしよう♪」

 
次の日曜日、二人して使い切れないくらいのスキンを持ってきていたのを見て、しばらく大笑いしていました♪

ピットイン♪

爆音を轟かせてモンスターが駆け抜けていった。

俺が組み上げたモンスターを操るのは、親友の大原剛だ♪
奴のパワーは俺のモンスターを抑えて余りある。加えて、奴のテクニックがモンスターの能力を2倍にも3倍にも増幅させてくれる。

「次の周回でピットに戻せ。もうタイヤが保たないぞ。」
チーフの声にスタッフの動きが慌ただしくなった。
俺はそんな彼等の動きには左右されず、モンスターから送られてくる情報を見逃さないよう、モニタにかじり付いていた。

(ッ!!!)

一瞬の事だった。
コーナーからの立ち上がりに、一本のビスが断末魔の叫びをあげた。
モンスターのバランスが崩れる。
奴がモンスターを捩じ伏せようとした瞬間、タイヤがバーストしていた。

モンスターは大きく跳ね上がり、剛を絡め取ったまま路面に激突した。
その一瞬後、炎が立ち上がる…

コーススタッフが消火器をモンスターに向かって吹き付ける。
救急車がサイレンを鳴らして駆け寄ってくる。
モンスターの残骸から剛が救出される…

救急車が走り去っていった。

 

 

空白の時間が過ぎ去った。

「よう♪」
俺は病室の扉を開けた。
ベッドの上から剛が笑い顔を返してくれた。
剛はまだしばらくはベッドを離れられない。そして、ベッドを離れたとしても、この先一生を車イスの上で過ごすことになる。
そう…もう、マシンに乗ることができないのだ。
「なあ…」
剛が俺に呼び掛けた。
「お前の本業…確かバイオロイドって言ったっけ?そいつで、もう一度俺をマシンに乗れるようにできないか?」
剛のマシンに対する執着が並大抵のものではないとは知っていた。
確かにバイオロイドの肉体を手に入れれば、これまで以上に自在にマシンを御すことができるだろう。
俺が「本業」としているバイオロイドの開発は奴の要求を受け入れる事が可能なレベルまで来ている。が、それはあくまでも「理論上では」と但し書きが付く。
「何も開発途上のものに頼らなくても良いんじゃないか?今のお前の状態で乗ることのできるマシンなど、これからいくらでも造ってやれるぞ。」
「ほう…お前はそれで良いのか?いや、モンスターに他の奴を乗せるつもりか?」
「モンスターはもう造らん…」
「いや、お前は造らずにはいられない。俺もモンスターに乗り続けたい!!」
「しかし、バイオロイドは…」
「もう、ほぼ完成していると聞いているぞ?試作体って言ったっけ♪」
「試作体は試作体だ。お前用のバイオロイドはこれから培養を始める事になる。」
「それは何時できあがるんだ?」
「早くて3年だな。」
「待てるかよ!!そいつができるまでの間、俺に試作体とやらを使わせろよ♪」
「…」
「適合試験の被験者を探していると聞いているぞ。所謂、人体実験だろ?それを俺がやってやろうと言っているんだ♪」
「ど、どこまで知っているんだ?」
(試作体の存在を含めプロジェクトの情報は極超が付く機密事項の筈だ…)
「っま、いろいろとな♪もとより、この命、無くしたも同然の俺だ。人体実験にはうってつけだろ?」

まあ、奴が知っていたとしても、奴の口からバイオロイドの情報が他に流出する事はない。が、奴の元に情報がある限り漏洩の危険は免れない。
であれば、バイオロイドの体を提供し、奴を手元に置いておけば、その危険は回避できる。
それにしても…
「本当に良いのか?試作体のスペックが本来のお前のものとはかけ離れているのも知っているか?」
「当然♪即にモンスターを御せるよう、鍛えあげてやるよ。」

 

 

マシンの轟きが近付いてきた。モンスターに比べれば囁かな響きではあるが、女子供にはおいそれと扱うことのできないパワーを持ったマシンだ。
剛が操るマシンは、俺の前にピタリと止まった。
「調子良さそうじゃないか♪」
俺が声を掛けると、奴はエンジンを止め、ヘルメットに手を掛けた。
ヘルメットが外れるとファサッと髪の毛が広がり、甘い香りが漂ってきた。
「まあね♪」
奴の紅い唇が、以前の奴とは正反対の鈴を鳴らすような声を紡ぎ出す。

 

バイオロイドの試作体は女性体であった。剛は「それでも構わない」と試作体への適合を求め、無事、適合を終えた。
「自由に手足を動かせるのは気持ちが良いな♪」
と剛は適合した試作体のスペックを隅々まで確認していった。
「ん?」
と剛の声が上がる。
「これは?」

