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2012年3月31日 (土)

憧れたものは…(1/3)

「早いけど、当直の交代にしようか?」
カイトがいつもよりも大分早くブリッジに上がってきた。

完全自動化された航宙システムを備えている宇宙船ではあるが、不測の事態に備えて当直を立てるのが会社の規則だった。
だが、この十数年の間ぬ「不測の事態」が起こった事もなく、今は「規則」を守るためだけに当直専用の要員を集め、乗せている体であった。
だから、俺のような学歴のない男でも簡単に採用され、宇宙を飛びまわる事ができるのだ。

 

 
宇宙を飛びまわる…
聞こえは良いが、そんな要因で集められた俺達である。当然の事ながらまともな扱いが受けられる筈もない。
当直要員は、その船の緊急時対応マニュアルを睡眠教育で叩き込まれただけで、配属される。
その「配属」も、センターから冷凍睡眠状態で運ばれ、配属先の宇宙船に運び込まれるのだ。殆ど荷物扱いである。
離着陸のリスクを抑える為と、解凍は惑星引力圏を脱してからだし、目的地に着くかなり前から冷凍睡眠装置に放り込まれる。

「離着陸の間も起きていたいのなら、手がない訳でもないぜ。」
と俺は、カイトが教えてくれた催眠プログラムを始めて一ヶ月が過ぎていた。
「プログラムの効果は出てきてるか?」
とブリッジに上がってきたカイトに早速聞かれたが、
「実際、どんな効果が現れるのか聞いてないんだもの。効果が出たか判る訳ないでしょ?」
としか答えようがなかった。

「ああ、それもそうだな♪それより、監視を替わってやるから、席を開けてくれないか?」
とカイトが背後に回り込んできた。俺はベルトを外し、カイトに席を譲るべく立ち上がった。
「ヒャッ!!」
とすれ違い様、俺はスットンキョウな声で叫んでいた。
「あ、悪い♪」とカイト。俺は何故か顔を赤らめていた。
「わ、悪い事ないよ。何でもないから気にしないでね。お休み!!」
そう言って、俺は慌ててブリッジを後にしていた。

(何が起きていたか?)

俺はゆっくりと思い返してみた。
…それは、単にカイトの手が俺の尻に触れただけだった。
それを、俺は「女の子」みたいに叫んでしまっていたのだ。そして、その声もまた、女の子みたいに甲高くなかったか?…
俺は気を落ち着かせる為にシャワーを浴びる事にした。

 

最近の俺は、シャワーを浴びるのが好きになっていた。気分を落ち着かせるのにも良い。
が、ケチな会社はシャワーを使うのもチケット制にしていた。
基準回数分は支給されるが、それ以上は自腹を切らなくてはならない。男性は週に1回。女性は週に2回。
しかし、女性の場合は生理期間には毎日使えるよう優遇されていた。
俺は今週に既に2回使ってしまっていたので、どこかで1週間以上使わずに帳尻を合わせるか、自腹を切るかを考えなくてはならない。

服を脱ぎ、シャワーの下に立った。最近、伸びの早い髪の毛が肩に触れるくらいになっていた。(不思議と切ろうとは思わなかった)
髪をまとめてシャワーキャップを被り、お湯を流す。
「あぁ、気持ち良いわぁ♪」
思わず声が出るくらい気持ち良い。この気持ち良さの為に、ついついシャワーを浴びてしまう。
(さっきのお尻を触られた時の反応といい、どこか女の子っぽくなってきてるのか?)
そんな事を考えていたからだろうか?胸に当たるシャワーの刺激に乳首が膨らんでいった。

別に、俺の胸は女の子のように釣り鐘状に盛り上がってはいない。
が、刺激を与えると、乳首だけは女の子のようにぷっくりと膨らむのだ。
「ぁあんっ♪」
乳首を摘むと女の子のような喘ぎ声が漏れてしまう。シャワーの音に紛れて誰にも聞かれないので、その声を我慢することなど考えない。
快感を求めて掌が動いてゆく。片手は乳首を刺激しつつ、もう一方の手は腹部を這い降りて股間に達する。
そこには硬くなった突起があった。ペニスと呼ぶにはあまりにも細く短い。が、その分感度が増していた。
その先端から小水や精液が吐き出されなければ、女の子のクリトリスとも見えるだろう。
俺は女の子のように淫声をあげて胸と股間を責めたてていた…

ヌルッ…

指先がシャワーのお湯とは異なる液体を捉えた。
(何?)と股間から指を引き抜く。
指先に血のようなものが絡まっていた。爪で皮膚を傷付けたにしては痛みもない。
シャワーを止めて股間を確かめてみた。内股に血色の筋が生まれていた。
タオルが血に塗れるのも気にせずに体を拭き、一目散に部屋に戻る。

再び全裸になり、股間を覗き込んだ。

そこには割れ目ができていた。
その割れ目から血が染んでいた。
その割れ目は、まるで女の子の股間と同じ?

俺は再び服を着た。
股間にティッシュを当てる。
そして、ブリッジに上がった。

 

 

「カイトッ!!」
俺が呼び掛けると
「何だい?」とカイトはゆっくりと振り向いた。

「血、血が… これがプログラムの効果なのか?」
「そろそろ一ヶ月だろう?効果が出てくる頃なんだ。確認させてくれないか?」
「ここでか?血は下半身から出てるんだ。」
「解ってるよ♪でもここには他に誰もいない。そっちの予備席なら船内モニタにも映らないから。」

俺は予備席に向かい、ズボンとパンツを下ろして座った。
「もう少し浅く座って脚を上げるんだ。肘掛けに絡めるつもりで開いてみな♪」
言われるままに体を動かす。そしてカイトは開かれた俺の股間を覗き込んだ。
「うん♪プログラムは順調に機能しているようだね。これは生理だ。君にとっては初潮という事だね♪」
「せ、生理って…俺は男だぜ?」
「ここまで来て、まだ気付いていないのかい?あのプログラムは肉体を女性化させるものなんだよ。」
「…」
「正規乗員に気に入られれば、離着陸の間もブリッジに入れてもらえるんだ。もちろん、オンナとして彼等にご奉仕をしながらになるけどね♪」
「お、俺は女になんかなりたくない…」
「ここまで進んでしまうと、男には戻れないよ。それに、君もオンナノコを愉しんでいたじゃないか♪」
「?」
「シャワーの下で胸や股間を弄ってたじゃないか。女の子と同じ喘ぎ声をあげながらね♪」

見られていたと思うと顔が真っ赤になる。
「取りあえずはコレを使いなよ。」とカイトは箱から何かを取り出した。
「タンポンだよ。今回は着けてあげるね♪」と袋から出したソレを俺の股間に充てた。

憧れたものは…(2/3)

「女性化完了の手続きはしておいてあげるよ。ここ数日はシャワーも毎日使えるよ。新しい船内着が届いたら最初に見せてもらえると嬉しいよ♪」
そう言ってカイトは俺を部屋に戻した。
俺はぼーっとしながらブリッジを降りてゆく…股間に若干の違和感を覚えつつ…
(俺がオンナ…)
いまだ実感が湧かないまま部屋に戻るった。
見ると、部屋には真新しい船内着が届いていた。

広げてみる。
即に気付くのは船内着の色だ。ピンク色で「女」である事を識別する。
ひらひらのスカートが外見的特徴となっている。
下着も用意されていた。ブラジャーにパンティ…
これらを「俺」が着なければならないのだ。

上半身をはだけ、手にしたブラジャーを胸に巻いてみた。
これまで、乳首の大きさに気を取られていたのか、俺の胸は平らとはいえ女性的な脂肪の厚みをもっていた。
それがブラジャーを着けることで、胸に谷間のようなものを作り上げていた。
当然の事だが、カップの中には寄せ集められた肉が詰まり、釣り鐘型とは言えないまでも、しっかりとした「バスト」を形作っていた。
船内着は体のラインがもろに出てしまうので、俺の「胸」も白日の下に晒されることになる。

一気にボトムも穿き替えた。
タイツを下に穿いているとは言え、スカートが捲れれば、タイツの布地越しにパンティが丸見えになってしまう。
この会社の女性達が、皆この心許ない服で平然としていられる事に感心してしまう。

 

 
(最初にこの姿を見てみたい)とカイトが言っていたのを思い出した。
部屋のドアを開け、左右を確認する。通路にはだれもいないようだ。急ぎ足で船の中心に向かう。
まだ、誰にも会わない。そのままブリッジに上がる…

「カイト?」声を掛けると、
「見せに来てくれたんだね♪」とシートから立ち上がった。
「可愛いよ♪」と言って俺の額にチュッとキスをした。

思いもよらない行動に、俺は固まったまま…顔を赤くしていた。
(何を俺は…男にキスされて顔を赤くしてるんだ?)
「こっちにおいで♪」と彼に言われ、俺はぼーっとしながら彼の指示に従っていた。
「ここに座って。もう女の子なんだから、お化粧はしておかないとね。」とポーチから取り出した化粧道具を並べる。
俺が椅子に座ると、俺の顔にいろんなモノを塗りたてていった。
「さあ、できたよ♪」と鏡を渡された。
鏡の中には、ぱっちりと大きな目、長い睫毛、艶々の唇、愛らしい頬…
これほど間近では見たことのない可愛い女の子の顔があった。
「…これが…俺?」
そう気付くまでにはしばらくの時間があった。

「どうだい?」とカイト

「な…何と言って良いか…  とりあえず、ありがとう。」
「じゃあ、次はご奉仕の練習だな。これができないと離着陸時にブリッジに入れてもらえないからね♪」
「ご奉仕…って?」
「いろいろあるけど、解るだろ?最初だし、アノ日だから口でやる練習だね。」
カイトは再びシートに戻った。
俺はカイトの指示に従いコンソールの下に入り込むと、カイトの脚の間に身を潜ませた。
彼のズボンのベルトを外すと、自分にもあった見慣れたモノの筈のペニスが現れる。
見慣れてはいたが、こんなにも間近で見た事はなかった。
「さあ♪」とカイトに促される。
解っている。俺はこれから「フェラチオ」をするのだ。

「女」なら「男」を悦ばすために、彼のペニスを口に咥えてあげるのもあたりまえの事なのだ。
今の「カイトと俺」は「男同士」…ではないのだ。
俺はもう一度自分に言い聞かす。「俺は女なのだ」と…

 

 

数日後、当直の筈のカイトが持ち場を離れて俺の部屋にやってきた。
俺は、お化粧の練習をしていたところだった。
「大分上達したじゃないか。これなら皆に気に入ってもらえるよ。」
「カイトか?何か用?」
「ああ、船長がお前を呼んでいる。仕上げをしたら船長室にいってきな♪いっぱい可愛がってもらえると良いよな。」
「可愛がってって…俺が?」
「そうさ。お前が女になったから呼びだされるんだ。彼等には男の我々は用がないからね。」とカイトはブリッジに戻っていった。

俺は船長室のドアを開けた…
「こっちだ。」奥から船長の声がした。
生で…それも俺一人に向けて発せられた彼の声を聞くのは初めての事だった。緊張にまみれて奥へと進んだ。
「来なさい。」との声に従う…

