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2013年3月 1日 (金)

佐藤さんと僕

学校から帰るなり、僕は部屋に閉じこもる。
ネットゲームのヘッドセットを装着し、一気にゲーム世界へダイブしてゆく。

できれば、一日中ゲーム世界に入り浸っていたいのだが、いまだ学生の身。学校には行かなければならない。
授業中もゲームのことばかり考えているので、授業の中身など身に付いている筈もない。(矛盾だ!!)と思いつつも、ゲームから切り離されている苦痛に堪えているのだ。

だから家に戻るなり、真っ先にゲームにダイブする。
そこには旧知の仲間逹が待っていてくれているんだ♪

 

 
「よう♪元気だったか?」
ほぼ十日ぶりに佐藤さんが来ていた。会社員だそうで、仕事が忙しい時は休みの日にしか来れないとぼやいている。
ネットゲームの年期は相当なものらしく、敵の出現をいち早く察知する能力はなかなか真似できるものではない。
「平日のこんな時間に佐藤さんが居るなんて珍しいですね。」
「まあ、色々とあってな♪」
と佐藤さんは遠くを見るような目付きをしていた。
「悪いが、早速クエストに付き合ってくれないか?」
「メンバは僕だけですか?他の人を待たなくて良いの?」
「ああ、急いで行きたいんだ。レベル的には二人で十分なクエストだ。」
「急ぐって事は、レアアイテム?」
「まだ知られていないヤツを見つけたんだ。」
「OK♪」僕は佐藤さんに付いて行くことにした。
「馬を借りてある。一時間程掛かるから、リアル側で必要なことは済ませてくると良い。」
「助かります。」
僕はそう言ってゲームから抜け出た。

 
ゲーム中であっても、乗り物での移動中などはアバタを残したままリアルに戻る事ができる。その間にリアル側での必要なこと…トイレ行ったり、食事をしたり…ができる。
その間のアバタは眠ったようになる。結構無防備な状態になるので、気心の知れた奴と一緒でないと難しい。
上級スキルでは、プレイヤーがリアル側に戻っている間でも、状況に応じた反応をアバタにやらせることが可能である。佐藤さんなどは敵と戦いながらトイレに抜けることがあるそうだ。

食事とトイレを済ませゲームに戻ったが、僕達はまだ馬に跨がっていた。
「早かったな。」
寝たフリを決めていたが、佐藤さんにはアッサリと見破られてしまう。
「これで朝迄呼びもどされる事はないよ♪」
「宿題とかはやったのか?」
「ココでリアルの話は止めてくださいよ!!」
一気にリアルが思い出され、気が滅入った。
「そうだったな。目的のダンジョンまでもう少し掛かる。その間に装備のチェックをしておいた方が良い。」
佐藤さんの提案で、気持ちの切り替えができた。

ウィンドウを呼び出し、装備のリストを展開してみた。
馬に乗っているので、今は武器も防具も外している。リストには普段使っている剣や軽防具を始めクエストでゲットしたアイテムがずらりと並んでいた。
(?)
リストの一番下に見慣れないBOXがあった。鍵が掛かっているので開く事はできない。
「気付いたか?」
「何なんですか、このBOXは?」
「今回のクエストの最終兵器だ。いつでも使えるように常に装着しておいてくれないか?その時になったら、鍵は自動的に解除されるようになっている。」
「中身は?…教えてもらえないんですよね。」
「すまん。…あとの装備は通常パターンで大丈夫だ。」

程なく目的地に到着した。
馬から降り、装備を身に着ける。僕はいつもの軽防具に剣。佐藤さんは鎖帷子に槍を手にしている。
そして、いつもにはないBOXを二人とも腰に装着していた。
「じゃあ行こうか♪」と佐藤さんが先に立って歩きだした。
「っあ、うん。」と僕も続いてダンジョンに入っていった。

佐藤さんのライティングの魔法で暗闇は一掃されていた。
雑魚がチョロチョロ現れるが、意に返すことはない。瞬殺で通り過ぎてゆく。
階層が進んでも、敵のレベルはあまり上がらない。
「ここだ。」
と佐藤さんが足を止めた。
そこには巧妙に隠された脇道があった。ライティングでくまなく照らされていなければ見つかりようもない。