俺は「それ」を隠し通す事ができないと感じた。俺は「それ」についての情報を与えることにした。
「多分、それはリミッターだ。君にどのように見えているかは解らないが、そいつのスイッチを切ると、バイオロイドの能力が100%解放される。」
「何で能力に制限を掛けるんだい?折角の能力なのに勿体ない。」
「100%解放すると、その反動が凄いんだ。いくらお前とはいえ、耐えられるものではないぞ!!」

 

そんなやり取りも過去のものとなってしまった。
奴は100%の能力を己のものとし、その「反動」をも殆ど克服してしまったのだ。
「慣れたとはいえ、反動はいつもきついな♪」
マシンから降りた剛が俺の耳元で囁く。ツナギの胸元が開かれ、中にこもった熱気を解放すると同時に、強烈なオンナの香が俺を包んだ。
「付き合ってくれるわよね♪」
「反動」は奴を性的に興奮させる。それはバイオロイドの性別に対応した興奮状態を作りだす。
つまり、奴はオンナとして「男」を受け入れずにはいられなくなるのだ。

キャンピングカーのベッドに倒れ込む。
姿はとびきりの美女である。が、その頭脳は「男」である。
オンナのようにシナを作り、俺を誘っても、彼女の向こうに「彼」が見えてしまう…
しかし、肉体は俺の意思とは無関係に「オンナ」に反応してしまう。俺の股間は痛い程に硬くなっていた。
ズボンのベルトが外され、下半身が剥き出しになる。
その上に「全裸の美女」が跨がってくるのだ。
ねっとりとした暖かなモノにペニスが包まれる。
「んあん♪」と艶かしいオンナの喘ぎ声が俺の耳に届く。
「ぁあ…良いわぁ♪アナタはそのままで良いから、しばらく我慢しててね?」
「反動」に支配された剛は、単なる牝獣と化して、俺から精液を吸い尽くそうとしていた。

俺の上で剛が艶かしく肢体をくねらせている。奴の正体を知らなければ、俺は立て続けに精液を放っていたであろう。
とは言え、肉体的な限界は訪れてくる。
「ああっ、ああ~~~ん!!」
俺が放つて、剛も盛大に嬌声をあげて達していた。
そして、力尽いた肉体を俺の腕の中に横たえる。
意識を手放した彼女からは「剛」の存在を感じる事はできない。
只の「愛らしい女」となって、俺の腕の中で寝息をたてていた。
俺は彼女を愛しく思い始めていた。
今まで女性と付き合った事がない事を差し置いても、俺は彼女を自分のモノにしたいと思った。
が、彼女の正体は俺の親友の「大原剛」なのだ。奴のバイオロイドが出来上がれば再適合を行って「男」に戻るのだ。
俺の腕の中にいる「女」は幻に過ぎないのだ…と自分自身に強く言い聞かせ続けるしかなかった。

 

 

「どうしたの?元気ないわね♪」
居酒屋で俺は剛と飲んでいた。剛とは復帰後も時々、こうして杯を交わしていた。
以前と違うのは、剛はいつものツナギではなく、可愛らしいワンピースを着ているので目のやり場に困るのと…

「たまのデートなんだから、もう少し嬉しそうな顔をしたら?」
「デート?」
「んもう♪ニブイんだから。年頃の男と女がこうして居るなんてデート以外の何物でもないでしょ?」
「そ、そうなるのか?お前、単に雰囲気を変えたいだけ…だって言ってたぞ。」
「だから、それがデートでしょ?最後にはヤることはヤってるでしょ♪」
「ヤる…って、あれはバイオロイドの反動でどうしようもない…」
「デートの時はリミッターはそのままよ。つまり、あたしの意志で抱かれているってこと♪」

俺は剛の言っている意味を即には理解できないでいた。

 
「ねっ♪反動でなくてもちゃんと濡れてるでしょ?」
ホテルのベッドの上で全裸の美女が俺を誘っていた。
立ち上るオンナの香にふらふらと魅き寄せられてゆく…
「もし、今度の適合に失敗したら、あんたと結婚してあげようか?」
「結婚?」
「そう♪あたしはこの先、一生をこの体で…女として、あんたのお嫁さんになってあげる♪」
俺は何も言えなかった。
「その代わり、適合が上手くいったら、その先も反動の対応はあんたに付き合ってもらうわね♪」

 

 