船長の姿が見えた。と同時に、俺は動けなくなってしまった。

船長はベッドの端に「全裸」で座っていたのだ。股間を隠す事もせず、悠然としていた。
最初は、男の意識でいたため、その異様さに身動きが取れなかった。

次に自分の立場を思い出す。
俺は彼らに奉仕するのだ。奉仕が受け入れられれば、離着陸の時にブリッジに居られる…
奉仕…それは言わずもがな、性的なものである。
船長が全裸でいると言う事は「女」の俺を抱く…SEXしようとしているのに他ならない。
俺の目の前に晒された彼のペニスが、俺の女性器に挿入される…
頭では理解しているつもりだが、その未知なる行為を前に体が恐怖で動かなくなっていた。

が…

憧れたものは…(3/3)

「さあ♪」
との船長の声に呪縛が解けた。
俺達は、船長の命令には忠実に従うように条件付けられている。彼の指示には無意識に体が動いてしまう。
一歩、また一歩とロボットのように近付いてゆく。そして…
「服を脱ぎなさい。」
と言われた。
俺は一枚づつ脱いでいった。ブラジャーを外し、パンティも脱いだ。
恥ずかしい気持ちはあったが、股間を隠そうと考える事ができなかった。
「胸はもっとあった方が良いな♪」
との船長の言葉に俺は「はい」と答えていた。
ブラジャーの補正効果もあってか、俺の胸はブラジャーを外してもそれと分かる膨らみを造っていたが、Aカップと言う程度なのだろう。
グラビアアイドルと較べなくとも、その貧弱さは判っていた。多分、プログラムが書き換えられ乳房の発育が図られるのだろう。
「感度は良いようだな♪」
彼の視線が俺の股間に注がれていた。そこには先程から愛液の滴る筋ができていた。
そう…服を脱いでいる時も、俺の眼は船長の露出された股間…ペニスから離れられなかった。それが次第に勃起してゆくのに合わせて俺の下腹部で…子宮が疼いた。
俺の女性器は熱く熟れてゆき、そこからじわじわと愛液が滴っていった。膣から溢れ出るくらいに…

「では、君のハジメテをもらうとしようか?さあ、ここに来なさい♪」
「はい」
と俺は船長に近付いた。
指示に従い、背中を向け、尻を突き出し、船長の太股の上に腰を降ろしてゆく。
俺の股間に、船長のペニスの先端が触れた。
そのまま、俺の体重が掛かるに従い、彼のペニスが俺の膣に侵入してくる。
タンポンとは違い、太く、熱く…膣を満たしてゆく…
「あぁ…あふぁん♪」
自然と喘ぎ声が漏れる。

「良い締まり具合だ♪」船長が褒めてくれた。
「こっちを向きなさい。」
船長が上体を倒し、股間をつないだまま、俺の体を半回転させた。その動きに併せて、膣の中でペニスも半回転する。
「良い娘だ♪」目の前に船長の顔があった。
更に近付き、唇が奪われる。俺の口を割って船長の舌が侵入してくる。頭がぼーっとして何も考えられなくなってしまう。
ベッドに寝かされ、本格的に船長の責めが始まった。脚を抱えられ、更に密着度が増した。
その形で船長が腰をグラインドさせる。俺の膣の中を彼のペニスが行き来する。ペニスの先端やカリ首が膣内を刺激し、更なる快感を俺に与えてゆく…
「あんっ!!ああ~~ん♪」俺は嬌声をあげ続けていた。
「おお、良いぞ♪」船長が達しようとしていた。
「ご、合格だ。ブリッジへの出入りを許可する!!」

船長は宣言と同時に大量の精液を俺の膣に放出した。
そして、一瞬遅れて俺も快感の頂に達する。

 

「あああ、あ~~~っ!!」
とてつもない嬌声をあげた所までは覚えていたが、気が付いたのは自分の船室のベッドの上だった。

時間を確認すると間もなく当直の時間だった。
船内服を着てブリッジに上がる。今はヤスがローテションに入っていた。
「早いけど替わろうか?」と俺が声を掛けると、
「次の当直はカイトに変わった筈だよ?」
とヤスは不思議そうな顔を俺に見せた。

空いている端末に当直のスケジュールを表示させた…
(当直が半分になっている?)

「何で?」誰に問うでもなく、口を吐いた。
「女の子には無理はさせられないからね♪」とヤス。
「君みたいに可愛い娘なら、僕もご奉仕されてみたいよ。まあ、それは正規乗組員の特権だからあきらめるしかないけどね♪」
「お、俺にか?」
「君は男だった。それは過去の事だ。こんなに可愛ければ何も問題ナイさ♪僕ももうムラムラしてきて、君を襲いたくなる衝動をいつまで抑えていられるか…」
「ナニを馬鹿な事言ってるんだ。女の子を怖がらせて喜ぶなんて悪趣味に他ならないぜ?」と別の声が割って入った。
カイトがと俺を庇うように現れたのだ。
「ジ、ジョークだよジョーク♪」とヤスが手を振る。
「お前の眼はマジだと言ってるぞ?」
「か、勘弁してくれよ。まあ、そんだけ可愛いって事だ。」ヤスは立ち上がり、カイトに席を明け渡した。
「事故が起きないうちに退散するよ。あとはヨロシクな♪」
ヤスはソクサクとブリッジを降りていった。

「お前も…」とカイトが俺を睨むように見る
「お前もチョロチョロしてないで、部屋でおとなしくしてるんだ。」
「お、俺は当直のローテが変わったのを知らなかっただけで…」
「お前はもうオンナなんだ。自覚しろ!!決められた当直と正規乗組員に呼ばれた時以外は部屋を出るな。それはお前の為でもあるが、無用に俺達を刺激するな。」
「俺は…」そんなつもりはない…と反論しようとしたが、カイトの眼はそれを許さなかった。
仕方なく立ち上がり…ブリッジの出口に向かう。
「それから、一人称も変えた方が良いいぞ。お前はもう、可愛い女の子なんだからな♪」
ブリッジを去る俺の背中にカイトはそう声を掛けていた。

 

しばらくして副長に呼ばれた。
「これに着替えろ。」
と渡されたのは女子高生の制服みたいなものだった。
「お前はまだ胸が小さいから、こういうのが似合う筈だ。」
と言った。俺が着替える場所をキョロキョロと探していると
「これから何をするのかは判ってるだろ?何を恥ずかしがる事があるんだ。そこで着替えるんだ。」
俺は副長の前で服を脱ぎ、与えられた服に着替えた…が、胸の前のリボンが上手く結べない。四苦八苦していると、副長が手助けしてくれた。
「服によっては背中側でリボンを結ぶようなものもある。いくつか見繕っておくから、練習しておくんだな。」
俺は「ありがとうございます」としか言えなかった。

「それじゃあ、先ずご奉仕からだな。」
と副長が俺を招き寄せる。
俺は副長の脚の間に座った。カイトに教えられた通り、膝を合わせつま先を開き、お尻はぺたりと床に付くようにする…女になって関節が柔らかくなったからできる座り方だ。
そして、副長のズボンのチャックに手を掛け引き下ろそうとした時、
「待て、勝手に進めるんじゃない。ご主人様にちゃんと許可をもらってからだ。」
「ご主人様?」
「お前達は言うなれば俺達に囲われている娼婦に過ぎない。だから、俺達はご主人様だ。」
契約では指揮命令は正規乗組員から受けることにはなっている。が、俺達は彼等の所有物ではないのだ。
と、俺が不服そうな顔になったのだろう。副長は俺の頭を鷲掴みにした。
「ここではな。男は消耗品、女は船の備品でしかないんだ。貴様等はどう足掻いてもモノでしかないんだ。女になった事で多少の付加価値が付いたことは認めてやるがな♪」
と俺の頭を押さえつける。
「会社に訴えても無駄だからな。男のお前の籍は既に抹消されている。お前は単なる船の備品だ。会社は備品が何と言っても取り合ってはくれないさ。」
「抹消…って?」
「お前はもう存在しない人間なんだ。…いや、お前はもう人間ではなかったな♪」
「そ、そんな…」
「諦めろ。それに悪いようにはしない。俺達を悦ばせてくれている限りはな♪」

 

結局、俺には選択肢は残されていなかった。
副長を「ご主人様」と呼び「ご奉仕させてください」とお願いすることで、ようやくご主人様のペニスを口に咥えさせてもらえた。
(俺は彼らの所有物になってしまった)
カイトに教えられた通りにご奉仕を進める。
(ご主人様の命令には逆らえない)
口の中に放たれたご主人様の精液を美味しそうに飲み込んだ。
(ご主人様の言う通りにしていれば〈良いこと〉があるから…)

「ご褒美をあげよう♪」
精液を飲み込んだ事で満足していただけたようだ。
ご主人様はスカートの中に手を入れ下着を剥ぎ取ると、背後からあたしのお尻を引き寄せた。
「あ、ああん♪」
あたしの口から甘い吐息が漏れる。ご主人様のペニスが一気にあたしを貫いていた。
痛みは無い。あたしの股間は既に愛液に溢れていた。あたしの膣は簡単にご主人様を受け入れていた。
「ああん♪あああ~ん!!」
ご主人様が動かれると、あたしの膣内のカンジル所が刺激される。あたしは快感に淫声をあげる。
その声を頼りに、ご主人様は更にあたしを責めたてる。
「あ、あ、あ。ああ~~~ん♪」
あたしは嬌声をあげイかされてしまう。
その快感の渦に飲み込まれ、あたしは意識を失っていた…

 

「侵入角問題なし」
「機関正常」
「進路クリア」
ブリッジが慌ただしい。

今、ブリッジを占領しているのは正規乗組員達だった。あたしは彼等と共に着陸中のブリッジにいた。
念願だった…降下中の窓からの眺め…
を、あたしは見ていなかった。
それよりも…
あたしを貫いている、航海長のペニスが与えてくれる快感に酔い痴れていた。
「あん、ああ~ん♪」
ブリッジには、あたしの…あたし達の嬌声がBGMのように響いていた。

繰り返す日々

それは「ゲームの世界」がそのまま現実化したみたいだった。
マシンガンが唸りをあげ、鎌や手裏剣が飛び交い、所構わず太刀を振り回す奴等がいる。

何がどうなっているのかサッパリ判らない。
判っているのは、打たれても、切られても痛みは感じられない。視野にウィンドウが開かれ、残りのHPを伝えてくれる。
たとえHPがゼロになっても死ぬ事はない。セーブポイントからやり直すだけだ。
何もしなければ、HPが減り続け、もう一度同じ日を繰り返すことになる。

いや「同じ」訳ではない。
プレーヤーである「俺」が昨日と同じ行動を取ったとしても、他のプレーヤーが違う事をすれば、それはもう「同じ」日ではない。

だからと言って
…コレ…はアリなのか?

 

 
その日、俺はいつものように目覚めた。寝る前にセーブした所からのリスタートだった。
「な、何だコレは?」
先ずは胸の上に生じた肉塊に気付いた。それが女の乳房である事は即に判った。
(何で男の俺に女の…)
俺の考えはそこで止まった。
「な、無いッッッ?!」
何の気なしに股間に伸ばした手は、そこにある筈の存在に辿り着かなかった。替わりに、そこには深い溝ができていた。
(つまり、男の胸に乳房が付いたのではなく、俺が女になったから乳房が存在するという事か?)
確かにさっき発した声も、いつもの俺の声とは違って聞こえた。
(何がどうなっているんだ?)

