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2012年3月 2日 (金)

幽霊の存在(1/3)

「お前、幽霊って信じるか?」
親友の克己がそう言った。
「俺がそういうのダメだって知ってるだろう?」
「肝試しで泣きながら女の子に連れて来られてたのは覚えてるよ。」
「む、昔の汚点だ。今はそんな事にはならない。」(そんな怖い所に行くなど断固拒否する!!)
「あれはあくまでもイベントだろう?雰囲気で怖いと刷り込まれているだけだ。俺が聞いたのは幽霊そのものの存在についてだ。」
「何が違うと言うんだ?」
「別に怖がらせようとしている訳じゃない。ちょっとした実験に付き合ってもらいたいんだ。」
「実験?」
「幽霊の存在の有無を確認する実験だ。普通の降霊術は術者に見えない霊を降ろすため、真偽が判り辛い。」
「降霊術?」その単語だけで、俺はその場から逃げ出したくなった。
「だから、降霊術とは違うんだ。この実験で霊の実体化ができれば、幽霊の存在が証明できるんだ。」
「その証人になれと?」
「ビデオは回すし、リアルタイムでネットに映像の配信も行う。もちろん公開で行うから証人はたくさんいる。」
「なら、俺には用はないだろう?」
「何事にもアクシデントはある。気心の知れたお前なら、なんとかしてくれると思ってな♪」

 

 
結局は断れずに実験の当日を迎えた。
実験そのものの準備の他に、撮影するカメラをセットしたり、ネットとの接続を確認したりと忙しく働く克己を、俺はぼーっと眺めていた。
俺が任されたのは「証人」となる見学者の誘導であったが、20席程用意したパイプ椅子には誰も座っていなかった。
勿論、立ち見がいる訳でもない。現時点で見学者は0名。当然、俺は何もする事がなくなり、克己の作業を眺めている事になる。

「では。これより幽霊の存在確認実験を行います。」
克己はカメラに向かって口上を述べてゆく。
結局、証人となる観衆は俺一人だった。

克己がステージの中央に向かう。実験装置が次々と稼働してゆく。空気がピリピリと電気を帯びてきた。
「この装置はこの場に霊を呼び寄せるだけでなく、霊を実体化させます。」
克己の手が仰々しいスイッチに伸びていった。

カチリ

と音がして装置の唸る音が一段と高くなった。
克己の前にモヤモヤした陽炎のようなものが生じていた。
(これが幽霊なのか?)
と思っているうちに、それは「人」の形…男の、それもかなり美形の部類に入る…に実体化していった。
それはまだ向こう側が透けて見える状態であったが、着実に色が付き、その濃さを増していた。
男の表情も判る。最初は戸惑っていたが、状況を把握し始めて満足げな笑みも浮かべていた。

克己もまた(やったね♪)と笑みを浮かべている。

「聞こえるか?」
と克己が男に向かって言う。
男はゆっくりと首を縦に振った。が、まだ喋ることはできないようだ。
「あなたは幽霊…一度死んだ人ですね?」
その言葉に、男は握手を求めるように手を差し出し、一歩前に歩み出た。
克己もまた、手を差し出す…

 
「だめーーーッ!!」
女の叫びが俺の耳に届いた。
「彼を復活させてはダメ!!トンデモない事になるわっ!!」
騒ぎたてる女の声は克己の耳には届いていないようだ。彼女の声は俺にしか聞こえていない。
(ならば、俺が行動するしかない。)

「いかん!!」
克己が叫ぶ。
ステージに乗り込んできた俺への警告だ。
その直後、幽霊の男が克己の手を握る。
男が一気に克己に近づき…体が重なった。
「ダメッ!!」
再び女の声。
彼がいた場所に再び陽炎が生じる。
女の声はそこから聞こえた。
「一足遅かったな♪」
克己ではない男の声。
克己は…

克己の立っていた場所には幽霊の男が実体化していた。
「なかなか便利なモノを用意してくれたな。この男の肉体を核に、楽々と実体を保っていられる。」
「その人を解放しなさい!!」
陽炎は透明な女性の姿に変わっていた。
「いくらでも吠ざいていれば良い。あんたは実体を得た私には、何の干渉もできないのだからね。」

彼女の叫びはそこで止まった。
次に、男の視線が俺に向いた。
「お前も私の邪魔をするつもりか?」
迫力のある視線に身動きが取れなくなる。
「どけっ!!」
一喝され、ふらふらと後退し、そのまま尻もちをついてしまう。
「ぁあっ?!」
背後で女の声…

いや、その「声」は俺の口から漏れていた。

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