狭い隘路を暫く進むと、少し広めの空間に出た。
「確か、この壁際に隠されている筈だ。」
佐藤さんは最奥の壁に手を突き、周囲を確認した。が、なかなか見つからないようだ。
アイテムがどのように隠されているか判らないが、僕も手伝おうと入り口に近い壁に向かった。
壁に手を突き、床や天井との継ぎ目、壁の起伏の境目を中心に不自然な所がないか確認してゆく。
(?)
手に触れた壁の感触が異なる場所があった。ほぼ正方形の平面が隠されていた。
(スイッチ?)
少し力を入れてその部分を押してみた。

ふっ…と押していた壁の応力が消える。支えを失い、バランスが崩れる。腕が壁の中に…肩まで嵌まり込んだ。
指先に何かが触れた。(瓶?)僕はそれを掴み、引き寄せた。

カチッ!!

腰に装着したBOXの鍵が外れた。
僕の手の中には透明な瓶があった。中にメモが入っている。
蓋を開け、メモを取り出そうと…

 
「まてっ!!」

 
佐藤さんの大きな声が響いた。
が、僕は瓶の蓋を外してしまっていた。
「何?」
と佐藤さんに振り返る。
くらっ…と目眩…

斜めに床が近付いてきた…
自分が倒れていっているのは理解したが、それに抗う意識はなかった。
佐藤さんが飛んでくる。
僕と床の間にスライディングしてきた。
僕は床にぶつかる痛みを感じることなく、そのまま意識を失っていた…

 

 

 

 

そこはまだ、ダンジョンの中のようだった。
多分、床に外套を広げて、その上に寝かされているのだろう。
防具は取り除かれ、楽な格好になっていた。佐藤さんが脇に座り、覗き込むように僕を見ていた。
「ごめん…アイテムはどうなった?」
「私の方こそ済まない。アイテムに関する情報をもう少し伝えておけば良かったんだ。」
「大丈夫だよ。ライフは減っていないし、ダメージも殆どない。」
何か肉体に違和感のようなものを感じたが、少し気になる程度だった。
「で、アイテムはどうなったの?」
「ああ、あれは蓋を開けると発動してしまうんだ。入り口で渡したBOXの中のモノで隔離しておけば問題なかったんだが、BOXの鍵がアイテムに連動しているんで、説明が難しかったんだ。」
「発動したって事は、僕に何か新しいスキルとかが付いたってこと?」
「中に紙が入っていただろう?そこに書かれたスキルが獲得できるようになっているんだ。」
「僕が見た時は白紙だった気がするんだけど?」
「一旦紙を取り出して、欲しいスキルを書いて仕舞い、ガードを外してもう一度蓋を開く…という使い方ができれば良かったんだ。が、白紙の状態で発動すると、ランダムにスキルが浮き出てくるようだ。」
(僕の時には、どんなスキルが出たのだろうか?)
その「紙」を佐藤さんが差し出した。
「これが君の得たスキルだ。」
そこには『女の魅力』と書かれていた。
「これは、単なるチャームではない。使用者が女性に限定されている…」
「つまり、僕には使えないってこと?」
「いや、既に君は無意識のうちにそのスキルを使っている。私とてギリギリで自制している状態なんだ。」
佐藤さんが切羽詰まっていることだけは見てわかった。
「つまり、アイテムはそのスキルが利用できるように、君の肉体の方を変えてしまったんだ。」
厭な感じが背筋を昇ってゆく。
「今の君は女性だ。それも、とびきり可愛い女の子になっている。」
先程から感じていた違和感…その正体がはっきりする。
胸の膨らみを実感する。股間に手を伸ばすと、そこにある筈のモノはなく、代わりにしっとりと濡れかけている割れ目が存在した。
「だから…そんな淫らな格好を見せるな!!私の理性も限界なんだ。」
あきらかに佐藤さんの様子がおかしい。目が血走っている。
僕は慌てて姿勢を正した…とは言っても意識は男のままである。
佐藤さんが凝視している先は無防備に開かれた僕の股間だった。女の子なら無意識にでも膝を閉じているのだろう。
僕がそのことに気付いた時には、既に佐藤さんが行動を起こしてしまっていた。