俺は落ち着きを取り戻そうとTVを点けた。
ニュースを読みあげていたのは、いつもの中年男性ではなく、若い女の子だった。他のチャンネルに切り替える。
ほとんど「男」が写っていない。コマーシャルや撮り貯めしていた映像以外は女の子で溢れていた。

情報を集めてみると、昨夜にどこかのチートが「ムサい男などいらない。みんな女の子になっちゃえ」と望んだらしい。
セーブポイントのタイミングによっては難を免れた男もいるようだが、大多数の男達は今のHPが尽きるまで女のままでいるしかないそうだ。

そうと判れば「女体」を堪能しないテはない。早速、俺は裸になると洗面台の鏡に自分を写してみた…

風呂場で、ベッドの中でと散々女体を堪能した。イき疲れて床の上で気を失っていた。
(何かおかしい?)
まあ、ほとんどのプレーヤーが女になったのだ。いつもと違って当然である。
時計を見ると正午をだいぶまわっていた。
いつもなら、近くに爆弾を撒き散らしながら通りすぎてゆく戦闘機が来ていない。3日に一度は俺も直撃を受けている。
空に飛んでいるのは数機の機体だけ…空を埋め尽くすように飛んでいた爆撃機や戦闘機は影を潜めていた。
街中のドンパチもかなり大人しくなっている。戦車や重火器は影を潜め、とき折ピストルの音がする以外は、剣の打ち合う音を圧するような女声の気合い声が響くだけだった。

これでは巻き添えを食う事がないので、俺のHPが減る事はない。
(外に出るしかないか…)
気だるい体を起こし、シャワーで半日の汚れを落とした。

 
ご丁寧にも、一着だけ着れる服が用意されていた。
が、屈めばショーツが見える程スカートの丈が短い。胸元は大きく開き、俺の乳房の大きさを強調する。上着の丈も短く、常にヘソが覗いていた。
ゲームの女性キャラは、皆この様なセクシーな服ばかりだった事を思い出し、これを着る以外にないと諦めるしかなかった。

かかとの高い靴はなかなか歩き辛い。それでも何とか公園に辿りついた。ここは派手なストリートファイトが繰り返されるので有名な所だった。

「ねえ♪相手してくれない?」
と声を掛けてきた女がいた。
「相手って?」と俺が聞き返そうとした一瞬の間に
シュッ!!
と彼女のかかとが俺の目の前を飛び抜けていった。
無意識の内に俺はバク宙で彼女の攻撃をやり過ごしていた。そのまま低い姿勢で回し蹴りを放つ。
彼女は足を払われバランスを崩していた。
「はイィィーーッ!!」
と掛け声とともに、俺は両掌を前に突き出していた…

ドカーーン!!

と派手な音とともに、俺の頭上に「勝利」の文字が浮かんでいた。
「か、勝ったのか?」
これまで、俺は対戦で勝ったタメシがなく、戦う事自体を諦めていたのだ。

俺が勝ったのを見てか、即にも次の挑戦者が現れてきた。
面白いように体が動く。無意識のうちに技が飛び出し、次々と相手を倒していった。
俺は経験した事のない勝利の快感に酔っていた。
…重大な過ちに気付かずに…

 

 
新たな朝を迎えた。
これまでのようにセーブポイントからのリスタートではない。
だから、女の肉体のままであるのも当然の事ではある。シャワーを浴び、昨日と同じ服を着る。
(着れる服がこれ一枚というのもなぁ…)
昨日は何度か勝利したのでクレジットも貯まっていた。
(男に戻った時には邪魔になるが、そもそもクレジット自体ボーナス的なものだからな♪)
と、その日は公園には立ち寄らず、駅前のショッピングモールに向かった。

今日は昨日と違い、男性をあちこちで見かけられるようになっていた。それでも、普段よりは大分少ない。
(もう少しすれば元に戻るかな?)
そんな事を考えながら街をあるいていた。

「なぁ、チョット付き合ってくれないか?」
と見知らぬ男が声を掛けてきた。
「別にファイトしようとかする訳じゃない。あんたの強さは、先日…あんたにとって
は昨日か…身をもって経験しているからね♪」
「貴方に合うのは初めてだと思うけど?」
「ああ、あの時の俺は女だったからな?」
「男に戻れたと言うのか?どうやって?」
「やはり、あんたも元男か…教えてやっても良いが、それは俺と付き合ってくれてからだな♪」

 

 
「ああん♪あ~~んっ!!」
俺はベッドの上で嬌声をあげていた。
男に誘われるまま、あちこちの店を巡り、夕食の後少しアルコールを補給し、そのままホテルの部屋に入っていた。
女の子のようにエスコートされ、俺の気分も女の子っぽくなっていたのだろう。流れに任せて彼に抱かれていた。服が脱がされベッドに寝かされる。
自然と股間を開き、彼を迎え入れる。伸し掛かってくる彼。愛撫が続けられ、俺は女のように喘ぎ悶えていた。
実際、俺は「女」なのだ。彼の肉体が接近し、彼の男性自身が俺の股間を突きあげてくる。
そこには男には存在しない受け皿があり、ヌッとソレが俺の内に入ってきた。

俺は女の快感に支配されていた。貫かれる快感に艶声をあげる。染みでてくる愛液を股間に溢れさせている。彼の動きに合わせ、自らも腰を振る…
俺は何度もイかされ、膣の中は彼の精液に満たされていた。

彼が満足して、その行為を止めた時には、俺は息絶え絶えとなっていた。
消え入りそうな意識の状態ではあったが、彼の言葉を理解する事はできた。

「約束だったな♪男に戻る方法を教えてやるよ。」
彼が俺から離れた。
「簡単な事だよ。あんたは強かったけど、本気の俺に敵う腕じゃない。そう。あの時の俺は手を抜いていた。何故かって?」
彼はウィンドウを開いて俺に見せた。
「あの時はとにかく早くHPをゼロにしたかったんだ。まだ俺が男だったセーブポイントに戻るためにね♪」

俺はその言葉にショックを受けた。

そうなのだ。男だった時に戻れば解決したのだ…
が、俺は夕べ、いつもの癖で眠る前にセーブポイントを更新してしまっていた。つまり、今HPがゼロになっても、夕べの「俺」にしか戻れない。
それは「女」の俺でしかない。

「どうする?ファイトするか?」
と男が誘うが…
「止めておくよ。セーブポイントは更新してしまってた。他に戻れる方法を知っているか?」
「知らないな♪」
「なら、俺は女のままと言うことか…」
「女も悪くはないぞ♪現に、さっきはあんなに気持ち良さげに喘いでいたじゃないか?」
「そ…それは…」
俺は返す言葉を失っていた。
「じゃあ、もうワンラウンドいくかい?勿論、ファイトじゃなくてね♪」

俺は…

微笑みを浮かべ、頷いていた。

 

 

 

(その前に、ここでセーブしておいた方が良いかな?)

トライアングル

「今日わ~♪」
美佳が声を掛けてきた。
「お前はいつもお気楽そうで良いな~?」
満面の笑顔の美佳を見ると、ついついそう言いたくなる。
「その位の気持ちを持ってないとヤッていけないからね♪」
と笑顔の奥に哀しい目を覗かせる。
「悪い…」
その目を見て俺は罪悪感に駆られる。
「気にしないで。結局は自業自得なんだから…」

 

美佳は半年前まで男の子だった。
いや、正確に言えば美佳という女の子と、剛という男の子がいたのだ。俺達三人は仲の良い友達関係にあった。
生まれ月の早かった俺が兄貴格で、何かと言うと二人の相談相手になっていた。
俺は無条件で二人の事が好きだった。それが恋愛感情であったのかと聞かれると、否定できないものがあった。
二人への愛情は等しく、確かに美佳に向けられる愛情は恋愛感情と言ってもおかしくない。しかし、俺は剛に対しても美佳と同じ感情を抱いていた。
剛が女の子であれば、即にそれが恋愛感情であると答えていただろう。剛が男の子である事から、俺はそこに一線を引くようになっていた。

「あたし、剛の事が好きになっちゃったみたい。友達…って言うんじゃなくて、彼を一人の男性として愛してしまった自分に気がついたの。」
美佳からそんな事が告げられた。

「剛に告白して、もし断られたら、今までのあたし達の関係が崩れてしまうかも…って思うと、怖くなっちゃって…」
美佳が俺に「それ」を告げた時点で、俺達の関係は崩れてしまったのだと思う。
(俺の愛する二人が、互いに愛し合う?そうなれば、俺の居場所はどうなるのだろう?)
「お、俺の方からそれとなく剛に聞いてみるよ。」そう言うと
「ありがとう、和也♪」と満面の笑みを俺に見せたのだった。

 
「剛は特定の女の子と付き合おうとは思わないのか?」
どう話を持っていけば良いのかわからないまま、会話だけが進んでゆく。
「僕には和也や美佳がいてくれるからね♪」
「タイプの子っているのか?」
「皆には美佳を連想させるようにして答えてるけど、本当は……和也だから言うけど、本当は僕は女の子を好きになるって気持ちになれないんだ。」
「女性恐怖症ってやつか?」
「それはないよ。美佳と話すように、他の女の子達と話すのも苦になる事はないよ。どちらかというと彼女達とのお喋りは楽しそうだと憧れているくらいだ。」
「じゃあ、もし…もし、美佳がお前と付き合いたいと言ったらどうする?」
「そりゃあ美佳と一緒なのは楽しいよ。でも、改めてお付き合いするとなると考えてしまうな。たぶん、僕は美佳を恋愛対象として見ることはできないと思う。」
「じゃあ、美佳が俺と付き合いたいと言ったら?」
「…ィャ…」
俺が剛を見つめると、彼は俯いたまま何も言わなくなってしまった。

 

剛の事をどういう風に美佳に伝えるべきか悩んでいる間にも、美佳は何かと剛と一緒に行動するようになっていった。
それが美佳の一方的な思いでしかないのは端から見て良くわかった。剛は「仕方なく」といった風に美佳に接していた。

痺れを切らしたか、美佳は当て付けに俺にモーションを掛けてきた。
剛が見てる前で自分の胸を俺に触らせたり、さもキスをしているかのような構図を剛に見られるように細工したりしてきた。

「和也はやっぱり美佳のような女の子らしい女の子の方が良いよね?」
剛がぽろりとそんな事を言った。
「…僕が美佳だったら…」

 

「和也♪今日、暇?」
美佳が電話を掛けてきた。暇である事には間違いないし、美佳は電話も掛けずに押しかけてくるのが常だった。
わざわざ電話を掛けてきたのには何か訳があるのだろう。
「別に良いが、今日は剛、風邪で寝込んでるんだぜ?」
「剛君が関係ないと、あたしと付き合ってくれない訳?」
「そ、そんな事は無いよ…」

こうして誘われた先は、ごくありきたりのデートコースだった。その日の美佳は、いつも以上に自ら純粋に楽しんでいるようだった。
そんな美佳が無性に可愛く見え、帰りの別れ際に、思わずキスしてしまった。
「和也はあたしとならキスしてくれるのね?」
美佳はそう言って去っていった。

(何なんだろう?この違和感は…)
その夜、俺はなかなか寝付けなかった。

 

 

「お早う、和也…」
浮かない顔で美佳が現れた。
「どうかしたのか?」
「昨日さあ…」
美佳は言葉を切った。
「あたしって、あんたとどこかに出かけてた?何か記憶があやふやなんだ…」
「昨日、誘ってきたのは美佳の方だろ?」
「何か、良く覚えてないの…。良かったら、昨日と同じ所に連れて行ってくれない?」
「って、お前が行きたいって俺を連れまわしたんじゃないか?」
「だから、記憶があやふやなのよ!!それを確かめるためにも…お願い♪」

