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2012年2月11日 (土)

聖剣の導き

「うおぉぉぉぉ!!」
俺は手にした剣に、ありったけの念を込めて「魔物」に斬り掛かっていった。
薙ぎ払うと、剣に触れた所から魔物の身体が塵と化してゆく。
物理的な攻撃にはびくともしない魔物も、聖剣の前には為す術もない。

「突っ走り過ぎているぞ。」
相方のローエンが声を掛けてくる。
魔物に対して絶大な威力を発揮する聖剣であるが、当然の事ながら代償がついてまわる。
聖剣を発動させる為には、聖剣と契りを交わした者の「念」の力を必要とする。勿論、念の力は有限であり、連続して聖剣を発動させるには限界がある。
念の力も体力と同じく休息をとれば回復するが、それも適度な所で念の消費を抑えることが前提となる。則ち、限界を超えて念を消費してしまうと休息をとるだけでは済まなくなる。
肉体に大きなダメージが降りかかるのだ。最悪の場合「死」に至るとも言われている。
だが…
「こいつらを殺れば、しばらくは聖剣の出番はないんだ。今は無理をしてでもヤり抜いた方が良い!!」
俺は鬼神の如く魔物を斬り倒していった。

「こいつが最後か?」
俺はラスボスと思われる魔物に対峙した。
聖剣を構え、切っ先に念を集中する。

ローエン達が残りの魔物やザコを斬り倒す音も疎らになっていった。
一瞬、あたりが静寂に包まれる。
俺の心臓の鼓動のみが響き渡っていた。

 
聖剣の輝きに変化が生じた。
いつもは刃身全体が淡く輝いているのだが、その光が切っ先に集まりだした。
光の質も刺すような強い輝きに変わる。

 
魔物との間合いはいまだ縮める事ができていなかった。
このままでは聖剣を魔物に触れさすこともできず、俺の念だけが消費され続ける。
俺は聖剣を上段に構え直した。聖剣の輝きが俺に告げたのだ。切っ先に念を溜め、一気に放出しろ…と。
俺は聖剣を大きく振り下ろした!!
「ハッ!!」
気合いとともに切っ先から放たれた光の玉が魔物に吸い込まれていった。
魔物の動きが止まる。
俺は聖剣を腰溜めにし、魔物に突っ込んでいった。

「ググァアァァ…」
魔物の断末魔の叫びが響き渡り、そしてフェードアウトしてゆく。

 
俺は精魂尽き果て、聖剣を支えに地に膝を付いていた。
「やったな♪」
ローエンが駆け寄って来る。その顔を見て俺はホッと息を点いた。
張っていた気が解れると同時に残っていた念の力も失せ、俺の前から聖剣が姿を消す。回復するまで聖剣は異次元に隠れてしまうのだ。
聖剣の支えを失った俺の身体が地面に転がろうとする。それをローエンが抱き止めてくれた。
「お前は無茶が過ぎる。何れにしろしばらくは無理はできないからな。」
念とともに体力も低下している。今は聖剣の重さでもなくなるとなると助かる…
ローエンの言う通り、今の俺は何もできないのだ。

「ああ、解ってるよ。」と、微笑み掛けると彼はぐいと俺を抱きかかえた。しかし、その抱き方は…
「なあ、その抱き方は止めてもらえないか?」といつもながら抗議するが、
「これは、念を使い果たした今のお前の姿には最もふさわしい抱き方だ♪」と聞く耳を持たない。

それは俗に言う「お姫様だっこ」であった。
毎度の事ではあるが、俺の受ける肉体的ダメージは、肉体の女性化だった。手足も細くなり、人相までも変わってしまう。
ローエンに言わせれば、そこいらの女達より余程美人だ。との事。美女を抱えるには、この抱き方が一番だとローエンは言う。
彼には逆らう事ができない。何より、この先しばらくの間、俺の「念」の力の回復を手伝ってもらわなければならないのだ。
俺はおとなしく彼の首に腕を廻した。

 

 
ここまで失った「念」を回復するには、単に休息をとるだけでは不十分だ。精の付く食事や、回復の為のトレーニングが必要になる。
それ以上に効果的なのは、同じ聖剣の使い手から「念」を補給してもらうことだ。

