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2012年12月29日 (土)

道程

長い道程を歩き続けてきた。
肉体はとうに限界を越えていたが、脚はまだ先に進もうと次の一歩をまた踏み出してゆく…

俺の疲れきった脚が自らそうしている訳ではない。この脚が履いている靴が、それを強いているのだ。
昔話に、若い娘に踊りを強いた靴の話がある。それと同じ類いの「靴」なのだろうか?

 

一時も休む事が許されない。
眠っていても脚は前に進み続けてゆく。どういう仕組みか、器用に障害物を避け、転ぶ事もない。
靴は彼のみの知る目的地に向け、俺を歩ませていた。

昼も夜も、風が吹いても、雨が降っても…

冷たい雨に打たれた翌日。俺は熱を出した。
食事も摂れずに歩き続けている俺に、病に抗する力などない。
目は霞み、激しい耳鳴りとともに朦朧とする意識の中で、俺は死を覚悟していた。

 

 

 

 

 
『生きたいか?』

 

幻聴か?
耳鳴りで殆ど何も聞こえない状態にも拘わらず、はっきりと意味のある言葉を聞いた。
『生きたいか?』
再び声がした。
(生きたい!!)
即答したが、声にはならない。
しかし、俺の意志は届いたようだ。
『先ずはその靴を脱がなくてはな。』
そう言われても、俺には自ら体を動かす気力も体力もなかった。第一歩きながらでは、靴紐を解くことさえ困難である。
『ならば、お前の足を小さくしてやろう。そうすれば、靴は簡単に脱げるぞ♪』
(何でも良い。好きにしてくれ…)
俺の思考力は既に底を尽いていた。
「あ゛ッ!!」
気付いた時には俺の体は道の上を転がっていた。
回転は即に止まり、仰向けになった。
(多分、青い空が見えているんだろうなァ…)
霞んだ目にはもう、何も映っていなかった。俺はそのまま意識を失っていた…

 

 
ゴトゴトと揺れていた。
どうやら俺は荷車に乗せられているようだ。
「よう♪気付いたか?」
見知らぬ男の声があった。
男は車を牽く馬を御しているのだろう。言葉の合間に鞭を入れる音がしていた。
「助けてくれたのか?済まない。礼を言う。」
「何があったか知らないが、若い女が街道で倒れていたんだ。どんな悪いケモノに食われてしまうのかと心配になってね♪」
(若い女?!)
俺は『声』の言っていた言葉を思い出していた。
『お前の足を小さくしてやろう…』つまり、俺を女に変える事で足は小さくなり、必然的に靴が脱げたのだ。
「靴」の助力が途切れた俺は、慣性力で前に進むが脚が追い付かず、路面に転がっていったのだ。

俺は荷台に横たわったまま股間に手を伸ばし、自分が「女」である事を確認した。
「無理すんな♪」
俺が体を動かしたのを起き上がろうとしたと勘違いしたのだろう。
「動けないのだろう?しばらくは大人しくしてるんだな♪俺の家まではまだ掛かる。寝ていても構わないぞ♪」
と言うと男は言葉を切り…
「安心しろ。襲ったりはしないよ。その気があったら、既にコトを終えているさ♪」
と笑い声を上げていた。

 

(何で女なんだろう)と思った。単に年齢を退行させ、子供にしても良かった筈…とも思ったが、男の言葉に回答があったようだ。
『声』は俺を生かすと言った。単なるガキが転がっていても、見捨てられる確率が高い。
女であれば、輪姦される可能性もあるが、男の保護欲を掻き立てるのも確かである。
現に俺はこうして、この男に助けられている。いずれ何らかの代償を支払う事になるのだろうが…

(代償…)
今の俺は女である。彼は男であり、その代償として女の…俺の肉体を求めてくるのが自然の流れであろう。
俺は「女」として彼に肉体を開くことになるのだ…
ジッと股間を潤わすモノがあった。俺の肉体は既に「女」として反応しているようだ。
再び手を股間に伸ばした。
今度は直に指先で触れてみる。そこには「女」の切れ込みがあり、その先は暖かく濡れていた…

 

 