 
結局、昨日と同じ事をして過ごす事になった。
そして判ったことは、昨日の美佳は「別人」であったと言う事だ。
今日の美佳は不安に駆られてはいるが、いつもの彼女だった。愛しくは思うものの、抱き締めてキスをしたくなる程ではない。
だが昨日の彼女は…

 

トントンとドアが叩かれた。
開けるとそこにいたのは「美佳」だった。
「どうした?帰ったんじゃないのか?」
「か…和也とは離れたくない…ずっと、このまま…」
そこに居たのは「昨日の美佳」だった。
俺は躊躇わずに彼女を抱き締めていた。

「もう気付いているんでしょ?あたしが本物の美佳ではない事…」
俺の腕の中で俺を見上げ、俺を見つめて彼女は言った。
「ああ…、だが、お前は何者なんだ?」
「薄々は気付いているんでしょ?あたしの正体♪でも、それを明かすのはもう少し待って欲しいの。」
「?」
「あたしの正体を明かす前に…あたしを抱いて…」
「今も抱いているが?」
「そう言う意味じゃないわ。あたしを女として抱いて欲しいの。…あたしとSEXしてっ♪」

 
気が付くと、俺はベッドの上で彼女を組み敷いていた。二人とも全裸であった。
「来てっ♪」
美佳に誘われるように、俺は彼女の女陰に自らを没していった。
「あん、ああん…」
と彼女は艶めかしい声をあげる。
俺は夢中になって腰を突き動かしていた…

「あ、あっ、ああーーっ!!」
と彼女が嬌声をあげる。イッたのだろう。
快感の余韻に浸る彼女を、俺は飽きもせずに眺め続けていた。

 
「和也?」
「ん?」
彼女はゆっくりと瞼を開けた。
「あたしが…僕が剛だって気付いていたんでしょ?」
「薄々はな♪だけど見た目には美佳だし、今も女性としてSEXできていたよな?」
「この肉体は美佳そのものだからね。今の僕は美佳の体を借りているようなものなんだ。もちろん美佳には無断だけどね♪」
「悪い事は言わない。こんな悪戯はこれっ限りにしておけ!!」
「わかってるょ…。でも、僕にとってコレは悪戯なんかじゃない!!これが僕の本当の気持ちなんだ。」
「…俺に抱かれたかったと言う事か?」
「うん…女の子としてね。」

俺は何と言ったら良いかわからなかった。
俺の言葉は多分、俺の本心そのものだったのだろう…
「俺も剛の事は好きだ。剛が女の子だったら何の躊躇いもなく好きだと言っていたろう。しかし、愛する気持ちに男も女もないことが判った。」
見ると剛=美佳の目から涙が落ちていた。
「だが、それは他人を犠牲にしては成り立つものではない。美佳は解放してやれ。俺はお前自身を抱いてやるよ。」
「和也…」
剛=美佳はそのまま泣き疲れ、眠ってしまった。

 

 
電話の音に目覚めさせられた。
「つ、剛が…」
剛のお母さんだった。
「剛が死んじゃう…」と彼女は言っていた。
「剛は夕べ俺と…」と言いかけ、思い止まる。
夕べ俺が抱いたのは剛であって剛ではないのだ。
俺の隣で寝ているのは「美佳」なのだ。
「…とにかく、即にそちらに行きます。」
と搬入先の救急病院を聞いて電話を切った。

「おい、起きろよ!!」
と美佳の体を揺り動かす。
「…んん、和也?お早う♪」
「で、お前はまだ剛なのか?」
「え?…うん、そうだけど?」
「緊急事態だ。後の事は良いから、即にお前の肉体に帰れ!!大変な事になっているぞ。」
「大変…て?」
「説明は後でゆっくりしてやる。今は一刻も早く、お前の肉体に戻るんだ!!」
俺は出かける支度をしながら、剛=美佳の様子を窺った。
最初は精神を統一するように座禅し、瞼を閉じ、深い呼吸を繰り返していた。
…その顔に歪みが生まれる。
焦りの色が濃くなり、最後には「お゛ーーっ!!」と叫び声をあげた。

「和也…戻れない?!」と剛が俺を見る。
「そうか…」と呟く。
そして、俺は状況を説明してやった。
「今は美佳として、一旦美佳の家に戻るんだ。可能な限り状況を連絡してやる。」
そう言って、剛に美佳の服を着させて送り出した。

 

現状は動かしようがなかった。俺が病院に着いた時には、剛の肉体は霊安室に移されていた。
数日後には、葬式が始まり剛の肉体は荼毘に伏されていった。
剛は美佳の肉体に黒いワンピースをまとい、俺のとなりで自らの葬送の儀式に参列していた。
「僕が美佳の人生を奪ってしまったんだ。」そう言って剛は自らを責める。
「美佳の存在は失われてしまった訳ではないのだろう?お前が幸せに生きていれば、いつ美佳が復活しても恨まれる事はないよ♪」
としか俺は励ます事ができなかった。

 

あれから半年。
美佳となった剛は「美佳」としてなんとかやっていた。
多少は雰囲気が違うのも、親友を亡くしたショックと、その後の展開…俺と正式に恋人同士になったこと…に起因していると周囲の人々が暖かく見守ってくれていた。
今の剛は「生まれた時から美佳であった」ように見える。
「たぶん、美佳の意識があたしに融合してきているんだと思う。あたしが知る筈のない昔の…小さな女の子だった頃の事をふと思い出す事があるのよ。」と剛…美佳が言う。

 

 

 

 

 

(理想通りだ♪)
一番の「悪者」は「俺」なのだろう。
剛を愛していることを自覚した俺にとり、剛が「男」である事が最大の障壁であった。そこに「美佳」という恋のライバルが現れたのだ。
俺は躊躇することなく、美佳の存在を消し去り、俺の願望を満たす手筈を整えていった。
「憑依」を実践しているサイトを巡りあるき、俺の野望を満たすのに十分な術式を見極めた。そして、それとなく剛をそのサイトに誘導する。
はたして、剛は美佳に憑依して俺の前に現れた。
あとは、いかにその状態で固定化させるかであった。

その術式では長時間の憑依を行うと、本来肉体が仮死状態に移行するようになっていた。
仮死状態が「死亡」と判定され、戻る肉体を失わせる…
俺は剛に軽い暗示を掛け、一時的に憑依を解くことができないようにした。
そして仮死状態の剛が家族に発見される…

こうして、俺は邪魔な美佳を排除すると同時に、「女」の剛を手に入れたのだった。

 

 
「美佳」が俺を誘う。
俺は流れに身を任せる。
「今」が良ければ、それで良いのだ…

「何も気にするな♪」
と耳元で囁く…が、彼女には聞こえていないようだ。

俺の腕の中で「剛」が愛らしく喘いでいた…

着てっ♪

「俺にコレを着ろと?」
「全て君に任せるって言ったのは貴方でしょう?あたしだってタキシードを着てみたいんだもの♪」
「だからって、何で俺まで?」
「結婚式の主役二人が揃ってタキシードじゃサマにならないでしょ?任せると言ったのは貴方よ!!オ・ト・コに二言は無いんじゃなかったかしら?」

あたしは数日後には「旦那様」になる彼氏に、なんとかソレを着せようと考えていた。
(誰だって女の子なら一度は憧れをもってその服を眺めていた筈だものね♪)

 

 
それは、あたし達が中学三年の元旦だった。
高校受験の合格祈願も兼ねて近くの神社に初詣でに来ていた。
大きな神社ではないので、氏子が甘酒をふるまうテント一つがいつもとは違う景色で、参拝客もパラパラしか現れなかった。
が、偶然にも彼女も一人で正面の階段を上ってきていた。
彼女は佐伯恵子…中学の同級生だった。
「君も合格祈願?」
お参りを終えていた僕は、彼女の参拝が終わるのを待って声を掛けてみた。
「あら、冬木君だったの。明けましておめでとう♪」
「あ、ああ。おめでとう。甘酒飲む?」
彼女がうんと言ったのでテントで甘酒の入った紙コップを受けとると、社の裏手に回った。
「こうやってゆっくり話した事なんてなかったわね。」
「まあ、なかなか話すきっかけがなかったからなぁ…」
「中学三年間。一緒のクラスになって一年。何もできなかったって事かしらね?」
と意味深に笑い掛けてくる。(もしかして、僕が佐伯さんの事が好きだって事がバレてるのか?)
「さ、佐伯もやはり合格祈願?」
「冬木君みたいに受験勉強をがんばらなければ行けない学校じゃないけどね。受験日に病気や怪我で行く事ができなくならないように神様にお願いしたんだ。」
「それこそ神頼みの分野だね。僕なんか、元の出来が悪いから、その辺まで神様に頼まないと…」
「勉強のやり方に問題があるんじゃないの?男の子って雑念が多すぎるくらいだって聞いたことがあるわ。」
(はい、雑念で一杯です。いつも佐伯さんのコトばかり考えています)なんて口が裂けても言えないよな…
「そうだ、これから冬木君家で勉強を見てあげようか?」
「?!?!」(そんな夢のような事があって良い訳がない)「イイよ。君だって受験生だし…」
「あたしは結構ヒマしてるから大丈夫よ。さあ、行きましょう♪」
と佐伯さんが立ち上がった。
「ち、ちょっと!!」
と僕も立ち上がる…が…

慌てて立ち上がったので、バランスを崩してしまう。
その先には社の裏手の階段がある。
(マズイッ!!)
と思ってもどうする事もできない。

絡み合うようにして、二人は階段の下に転げ落ちた…

 

 

 

気が付いた時、二人の心と体が入れ替わっていた…

怪我がない事を確認した後、僕等は僕の…冬木の家に向かった。
「僕」の部屋でこれからの事を話し合った。「今」入れ替わりを知られて高校受験がややこしくなる事は避けたいと言うことで僕等の意見は一致した。
しばらくは僕が佐伯さんの佐伯さんが僕のフリをすることにしたのだった。

 

…それから十年近くが経つ…
あたしは女子校に受かり、彼はあたしが必死に頑張って入ろうとしていた高校に易々と合格した。
そのまま、それぞれの高校に進学…あたしは女子高生として三年間を過ごした。
次の四年間…大学は彼がランクを落としてくれたので、あたし達は一緒のキャンバスに通うことができた。
高校生の時から、二人はずっと付き合っていた。それは、単なる同じ秘密を共有するだけの関係で留まる筈もなく、気が付くとごく普通の男と女の関係になっていた。
大学に入ると、周りからも「それが当然」という感じで同棲もしていた。親も「彼」なら…と、黙認していた。

今は彼も就職し、あたしは専業主婦みたいに家事をこなしている。入籍していないだけで、あたし達は既に夫婦みたいなものだった。
(幸せだけど…)
このままの日々が続いて行くのかなぁ?と思っていたある日、
「恵子。結婚式をしよう。」
と彼が言ってきた。
「なんかズルズルとここまできたけど、俺も就職し男として自立する時期だと思う。だから、恵子を正式に僕の妻としたいんだ。」
「それは良いんだけど、結婚式って結構費用が掛かるのよ。大丈夫なの?」
「親族だけなら、そうは掛からないだろ?」
「貴方も社会人なんだから、会社の方とかも必要でしょ?費用の事ならコツコツ貯めてきたものがあるから大丈夫よ♪」
「そ、そうか?」
「貴方も毎日、お仕事で忙しいでしょ?式場との連絡とか色々あるから、あたしに任せておいて♪」
「ああ、君に任せるよ。」