「んぁあ…そ、そこ…イい♪」
俺はローエンに組敷かれ「念」の補給を受けようとしていた。
「こっちも良い感じだ。良いか?行くぞ。」
「ああ、いっぱい補給してくれ♪」
現在、考えられている最も効率的な「念」の補給は、「男女の交わり」であった。
つまり「SEX」。男が女の性器に自らの性器を挿入し、精液を投入する。本来、子孫を残すために行われる本能的な行動であるが、その行為で得られる快感のために、本来の目的とは別にその行為を行う事もある…
俺の股間に彼のペニスを受け入れ、精液とともに放たれる「念」の奔流を俺は膣で受け止め、これを吸収するのだ。
男同士であれば適わぬやり方であるが、幸いにも今の俺は「女」だった。これを使わない手はない♪
「っあ!!ああ~~っ♪」快感に、女のように嬌声をあげてしまう。
それがまた、俺の感度を引き上げ「念」の補給をスムーズにしてくれる。
「んあん、ああ…」快感の頂が見える。「念」の補給も忘れ、快感に没頭してしまう。その最高潮…俺は「女」としてイってしまった。
俺はその晩、三度の絶頂を迎え、三度目の快感の中で意識を手放していた。

 
念の補給は毎晩のように行っていた。それでも聖剣が元に戻るまでにはしばらくかかる。
ローエンは口では「嫌々」念の補給を行っていると言っているが、実はこの行為を魔物退治の後の楽しみにしているようだ。
思い返すと、俺は良いように奴に乗せられ「念」の過剰放出をしているのではないか?俺を煽ててラスボスに向かわせているのか?
ローエンがその他の魔物を一手に引き受けるのも、俺が集中し易いように…俺がいつでも「念」の過剰放出できる…
その、お膳立てをしているようにも思えてしまう。

俺としても念の補給を受ける行為を「嫌」だとは思っていない…それを悦んでいるのも事実だ。
「女」でいる間はヒラヒラのドレスを着てリボンやリングで自らを飾りたてるのも楽しい。
それを見てローエンが俺を綺麗だと言ってくれると更に嬉しくなる。

次の魔物退治までのしばしの休暇を、ローエンと腕を絡めて街を歩く。まるでデートをしているようだ。
すれ違う男達が俺に魅とれている様を見て、ローエンも鼻を高くしているに違いない。
いつまでも、このままでいたい…そんな気持ちが俺の中に生まれ始めていた。

 
毎夜の念の補給を受けて、聖剣が姿を取り戻そうとしていた。
それは、とりもなおさず、この姿との別れを意味する。
(このままでいたい…)
俺の想いが聖剣に届いたのだろうか?聖剣が俺に、その姿のままが良いのか?と聞いてきた。
一瞬躊躇ったが、俺は「女」のままでいる事を願った。

聖剣が復活した。が、その姿は若干細身になり、僅かではあるが装飾が施されていた。
この姿で魔物退治に向かうのだと、ローエンを説き伏せた。既に、次のイベントが発動していた。
女物の防具を揃え、俺はローエンと共に次の魔物退治へと向かっていった。

 

 
「ハイイーッッ!!」
俺は剣に念を込め、魔物に斬り掛かる…と言うよりは、女と見て組し易しと無造作に俺の前に躍り込んで来るのは、魔物の方だ。
以前のような圧倒的なパワーは失われていたが、柔軟性と敏捷性が増している。魔物の攻撃を難なく躱し、聖剣を突き出してゆく。
聖剣の効果には変わりはなかった。剣に触れた所から魔物の身体が塵と化していった。

俺がザコに絡まれている間に、ローエンは大物に対峙していた。
「うおぉぉぉぉ!!」と叫び、彼が魔物に斬り掛かってゆく。聖剣を薙ぎ払い、片端から魔物を塵と化してゆく。
「突っ走り過ぎないでね♪」今度は俺の方がローエンに声を掛けていた。

ザコが片付き、俺はローエンの援護に向かった。が、彼もラスボスに最後の一撃を加えようとしているところだった。
「はあーーっ!!」ローエンが気合いを掛けると、彼の聖剣が光輝く。

「ま、待てっ!!無茶だ!!」俺の叫びは届いたか?だが、輝く聖剣とともにローエンがラスボスの懐に飛び込んでいった。
その中心から閃光が放たれる。
塵となったラスボスの残骸が四散し、辺りが煙にまかれたようになる。

聖剣の光が消え、視界が戻ってきた。
俺はその中心に駆け寄った。
「ローエン!!」

そこにうずくまる人影…
ローエンよりはひとまわり以上小さい。
そこには、愛らしい女の子が聖剣の鞘を抱いていた。

「ロ、ローエンなのか?」

俺が尋ねると、少女はコクリと頷くのだった…

荒野を独り往く…

荒涼とした大地をバギーが突き進んでゆく。

運転しているのは、うら若い女性のようだ。髪はヘルメットに覆われ、色も長さも定かではない。服も肌の露出のない長袖のジャンパーにズボンと言ういでたち。
唯一、大きく膨らんだ胸が、彼女が女性である事を物語っていた。