爆音を轟かせてモンスターが駆け抜けていった。

俺が組み上げたモンスターを操るのは、親友の大原剛だ♪
奴のパワーもテクニックもバイオロイドの能力で更に強化されていた。
「じゃあ、次の周回でピット入りの指示を出せ。」
俺の隣でチーフが指示を出す。最近はモニターの監視は若いエンジニアに任され、俺はモニターから引き離されてチーフの隣に来させられていた。
そして、俺の手にサインボードが渡される。
「今の奴は恋女房からのサインしか目に入らないからな♪」
俺はチーフに促されて前に出ると、サインボードをコースに向けた。
モンスターの咆哮とともに奴がやってくる。その騒音に負けじと俺も声を張り上げる。
「剛ーっ!!」
スレ違うその一瞬、剛は俺にウィンクを投げていった…

 

モンスターがピットに入ってくる。
「お疲れ様♪」
俺の労いの言葉も半ばに、
「さあ、行こうぜ♪」と、文字通り俺を肩に担いでキャンピングカーに向かう。
「お、降ろせよ。恥ずかしいだろ!!」との俺の抗議も毎度のように無視される。
「反動への対処は早い方が良いからな♪」
確かに奴の反動は時間が経つほど攻撃性が増すのだが…

奴が俺をベッドに投げ落とすと、着ていたツナギを脱ぎ捨てた。
ムッと奴の汗…雄の匂いがキャンピングカーの中に充満する。
「さあ、ヤろうぜ♪」
奴はベッドに転がされた俺のスカートの中に手を入れると、一気に下着を脱ぎ取っていった。
そのまま、俺の脚を抱えると、奴の股間の奮ったモノを突っ込んできた♪

「んあああん♪」
俺の口から甘美なオンナの媚声が漏れる。
充満した雄の匂いだけで、俺の股間は充分に濡れていた。
バイオロイドの活力と奴のテクニック、そして何より、奴はこの肉体の感じる所を実体験として熟知しているのだ♪

俺は奴の「反動」が解消されるまで、その快感に翻弄され続ける。何度もイかされ、頭の中が真っ白になってゆく。
いつしか自らも剛を求めて腰をくねらせていた…

 

オフの日、奴は俺に可愛らしいワンピースを着せ街に連れ出した。
「な、何だよ突然に?」
「デートって知ってるだろう?俺がその体の時、何度か付き合ってくれたじゃないか♪」
確かに、あれはデートだった。とすると、その最後には…
「お、俺はお前の反動の処理のためにこの体に適合させているんだ。それ以外にこの体を使う事はないだろう?」
「本当にそうか?お前の体は嫌がってはいないだろう?」
確かに肉体は奴の言葉に反応を始めていた。
「それに、俺はもうお前ナシではいられなくなっているんだ。レースを離れていてもお前と一緒にいたいんだ。」
剛はポケットから四角い箱を取り出した。
「この先、一生を俺のそばにいてくれないか?俺と…結婚して欲しい。」
箱の中には指輪が入っていた…

 

仕事

俺はぶらぶらと街を歩いていた。

何故かといえば、会社をクビになったからだ。
まあ、傾きかけの会社だから、業績の悪い奴から切っていくのは当然だとは思う。
が、デキる奴はそれより先に見切りをつけて会社辞めているので、そう遠くない将来にも倒産するであろう事は誰の目にも明らかであった。

とは言え、今の俺に仕事がない事は現実の問題である。が、元より必死で仕事を探し、取ってくるような性分ではない。
かと言って、世間体は気にしてしまう。いつものように背広を着て、いつもの時間に家を出てしまうのだ。
出てしまってから、行き先のない事を思いだし、結局、街をぶらぶらと歩くしかないのだ。

 

通勤時間が終わると街の様相は一変する。
商店街のシャッターが開き、活気に満ちてくる。
就学前の子供の手を引いたり、ベビーカーを押したりする若いお母さんたちと、老人で道が埋まっていった。
(まあ、普通の主婦もちらほらいるが、この時間はまだ、家の中で片付けものなどをしているのだろう)

 
「よろしくお願いしま~す♪」
ビラ配りの若い娘が、俺の手に一枚の紙を握らせた。
何気なく渡されたビラを見る。
「求人募集」の文字が飛び込んできた。
そして「楽をしてお金を稼ぎませんか?」の文字が続く。
怪しさが充分に伝わってきた。

ふと振り返って見たが、このビラを配っていた娘の姿はどこにもなかった。
それに、俺以外にこのビラを手にしている人もいない…
更に怪しさが増す。
とはいえ、俺の好奇心をくすぐるには充分だった。

 

道の脇に寄り、もう一度ビラの中身を確認した。

「求人募集

 楽をしてお金を稼ぎませんか?