 

 
って、計画は進んだのだけど、やはり「男」の体にウェディングドレスをまとった姿を他人には見せたくない!!と言う事だったが、写真だけは撮らせてもらった。

これが「僕」と「佐伯さん」の結婚記念の写真だ。
病院から戻ったあたしは久しぶりに「写真」を開いたのだった。
(昔を想い出すのも最期にしないとね…)
あたしは写真を閉じると、しっかりと封をして机の奥に仕舞い台所に戻る。
(旦那様はお赤飯だけで解ってくれるかしら?)
あたしはお腹に掌を充てると、今日病院で確認できた新しい命にそう話し掛けていた。

2012年3月 2日 (金)

雛祭

=回想=

♪明かりを灯けましょボンボリに~
そう歌いながらお雛さまを飾る母の姿。
「諒ちゃんも今日だけは女の子よ。」
とスカートを穿かされて母を手伝っていた。

3月3日は女の子のお祭り…誰もが女の子になってお祝いをする日…
ではない事は小学生のうちに気が付いていた。しかし、その日は母の特別な日である事は幼いながらも理解していたのだろう。
その儀式は母が他界するまで続けられた。

=回想終わり=

 
早くに夫を亡くし、女手ひとつで俺を育ててくれた。母の辛い日々をその日だけは癒してくれていたのだろう。
毎年、俺の為に洋服を新調していた。今も箪笥の奥に仕舞ってある。標準的な男子の体型でも入る女の子の服を探すのは大変だったと思う。
年齢に応じて、だんだん大人っぽくなっていった。高校3年の春には、そのまま就職活動ができそうなスーツも用意されていた。
が、それを最期に母は他界してしまった。
もともと大学進学はしない予定だった。小さな町工場に勤め、自らの手で生計をたてられるのが確認できたからなのだろうか?
やっと母に親孝行ができると考えていた矢先だった。
工場のオーナーも場長も親身になって支えてくれたので、俺も母の死を乗り越えられたのだろう。

 

今年も、その日がやってきた。
俺は母が愛用していた人工乳房を胸に貼り、整形下着を穿いて完全女装してお雛さまを飾った。

これは、「あたし」のお雛様…
そう。誰のものでもない…あたしだけのもの…

無題

「ねえ♪おもしろいコトしてみない?」
ベッドの中でしばしSEXで消耗した体力の回復を待っていると、女がそう話し掛けてきた。
彼女とは結構付き合っているが、彼女がこの店の「商品」である事には違わない。当然、
「いくらだ?」
と聞くが、今回は彼女の趣味の部分でもあるので、延長料金だけで良いとの事だった。

「で?」
と先を促す。
「ちょっとしたお呪いをするから、少しじっとしていてね♪」
俺がベッドに寝たままでいると、彼女は眉毛を描くペンで俺の下腹部に何かの文様を描いた。そしてモゴモゴと呪文を唱えると、勃起した俺のペニスを掴んだ。

ズルリ

と、俺の体から何かが抜け出てゆく感じがした。
「良い感じじゃない?」
と彼女はソレを手にしていた。
彼女が手にしていたのは「ペニス」だった。それも、レズが使うような2本の張型を根元でつなげた形をしていた。
「こういう角度から見るのは初めて?コレは貴方のペニスでできてるのよ♪」
俺は自らの股間を確認した。

彼女が俺の下腹部に描いた文様は消えていた。そして、その先に在るべきモノの姿はなく、そこには深い切れ込みが穿たれていた。
「そ、それが俺のペニスだと言うのか?」
「大丈夫よ♪填めれば元のように使うことに問題はないわ。それより、取った跡のソコ…まるで女の子みたいでしょう?ソコはちゃんと感じるようになってるのよ♪」
彼女はレズの男役がするように、手にしたモノを自らの股間に装着した。
「コレで女の子の快感を経験してみましょう?きっとヤミツキになっちゃうわよ♪」
と、俺の上に伸し掛かる。彼女はペロリと指を舐めると、濡れた指で俺の股間を撫であげた。
「ヒャウン!!」
思わず声があがる。
「なかなか感度は良さそうね♪これなら即にヌレヌレになりそうね。」
「な、何をするつもりだ?」
とは言ったが、想像に難くない。彼女が言うように、彼女の行為に俺の股間が反応し、じわりと汗のようなモノが股間に集まるような感じがした。
「言ったでしょう?おもしろいコトするのよ♪さあ…」
俺は女の子のように脚を抱えられ、股間を開かされた。
「あら?もうこんなに?」
彼女の指が俺の股間の「汗」を絡め取る。その際に彼女の指先が感じ易いところに触れた。
「ああんッ!!」
まるで女の子のような喘ぎ声だった。
「じゃあいくわね♪」
と彼女が腰を押し付けてくる。
ヌッ!!
と、本来あり得ない場所にナニかが潜り込んできた。
「ああ…温かくて気持ち良いわぁ♪」
それは、俺が俺のペニスを女の膣に押し込んだ時に感じているのと同じものなのだろう。
逆に、今俺が感じているのは、女達が俺に挿入された時に感じていたものと同じものに違いない。
(満たされる…)というのが第一印象か?

「動くわね♪」
と彼女が腰をクラインドさせる。
「あ、ああんっ!!」
膣壁のあるポイントにペニスが触れると、えも言えぬ快感がもたらされる。
「もっと感じて♪媚声を聞かせて頂戴♪」
彼女に言われるまでもなく、俺は快感に艶声を抑えることができなかった。
そして、その艶声はいつもの「俺」の声ではなく、甘美な「女」の媚声となっていた。

 
「ああん、あああん♪」
快感がどんどんエスカレーションしてゆく。彼女はペニスで突くだけでなく、俺の肉体の隅々までを愛撫していった。
俺は全身が性感帯になったかのように、彼女の愛撫に悶え、嬌声をあげ続けていた。
「あん♪そ、そこ…イイ~ッ♪」

俺は幾度となくイかされていった…

 

 

俺の股間にはペニスが戻されていた。
感覚も元どおりになっている。勿論、勃起し射精もする。が…

 
夜…ベッドの中で俺の手はペニスを掴んでしまう。
コレを毎夜のように続ける事が危険な事である事は十分に承知している。が…俺は俺のペニスを引きずり出してしまう。
そこに生まれる隙間に指を這わす…
「ぁあ…」
甘美な感覚に、俺は媚声を漏らしていた。

昨日の敵は…

轟っ!!

俺の脇を唸りをあげて奴の一撃がすり抜けていった。
反応速度を極限まで高めているのだ。音速の弾丸でさえ躱す事が可能だ。
(その代償として、術後に肉体に襲いかかる反動が気に入らないのだがな…)
タイムラグをもって続けざまに放たれる足技も難なく躱す。
そして、俺の反撃…奴の急所に肉薄する。術中は力の加減が難しい。手の先だけで打撃を与えると、こちらの手首の骨が折れてしまう。
構造的に安定している「肘」を使うのがベストなのだ。その為には限りなく奴の懐に入り込まなければならない。
反応速度が上がっていても全ての攻撃を躱せる訳ではない。
距離があれば見切れるが、接近戦ではどこから攻撃が繰り出されるかがわからないので避けようがない場合もある。
奴の攻撃のリズムを把握し、一気に懐に入り込む。躊躇せずに一撃を放つ。外せば俺にチャンスはない。
奴は攻撃のリズムを変え、持久戦に持ち込むだろう。
俺の術はそう長く発動させられないのだ。そして、術が切れた俺は…

 
幸いにも、奴は俺の足元に倒れていた。
俺の攻撃がクリーンヒットしていたようだ。

俺は「術」を解いた。
途端に「反動」が俺を襲う。
「…ぁ、あぁん…」
せつないような喘ぎ声が俺の口から漏れ出てゆく…
「術」で強化されていた俺の肉体が、弛緩し、更に新たな形態へと変化してゆく。
ヘナヘナと腰が砕け、ペタリと尻を付けてしまう。手足から力が抜けると同時に筋肉も削られ白く、細くなってゆく。
全体に服がだぶついてくるが、なぜか胸の周りだけはパンパンに張っている。
そこにはある筈のない双つの肉塊…女のような乳房…が盛り上がっていた。

いや「女のよう」ではない。術の反動は、俺の肉体を「女」に変えてしまうのだ。
そればかりではない。発情し、SEXに…精に飢えた状態で倒したばかりの「男」の前に放り出されるのだ。

俺の意識は男のまま…疲れきった俺は、己の肉体をコントロールしきれない。
俺の肉体は目の前に在る「男」に反応してしまう。
ズボンのベルトを外し、パンツの中から「男」を引きずり出す。
萎えた「男」を口に咥え、刺激を与える。
暖かな俺の口の中で奴が反応する。
次第に太さと硬さを増してゆく。
俺の目の前に威様を取り戻した「男」があった。俺…俺の肉体は妖艶な笑みを浮かべている。
ブカブカのズボンを脱ぎ捨てる。下半身を剥き出しにして「男」の上に跨った。
俺の股間は充分に濡れており、「男」を迎え入れる準備は万全であった。
「俺」はゆっくりと腰を下ろしてゆく…
俺の内に「男」が侵入してくる。「俺」は歓喜とともにそれを受け入れていた。腰を揺する。
快感が俺を支配し、俺は女のように歓喜の嬌声を発っする。俺は快感の頂に向かってゆく。
俺の内でも「男」がフィニッシュを迎えようとしていた。

ドクリッ!!