 
「って、何を勝手な事をほざいているんだ?俺は男だ。オ・ト・コ!!」
と愛らしい声で言われても、誰も彼女が男性であるとは認めないだろう。
しかし、彼女が「男性」であった事は事実である。

「何で、過去形なんだ?!」

いちいちナレーションに突っ込まないでもらいたい。
実際の所、彼女の肉体は爪の先の細胞の一片までも女性の遺伝子に塗り換わってしまっていた。当然の事ながら外性器や内性器もである。
唯一、彼女の心だけが「男」を主張しているが、これも脳内を満たす女性ホルモンにいつまでも耐えられるとは思えない。
「う、うるさい!!」
実際、彼女は人前に出る際には化粧をするようにもなっていた。ヘルメットに隠れているが、頭には髪飾りも付けている。
当然、下着も女性用のものを着けるしかないが、最近では色や柄にも意識しているようだ。誰かに見せる為の「勝負下着」もあるらしい。
(…)
おや、彼女は顔を真っ赤に染めてしまっていますね。どうやら、触れられたくないプライベートな部分にまで踏み込んでしまったのでしょう。

それはさておき、彼女は次の宿場町に向かいバギーを走らせていた。
勿論、野宿という手もあるのだが、大規模な商隊や軍隊でもない限り、何が襲いかかってくるかわからない荒野で「安眠」などできるものではない。
これまでのいきさつで懐に充分な蓄えのある彼女が、わざわざ野宿する必要はない。
第一、寝不足は美容に良くないのだ。
「それ、ヒトコト余計!!」

 

 
バギーが宿場町の門を潜った時には、大分陽も傾いていた。
車庫付きの宿屋は即に見つかった。「町」とは言えど、荒野の只中である。治安の良さは聞く方がどうかしている。
彼女には車庫付きの宿屋を使うだけの資金があった。彼女にとっては大事な愛車を守るために選んだ宿屋ではある。が、えてしてそのような宿屋は、女性にとっても安心なものになっている。
安宿では部屋の鍵さえまともに掛からなかったりする。侵入者への備えを怠れば、その夜のうちにレイプされている。
女の反応が良ければ野郎達の間に情報が伝わり、その晩のうちに5人、10人と相手をさせられるはめになる。
そうでなくとも、美人と判れば万難を廃してお近づきになろうとする輩も存在するのだ。

彼女が選んだ宿では、そのような事態になる事はまず考えられない。彼女が男を部屋に連れ込まない限りは彼女の安全は保証されているようなものだった。

「って、俺がオトコを連れ込むようなコトがあってたまるか!!」

と言い残し、彼女はバスルームに入っていった。
シャワーの下に晒された裸体は紛れもなく「女」の肉体である。腰まで届きそうなストレートの黒髪を丁寧に洗う。
その間に湯船に湯が満たされる。洗い終わった髪を慣れた手つきで頭の上に纏めると、彼女は湯船に身を沈める。

これだけの湯が使えるというのは、この町の礎となっている泉の水量が豊富であることはもとより、この宿が「女性」を意識したサービスをしているからでもあった。

彼女は湯に浸かり、旅の疲れをほぐしていた。彼女の思いは「肉体」の疲れを取るだけであったが、浴室内に立ち込める香料の効果もあってか、「精神的」にもリラックスしていった。
心の緊張がほぐれると、自分の「男」を維持する力も弱くなってしまうようで、湯の中で身体のマッサージを行っていると、単なる快感ではない「性的」な心地よさに支配されてゆく。
腕の筋肉を揉みほぐしていた手が胸の膨らみをほぐしだす。
「アふぁん♪」
と甘い吐息を漏らしている事も意識できていないようだ。
もう一方の手が、脚を揉みほぐす代わりに股間を揉みほぐし始めるのにも、そう時間はかからなかった。かつてはそこに勃っていたモノをしごいては快感を得ていたのだが、今では勃つモノがない。
しかし、それ以上の快感を、そこに穿たれた肉溝からもたらされるのである。股間に這わせた指が、ゆっくりと割れ目の間に沈み込んでゆく。
「んあん♪ぁあっ…」
快感を与えてくれるスポットが刺激される度に、彼女は艶声をあげていた。
彼女の頬が紅く染まりだしたのは、湯にのぼせたからではない。
肉洞に差し込む指を二本に増やし、激しく動かして快感を貪ってゆく。それが「オンナ」の快感であると判っていても、もう止めることはできなくなっていた。

快感の頂が見え始める。
「あっ、あっ、ああん♪」
腰を降り、快感を追い求める。
そして…絶頂に達する。
「あ、あ、ああ~~~ん!!」
彼女は大きく嬌声をあげると、湯船の中にぐったりと身を沈めた。