「あっ!!」と叫んだのは僕…
そのまま押し倒され、唇が塞がれる。開かれた股間に佐藤さんの腰が圧し付けられる。
佐藤さんの男性自身が硬く勃起しているのが判った。
勿論、僕の股間には何の反応もない。そもそも僕の男性自身は失われてしまっている。勃起のしようもないのだ。
その股間に佐藤さんの手が延びてきた。指が優しく僕の股間を撫で上げた。
(???)
快感のようなものがそこから全身に広がってゆく。
全身から力が抜けてゆく。
佐藤さんの舌が、僕の口の中に入り、そこかしこを刺激してまわる。
その行為に、何故か嫌悪感が生まれることはなかった。僕は佐藤さんにされるがままになっていた。

ジクッ!!
と股間に溢れるものがあった。
「濡れてきたね♪」と佐藤さんが指でソれを確認する。「大丈夫だ。私に任せなさい♪」
佐藤さんが少し動くと、佐藤さんの男性自身が僕の中に押し入ってきた。
「ああんっ♪」
僕の口から女の子のような喘ぎ声が零れ出た。ソコから沸き上がってきたのが「女の子の快感」だということは、もう疑いようもない。
佐藤さんが動く度に快感が増してゆく。
「ああん。イイッ!!ああ、もっと~♪」
自分が何を口走っているのか理解できていない。快感に流されてしまっていた。

(頭の中が真っ白になっていた)

 

 
気が付くと、佐藤さんは僕から離れていた。しかし、僕の股間には彼のペニスの感触が生々しく残っていた。
「酷なようだが、君はそのスキルを制御できるようにならなければならない。街中でそのスキルが解放された所を想像するのさえ恐ろしい。」
「でも、どうすれば良いの?」
と僕が佐藤さんを見た途端、佐藤さんの顔が強張る。
「多分、無意識の行動が一番危ないのだろう。先ずは自分が女の子であることを意識しなさい。普通に女の子として相応しい行動ができているか常に意識するんだ。」

「女の子として」なんて、意識が男のままなので、女装とか一般的でない行動をしているようで恥ずかしさが先にたつ。
「君は今は女の子なんだから、それが一番自然なんだ。不自然さはスキル発動のトリガとなり易い。」
そうは言われても…と躊躇している僕に、
「スキルを制御できるようになるまでは、ここを離れられないようにさせてもらう。リアルに戻るのも必要最小限にした方が良い。」
リアル…か。この状況から少し距離を置くのも良いかも知れない。
「じゃあ、ちょっとリアルに戻ります。」
「即に戻って来なさい。できるだけ…家の人とも接触しないように気を付けるようにな。」

 

僕はゲームから抜けた。
気分転換で抜けただけなので尿意はまだなかったが、いつもの習性でトイレに向かっていた。
便座をあげ、いつも通りの行動をしようとしたが…
(無い?!)
パンツの中に入れた手が、いつものモノを掴めずにいた。替わりにゲーム世界で変わってしまった僕の肉体と同じ感触がそこにあった…
パンツを降ろす。
便座を元に戻してそこに座り股間を覗き込んだ。ゲーム世界の僕のアバタと同じになっていた。
(もしや!!)
と胸に手を当てる。そこには「乳房」としか言えない膨らみがあった。

トイレで座っていると条件反射のように尿意が湧いてくる。僕は女の子のオシッコを初めて経験していた。

トイレを済ませると僕は一目散に部屋に戻っていった。
寸暇を惜しんでヘッドセットを装着し、ゲーム世界にダイブしてゆく。

 