 仕事は簡単。携帯に掛かってきた電話に答えてあげるだけ。
 いつでも、どこでも、好きな時にお仕事ができます。

 登録無料 委細面談」

そして連絡先の住所と電話番号が印刷されていた。
(電車で駅3つ先かぁ…)
俺はビラを手にしたまま電車に乗り、その駅で降りていた。
書かれていた場所は駅近くの雑居ビルの立ち並ぶ区画だった。
携帯を手にビラに書かれた番号を打ち込んでいた。
が、最後の架電ボタンがなかなか押せない…

俺はそのビルの前でしばらく佇んでいた。

 

 
「仕事もらいに来たんでしょ?」
女の声に、ふと我に返る。
「こっちよ♪」
と俺の手を引いてゆくのはビラを配っていた娘だった。

地下二階…窓のない真っ暗な部屋に電気が点くと、部屋の中央に事務机が現れた。
机の上には電話機もファックスもない。ましてやPCなどある筈もない…

「これにサインをちょうだい♪」
彼女が差し出した紙にはサインを書く欄以外はまったくの白紙だった。
「仕事の内容も聞かないでサインなんかできないよ。それに、この紙には何も書いてないじゃないか!!」
「良いじゃない♪貴方がココに来たからには、もうサインするしかないのよ。でも、お仕事については話してあげるわね。」

彼女が話した内容は、簡単には信じられるものではなかった。

「不特定の男性から電話が掛かってきます。それに出てく
 れれば、通話時間に応じて賃金が支払われます。勿論、
 電話はこちらから転送しますので、相手に貴方の電話番
 号が通知されることはありません。また、貴方の音声は
 こちらで適当にエフェクトを掛けますので、貴方の正体
 が知られる事はありません。
 そもそも相手は貴方の事を援交サイトの女性と思って電
 話を掛けてきます。貴方は適当にあしらってから断って
 もらうことになります。勿論エフェクトの効果で貴方の
 声は女の子に変換されています。それに、無理に女の子
 言葉にしなくてもエフェクターがちゃんと変換してくれ
 ますから、街中で対応してもらっても、まったく問題あ
 りません。
 さらに、実際に相手の呼び出しに応じていただければ、
 その時々の対応に応じて、特別手当てが支給されます。
 ただし、この仕事の事は一切他言無用です。もし、他者
 に知られる事となった場合、それなりのペナルティが課
 せられます。」

 

気が付くと、俺は雑居ビルの立ち並ぶ道の上に立っていた。
彼女に連れられて入ったビルがどのビルだったかも思いだせない。あのビラも今は手元になかった。

プププ…
携帯が鳴った。
(誰からだろう?)
昨今、この携帯に電話が掛かってきたことがない。
「もしもし?」俺は携帯を耳に当てた…
「あ♪ユリちゃん?オレっ!!」
軽薄そうな男の声がした。
「違います。」
俺がそう言うと
「ツレないなぁ~。オレだよ。ヒロシ♪先週、渋谷でデートしたろう?今日ヒマなら付き合わない?」
「ひ、人違いです。」
俺はそう言って携帯を切った。

その直後、ライトメールが届いた。
「只今の通話で千三十円が支給されました」
つまり、今のが「仕事」だったのだ。
電話を掛けてきた奴には俺の声がエフェクトによりユリという女の子の声に聞こえたのだろう。

プププ…
再び携帯が鳴った。
「もしもし?」
「おう、ミドリか?オレだ。」
俺は少し話を合わせてみることにした。
「何?なんか用?」
「用がないと掛けちゃまずいのか?」
「そんなことはないけど、今日はあまり時間がないから。」
「う~ん、会うことはできないんだね?でも、電話で話はしてて良いんだ♪」
「ああ、時間の許す限りだけどな。」
と、この男とは結構な時間話していた。

 

「仕事」は結構良い稼ぎになった。
が、この仕事を続けていると、いろいろと不具合がでてくる。
相手が俺を「女の子」として話し掛けてくるのだ。ついつい、俺も自分が「女の子」だと錯覚してしまう。
受け答え中の仕草だったり、言葉遣いだったりが「女の子」になってしまっていた。

そんな「不具合」は、外野からは「異常」に見られる。それでは堪らないので、屋外での「仕事」を控えるようになった。
更に、防音性の高いマンションに引っ越した。当然、出費が嵩む。
その分、相手との通話時間を長引かせて「稼ぎ」を増やした。
話しをつなぐ為に、最近の女の子なら話題にしそうな情報を集めていった。
女の子向けの雑誌を買っては、空いている時間で読み込んでゆく。
グルメ雑誌にでていた店にも行ってみる。
女の子しかいないようなブティックで、話題のアイテムを確認する。
(流石に細かい所までは店の中では確認できないので〈彼女へのプレゼント〉の呈で持ち帰って確認した)

