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2012年3月 2日 (金)

雛祭

=回想=

♪明かりを灯けましょボンボリに~
そう歌いながらお雛さまを飾る母の姿。
「諒ちゃんも今日だけは女の子よ。」
とスカートを穿かされて母を手伝っていた。

3月3日は女の子のお祭り…誰もが女の子になってお祝いをする日…
ではない事は小学生のうちに気が付いていた。しかし、その日は母の特別な日である事は幼いながらも理解していたのだろう。
その儀式は母が他界するまで続けられた。

=回想終わり=

 
早くに夫を亡くし、女手ひとつで俺を育ててくれた。母の辛い日々をその日だけは癒してくれていたのだろう。
毎年、俺の為に洋服を新調していた。今も箪笥の奥に仕舞ってある。標準的な男子の体型でも入る女の子の服を探すのは大変だったと思う。
年齢に応じて、だんだん大人っぽくなっていった。高校3年の春には、そのまま就職活動ができそうなスーツも用意されていた。
が、それを最期に母は他界してしまった。
もともと大学進学はしない予定だった。小さな町工場に勤め、自らの手で生計をたてられるのが確認できたからなのだろうか?
やっと母に親孝行ができると考えていた矢先だった。
工場のオーナーも場長も親身になって支えてくれたので、俺も母の死を乗り越えられたのだろう。

 

今年も、その日がやってきた。
俺は母が愛用していた人工乳房を胸に貼り、整形下着を穿いて完全女装してお雛さまを飾った。

これは、「あたし」のお雛様…
そう。誰のものでもない…あたしだけのもの…

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