「おぉ、戻ったか。」
佐藤さんが声を掛けてきた。
「どういう事なんですか?!リアル側でも僕が女になってるなんてっ!!」
「そうか、そうなっていたか…リアル側にもスキルを持ち出せるかの実験的な意味もあったんだが、リアル側の肉体にも影響が出るとは興味深いものがある。」
「ち、ちょっと呑気過ぎませんか?このままでは、リアルの僕が大変な事に…」
「ああ、済まん。リアル側の方は君や君の家族の負担にならないように…今、手配しておいた。ではスキル制御の訓練を続けようか。」
「そんな事続けている場合じゃないでしょ?」
「いや、君にはスキルの制御を習得してもらわなくてはならない。さっきも言ったように、このスキルはリアル側でも発動してしまうんだ。こちら側ではポイントの増減で済まされるが、リアル側ではそうはならない。」
佐藤さんが僕を見つめる目は真剣そのものだった。
「スキルに巻き込まれた男性は、君に暴行を加えてしまうことになる。それは犯罪行為であり、彼の社会的地位はその時点で跡形もなく崩壊してしまう。ゲームと違い、それはやり直しが効かないのだ。だから…」
佐藤さんは両手で僕の腕を掴んだ。
「だから、早くスキルを制御できるようにしてくれ。君がこのままの状態だと、私も身動きがとれなくなってしまう。」
「勝手な…」
「勝手なことは十分承知している。君にも多大な迷惑を掛けていることも。だが、このスキルは第三者が無効化できるものではないのだ。」
僕は始めて佐藤さんを「怖い」と思った。対戦の時でさえ、軽く笑みを浮かべているイメージがある。
「そうだ。その怯えた表情は自然にできている。男が怖いと思う乙女の顔になっているぞ。」
と佐藤さんの顔に笑みが戻った。緊張が解けると同時に、佐藤さんが頼もしく感じる。
佐藤さんに…男性に護られている時、女性はこんな感じになるのだろうか?
独りでいるより、誰かと一緒が良い。それが大好きな男性であれば言うことない♪

僕は佐藤さんに恋してしまったのだろうか?佐藤さんの本気の怖さを知ったことでより身近に感じているのは確かだった。
「良いよ。その感じだ。これを続けられれば、即にでも街にでられるだろう♪」

僕は、自分が「佐藤さんに恋する乙女」だと言い聞かせてみた。そして、積極的にその役に嵌まり込んでみた。
佐藤さんと居ることに幸せを感じる。離れてしまわないように腕を絡める。
そして、一つの毛布にくるまって、夜を明かした…

 

街に戻ってきた。
「やあ、佐藤さん。お久しぶり♪で、その娘は?」
会う人会う人が同じように聞く。
既に僕には男だった時の面影はなくなっているみたいだった。
女の子の服を着て、女の子のように喋り、女の子の仕草を意識する。
「大丈夫。スキルは抑えられているよ。」
と耳打ちしてくれた。

宿泊場所はいつもより2~3ランク上のような気がした。佐藤さんが手続きをしている。
いつもなら別々に部屋を取るのだが、今回は相部屋だった。
僕の今の状態では独りにさせられない…が理由だと解っているが、佐藤さんと一緒の部屋になれたことを喜んでいる「僕」がいた。

部屋には大きなベッドが一つだけあった。
「これは君が使いなさい。私は床で寝る。」
装備を外しながら佐藤さんがそんなことを言う。折角、同じ部屋なのに…と、寂しさが込み上げて来る。
「何で?夕べも一緒に毛布にくるまっていたのに…」
「野宿だし、毛布も一枚だけだったからな。ここは暖かいし安全だ。ゆっくりと手足を伸ばして眠ると良い♪」
「このベッドなら、一緒に寝ても十分に広いよ。それに佐藤さんと一緒でないと、僕…」
僕の脳裏には、佐藤さん抱かれて悦びに浸っている女の姿が浮かんでいた。
その女は僕だった。そして、僕はそうなることを望んでいた。