 

「仕事」を続けていると常連さん逹の性格も見えてくる。
中には「俺が女だったら結婚しても良いな♪」と思える男も出てくる。
「良かったら今度の日曜日にお台場でデートしないか?」
と誘われ、俺は思わず「ハイ♪」と返事をしてしまっていた。
彼との電話のあとも、しばらくの間は女の子気分でぼーっとしていた。
(何を着ていこうかしら?)
とあれこれ悩んでいる内に、突然我に返った。

俺は男だ。
確かに部屋には女の子の服も色々揃っているが、それを「俺」が着ていく訳にはいかない!!
しかし、彼にとり俺はヒロコという「女の子」なのだ。
彼にこの姿を見せる訳にはいかない。が、断ろうにも、こちらから彼にアクセスする手段がないのだ…

 

ピンポ~ン♪

俺が悶々としている所にドアホンが鳴った。
「宅配便です。」
と業者が段ボール箱を運び込んできた。
差出人の名前に覚えはなかったが、品名が「特別手当」となっていた。「仕事」絡みだと理解する。
段ボール箱を開けてみると、一通の封筒が一番上に乗っていた。その下には女物の衣服や小物、バックや靴などが詰まっていた。
これで俺に女装しろというのだろうか?
俺は封筒の中身を確認した。便箋と「指輪」が入っていた。
便箋に書かれていたのは
「呼び出しに応じてクライアントと接触する際は、この指輪を装着してください。この指輪はエフェクタの端末として動作します。」
俺は半信半疑で指輪を嵌めてみた。

…俺は「ヒロコ」になっていた…

姿形はもとより、声も女の子の声に変わっていた。
段ボール箱から衣服を取り出す。下着を着け、スカートを穿き、ブラウスの上にカーデガンを羽織った。
鏡の中に「ヒロコ」がいた。
(これならデートも問題ないわね♪)
そして、ヒロコの体格が俺が買ってしまった女物の服のサイズが丁度合っていることに気付いた。
つまり、段ボール箱に詰められてきた地味な服ではなく、クローゼットに並んだ服で、思いきりお洒落ができるのだ。
(このワンピース、可愛いって言ってくれるかな?)
俺は様々なシチュエーションを想像しながら、服やアクセサリーの選択に時間を費やしていた。

 

 

俺は、彼にエスコートされ、お台場デートを満喫していた。
自分が「男」であることも忘れ果て、彼に甘えていた。
帰りは、マンションの近くまで送ってもらい、別れ際に「オヤスミ」のキッス…
(もっと本格的にしてくれても良いのに♪)
と、ちょっと物足りなさを感じながらも、そんな彼の紳士的な態度に好感を覚えていた。

 

彼からの電話が待ち遠しかった。
「仕事」も疎かになる。けれど、彼とのデートだけで一ヶ月分の収入があったのだ。
俺は「指輪」を外さず「ヒロコ」のままでいた。指輪を外すと、もう二度とヒロコに戻れない気がしていたからだ。
朝起きると、スカートを穿き、かるくお化粧もする。女の子らしい朝食を用意し、食べ終わると洗濯・掃除を済ませた。
(今日はショッピングに行こうかしら♪)
あたしは、着替えてお化粧をし直した。

今日は流行を追うのではなく、今の自分をより一層魅力的に見せる服を探していった。
勿論、ちゃんと試着もしてみる。これまでは、目指した服を見つけたら一目散にレジに向かい、会計を済ませていたのだ。
今日は納得がいくまで、じっくりと見定めるつもりだ。お店の娘とも色々話ながら、3着に絞られた。
(どれも捨てがたいのよね♪)
もう、これ以上選びきれなくなった所で値段を確認した。
(来週までに彼からデートの誘いがなかったら、誰か別の男の誘いに乗るしかナイかなァ…)
結局、3着とも買ってしまった。

 

数日後、他の男の誘いを受けるより前に彼と話しをする事ができた。
そして、二度目のデートの約束ができた。そのままウキウキした気分で週末を迎えた。

「今日の君は、この間よりも輝いて見えるよ♪」
自分らしさを出した服に合わせて、お化粧もいろいろと研究してきた成果だろう。
(自分がこんなにも何かに集中できるとは思ってもいなかった。)
今日のデートコースは前回より大人向けにアレンジされていた。
(もしかして?)と思っていたが、最後にホテルに誘われた。

…その日、あたしは初めて「オンナ」になった…

 

 

三度目のデートは、彼をあたしのマンションぬ呼んだ。
この日の為に「料理」の練習に明け暮れていた。
彼はあたしの手料理を「美味しい♪」と言ってくれた。
その日はあたしのベッドの上で抱き合った。

 

四度目のデート…

彼があたしに指輪を差し出した。
「僕と結婚して欲しい。」
真剣な眼差しに貫かれ、あたしは…

(ダメだっ!!)
あたしを制止する「声」が頭の中に響いた。
あたしは…俺はヒロコなんかじゃないんだ。これはエフェクターが造り出した「仮」の姿なのだ。
俺は「男」なのだ。どんなに彼を愛していても、結婚なんてできる筈がない!!