「男」が脈打つ…俺の中に精液が放たれた…と同時に、俺も絶頂を迎える♪
「ああん、あん。あああ、あ~~~~ん!!」
絶叫を発っし、俺は悦感の奔流に呑み込まれてゆく…
………
……

 

気が付くと、俺の下には干からびた「男」の残骸があった。
俺が立ち上がろうとすると、ずるりと勃起したままの奴のペニスが抜け落ちる。奴の精液が俺の内股を滴っていった。
ブカブカになった俺の上着が短いワンピースのように、俺の股間を隠していた。
合わないズボンを穿く必要もないと、俺は干からびた「奴」をそのままに、街の雑踏の中に戻っていった。

 

ささやかな変化

(トシかなぁ…)

まだ老いるには早い年齢ではある。白髪も数える程だし、額の生え際の後退もない。が、
(なんで勃たないんだ?)
俺の股間のモノは萎えたまま、ピクリともしない。
(精神的なものもあると言うが、医者に行くのも面倒だ。)

最近、仕事の忙しさに追われ気にしていなかったが、俺のペニスが勃起しなくなっていたのだ。摩っても、叩いても何の反応もなかった。
慌ててエロ本を買ってきた。俺の意識は即にでも興奮するのだが、下半身には何の変化もなかった。
ペニスに刺激を与え続けるるのに腕が疲れたので、その晩は悶々とした気持ちのまま寝ることになってしまった。

意識すればする程、何でもない事がエロチックに見えてしまう。
通勤電車の中で近くに女性がいようものなら、痴漢行為をはたらいているかのように息を荒げ、顔を真っ赤にしていたに違いない。

それでも、俺の股間に反応はなかった。

 

 
仕事や普段の生活を行う上で支障がある訳ではない。
が、気にし始めるとなかなか収まりがつかないものである。そして、些細な事にも肉体が反応してしまう。
尿意が気になり、頻繁にトイレに向かうようになった。そして、その度もついついペニスの状態を確認してしまう。
気の所為かペニスが縮んでる?いや、実際にペニスは縮んでいた。

気にし始めた事が原因なのだろうか?
昼過ぎまでは普通に立ってできていたモノが、次第にズボンの中から引き出すのも難しくなっていった。
夕方近くになると、個室に座って用を足さざるを得なくなっていた。飛沫が太股を濡らす。
女の様に、小用だけでもペーパーを引き出さなければならないのが悲しくなった。

ペニスの委縮は留まることはなかった。
家に帰りトイレで確認すると、ペニスの痕跡さえ見当たらなくなっていた。
小水は俺の股間から直接奔っている。

夕食を終え、風呂に入る。
風呂場の鏡に自らの裸体を映してみた。見た目は「男」の肉体ではある。
が、股間はスッキリとしていた。それが「男」の股間であると言い切れる者はいないだろう。
湯船に入り、直接その場所に触れてみた。

そこには何もナイ…

俺の指はペニスのあるべき場所を通り越し、尻の穴に届く。
(?)
いや、それは尻の穴ではない。その手前にある穴に指が捕らわれていた。
俺が女であれば、それを「膣口」と呼んでいただろう。しかし、それは幾重にも襞に囲われたものではない。
単に「穴」が開いているとしか言いようがない。が、穴の中には指が入り込めた。
しっとりと濡れているような肉壁に挟まれる。体温の暖かさを感じる。
指を更に奥に進める…

「ぁん♪」
俺の口から女の喘ぎ声のようなものが発せられた。
それが「快感」から発せられたものであることに気が付いたが、それを認めることはなかなかできなかった。

 
風呂から上がり、火照った体を静める。
あれが「女」のオナニーと同じものであったことは間違いないだろう。確かに俺は「イッ」たようだ。その時、頭の中は「快感」で真っ白に塗り込められていた。

(俺の肉体はどうなってしまったのか?)
考えてどうにかなるものでもないと解っていた。
その日の俺は、パンツを穿き、パジャマを着て眠りに就くしかなかった。

 

なくなってしまったモノが再び生えてくる事もなければ、それ以上の肉体の変化もなかった。
一時はバストも膨れ、どんどん「女」に近づいてゆくのかと心配したが、それは危惧に終わった。
俺は何食わぬ顔で仕事を続けていた。
気にしなければどうという事もない。
満員電車の中でも変に興奮することもなければ、トイレの回数も普通通り…個室を使う関係から、ガマンせず早めに行くようにはしているが…になっていた。
違うといえば、女の快感に目覚めてしまい、毎晩のようにオナッてしまっていた。

そんな日々が数日続いた後、シクシクと下腹部が痛んだ。そして、パンツに血が付いているのを見つけた。
これが女であれば即に「生理」と結論付けられる。が、はたして「男」の俺に生理があるのだろうか?
医者に見せるのもためらわれたので、俺はコンビニでタンポンを買ってくると、女のように血の出てくる穴に詰めておいた。

 
出血は3日程で収まった。
それ以外はいつもの毎日が過ぎて行く…と思っていたが、生理(?)の前後で何かが変わっていた。それは、肉体的なものではなかった。
俺も他人に指摘されるまで気付く事がなかった。俺の所作が「女っぽい」のだ!!
言われてみれば、椅子に座る時は膝を揃えていた。
ガニ股で歩く事もなく、床に落ちた物を拾う際にも上体を倒すのではなく、上体は起こしたまま、膝を曲げて取る事を無意識のうちにやっていたのだ。
そもそも、こうやって床の上に座ってリラックスしているが、俺はあぐらではなく、膝を揃え両足先を広げる「女の子座り」をしていた。

女の子を見る目も変わってきていた。
性的な対象として見ることはなくなった。彼女等を見る時、真っ先に胸や尻に向かっていた視線は、服や小物に向かっていた。
(可愛い♪)(綺麗!)そんな感想がでてくる。
(あんな服なら着てみたいかな?)と、俺に女の服を着させようというような感想もある。
男が女の服を着ることは「女装」であり、特別視される行為であることは判っていた。が、俺が彼女達の服を着ることが「女装」でありとは即には結びつかなかった。
俺がその服を着ることが、ごく自然な行為であると思っていたのだった。

 

会社が休みの日。
「背広」を着なくても良いのだ。その日は一日中、自由な服が着れる♪

俺は朝早くに起き出すと、風呂に入り、全身のムダ毛を剃り落とす。薬用石鹸を流した後で乳液を全身に刷り込んでゆく。
風呂から上がり、ショーツを穿き、ブラジャーを付ける。ブラの中にはシリコンパットが貼られている。
別に「女装」しようとしているのではない。単に、これから着ようとしている服は胸にボリュームがあった方が綺麗に見えるし、下着のラインが気になるからだ。
キャミを着て鏡の前に座る。
服に合うように肌の色を整えるのだ。折角買った綺麗な服だ。綺麗に着てあげないと可哀そう♪
俺はウィッグを頭に乗せ地毛と馴染ませるようにブラッシングする。俺の髪もだいぶ伸びたが、この服のためにはもう少しボリュームがあった方が良いのだ。
この服を着て街中を颯爽と歩いて往くのは、どれ程気分が良いものだろう。
そんな理想の自分を想像し、少しでも近づけれるように準備をする。
ストッキングに脚を通す。服を着る。アクセサリーを付け、鏡の前に立つ。
理想の自分まであと少し。
真新しいパンプスを下ろした。
(玄関にも姿見が必要ね♪)
今日はこれで良しとして、玄関のドアを開けた。

 

街を歩いて往く。
人々の視線が気になるが、それもまた心地よい。ヒールがカツカツと音をたてると、気分もノッてくる。
女性より男性の視線が気になる。値踏みするような女性の視線はイタイが一瞬で離れてゆく。
男性の視線は、舐めるように俺の胸や尻をしつこい程からみ付かせてくる。
ナニを想像しているかは想像に難くない…が、残念だな♪俺は「男」だ。お前等と付き合う可能性は皆無なんだな。
と、視線の中を突っ切って行く快感に浸っていた。

 
(ジュ…)
と、俺の股間に染みでてくるものがあった。
それは「愛液」だった。俺の股間にはペニスはなく、代わりに女性の膣のようなモノが穿たれている。ご丁寧にも月に一度は生理のように血を流すのだ。
当然、性的快感に浸れば、そこは愛液で満たされる。それは、毎夜のように行うオナニーの時に経験済みだ。
が「男の視線」といった第三者からの刺激により、股間を濡らすような事は初めての経験だった。
更に、第三者の…というより「男の…」という所に若干の驚きがあった。
(俺が女のように「男」に感じている?)

確かめる事はできるか?
俺が女性よりも男性に対して性的興奮を得ている…という事は、俺にとり、女性が性対象であり続けているか確認できれば良いのだ!!
先ずは女性が多くいる場所にいってみた。トイレ…駅前のショッピングモールの婦人服フロア…には短いが列ができていた。知らぬ顔で最後尾に並ぶ。
…何も言われない…
男子トイレより進み具合が遅いのが当然である事に改めて気付いた。俺の番になり、扉の開いている個室に入った。スカートを捲り、パンストとショーツを下ろす。
座って用を足す事には慣れていたが、周りが女性ばかりの空間にいるという経験はまだなかった。
他の個室で用を足している音が間近に聞こえる…が、そんな事では何の興奮も起きなかった。

無駄だとは思いつつも、ランジェリーコーナーに向かった。明るいフロアにはカラフルな下着が並んでいた。
エレガントな下着にうっとりする事はあっても、性的に興奮することはない。気がつくと気に入った下着を買っていた。

本屋で雑誌の立ち読みをした。グラビア誌には水着のアイドルがセクシーポーズを決めている…が、こんなものでいちいち興奮するのはガキしかいないだろう。
アダルトコーナーに向かう。いかにも…な男達がバラパラと見本誌をめくっている。
俺もそれを手にしてみた…そう綺麗でもない女が裸体を晒している。悪趣味としか思えない。
別の一角にレディースのコーナーがあった。

….….….

見入ってしまっていた。
俺の股間が反応していた。
ソコに描かれた世界に引きずり込まれる…

(あんな風に抱かれたい…)

俺の視点はいつしか「女」の側に偏ってしまっていた。
股間の潤みに気付き、慌てて本を置いた。
気分を落ち着けるために喫茶店に入る。いつもなら無条件でブレンドコーヒーをブラックで頼んでいたが、なぜかカフェオレを注文していた。
席に座り、両手でカップを持ち上げる。それが、両肘を絞めた女っぽい仕草であった事になかなか気付かなかった。

(俺は「女」になってしまったと言うのか?)
自問してみるが、否定できるものが何もなかった。
今は意識的に自分を「俺」と呼んでいるが、これが「あたし」になってしまえばもう「男」としての俺は存在しなくなるのだろう…

「ふぅ…」

タメイキをつく。
もう、どうにもならないのだろう。俺はこのまま流されて「女」になってしまうのだろうか?
いや、既にもう俺は「女」なのだ。女の服を着て、化粧をしている。そもそも、肉体からして「女」なのだ。
単にペニスがないだけではない。興奮すれば濡れ、月に一度は生理が来る。胸が貧弱なだけの「女」なのだ。
女らしい仕草の所為か、筋肉の付き方が女っぽくなっている。骨格も、骨盤が広がってきているのだろう。
最近、ズボンの腰周りをきつく感じるようになっていたのだ。
胸も「ナイ」とは言え、男の時よりは脂肪が付いてきている。
「男」であった俺は、それらを全て無視していたのだ。

髭を剃らなくなってどのくらい経っていたか?剃り落とした胸毛は生えてきたか?
伸ばし始めた髪の髪質はあきらかに違っているではないか!!

 

 
俺は…あたしは「女」なのだ。
決めた!!
あたしは男の「俺」から決別する。仕事も辞めてしまおう。「女」であれば定職はなくとも、アルバイトで食べてゆく事はできるだろう。
休みが明けたら「辞表」を持って会社に行こう。
勿論、背広なんか着て行かない。女なのだから、タイトスカートのスーツが良いよね♪
あたしは立ち上がると、新たな買い物に向かっていった。

空き地の鏡

そこに「鏡」があった。

どこでもドアみたいに、ぽつりとそこに立ち、向かい側の景色を写している。
芸術家のオブジェにしては芸のない「鏡」だし、置いてある場所も人目に触れる公園や広場ではない。
それこそ土管の積まれた雑草の生い茂る住宅地の片隅にある「空き地」でしかない。

誰が何の為に置いたのだろうか?
好奇心に駆られて近づいていった。
裏側は木枠になっており、補強の斜材も入っている。倒れないようにL字の金具で接地板に固定されていた。

正面に廻ると、空き地に置かれた土管やその先に立ち並ぶ家家が左右反対に写り込んでいた。
そして、そこに「人物」が加わる。
「俺」が鏡に写り込んだ。

 

しかし、これは本当に「俺」か?