「止めろ!!」
佐藤さんが叫んだ。
「スキルが発動しかけてるぞっ!!」

佐藤さんの声に、僕は妄想を抑えた。
(スキルの発動はしてしまったか?)
ゆっくりと深呼吸してから佐藤さんを見た。
「それで良い。」
「でも、やはり一緒のベッドで寝たい…」
妄想は妄想としても、それが僕の正直な気持ち…
「本当に私と一緒に寝るのか?」
コクリと頷く。
「一つのベッドで一緒に寝るって事は…君はどう思おうが、男と女だ。どうなるかは想像つくよな?」
「それはダンジョンの中で経験しているよ。」
「経験…って、そりゃあ、ヤッてしまった事は確かだが、それはお前のスキルの影響下にあったからだ。」
「じゃあ、今度は正気の状態でシてくれない?」
「シてって、マジで言っているのか?」
「この期に及んで冗談は言わないよ。」
「良いのか…私で?」
「佐藤さんだから…佐藤さんでなきゃイヤ♪」
ぼ、僕は何を言っているのだ?
いや、それは「僕」の正直な気持ちなのだろう。
佐藤さんに抱かれたい…単に「一緒に眠る」だけではなく、僕を「女」として抱いて欲しい…
その想いで僕の心が埋め尽くされている。
「分った。これ以上揉めているとスキルが発動しかねない。」
「ありがとう♪」
僕は佐藤さんに抱きついていた。そのままの勢いでベッドに倒れ込む。
「良いんだな?」
と佐藤さんの最期の確認に、僕は濃厚なキスで答えていた。

 

 

 
いつになくすっきりとした朝を迎えた。
佐藤さんがボクを見て微笑んでいる。
「何とかスキルは発動せずに済んだな。それに、この一晩で大分安定したようだ。」
「ボク、何か変わった?」
「気にする程の変化ではないがね♪」
「今日は何をすれば良いの?」
「リアル側にも確認した所だが、半日くらいならリアル側に戻っても大丈夫みたいだ。」
「半日?」
「そうだ。これからだと丁度昼の12時くらいだな。午後8時までに戻ってくれば負担は少ない筈だ。」
「家の外に出ても良いって事?」
「大丈夫だ。勿論家の方にも君の事は説明済みだ。何も心配はない。」
「それなら…戻ってみるね。」
「ああ、いってきなさい♪」
「じゃあ、8時間後に♪」

ボクは、本当に久しぶりにゲームから抜けた。
勿論、いつもの習性でトイレに向かう。今度は間違えずに…というか、もう無意識のうちにパンツを降ろして便座に座っていた。
尿意が湧いてきて、当然のように女の子のオシッコをする。
便座に座りながら、リアルのボクの肉体を確認をしておく。
ボクの肉体は完全に女の子のものになっていた。胸が膨らんでいるのは見れば分る。それが造り物でない事を手で触れて確認した。
ボクの胸から揉まれる間隔が伝わってくる。ゲーム世界では何度も佐藤さんに揉まれてきたが、リアルでも同じように感じることができた。
「ぁん♪」と媚声を出して慌てて口を閉じた。
もうここはゲーム世界ではないんだ。家の中には家族もいるのだ。
後始末をして部屋に戻る。
タンスにはボクの女の子の服が吊るされていた。何の抵抗もなく女の子の服に着替え終わってハッとした。
ここはリアル側なのだ。ボクの部屋には女の子の服なんて無かった筈なのに、下着から全てがちゃんと揃っていた。もちろん着ていたパジャマもピンクの花柄の女の子用だ。
(つまり、ボクが女の子になった事をみんな知っているという事?)

ボクは居間を通り過ぎ、玄関に向かった。
その気配を台所にいたママが気付いたようだ。
「出かけるのね?遅くならないうちに帰ってきなさいね♪」
その声に押されるように玄関のドアを開けた。
そこはいつもと変わらない「リアル」の世界だ。
変わってしまったのはボクの方。ショーウィンドウに映り込むボクの姿…スカートを穿いた、ごく普通の女の子がそこにいた。
駅前にやってくる。
いつもならゲームセンターに直行しているのに、今日はショーウィンドウに飾られた服についつい目が行ってしまう。
「良かったら試着してみません?」
と店の人に声まで掛けられてしまった。
「今日はお金持ってないから…」
「構いませんよ。試着はタダ♪気に入ったら今度買いに来てくれれば良いわ。」
確かに、この店の店頭に飾られていた服にボクの気が引かれていた。
コレを着た自分を想像していた。
「着ても良いの?」
「さあどうぞ♪」
彼女は店頭に飾られていた服と同じものを手に、ボクを店の奥の試着室に連れていった。

「あら、似合ってるじゃない♪」
着替えて試着室のカーテンを開けると、店の人の隣にもう一人女の人がいた。
「自己紹介がまだだったね。わたしがリアルの「佐藤さん」よ♪驚いた?」
「じょ…女性の人…だったんですか?」
「クエストを進めるには男の方が有利だからね♪」

