« お化け屋敷には… | トップページ | 「指輪」(中編) »

2012年9月30日 (日)

「指輪」(後編)

繁華街に戻ってきた。
早朝の街にはあまり人がいない。
少し勝也と距離を取ってから指輪を外した。

グラリ

と一瞬視界がぶれる。
ふらついた体を勝也が抱き止めてくれた。
「ヤり過ぎたかな?」
と勝也。
振り向くとそこに勝也の顔。キスを迫ってくる。
(な、何で?!?!)
あたしの体は「男」に戻っている筈…なのに勝也はあたしがまだ「真理子」であるかのように行動している。

…「あたし」?…

あたしは視線を落とし、自らの体を確認する。
ブラウスに包まれた胸が「女」である事を主張していた。
ボトムはスカート。足には白のパンブスを履いている…ホテルを出た時の姿のまま変わっていない…。
唯一、あたしの手には外した指輪が残っていた。

 
「珍しいデザインの指輪だね?」
と勝也が覗き込んできた。
「填めてみる?」
不意に目覚める悪戯心…
あたしは彼の手を取り、その指に填めてみた。
今度は二人してふらつくが、俺は大分慣れたのか、しっかりと彼女を抱き止めていた。
「ご、御免。まだ足元がふらついているようね。」
「ヤり過ぎたかな?」と俺。
「バ、バカ…」と恥じらう佳代。
(勝也は佳代という女になった。俺とホテルに行ったという事実を無効にしない為に俺が男に戻れたという事なのだろうか?)
俺は佳代を彼女の自宅に送り届けた。

 

 
満員電車に揺られ、今日も会社に向かう。
誰も不審に思っていないが、そこには三好佳代という「女子」社員が存在している。
甲斐甲斐しく働く佳代に声を掛ける。
「今晩、付き合わない?」
彼女は頬を赤らめながら応諾する。

「佐野さん。お待たせ♪」
どうやら佳代は気合いを入れて化粧してきたようだ。待ち合わせの時間からは大分超過していたが、責める訳にもいかない。
「行こうか?」
と彼女と手をつなぐ。佳代は更に腕を絡めてきた。
「ねぇ、どっちにする?」
ホテルの前で佳代が聞いてきた。
「佳代ちゃんの好きな方で良いよ。」
俺があまり考えもせずに答えると、
「じゃあ、先ずは真理子サンとにしようか♪」
と彼女が指輪を外した。
グラリと視界が揺れる。
力強い腕があたしを抱き止めていた。
「じゃあ、行こうか?」
勝也はあたしと手をつないだまま、ホテルに入っていった。

 

 

 
「じゃあ、替わる?」
勝也が指輪を填めた。
「ま、待って…」
と言うあたしの声は届かなかったようだ。
(まだ女の快感に浸っていたかったのに…)
俺は裸のまま、佳代に跨られていた。
「心配しなくて良いわよ。あとでもう一度シてあげるから♪」
ヤリ疲れている筈なのに、俺のペニスはギンギンに勃っていた。佳代は腰をずらすと彼女の女陰に填め込んでいった。
「あぁん♪」
艶声をあげ、自ら胸を揉みあげてゆく。
膣の締め付けが射精を促す。
悦感に溶けた顔の佳代の姿が真理子であった俺と重なる。
「キテッ♪」
俺は佳代のナカに精を放っていた。

快感を享受し、俺の胸に頭を乗せて余韻を楽しんでいた佳代が呟いた。
「デキちゃったらセキニン取ってくれる?」
それは勝也が俺に言ってくれた言葉ではなかったか?
しかし、もし佳代が指輪を外しても元に戻らないようになったら、俺は…
「けど、あたしは真理子サンとの方が良いカナ?セキニン取るって言ったのはあたしの方だし…」
再び体を放した佳代の手から指輪が外された…が、勝也には戻っていない。俺の時と同じだ。
「貴方が填めてみて?」
と指輪が渡された。
俺が填めると、今度は俺が真理子に戻っていた。俺の時と同じに佳代は勝也に戻っている。
「何か法則性があるのかも知れないが、真理子が戻ってくれば何の問題もナイな♪」
そう言って勝也が抱きついてくる…

 

勝也はどうでも良いように言っていたが、俺は不安でならなかった。
(もし、もう一度「俺」に戻った時、指輪を填めても「真理子」になれる保証なんてどこにもナイんじゃないか?)
俺は24時間365日フルタイムで「真理子」でいる事を選択した。女子社員としての仕事も必死で覚えた。
「寿退社してしまえばそんな苦労をする必要がなくなるよ♪」
と勝也は言ってくれている。しかし、俺は勝也と結婚するまでにやっておきたい事があった。
ひとつは「料理」ができるようになる事。専業主婦として旦那サマに美味しい手料理を出してあげたかった。
勝也とのデートの合間にせっせと料理教室に通っている。
もうひとつも教室に通っている事なのだが、こっちは勝也には内緒にしている。
行き先は気付け教室。いつか和服姿を見せて勝也を驚かそうと計画していた。
(お正月に振り袖を着ていったら、俺も着たい!!とのリアクション…驚かせるのは失敗したかな?)

 

 
そうこうしている内に勝也との結婚式の当日となっていた。
俺は真っ白なウェディングドレスに包まれ、勝也とともに祭壇の前に立っていた。
「真理子さん。あなたは三好勝也君を夫とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」
司祭の言葉に
「はい。誓います♪」と答えた。
「リングを交換します。」
シンプルな結婚指輪が取り出された。
勝也が俺の手を取り、指輪を填める…前に、俺の指から指輪を引き抜いた。

グラリ

と視界が揺れ、俺の目の前に愛らしいウェディングドレスの佳代が現れた。
式を中断する訳にもいかず、タキシード姿の俺は指輪を佳代の指に填めてやった。
皆の拍手の中、退場する。扉が閉まると、
「お色直しの時までで良いから♪」
と佳代が耳打ちする。
「仕方ないなぁ…」
俺は佳代をエスコートして披露宴会場に向かった。

 

 
「オギャー!!」
あたしの隣であたし達の娘が泣き声を上げていた。
男だったあたしが、結婚して出産まで経験するなんて思ってもいなかった。(あたし達以外の人は、あたしが生まれた時から女だったと言うけどね♪)
勝也があたしの手を握ってくれている。
「痛かったんじゃないか?二人目は俺が産んでやるよ。」
まわりの人には微笑ましいやりとりに写っているが、彼にとっては本気でそう考えている事も解っている。
「でも、もう無理みたい。」
出産の際、指輪を外されていたが、あたしは「真理子」のままだったのだ。その指輪のない手を勝也に見せる。
「この娘にどんな影響が出るかもわからないわ。このままで…このままで良いわよね?」
あたしは勝也の手をぎゅっと握っていた。
「ああ。真理子は真理子だ。これまでも、この先もずっと…」
(あたしの目からこぼれているのは嬉し涙なの?)
「じゃあ、二人目も真理子に頼んで良いかな?」
「えっ?ええ、良いわよ♪」
「じゃあ、退院したら早速♪」
「な、何言ってるの?エッチ!!」
「あっ、この娘も笑ってる♪」
いつの間にか娘は泣き止んでいた。見ると愛らしい笑顔を浮かべていた。
(これで良いのよね?あたしは女になったけど、この幸せを自分のモノにして構わないわよね♪)

そのとき、あたしが気が付かない所で「指輪」は塵となって消えてしまっていた…

« お化け屋敷には… | トップページ | 「指輪」(中編) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「指輪」(後編):

« お化け屋敷には… | トップページ | 「指輪」(中編) »

無料ブログはココログ