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2012年2月11日 (土)

電車の中で(1/3)

今日も電車に揺られて会社に向かう。
反対方向に向かう電車はガラガラに空いているのに、なぜ俺はこんなに揉み苦茶にされなければならないのだろうか?
会社が都会に集中しているのであるから当然の事象には違いない。
が、ゆったりとシートに座ってお喋りをしながら登校する女子高生達を見ていると、無性に腹が立ってくる…

 

(良いじゃん♪あっちの電車に乗ってしまっても構わないんじゃない?)
心の奥で悪魔じみた囁きが生まれていた。
(このまま会社に行っても、単調な仕事の繰り返し。お客に、上司に、頭を下げまくる。ましてや、お局女史にも頭を下げなくちゃならないなんて、やってられないよね?)
悪魔はどこまで俺の事を知っているのか?
(何の憂いもない女の子達が羨ましいのでしょう♪ちょっとの間だけでも代わってもらう?)

「…でさあ、ミキがねっ…カコどうかしたの?ぼーっとしちゃって。」
「カ、カコ?意識ある?」
左右から女の子の声。と同時に体が揺すられる。
いつの間にか、俺はシートに座っていた。目の前の車内はがらんとしている。
「カコ、カコッ!!」
更に揺さぶられ、俺は左右の女の子を見た。
「意識はあるみたいね?」
「あたしの事わかる?」
俺は声を掛けられた方に交互に顔を向けた。
彼女達は俺に体を密着させている。
若い娘に挟まれて興奮しない「男」はいない。ズンッ!!と下半身の気が高まる…
が、本来であれは痛いくらいに硬くなるアレの気配が感じられない。その代わりに股間が暑くなり、汗をかいたように湿気が高まっていた。
「風邪?熱があるの?顔が赤いよ。」
と俺の顔を覗き込んでくる。それ以上可愛い顔を近づけないで欲しい…

その時、ノーーッと電車がトンネルに入った。向かい側の窓ガラスが鏡のようになる。
そこに写っていたのは3人の女子高生だった。勿論「俺」の姿はない!!
左右の女の子が真ん中の女の子を心配そうに見ている。多分、おそらく、確実に…真ん中の女の子が、今の「俺」なのだろう。

トンネルを抜けても状況は変わらない。
視線を落とすと、膝の上には学生鞄。その下では俺の両足を紺色の布地が包んでいた。
左右の女の子達と同じ、女子校の制服…俺はスカートを穿いていた。

制服だけではない。
胸にはブラジャーが巻かれ、膨らんだ胸を包み込んでいる。
下半身を包んでいるのもトランクスではない。ピッタリとお尻を包み込んでいるのは女性用のパンティだ。
更に、脚には脚全体にぴったりと張り付くものがある。この年齢であれば、肌色のパンストではなく、黒タイツであろう。

興奮して硬くなる息子の代わりに、俺は股間にヌルリとした割れ目の存在を感じていた。ヌルリとしているのは「愛液」だろう。性的に興奮した結果のものである。
「大丈夫。何でもないから…」
と取り繕う俺の声は女の子の声以外の何物でもない。
「な、なら良いんだけど…」
「でさぁ、ナッチが…」と新たな話題が展開されてゆく。

 

ふと気づくと女の子達の声がなくなっていた。
椅子も違う。電車の振動は伝わって来ない。
「女子供じゃないだろう?泣いて済むとでも思ってるのか?」
(泣いている?)
言われて、今の自分の姿勢を確認した。
両脚を揃えて椅子に座り、顔を俯かせ、両掌を顔に当てている。目が熱い。頬や掌を濡らしているのは「俺」の涙か?
「自分の事をあたしとか言って…おかまなら、らしい格好をしておけよ。だとしても男が女子トイレに入ると言うのは犯罪行為だぞ。」

つまり「俺」は女子トイレで自分の事をあたしと言っていたと言う事なのだろう。
もし、俺がさっきまでの女子高生になっていた間、彼女が「俺」になっていたとしたら…
自分の姿を確認するために、鏡を探しただろう。彼女に馴染みの鏡と言えば女子トイレと言うのも頷ける。
女の子なのだから、自分の事はあたしと言うし、どうにもならない状況では泣くしかなかっただろう。
だが、それを言っても理解される事はないだろう。映画や小説にはあっても、心と体が入れ替わっていたなどと言えば一笑にふされるだけだ。

俺にできる事は一つしかないだろう。
男の立ち位置を確認すると、俺はスックと立ち上がった。
「すみませんでした!!」
と一礼すると、脱兎のごとく、逃げ出していった。

 

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