確かに着ているものは今の俺と同じものだ。
鞄も左右逆だが、同じように肩に掛けている。

しかし、どこか違う。
俺の目はこんなにパッチリと開いていたか?睫毛も長くないか?
逆に眉毛が薄く、細く整えられている。唇がふっくらして、少してかっていないか?
全体にふっくらと丸みを帯びているような気がする。肌も白く…
まるで…女性のようだ。

肩から鞄を下ろすと、鏡の中の「俺」も同じく鞄を下ろした。
上着を脱いでみる。
鏡の中の「俺」の胸…シャツの下に膨らみがある。
女性であれば、乳房が存在するあたりに、まるで乳房が存在するかのように膨らんでいる。
シャツのボタンを外してゆく。下着はランニングシャツを着ているのだが、鏡の中の俺はブラジャーを着けていた。
シャツを脱ぐ。肩紐を外すとプルリと乳房がこぼれ出た。

ズボンのベルトを外す。
ストンと足元にズボンが落ちてゆく。
鏡の中の俺は女性用の下着…ショーツを穿いていた。
腰に手をあて、隙間に指を差し入れる。
ゴムを伸ばし、腰から下にずり下ろしてゆく。
下腹部の陰毛は男と女では生え方が違うと言うが、その先…男にはあるべき器官が、鏡の中の俺には存在しなかった。
そこには深い溝が穿たれていて、その奥には女性の器官が存在していることを否定しきれないでいた。

 
「クシュン」
可愛らしいくしゃみが聞こえた。
鏡の中では裸同然の女性が寒そうにしている。
俺はショーツを引き上げ、ブラを元に戻した。
ブラウスのボタンを止めると、足元に脱ぎ落としたスカートを引き上げた。
腰の左でフックを止め、ジッパーを引き上げる。
パンパンと裾を払い、土埃を落とした。

上着を着てもう一度「鏡」に向かう。
そこには、いつもの俺=あたし=がいた。
乱れた髪の毛を手櫛で整え、バッグを肩に掛けると空き地を出た。

振り返る。
そこにはもう「鏡」は存在していなかった。

幽霊の存在(1/3)

「お前、幽霊って信じるか?」
親友の克己がそう言った。
「俺がそういうのダメだって知ってるだろう?」
「肝試しで泣きながら女の子に連れて来られてたのは覚えてるよ。」
「む、昔の汚点だ。今はそんな事にはならない。」(そんな怖い所に行くなど断固拒否する!!)
「あれはあくまでもイベントだろう?雰囲気で怖いと刷り込まれているだけだ。俺が聞いたのは幽霊そのものの存在についてだ。」
「何が違うと言うんだ?」
「別に怖がらせようとしている訳じゃない。ちょっとした実験に付き合ってもらいたいんだ。」
「実験?」
「幽霊の存在の有無を確認する実験だ。普通の降霊術は術者に見えない霊を降ろすため、真偽が判り辛い。」
「降霊術?」その単語だけで、俺はその場から逃げ出したくなった。
「だから、降霊術とは違うんだ。この実験で霊の実体化ができれば、幽霊の存在が証明できるんだ。」
「その証人になれと?」
「ビデオは回すし、リアルタイムでネットに映像の配信も行う。もちろん公開で行うから証人はたくさんいる。」
「なら、俺には用はないだろう?」
「何事にもアクシデントはある。気心の知れたお前なら、なんとかしてくれると思ってな♪」

 

 
結局は断れずに実験の当日を迎えた。
実験そのものの準備の他に、撮影するカメラをセットしたり、ネットとの接続を確認したりと忙しく働く克己を、俺はぼーっと眺めていた。
俺が任されたのは「証人」となる見学者の誘導であったが、20席程用意したパイプ椅子には誰も座っていなかった。
勿論、立ち見がいる訳でもない。現時点で見学者は0名。当然、俺は何もする事がなくなり、克己の作業を眺めている事になる。

「では。これより幽霊の存在確認実験を行います。」
克己はカメラに向かって口上を述べてゆく。
結局、証人となる観衆は俺一人だった。

克己がステージの中央に向かう。実験装置が次々と稼働してゆく。空気がピリピリと電気を帯びてきた。
「この装置はこの場に霊を呼び寄せるだけでなく、霊を実体化させます。」
克己の手が仰々しいスイッチに伸びていった。

カチリ

と音がして装置の唸る音が一段と高くなった。
克己の前にモヤモヤした陽炎のようなものが生じていた。
(これが幽霊なのか?)
と思っているうちに、それは「人」の形…男の、それもかなり美形の部類に入る…に実体化していった。
それはまだ向こう側が透けて見える状態であったが、着実に色が付き、その濃さを増していた。
男の表情も判る。最初は戸惑っていたが、状況を把握し始めて満足げな笑みも浮かべていた。

克己もまた(やったね♪)と笑みを浮かべている。

「聞こえるか?」
と克己が男に向かって言う。
男はゆっくりと首を縦に振った。が、まだ喋ることはできないようだ。
「あなたは幽霊…一度死んだ人ですね?」
その言葉に、男は握手を求めるように手を差し出し、一歩前に歩み出た。
克己もまた、手を差し出す…

 
「だめーーーッ!!」
女の叫びが俺の耳に届いた。
「彼を復活させてはダメ!!トンデモない事になるわっ!!」
騒ぎたてる女の声は克己の耳には届いていないようだ。彼女の声は俺にしか聞こえていない。
(ならば、俺が行動するしかない。)

「いかん!!」
克己が叫ぶ。
ステージに乗り込んできた俺への警告だ。
その直後、幽霊の男が克己の手を握る。
男が一気に克己に近づき…体が重なった。
「ダメッ!!」
再び女の声。
彼がいた場所に再び陽炎が生じる。
女の声はそこから聞こえた。
「一足遅かったな♪」
克己ではない男の声。
克己は…

克己の立っていた場所には幽霊の男が実体化していた。
「なかなか便利なモノを用意してくれたな。この男の肉体を核に、楽々と実体を保っていられる。」
「その人を解放しなさい!!」
陽炎は透明な女性の姿に変わっていた。
「いくらでも吠ざいていれば良い。あんたは実体を得た私には、何の干渉もできないのだからね。」

彼女の叫びはそこで止まった。
次に、男の視線が俺に向いた。
「お前も私の邪魔をするつもりか?」
迫力のある視線に身動きが取れなくなる。
「どけっ!!」
一喝され、ふらふらと後退し、そのまま尻もちをついてしまう。
「ぁあっ?!」
背後で女の声…

いや、その「声」は俺の口から漏れていた。

幽霊の存在(2/3)

「他人のコトは言えんな?あんたもその男を核に実体化しているじゃないか♪」
「あ、あたしは…これは不慮の事故よっ!!」
俺が女の声で女言葉を喋っていた。
「まあ、あんたが実体化したところで、私の行動を阻止することはできないがね♪」
俺は尻もちをついたまま、男を見上げていた。
「そうはさせないわよ!!」
彼女が立ち上がろうとする。が、身動きがとれないようだ。俺は彼女の意を汲んで立ち上がった。
いつの間にか服が変わっていた。彼女が着ていたワンピース・ドレスもそのまま実体化しており、それを俺が着ているのだ。
…と言うか、俺が彼女の服を着ていると言うのではなく、俺自身の身体が「彼女」になってしまったと言う方が正しい。
それは克己も同じだろう。奴は彼女以上に実体化する事を欲していた。だから、奴の内側で克己が意識を保っていられるかは判らない。
「それでも、貴方を阻止します。」
と彼女が声を張る。

克己と俺は身長にほとんど差はなかった。が、彼等に取り込まれ、克己は身長が伸び、俺は彼女に合わせて縮んでしまったようだ。奴の顔を見据えるには、首を反らせて見上げるしかない。
だが、彼女とともにある所為か、奴の視線にも十分に耐えられていた。
「既に結界を張ってあります。実体化しても貴方はここから出る事はできません。観念しなさい。」
「となると、長期戦という事だな。私はあんたが結界を解いてくれるのを待つだけだ。が、核となってる人間はどうかな?」
「えっ?」
「私はここから動けない。つまり、自ら食料を確保する事ができないのだな。私はそれでも良いが、人間の方はそうもいくまい?それとも、このまま餓死するのを傍観しているかい?」
「そ、それは…」
彼女の勢いが鈍る。

「食料を調達してくれば良いのだろう?」
「俺」の声が沈黙を破った。
俺の声とは言っても、彼女の声帯を使うので出てきたのは女の声だった。
「ほう?本当に長期戦を構える気なんだな?」
「いえ、今のはあたしじゃない。」
「だが、それ以外の選択肢はあるのかね?」
「…」
「なら、それで行こう。そうだ、喉が乾いたなぁ。早速だが、何か飲み物を調達してきてくれないか?」
「わ…判ったわよ。」

 

俺は克己がイベントのために用意していた資金から少々失敬する。見た目は違うが、克己自身のための食料を調達するのだ。文句はないだろう。
(こんな事に巻き込んでしまってごめんなさいね)
(さっきから何度も言ってるけど、気にするなよ♪)
彼女とは言葉に出さずとも会話ができる事がわかった。
相変わらず、喋る以外は俺がこの身体を動かすしかない。この身体が「女」である事をついつい忘れ、ガニ股で歩いているのを彼女に注意されたりする。
コンビニでお茶のペットを二本とおにぎりを適当に選んだ。いつものコンビニであったが、姿が違うと愛想良さも違った。

(結界は移動できないのか?)
(なぜ?)
(あの場所は克己がイベントのために借りた場所だ。時間が来たら返さなければならないんだ。)
(不可能ではないけど…)
躊躇う彼女からやり方を聞きだした。簡単な呪文を唱え…

…奴と手をつないで行けば良い…

のだ。
その事を考えただけで彼女につられてポッと頬を赤らめてしまった。
「男」の俺としては手をつなぐ行為に慣れていないので「恥ずかしい」気持ちはあるが、顔を赤らめる程の事ではない。
「女」として男性と「手をつなぐ」行為は、単なる「行為」だけではなく、男性への「好意」の現れと位置づけられる。
その「コウイ」の先には…

(か、考えないようにしよう。今はあの場所から移動する事だけを考えるんだ。)
と、自分に言い聞かせた。

 

奴にも機材の片付けを手伝わせ、俺達は克己の家に移動した。
結界の範囲を調整し、家全体を包み込むようにした。

その日は、俺が二人分の晩飯を作り、二人で食べた。食器の片付けが終わると、俺は自分のアパートに戻っていった。

 
翌朝。
自分の身体がいまだ元に戻っていない事を確認する。
(実体化してしまった奴を阻止する為には、あたしも実体化していなければ…あたしの実体化は偶然みたいなものだから、一旦離れてしまうと、もう一度実体化するのは困難だわ。)
仕方がないと諦め、ブカブカのパジャマを脱いで服を着た。
当然、俺の服は大き過ぎて着れない。昨日着ていた服を着ることになる。下着もそうだ。
(今日は服を買いに行こう。)
と彼女の同意を得る。克己の服も奴には小さいのだろうな。
そんな事を考えながら身支度を進めた。

一旦克己の家に向かい、奴の食事を作ってやる。
まさかとは思ったが、奴は自ら食事を作る事など露ほども考えていなかった。持ってきたエプロンをして昼飯まで作ってやった。
その後で、奴の服のサイズを確認し、俺は買い物に出かけた。

 

(先ずは下着じゃない?)
解ってはいた…この身体に合う服を買うには婦人服売り場に行かなければならないのだ。
「男」の俺がランジェリーコーナーでブラジャー等を手にすることになる。
(今のあなたは「女」なんだから、恥ずかしい事はないでしょ?)
確かに肉体は「女」だ。が、精神は…
(ぐちゃぐちゃ言わない!!オトコでしょ?)