「少し考えさせてください…」

俺はデートを中断し、独りマンションに帰っていった。

 

 

「ちょっと良いかしら?」
マンションの入り口に「彼女」がいた。
俺をこの仕事に引き込んだビラ配りの娘だ。
「もう、この仕事辞める?」
「どういう事ですか?」
「辞めたいのなら、辞めて良いってこと♪次の就職先がほぼ決まったんでしょ?」
「就職先?」
「そ♪彼の所に永久就職。良かったじゃない♪」
「永久就職って、あた…俺は…」
「その指輪、外してごらんなさい♪」

あたしは彼女に言われるがまま、マンションのエントランスに写る自分の姿を見た。
「そう言うコト♪」
彼女はあたしの手から指輪を回収した。
「じゃあ、お幸せにね♪」

 

あたしはガラスに写る自分を見ていた…
そして、掌を持ち上げ、指から指輪が消えている事を確認した。

エレベータがあたしをあたしの部屋のあるフロアに運んでゆく…

バッグから部屋の鍵を出し…

ふと、表札に目が行った。
表札の「名前」が「博子」に変わっていた。
いえ、それは元から「博子」であったように見えた…

 

 

その夜、あたしは彼に電話した。
「こんなあたしでよければ…よろしくお願いします…」

あたしの頬を伝って落ちてゆくのは、嬉し涙に違いない…

 

明王

薄暗い地下室に低く読経の声が響いていた。
部屋の中央にはスポットライトに浮き上がるように、仏像が座している。

仏像は不動明王。一般的な仏像の柔和な顔ではなく、憤怒の形相で俺を見下ろしていた。

 

 

俺は頭を掴まれ、グイと押し出された。俺の目の前には黒光りする木造のペニスが迫っていた。
それは、胡座した不動明王の股間にニョキリと生えているのだ。
「煩悩を断ち切りなさい。」
坊主が自由の利かない俺の頭を押さえ付け、仏像に生えたペニスを口に咥えさせようとする。
「ちゃんと濡らしておかないと、後が痛いぞ。これぞ因果応報…それよりも、負苦をもって修行としたいのか?」
回りを取り囲む脇僧逹の読経に混じり、嘲笑の声が聞こえた。

 

俺は不審な新興宗教の実体を調べに行って、罠に陥ってしまった。
捕らえられ、奴らの言う「禊」に掛けられていた。
全裸にされ、荒縄で縛りあげられた。天井からウィンチで吊るされる。自由を奪われ、坊主の良いように操られる。
「ではお不動様のお慈悲を授かるが良い。」

坊主の声に呼応して読経のボリュームが上がる。
上体が立たせられ仏像の顔を正面に見た。更に近付かされ、顔や胸が木肌と触れ合う。
そのままゆっくりと降ろされてゆく。
股間に木造のペニスの先端が触れた。
更に降ろされると、ソレが俺の股間にメリメリと侵入してきた。

痛みに叫ぶ声を抑えられない。
読経の声を圧するように俺の悲鳴が地下室に響き渡った…

 

痛みに慣れてきた頃を見計らったかのように坊主が声を掛けてきた。
「さあ、お前の全てをお不動様に捧げるのだ。そうすれば、お不動様がお慈悲をくださる。」
と同時に、俺の内から様々なモノが奪われてゆくような感覚に陥った。
何もかもが奪われてゆく…

俺の全てが…

そして、全てが奪われた跡に、仏像から暖かなものが流れ込んできた。
それは俺の下腹部の内側を満たす…

「んあん…ぁああん♪」
俺の喉を突いたのは、叫びではなく、満ち足りた甘美な喘ぎ声だった。
俺の腹の中でペニスが蠢いている。
それは俺に、えも言えぬ快感を与えてくれていた。

戒めが解かれる。
俺は落ちないようにお不動様に抱きついていた。
お不動様から離れようなどとは考えられなかった。
憤怒の形相が逞しく感じられる。
自ら腰を振り、お慈悲を…快感を追い求めていた。
いつの間にか読経は止んでおり、クチュクチュと俺の濡れた股間が発する淫靡な音が際立っていた。

 

「いかがかな?お不動様の法力で『オンナ』となった心地は?」
お坊様の言葉に我に返った。

アタシは慌てて仏像から体を放した。が、足に力が入らずにバランスを崩して尻餅を付いてしまった。
目の前には不動明王様。その周りを脇僧様逹が囲んでいた。
その中心で無様な姿を晒しているアタシは、全裸だった…

(全裸?)

