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2012年3月 2日 (金)

幽霊の存在(3/3)

 
 
俺が気付いたのはベッドの中だった。
裸のまま、毛布にくるまれている。隣では、奴が寝息をたてていた。
ゆっくりと起き上がる。股間に違和感を感じていた。手を伸ばすと指先に粘液が絡まる。
(奴のか?)
(今更何言ってるのよ!!さんざんヨがってたのはどこの誰?)
(き…記憶にない…)
(ふ~ん。フェラしたのも、騎乗位で腰を振ってたのも憶えていないんだ?)
(そ、そんなコトしてたのか?)
(…。良いから、シャワーで綺麗にしてきなさいよ。)
彼女に促され、風呂場に向かった。

 
奴はまだ寝ていた。
俺は買ってきた下着とパジャマを着ると、毛布を引きずり落とし、床の上にまるまっていた。
寝ようとしても、なかなか寝付けない。自分が「女」であることをまざまざと思い知らされたのだ。
胸、そして股間に触れる。それが「女」の肉体である事を改めて確認する。
(どうするつもり?)
彼女が聞いてくる。
(どうって…俺は克己を助けたいだけだよ。)
俺が食事を作らなければ、奴は何も食べないと言っているんだ。放っておけば克己は餓死してしまう。
奴にはとっては、この世に干渉できる肉体がなくなるだけで、何のデメリットもない。
結界でこの家を出れないようになっているが、時間の観念がないのか、こちらが結界を解くのを待ち続けると言っている。
…このままでいると、克己の寿命が尽きるまでこのままなのか?
(それもあり得るわね。)
(それって、どうやっても克己を取り戻せないって事じゃないか?)
(あたしとしては、奴を行動できないようにできれば、それでも構わないんだけどね。)
しかし、彼女自身では俺の口を使って喋る他は何もできない。俺の協力がなければ…いや、結界が張られた時点で彼女は傍観するだけになっている。結界を維持するために彼女に必要な事は「俺」を死なせないことだけなのだ。

(何か、克己を助ける方法はないのか?)
無駄とは知りつつも聞かずにはいられなかった。

(無いことはない…かな?)
(何か手はあるのか?)
(多分…イけると思う。)
彼女が言う事には、結界を移動させる方法を使って結界を極小化させた上で、第三者を結界の中に入れ、克己を結界の外に押し出せば奴は結界内の第三者に移動するしかない。
その第三者が死ねば、奴は肉体を失うことになる。
(で♪その第三者ってどうすれば良い?)

 

 

俺達は期が熟するのを待った。
そして今日。決行の日が来た。
いつものようにPCに向かいっぱなしの奴に声を掛けた。
「お昼ご飯にしましょう♪」
奴は「ああ」と画面を閉じて立ち上がった。
俺が奴の手を取ると、彼女が結界を縮めてゆく。
「な、何のつもりだ?」
奴が慌てる。
俺はつないだ手が離れないように、ビニールの紐を巻き、しっかりと結びあげた。
「克己を返してもらうわ。」
「な、何を言う?この男が死なない限り、私は離れないぞ。」
「そう言っていられるのも今のうちよ。」
「この男の代わりにお前が肉体をよこすというのか?だが、それだと私の行動を制限しようとするお前の目的は達成されないぞ。」
「貴方のための肉体は、ちゃんと用意してあるわ。おとなしく克己を解放して頂戴!!」

結界が更に小さくなる。
奴の体に結界が触れ、奴が新たな肉体に移動する。克己の体が元に戻る。
「克己!!」
俺は克己を抱き寄せた。
「ぁ…ああ。声が出せる。や、奴はいなくなったんだな?」
「奴は克己の体から離れた事には間違いないわ。だけど、奴はまだここにいるの。」
「まさか、お前の中に?」
「いいえ、あたしはあたしのままよ。奴はココ♪」
と俺は自分の腹を摩った。
「奴とあたしの赤ちゃんに奴を封じ込めたの。大丈夫よ。この子が生まれたら、あたしは母親としてこの子が変な事をしないように導いていくわ。」
「そんな事できるのか?」
「なんとかなるわ♪」
「お、お前はそれで良いのか?俺はこうやって元の姿を取り戻せたが、このままだとお前は一生女の…」
「良いの!!あたしが決めた事だから。それに女でいる事もそう悪くはないのよ♪」
「そうか」
そう言って克己は口を閉じた。

 

 
「おぎゃーー!!」
新しい(?)命が生まれた。この子には奴の魂が取り込まれているが「あたし」の子供であることに違いはない。
まだ見えぬ目で、必死に母親を求めている。
「大丈夫よ。ママはずっとアナタのそばにいますからね♪」
そう言って、あたしは病院全体を包むように広げた結界に綻びがない事を確認した。

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