結局、ボクは佐藤さん(リアルの彼女の名前も「佐藤」だった)に買ってもらった服を着て、近くの喫茶店で話をすることになった。
「何て言うか、あっちでのボクは男の佐藤さんに恋してるんだと思います。その佐藤さんの正体が女の人だったなんて…ショックどころの話じゃないっていうか…」
「無理もないわね。言葉に表現しなくてもわかるわよ。あっちの佐藤さんは貴女の処女を奪ったハジメテの男性だものね♪」
「しょ…処女って…こんな所で話す内容じゃないでしょ?」
「女の子同士なら、どうってことないわよ。わたしが男だったら、即セクハラで訴えられ兼ねないわね♪」
「女の子同士って、ボクは…この姿はどうであれ、男ですよ。」
「あら、じゃあわたしはセクハラで訴えられてしまうの?」
「そんな事は言ってませんけど…」
「大丈夫よ。今の貴女はもう、女の子そのものよ。男の子の振りをする方が難しいんじゃない?」
「男の子の振りって、ボクは…そう、一人称はボクのままですよ。」
「自分の事をボクって言う女の子も多いのよ。それに、スカートを穿きたがる男の娘なんてのもいるわ♪」
「そ、そうは言っても…」
「じゃあ、試しに自分の事を(あたし)って言ってみて?」
「は、恥かしいですよ。本当にボクが変態になってしまうみたい。」
「だから、今の貴女は全部が女の子なんだから、何もおかしくはないわよ♪」
「ボ…、ぁたし…って、これで良いの?」
「そうね♪しばらくの間(ボク)はナシにしてみてね♪」
そんな事を言われても、自分の事を(あたし)って言うのを恥かしく感じる事には違いがない。
が、ゲームでも佐藤さんの指示は的確だったし、今は二人だけだからまあ良いかも…

と、ボ…あたしは取り敢えず、佐藤さんの指示に従う事にした。
そこで話が途切れたので、ボ…あたしはテーブルの上のアイスティに口を付けた。
あたしはいつものようにホット珈琲を頼もうとしたのだけれど「ここは紅茶が美味しいのよ♪」と二人とも同じアイスティーになってしまった。
「あっ…これ美味しい♪」
思わず声に出してしまった。確かにこれまで飲んできた「紅茶」とは雲泥の差があった。
「多分、貴女の嗜好にも変化が出ていると思うわ。それに、今なら素直に美味しいって言えるでしょう?」
「あ、あたし…って素直じゃなかったの?」
「男の子としては普通じゃないかしら?でも、女の子なら、もっと素直になれるでしょう?」
「あたしはオン…」
と、あたしは口籠った。あたしは自分が女の子じゃない…って言い切れないのが判ってしまった。
あたしの視線の先には紅茶とセットになっていたケーキがあった。
(美味しそう。食べたい♪)
男の子の時には「ケーキなんて」って思っていた。男の子がケーキを食べるのは恥かしい、甘いものが好きと言えない…
でも、今はそんな呪縛に捉われるひつようがない。素直に「欲しい♪」と言って良いのだ。
「もお…そんな事良いから、ケーキ食べよう♪」
「ハイハイ♪」
佐藤さんのあたしを見る目が優しく笑っていた。

喫茶店を出てからも、しばらくの間佐藤さんとお店を巡っていた。
勿論、女の子達の好く行く店ばかり。自分が「女の子」だと開き直ってしまえば、そこには時間を忘れる程楽しい世界が広がっていた。
ブティックでは、また別の服を試着してみた。アクセサリーはこれがかわいい、あれが素敵だとと佐藤さんとはしゃぐ。
実際、鏡に映る自分の髪の毛にアクセサリーを当ててみるだけで、心がうきうきとする。
化粧品のコーナーでは、お店のお姉さんに少しだけお化粧もしてもらってみた。
唇に口紅が塗られると、自分が「女の子」なんだと再確認されてゆく。

「ぁあ、もうこんな時間。わたしは戻らないといけないから。もう独りでも大丈夫よね?」
「ぇ、ああ…多分。」
「じゃあ、8時に向こうで会いましょうね♪」
と佐藤さんが慌ただしく去っていった。
独りになると、急に心細くなってしまった。(だから女の子はいつもつるんでいるのだろうか?)
別のお店に入ってみたが、さっき程は気分が高まらない。
佐藤さんと別れてから、そう時間も経たないであたしは家に帰っていった。