アタシは不意に違和感を感じた。
胸に存在するふたつの肉塊。股間の喪失感…そこに或った筈のモノ…それは、たった今そこから抜き取られたモノのことなの?

「どうしました?お不動様のお慈悲に何かありましたか?物足りないようでしたら私達がお相手しますよ♪」
お坊様がアタシの顔を覗き込んだ。
「な、何がどうなっているのか…」
アタシはか細い声で答えていた。
「お不動様の法力に直に触れたのです。しばらくは気持ちが不安定な状態が続きますが心配する事はありません。」
お坊様に頭を撫でられると少し気分が落ち着いた。
(アタシは何に違和感を感じていたのだろう?)
アタシの記憶自体には不鮮明な所があった。しかし、それを除けばおかしな所はどこにもない。
確かにこれはアタシの肉体だし、胸の膨らみにも以前と何も変わりはない。お不動様に処女を捧げた以外は…
「大丈夫ですよ。控えで少し休んでいれば、元に戻ります。」
アタシの上に毛布が被せられ、そのままお坊様の腕に抱えられた。
「っあ、そんな勿体ない…」
「今だけですよ♪」
アタシはそのまま控えの間に運ばれ、ベッドに寝かされた。
と、同時にアタシの意識は闇の中に落ちていった。

 

 

 
目が覚めたのは、アパートの俺の部屋だった。
(いつの間に戻って来たのだろうか?)
記憶に霞が掛かったかのように、何も思い出せなかった。
起き上がり、少しでも頭をすっきりさせようと冷水で顔を洗った。
鏡の中に素っ面の俺の顔が映る。
曖昧な記憶の中から昨日までの事を掘り返してゆく。俺は奴らに捕まり「禊」を受けた事が蘇ってきた。
記憶にあった「禊」には不可思議な光景が混じっていた。それが現実に起こったものなのかが、いまいち確信が持てない。
禊の中で、俺は不動明王のペニスに貫かれていたのだ。そればかりか、俺の肉体は「女」となり、胸にはふたつの肉塊が存在していた…
俺は着ていたパジャマの胸を肌けた。そこにあるのは、平らな「男」の胸であった。

 

記憶の戸惑いは更に続いた。
寝室に戻ると、壁に掛かった女の服…ワンピースが目に止まった。
勿論、この部屋には俺以外には誰もいない。このワンピースを着ていた女など…

 
と、俺の記憶にこのワンピースを着ていた「女」が浮かび上がってきた。
それは、姿見に映っていた「俺」自身だった。開いた胸元にはバストの谷間が覗いていた。
「女」となった俺の胸を締め付けるブラジャーの感触が思い出される…

(な、何なんだよ…この記憶は!!)

しかし、ベッドサイドにはブラジャーやストッキングが置かれていた。
(俺はコレを着て戻ってきたと言うのか?)

 

頭が混乱している所に電話の呼び出し音が鳴った。
「お不動様へのお勤めです。」
電話の声はあの坊主だった。
その声をきっかけに、俺は体の自由を奪われてしまった。
「謹んでご奉仕させていただきます。」
と勝手に答えている「俺」がいた。
行き先のホテルと部屋番号が告げられた。
電話が切られると「俺」はパジャマを脱ぎ、ブラジャーを手にしていた。
俺の胸にはいつの間にかふたつの肉塊が生じていた。
「俺」はてきぱきと女の下着を着け、壁に掛かっていたワンピースを着ていった。更に化粧まで仕上げてしまう。

 
「お不動様の遣いでまいりました。」
指定されたホテルのドアの前で声を描ける。
「待っていましたよ♪」
脂ぎった中年の男が俺を迎え入れた。

「早速、お不動様を拝ませていただきます♪」
俺はワンピースを脱ぐと、下着姿で男の前にひざまづいた。
ズボンのチャックを下ろし、中から男のペニスを取り出すと嬉々として咥え込んだ。

アタシの体が熱くなる。じんわりと股間が湿り始めていた。
男が最初の精を口の中に放つと、アタシはごくりとそれを飲み込んでいた。
「次はベッドに行こう♪」
男に促され、下着を脱ぎ去り、ベッドで男を待っていた。男は全裸になり、アタシに伸し掛かってくる。
彼の股間は十分に回復していた。
「お不動様の法刀で、アタシをお清め下さい♪」
アタシの言葉が終わらないうちに、法刀はアタシの女淫を貫いていた。
「んあん!!ああ~ん♪」
アタシの口からは悦楽の嬌声だけしか発せられなくなっていた…