それが馬車の揺れでない事は即に判った。
俺は脇下と膝下に腕を差し込まれ、男に抱えられていた。
「男」としては女子供のように抱えられるのは屈辱であったが、体力が底を尽いた状態では何も言えなかった。

そのまま寝室に運ばれ、ベッドに寝かされた。
「今は余計な事は考えなくて良い。体力を回復させる事だけに専念していなさい。」
と、大きな手で頭を撫でられる。男としては遠慮したいのだが、その気持ち良さに、俺はされるが侭にしていた。

(俺はこのまま女であることを受け入れてしまっても良いのだろうか?)
男に戻る事ができたとしても、今の俺はそれを望んではいないような気がした。
女であることに嫌悪感もなく、男に触れられる気持ち良さにうっとりしている自分がいる。
このまま彼に身も心も捧げ、普通に女としてこの先の生涯を過ごしたい。彼と結ばれ、子を作り、育ててゆく…
「男」であった俺がそんな女としての幸せを望んでも、許してもらえるだろうか?

 
ズンッ!!
 

腹の奥に疼くものがあった。
それが「子宮」であると直感する。俺の腹の中には子宮を始め「女」を形成する器官が全て揃っていることに疑いはなかった。
俺の肉体は完璧に「女」なのだ。男に愛され、男に抱かれ…子を産み、乳を与えることができる。
子を育て、家庭を守る「女」の役割を果たすことなど、できないことではない。
 

俺は今、この男の元に留まり、保護されて一生を終えることを幸せと感じている。
(彼の子供が欲しい!!)
本能が訴えている。
俺の子宮に彼の精子を注いでもらいたい。彼の子供を俺の胎の内に宿したい…
既に、俺の肉体はデキあがっていた。
彼の腕を引き寄せ、近付いてきた頭を抱える…そのまま唇を合わせる…
俺が求めると、彼も舌を絡ませてくれた。
「生きている証が欲しい…」
そう言って、彼をベッドに引き込んでいた。

 

 
全裸の俺が彼の目に晒されていた。それは「女」の肉体以外の何物でもない。
彼は股間を硬くし、俺の上に伸し掛かってきた。脚が抱えられ、股間が広げられる。
ドアをノックするように、彼の尖端が俺の戸口を叩いた。
その合図に応えるように、俺が緊張を解くと…

ヌッ…

彼が俺のナカに入ってきた。
痛みに眉間に皺が生まれたが、それ以上の悦びに満たされてゆく。
(アナタの精液を俺のナカに…俺の…アタシの子宮を満たして頂戴♪)
彼の動きにアタシの体が悶えまくる。最大の快感を彼とアタシに与えるように、自然に体が動きまわる。
「嗚呼、良いよ♪最高だ!!」
と彼。
アタシの声は言葉にならず、意味を成さない嬌声をあげるだけ…
そして、彼が呻き声をあげた。動きが止まる。その後に、彼の精液がアタシの内に放出された。
アタシは歓喜の声を張り上げ…そのまま悦感の渦に飲み込まれるように意識を失っていた。

 

 

 

 
『十分に生きられたか?』

 
あたしが再びその声を聞いたのは子供逹、孫逹、曾孫逹に囲まれたベッドの上だった。
皆、あたしの危篤の報に集まってくれていた。
全てはあの声から始まった。
歩くのを止めたあたしが、あのひとと出会い、恋し、結ばれた証がこの子逹なのだ。
(有り難う。十分に生きられましたよ♪)
と声に返す。
終に、あたしが男だった事を明かすことはなかった。このまま、墓の中に持っていっても、誰も文句は言わないだろう。
(もう良いよ♪)
あたしは声に言った。
『了知した。』
と声が言う。
その声を聞きながら、あたしは眠るように息を引き取った…

 

 
「あっ」
と、集まった者逹が我に返った。
その間に何が起きていたかん知る者は一人もいなかった。
彼女の肉体は元の「男」に戻っていたが、彼女は彼女のまま荼毘に伏された。

 
「ねえ、この靴誰の?」
若い男が一足の靴を拾い上げた。
皆は自分逹の靴を履いており、その一足だけが余っていた。
(まっ良いか♪)
男はその靴を鞄に入れてしまった。

 
ここからまた、新しい物語が始まる…

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