 

 
8時まではまだ時間があった。
あたしが部屋にいると、
「お風呂先に入っちゃいなさい♪」とママの声がした。
パジャマと替えの下着を選んで風呂場に向かった。
ブティックで着替える時には何度も下着姿を目にしたが、全裸を鏡に映したのは初めてだった。
ゲーム世界では何度も見ていたが、リアル側で自分の「女」の裸体を見るという事に、少し感動を覚えた。
それは、実際に目の前にあり、触れて、触れられるのをリアルに感じられるのだ。
(そう…、これはリアル…)
洗い場で掛け湯して、湯船の中へ…
「ふ~う…」
女の子の吐息が風呂場に響く。
お湯の暖かさが全身に染み渡ってくる。
お湯の中で自分自身に触れてみる。
これが女の子の腕、これが女の子の足…それらはみな自分自身…あたし自身なのだ。
胸に手を当てる。

膨らんだ胸…先端の蕾…
「はぅん…」
乳首を刺激すると快感が生まれる。
向こうでは、佐藤さんにもっと凄い快感を感じさせられていた。
その場所…、あたしは股間に指を向かわしていた。
とろりと蜜が零れていたのを思い出す。あたしはそこに佐藤さんを迎え入れていたのだ。

ビクッ!!

触れただけで脳天に電気が走り抜けてゆく。
リアルのあたしも何時れ、男の人をここに迎え入れるのだろう。
本当は佐藤さんだったらよかったのに、リアルの佐藤さんは女の人なのよね?
でも…レズって選択肢もあるのかな?
あの佐藤さんが股間にペニスバンドを付けて、あたしを責めてくるの?

 
「良い加減に出てきなさ~い。のぼせちゃうわよ♪」
良い所でママの声が割って入ってきた。
「っあ!!は~い♪」
慌てて立ち上がると、湯船の中で転びそうになった。
お湯の所為だけでなく体が火照っていて、本当にのぼせかけていたようだ。
ショーツを穿き、パジャマを着て自分の部屋に戻っていった。
ヘッドセットを装着して8時を待つ。
ベットの上で体を横にしていると、のぼせた体も落ち着いてゆく。

8時の時報とともに、あたしはゲーム世界にダイブしていった。

 

 
「お帰り♪」
あたしの目の前には「男」の佐藤さんが待っていた。
「ただいま♪」
とあたし…そして、二人で笑い合った。
「ごめんな、向こうでの私が…」
「ココでリアルの話は止めておきましょう♪ここでの佐藤さんとあたしはごく普通の男と女。それて良いでしょう?」
「男…と女か…」
「そう。それに、もう夜でしょ?一緒に寝ましょう♪」
「夜とは言っても、まだ早いぞ?」
「だからあたし達は男とオ・ン・ナ♪ヤることがあるでしょう?」
「本当に良いのか?」
「夕べもシておいて、そんな事言うの?」
「わ、判った。じゃあ、今夜は眠らせてやらないぞ!!」
「ぁあ…ス・テ・キッ♪」

 … …
 
翌朝も、すっきりと目覚めることができた。
佐藤さんがボクを見ていた。
「スキルに関してはもう大丈夫みたいだな。」
「普通にリアルに戻れるってこと?」
「ああ、問題ない。」
「じゃあ、今日も向こうで会ってくれる?」
「君のお願いに応えない訳にはいかないからね。」
「何か義務的ね?でも、それも仕方ないってことかしら♪」
「判ってくれると嬉しいね。」
「じゃあ、夜の8時に昨日の喫茶店で待っているわ。」
「ち、ちょっと遅くないか?」
「佐藤さんと一緒なら大丈夫でしょ?オ・ネ・ガ・イッ♪」
そしてあたしはリアルに戻った。

 