 

 

俺は街を歩いていた。
体の自由は取り戻していたが、肉体はまだ「女」のままであった。
ワンピースを着ていた。下着も女物をしっかりと着けている。
足にはハイヒールを履き、顔には化粧が施されている。
どこから見ても俺は「女」だった。
更に、男に貫かれた痕跡が膣の中に残っているのが感じられるのだ。
これは単なる「女装」ではなく、俺の肉体が完全に「女性化」しているということだった。

「お姉さん♪いくら?」
と男が声を掛けてきた。
「売女」ではない!!と反論したかったが、バッグにはさっきの男から貰った金が入っていた。
俺は逃げるように、その場を離れた…

 

 
一晩寝ると「男」に戻れる事は判った。が、元の姿に戻ってしまうと、俺は外に出る事ができなかった。
あの「電話」が掛かってくる度に、俺の肉体は女性化してしまうのだ。それがどこであろうと、俺は「女」になってしまう。
外で「女」になると、当然手元に着替えの用意がある訳もない。ぶかぶかの「男」の服を着たままホテルに向かう事になる。
街中・ホテルの中等、人々の奇異の視線を一身に浴びる事になる。いたたまれないが、俺の自由は奪われ電話で指示された所に行くしかないのだ。

だが、「女」として男に抱かれた後には自由が生まれる。
本来の「俺」の姿ではないが、元に戻る事はないので、安心して出歩く事ができる。
男から貰った金もあり、気持ちに余裕が出てくるとついつい余計なものまで買い込んでしまう。
それは「男」の俺が必要としない可愛い小物やヌイグルミだったりする。
俺が「自由」を得ている時間帯は、俺も外見に合わせて「女」のように振る舞うようにはしているが、無意識の行動も「女」になっているのだろうか…

 

しかし、いつまでもこのような生活を続くものではない。
奴らの行為は犯罪である。俺と同じように奴らに目を付けるジャーナリストがいない筈もない。
ある日、俺がホテルに向かうと、建物のまわりが騒然としていた。
報道と思われる車両が集まり、関係者と思われる人々が機材とともに入り口を取り囲んでいた。
中からは警察関係者が通路を確保するように人垣を掻き分ける。
そして、屈強な男逹と共に出て来た男は、このホテルで何度か俺が抱かれた男だった。
(今日の行き先はこの男の所だったのかも知れない…)

その答えが俺にわかることはない。
嵐が去ったホテルに入り、指示された部屋のドアを叩いた。
中に人のいる気配はない。
自由を奪われている俺は、指示に従ってその場に佇んでいるしかなかった。
(多分、新たな指示が来ることはないのだろう…)
しばらくするとホテルの従業員に見つかる。
「この部屋の予約はキャンセルされました。また、貴女のような方の出入りはホテル側としましても好ましいものとは思っておりません。」
半ば強引に、俺はホテルから追い出された。
建物を出た所で俺は自由を取り戻した。
勿論、もう一度ホテルに入ろうとは思わない。
(多分、もう奴らから電話が掛かってくることはない。これで一晩寝れば「俺」に戻れる。そして、いつ変身してしまうかに怯えずに「俺」でいられるのだ♪)
俺は嬉々としてアパートに戻っていった。

 

 

 

結論から言おう。
俺は「男」には戻れなかった。

単に一晩寝ただけではだめらしい。
男に抱かれる必要があるのかも…と、出会い系で会った男に抱かれてみたが、これでも上手くいかない。
多分、奴らからの「指示」が遂行されていないことが原因と考えられる。
(もうひとつ、あの不動明王に抱かれれば、元に戻れるかも知れないが、二度と奴らに関わり合いたくはないのだ!!)

まあ、俺も「女」でいることに慣れてしまっていて、今更に不自由は感じていない。
それに「女」でいることの悦びも覚えてしまっている。
「女」のままでも良い…いや、俺は、この先もずっと「女」のままでいたいと思っていた。

 

電話の呼び出し音が鳴った。
「やあ♪」
爽やかな声が俺の耳に届いた。
彼の声を聞いただけで、俺はウキウキとしてしまう。
「愛してるわ♪」
と俺…そして他愛ない会話が続く。

そう、今の俺には「男」の恋人がいる。
「女」として俺は彼を愛し、愛されているのだ。
既に俺の子宮には、二人の愛の証が存在していた。
もう「男」に戻るなど考えられない。

俺は過去を捨てた…

 

 

あたしは明日、水天宮にお参りに行くの。
この子が無事に生まれてこれるよう、お祈りするのよ♪


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