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2012年9月30日 (日)

「指輪」(中編)

生きている者には分け隔てなく朝がやってくる。(その時点で起きているかは本人次第だが)
サラリーマンの性(サガ)故に、毎日同じ時間に目が醒めてしまう。いつもよりは幾分か気怠さを感じながらも、俺はベッドの上に起き上がった。
そして、胸に存在する二つの塊を発見する。指にはまだあの指輪が填まっていた。
指輪を外すといつもの「男」の俺に戻る。
(女の姿で出社したらどうなるだろうか?)
とも考えたが、女が外出するには化粧をしなくてはならない。俺にそんな真似が出来る筈もない。
そのまま顔を洗い、髭を剃り、スーツを着て会社に向かった。

 

ホームで電車を待つ。入ってきた車両は満員状態。
ふと、隣の車両を見ると幾分か空いている。女性専用車両だった。
いつもなら(女は良いなぁ)と指を咥えているしかなかったが、今の俺には「指輪」があった。
ポケットから指輪を取り出し、指に填める…
一瞬で俺はOLに変身していた。

俺は堂々と隣の車両の列に並んだ。文句を言う奴は一人としていない。
そのまま女達の流れに乗って電車の中に入っていった。
立ち込める化粧品の匂い(その一部は自分から出ている事を思い出した)に慣れた頃に下車駅に着いた。
そのまま会社のビルに入っていきそうになり、慌てて物陰に隠れた。
バックの中には定期券と一緒に社員証も入っていて、写真も今の「女」の俺のものになっている。(名前も佐野真理子と女の名前になっていた)
この社員証であればセキュリティもパスできる筈だ。
が、「女」のまま会社に入ったとしても、俺は女子社員としての仕事ができるとは思えなかった。コピーは何とかなるとしても、お茶汲みは絶対に自信がない。
指輪を外した「俺」は何事もなかったかのように会社のビルに入っていった。

 

 
その日は一日中指輪の事…女になった自分を想像してしまい、殆ど仕事が手に付かなかった。
「三好、行こうぜ♪」
就業時間を終えると、早速同僚の三好勝也に声を掛けた。既に昼休みに話をしていたので、即にも支度を終えていた。
「どこの店に行く?」
奴は飲む気満々である。が、俺は奴に「飲もう」とは一言も言っていない。
俺達は飲み屋街を抜け、ラブホテルが並ぶ街路に入っていた。当然ではあるが勝也は不審がる。
俺はホテルの前で立ち止まると、ポケットから指輪を取り出して指に填めた。
「大丈夫?」
フラリとよろけた俺を勝也が抱き止めてくれた。
「問題ない…で、ココにしよう。」
と目の前のホテルに視線を向ける。
「えっ?!佐野さん…良いの??」
ハトが豆鉄砲をくらった顔…とでも言うのだろうか?勝也は唖然としていた。
「入ろう♪」
俺は勝也の手を引き、ホテルに入っていった。

 

「シャワー浴びてくるね♪」
俺はそう言って風呂場に入り、服を脱いだ。「男」の俺は童貞ではないが「女」の俺は処女の筈だ。
ハジメテ「男」を迎えるための禊のつもりでシャワーを浴びた。
バスタオルを巻いて出てくると、「俺も」と勝也が風呂場に飛び込んでいった。

俺はバスタオルを外してベッドに潜り込み、彼を待った。
程なく、タオルを腰に巻いてやってきた。勝也は隠そうとしていたが、タオルの前の形状を隠しきれるものではない。
「キテッ♪」と誘う。
「さ…佐野♪」
勝也が伸し掛かってくる。
(今、俺は抱かれているんだ…)
俺は勝也の温もりを感じていた。

唇が求められる。
合わされた唇の間から奴の舌が割り込んでくる。
拒絶はしない…彼の舌を受け入れ、自らの舌を絡め付かせる。
「ンム♪」
キスをしながら、彼の掌が俺の胸を揉み上げる。先端の乳首を弄られると、快感に媚声が漏れる。
ジュン!!と股間が潤み始める。俺が「女」として「男」を受け入れる準備が進んでいるという事だ。
「キテ…」
俺は脚を広げていた。
「佐野っ♪」
勝也は硬くなったペニスを俺の股間に近づけていった。
その先端が俺に触れた。少し腰を捻り膣口に導く。彼もその場所を感じ、腰を降ろす…
ヌッ!!
と俺の膣に勝也のペニスが填まった。
「ぁあ、佐野。気持ち良いぞ♪」
それは俺も同じだった。自らの指や無機質な機械などでは埋められない「何か」が本物のペニスにはあった。
「あ、あたしも…」
俺は「女」になりきって、この快感を余すところなく享受することを決めた。
俺のナカを勝也のペニスが貫いてゆく。受け身になって犯される快感に流されてゆく。
「あぁん、勝也~ぁ♪」
「ま、真理子ォ…」
彼もまた昇り詰めてゆくのが判った。
「キテッ、射しテ♪あたしのナカをアナタで満たしてッ!!」
「うぉぉッ!!」
勝也が吠え、アタシのナカに精を放った…

 

 
「気がついたかい?」
俺は勝也に腕枕されていた。
「良かった?」
俺は勝也の胸板を身ながら聞いた。
「もちろん♪」と勝也。
「あたしも…」
と首を上げると彼に唇を塞がれる。
俺の股間は奴の精液と俺の愛液にまみれていたが、不快に思う事はなかった。
「でも、大丈夫なのかい?ナカ出しして。」
それは夫婦でもない男女のSEXでは必ず注意しなければならない事であるのに気づくまでしばらく時間が掛かった。
「安全日だから…」
その言い訳が通じたとは思えなかった。


「責任は取るよ。」と勝也。
それが、俺と勝也が結婚する事であることは容易に想像がつく。
ウェディングドレスを着た俺がバージンロードを歩いてゆく。その先には満面に笑顔を浮かべた勝也が待っている。
走り出したくなるのを必死で堪え、パイプオルガンの音に導かれて祭壇に、一歩づつ近づいてゆく…

 
…って、俺は何を想像していたんだ?
女の快感を…イクッていうものを…経験してみたくて勝也を誘っただけなんだ。俺が「女」でいるのも一時の事。
ホテルを出たら指輪を外して「男」に戻るんだ。
…それまでは、このまったりとした快感に浸っていよう…
「真理子」として勝也に愛されていたい。もう少し…せめて、夜が明けるまで…

 

結局、堪えられずに、その後も生のまま何度も絡み合った。
それは至福の時間だった。
(夜が明ける…)
俺はシャワーを浴びて一夜の痕跡を綺麗に洗い流していった。
ドライヤーで髪を乾かし、バッグに入れておいた化粧道具でホテルに入る前の「自分」に戻してゆく。
その間に、勝也もシャワーを浴び、身支度を整えていた。
「支度は済んだ?」
鏡越しに勝也が俺の顔を覗き込む。
「あぁ、いつもの真理子=佐野さんに戻ってしまったね♪」
「そんなに違う?」
俺の問いに勝也は口ごもる。
(いつもの「真理子」って見たコトない筈よね♪)
「じゃあ、出ましょうか?」
俺はそう言って立ち上がると、勝也と共にホテルを後にした…

 

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