 
あたしは自分の部屋の中で目覚めた。
いつものようにトイレに行く。…そう、いつもと変わらずに…
普段着に着替える。まだ外に出る訳ではないので、お化粧はせずに化粧水と乳液を顔に刷り込むだけにしておく。
軽くお昼を食べたあと、部屋の中を隅々まで確認してゆく。自分の部屋だけど、中身が全て入れ替えられていて、どこに何があるか知らないからだ。
あたしはここで「あたし」として生活するのだ。だから、どこに何があるか知っておきたかった。

タンスには制服も吊るされていた。あたしの通う学校の女子の着る制服だった。
ポケットの中の学生証を確認してみる。
あたしの写真が貼ってあり、名前が元々の名前から女の子っぽい名前に変えられていた。
(これが「あたし」の名前なんだ…)
カレンダーを見ると、明日から学校だった。
(コレを着ていって良いんだよね?)

机の中も確認した。
ファンシーな小物達が所せましと詰まっていた。
別の引き出しにはアクセサリーと化粧品が入っていた。
机の上に鏡を立て、髪飾りを取り出して頭に乗せてみた。
(ウン♪似合ってる♪)

時計を見るとそろそろ出かける準備を始める時間だった。
タンスを確認した時に見つけた可愛いワンピースに着替える。
下着もちょっとオシャレなものに変えておいた。
次にお化粧。
引き出しに入っていた化粧品を机に並べて、使い方が判るものを選んでいった。
ビューラーで睫毛をカールさせる。今のあたしに付け睫毛はハードルが高そうだった。
アイラインを引くと目が大きくみえるみたいだった。
ちょっとだけチークを付け、最後に口紅を塗った。
唇がプルプルと輝いて、あたしをより一層可愛くしてくれた。

 

 
「今日も可愛いわね♪自分でお化粧したの?」
喫茶店で待っていると、佐藤さんがやってきてあたしの向かい側に座った。
「うん♪服も自分で選んだのよ。」
下着も替えてきた事は今は言わない。
佐藤さんが注文をしようとするのをあたしが止めた。
「付き合って欲しい所があるの♪」
あたしはこっそり「スキル」を使ってみた。
「そ、そうなの?」
あたしはここに来る前に寄ってきたお店で買ったモノをもって席を立った。
そのまま佐藤さんとお店を出る…行先はラブホテルだった。
女性二人だと入れてもらえないかとも思ったが、簡単に入ることができた。
佐藤さんはまだあたしの「スキル」下にあるようだ。

部屋に入り、あたし達は服を脱いだ。
買ってきたものを取り出して、あたしが「スキル」を解除する。
「ダ、ダメじゃない!!スキルを使っちゃ。」
「佐藤さんだから大丈夫だと思ってた。」
「で、どうしてわたし達は裸なのかな?ここがどういう所かも知っているわよね?」
「あたし…リアルでも、佐藤さんに抱いてもらいたかったの。ね?コレで向こうでと同じように、アタシをメチャメチャにして欲しいの♪」
あたしは買ってきたペニスバンドを佐藤さんに渡した。
「こ、こんなモノ買ってきたの?」
あたしは首を縦に振る。
「向こうは向こう。ゲームの世界の事をリアルと混同してはいけないわ。」
「混同させちゃったのは佐藤さんの方でしょう?」
「そ、それは…」
佐藤さんが口籠る。
「セ・キ・ニ・ン、取って欲しいの♪あたしはもう女の子。男の人に抱かれる存在…でも、今のままでは無理だと思うの。」
「だからって…」
「佐藤さんになら抱かれられることができると思うの。リアルでもあたしを本物の女の子にして♪」
「ダメよ、スキルを発動しちゃ…」
あたしがそうしようと思ったのが解ったみたいだった。
「判ったから、これっきりにして頂戴ね?」
と佐藤さんはペニスバンドを付けてくれた…

 

 

夢見心地で家に戻ってきたのを覚えていた。
そのままベットで寝てしまったみたいだ。

目が覚めたのは朝の6時前だった。
風呂場に行き、シャワーを浴びる。お化粧と昨夜の汚れを洗い流す。
ドライヤーで髪を乾かし、制服に着替えた。

いつものように、あたしは学校に向かった。
また、退屈な時間が始まる。
でも、授業中もゲームのこと…佐藤さんのことばかり考えていると思う。

 
そう、何も変わっていないのだ。
 
何も…
 
 

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