下着を含め「服」は買わなければならないのだ。
覚悟を決め、ランジェリーコーナーに向かった。が…
(女の服ってSMLじゃ済まないんだな orz)
店員にサイズを測ってもらい、なんとか服を揃える事ができた。
奴の服もついでに買い、夕食の食材も買い込み、両手いっぱいの荷物とともに克己の家に戻っていった。

その間、奴が何をしていたかと言うと、パソコンに熱中していたようだ。
まるで引き篭もりのヲタクである。これならわざわざ結界を張らずとも良いような気がした。
(駄目よ!!奴を自由にさせたら、この世界はトンデモナイ事になってしまうわ。)
パソコンに向かっている奴をそのままに、俺は夕食の支度を始めた。
奴に取り込まれた克己を生かす為に食事を作っているが、出されたものを美味しそうに食べている「奴」を見ていると、次も美味しいものを作ってやろうという気になるのが不思議だ。

 
「いちいち帰るのは面倒じゃないのか?」
夕食の片付けを済ませ帰ろうとした俺に、奴がそんな事を言った。
「明日の朝も作りに来るのだろう?どうせ帰っても寝るだけなら、泊まっていったらどうだ?」
帰らないと着替えが…と言おうとしたが、今戻っても着替えは存在しない。今日買ってきたものが全てであり、それは今ココにある。
帰る理由がない。
奴の言う通り、明日もまた食事を作りに来なければならないのだ。
「わ、わかったよ。」と荷物を置くと、
「だったら風呂の準備をしておいてくれ♪」
「調子に乗らないでよ!!」
「あんたも入るんだろ?なら、良いじゃないか♪」
どうも奴のペースに乗せられてしまっている気がする…
「じゃあ、先に入らせてもらいますからね。」
と一番風呂で手を打った事になる。
途中から言葉の主導権を彼女に取られていた。(身体を動かすのは俺なんだけどなぁ)と言うと
(奴の入った風呂には入りたくないの!!)
と返ってきた。結局、俺は風呂の支度に掛かっていった。

 

「ふんふ~ん♪」
と鼻歌が出ている。勿論、俺ではない。
まあ、湯船の中でリラックスできているのは俺も同じだ。
湯の中で重力から解き放たれた胸の塊が揺らめいている。女性は肩が凝り易いと言うが、俺も正に実感していた。

カチャリと音がした。
何者かが浴室に入ってきた?それが奴以外の者である筈がない。
「どうだ、湯加減は?」
との声と同時に奴が入ってきた。
風呂場であるのだから、全裸なのは当然だが…
などと考えるより先に
「キャーーーッ!!!!」
っと、女の叫び声が耳を圧し潰した。
それが、俺の口から発せられたのを理解するまで、少し時間がかかった。

「キャー、キャー、キャー!!ダメ、来ないで、近寄んないで!!出てって、あっち行って!!」
俺の口はそう騒ぎたてているが、女の子がそんな声をあげている時にお決まりの、手桶や洗面器など彼女の手近なモノが投げつけられることはなかった。
彼女の動作を支配しているのは俺であり、俺としては「男同士」の意識でいる。
風呂に入るのに裸は当然である。(狭くなるだろ!!)とは思うが叫ぶ程ではない。

「なかなか良い身体をしているな。今夜はおもいきり楽しめそうだ。」
奴がそう言ったところで、自分が「女」である事を思い出した。
「た、楽しむ…って?」
「裸の男と女がいるんだ。ヤることはヒトツだろ♪」
俺の背筋を冷たいモノが走る。
奴の股間で魔が魔がしいモノが鎌首を持ち上げてゆく。
「そ、そんな…。ま、待て。俺は男で…」
奴は委細構わず、俺のいる湯船に踏み込んできた。
何もできないでいる「俺」を抱き、その下に割り込んでくる。背面から抱えられる。
奴の胸が俺の背中に接し、尻が奴の股間に填まる。
尻から奴の硬くなったペニスの存在が伝わってきた。

「はーぁ、良い湯だ♪」
奴はのんびりと言うが、その腕はがっしりと俺を抱え放さない。
「本当に良い身体をしているなァ♪」
俺を片腕だけで拘束し、開いた手で俺の腰から胸を擦りあげてゆく。
奴は掌で俺の乳房を持ち上げ、その感触を楽しむと、指を伸ばして乳首を積まんだ。
「んあん…」
変な声が俺の口からこぼれた。それは彼女が発した言葉ではない。
肉体の刺激に俺の身体が自然と発していたのだ。
それは、どうみても「女」の喘ぎ声だった。

「良い声だ。もっと聞かせてくれ。」
と、奴は更に刺激を加える。
「だめっ!!やめてっ!!」と彼女は抵抗しようとするが、
「あん、あふぁん♪ああぁん♪」男には経験のない甘美な刺激に喘ぎ声が続く。
ジュンッ!!
と股間の内壁から染み出てくるものがある。
(何をカンジてるのよ!!このままじゃ奴に犯られちゃうでしょう?)
と彼女が警告を発するが、俺の肉体は言う事を聞かなくなっていった。
「あん♪ああ~ん!!」
奴から与えられる刺激に、俺は喘ぎ悶えてしまう。
「ヒッ!!」
何の偶然か、悶え、揺れ動いていた俺の股間にスルリと奴のペニスが填まり込んでしまった。
(これが膣の中に挿れられた感覚なのか?)
(何ノンキしてるのよ!!早く抜きなさいっ!!)
彼女の怒りの声に反応したいのだが、腰から下に力が入らない。
「じゃあ♪早速イッパツいっておこうか?」
と奴が俺を抱えたまま湯船から立ち上がった。股間でつながっているため、当然の事ながら俺の足は床に付いていない。
お湯の浮力が失われたため、俺の体重は奴の腕とペニスで支えられている。そのペニスは重力の助けを借りて、更に膣の奥にまで入り込んでいた。
「あぁ、あぁ、あぁ…」
俺の口は言葉を形作ることができなくなっていた。
奴が何か動く度に、俺の胎の中で奴のペニスが揺れ動く。その刺激が全て快感となって俺を貫いてゆく。
(お、男に犯られて、何をカンジてるんだ、俺はっ!!)
意識の上では拒絶しようとしていても、肉体が反応してしまう。
激しさを増すペニスの動きに合わせて快感も増してゆく。
「ぁあん、イクゥ♪イッちゃう~!!」
俺は嬌声をあげ、快感の頂を飛び越えていった…

幽霊の存在(3/3)

 
 
俺が気付いたのはベッドの中だった。
裸のまま、毛布にくるまれている。隣では、奴が寝息をたてていた。
ゆっくりと起き上がる。股間に違和感を感じていた。手を伸ばすと指先に粘液が絡まる。
(奴のか?)
(今更何言ってるのよ!!さんざんヨがってたのはどこの誰?)
(き…記憶にない…)
(ふ~ん。フェラしたのも、騎乗位で腰を振ってたのも憶えていないんだ?)
(そ、そんなコトしてたのか?)
(…。良いから、シャワーで綺麗にしてきなさいよ。)
彼女に促され、風呂場に向かった。

 
奴はまだ寝ていた。
俺は買ってきた下着とパジャマを着ると、毛布を引きずり落とし、床の上にまるまっていた。
寝ようとしても、なかなか寝付けない。自分が「女」であることをまざまざと思い知らされたのだ。
胸、そして股間に触れる。それが「女」の肉体である事を改めて確認する。
(どうするつもり?)
彼女が聞いてくる。
(どうって…俺は克己を助けたいだけだよ。)
俺が食事を作らなければ、奴は何も食べないと言っているんだ。放っておけば克己は餓死してしまう。
奴にはとっては、この世に干渉できる肉体がなくなるだけで、何のデメリットもない。
結界でこの家を出れないようになっているが、時間の観念がないのか、こちらが結界を解くのを待ち続けると言っている。
…このままでいると、克己の寿命が尽きるまでこのままなのか?
(それもあり得るわね。)
(それって、どうやっても克己を取り戻せないって事じゃないか?)
(あたしとしては、奴を行動できないようにできれば、それでも構わないんだけどね。)
しかし、彼女自身では俺の口を使って喋る他は何もできない。俺の協力がなければ…いや、結界が張られた時点で彼女は傍観するだけになっている。結界を維持するために彼女に必要な事は「俺」を死なせないことだけなのだ。

(何か、克己を助ける方法はないのか?)
無駄とは知りつつも聞かずにはいられなかった。

(無いことはない…かな?)
(何か手はあるのか?)
(多分…イけると思う。)
彼女が言う事には、結界を移動させる方法を使って結界を極小化させた上で、第三者を結界の中に入れ、克己を結界の外に押し出せば奴は結界内の第三者に移動するしかない。
その第三者が死ねば、奴は肉体を失うことになる。
(で♪その第三者ってどうすれば良い?)

 

 

俺達は期が熟するのを待った。
そして今日。決行の日が来た。
いつものようにPCに向かいっぱなしの奴に声を掛けた。
「お昼ご飯にしましょう♪」
奴は「ああ」と画面を閉じて立ち上がった。
俺が奴の手を取ると、彼女が結界を縮めてゆく。
「な、何のつもりだ?」
奴が慌てる。
俺はつないだ手が離れないように、ビニールの紐を巻き、しっかりと結びあげた。
「克己を返してもらうわ。」
「な、何を言う?この男が死なない限り、私は離れないぞ。」
「そう言っていられるのも今のうちよ。」
「この男の代わりにお前が肉体をよこすというのか?だが、それだと私の行動を制限しようとするお前の目的は達成されないぞ。」
「貴方のための肉体は、ちゃんと用意してあるわ。おとなしく克己を解放して頂戴!!」

結界が更に小さくなる。
奴の体に結界が触れ、奴が新たな肉体に移動する。克己の体が元に戻る。
「克己!!」
俺は克己を抱き寄せた。
「ぁ…ああ。声が出せる。や、奴はいなくなったんだな?」
「奴は克己の体から離れた事には間違いないわ。だけど、奴はまだここにいるの。」
「まさか、お前の中に?」
「いいえ、あたしはあたしのままよ。奴はココ♪」
と俺は自分の腹を摩った。
「奴とあたしの赤ちゃんに奴を封じ込めたの。大丈夫よ。この子が生まれたら、あたしは母親としてこの子が変な事をしないように導いていくわ。」
「そんな事できるのか?」
「なんとかなるわ♪」
「お、お前はそれで良いのか?俺はこうやって元の姿を取り戻せたが、このままだとお前は一生女の…」
「良いの!!あたしが決めた事だから。それに女でいる事もそう悪くはないのよ♪」
「そうか」
そう言って克己は口を閉じた。

 

 
「おぎゃーー!!」
新しい(?)命が生まれた。この子には奴の魂が取り込まれているが「あたし」の子供であることに違いはない。
まだ見えぬ目で、必死に母親を求めている。
「大丈夫よ。ママはずっとアナタのそばにいますからね♪」
そう言って、あたしは病院全体を包むように広げた結界に綻びがない事を確認した。

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