良い加減に「男」を求めても良いとは思うのだが、彼女は処女のように頑なに拒み続ける。
「だ、誰が処女だ?俺は…」
彼女が処女である事には誤りはない。女になってからは一度も男に抱かれた事はないのだ。
「紛らわしい言い方をするな!!それでは俺が男だった時には抱かれた事があるように聞こえるだろ?」
では「処女」である事を認めるのですね?
「そ、それは…」
認めたくなければ処女でなくなれば良いとは思いませんか?
「俺に男に抱かれろと?」
とは言っても、貴女に「男」を引っ掛ける事はできないでしょう?その美貌です。貴女が声を掛ければ靡かない男はいないでしょう。
しかし、男の意識のままの貴女にそれができますか?それだけの覚悟もなしに街に立てば、即にレイプの餌食になるでしょう。
「じゃあ、どうしろと?」
おや?覚悟ができたのでしょうか?それでは、身体を拭いてベッドに行ってください。
彼女は風呂から上がり、バスローブに身を包むとベッドに腰を下ろした。
「目を閉じて♪」
私が言うと、彼女は素直に従った。
私は境界を乗り越え、彼女の部屋に踏み込むと抱き寄せて彼女の唇を奪った。
始めて経験する受け身のキスに彼女の頭はボーッとなっていた。
既に風呂の中で一度、イッているので彼女の肉体の準備は整っている。私はゆっくりと彼女を押し倒していった。

 

 

荒涼とした大地をバギーが突き進んでゆく。
彼女は次の街に向かってハンドルを握っていた。

「うるさいんだよ!!」

と今日も私に突っかかってくる。そこがまた可愛いのだ♪
「俺は男だっ!!」
それが口先だけの、単なる口癖でしかない事は明らかであった。
彼女は昨夜「処女」から「女」になったのだ。シーツにはその証がくっきりと残っていた。
本物の男性自身に貫かれ、歓喜の嬌声をあげ続けた事を彼女が憶えていない筈がない。
「お、俺は…」
バギーに積まれたエンジンの振動がシートを通じて彼女の股間を刺激している。その「快感」もまた「女」でなければ味わう事のできないものだと理解していた。
「み、認めれば良いのだろう?そうだよ、俺はオ・ン・ナだ!!」

おや?以外とあっさり認めましたね?
でも、それではコレを読んでいる読者の方々にはモノ足りないのです。少々訂正してもらえないでしょうか?
「な、何だよ?」
今の貴女は、誰が見ても「女性」ですが、少し前までは「男性」であった事を忘れないでくださいね?

「知るかっ!!」

そう言って彼女はスロットを全開にした。

 

 
荒涼とした大地をバギーが突き進んでゆく…

電車の中で(1/3)

今日も電車に揺られて会社に向かう。
反対方向に向かう電車はガラガラに空いているのに、なぜ俺はこんなに揉み苦茶にされなければならないのだろうか?
会社が都会に集中しているのであるから当然の事象には違いない。
が、ゆったりとシートに座ってお喋りをしながら登校する女子高生達を見ていると、無性に腹が立ってくる…

 

(良いじゃん♪あっちの電車に乗ってしまっても構わないんじゃない?)
心の奥で悪魔じみた囁きが生まれていた。
(このまま会社に行っても、単調な仕事の繰り返し。お客に、上司に、頭を下げまくる。ましてや、お局女史にも頭を下げなくちゃならないなんて、やってられないよね?)
悪魔はどこまで俺の事を知っているのか?
(何の憂いもない女の子達が羨ましいのでしょう♪ちょっとの間だけでも代わってもらう?)

「…でさあ、ミキがねっ…カコどうかしたの?ぼーっとしちゃって。」
「カ、カコ?意識ある?」
左右から女の子の声。と同時に体が揺すられる。
いつの間にか、俺はシートに座っていた。目の前の車内はがらんとしている。
「カコ、カコッ!!」
更に揺さぶられ、俺は左右の女の子を見た。
「意識はあるみたいね?」
「あたしの事わかる?」
俺は声を掛けられた方に交互に顔を向けた。
彼女達は俺に体を密着させている。
若い娘に挟まれて興奮しない「男」はいない。ズンッ!!と下半身の気が高まる…
が、本来であれは痛いくらいに硬くなるアレの気配が感じられない。その代わりに股間が暑くなり、汗をかいたように湿気が高まっていた。
「風邪?熱があるの?顔が赤いよ。」
と俺の顔を覗き込んでくる。それ以上可愛い顔を近づけないで欲しい…

その時、ノーーッと電車がトンネルに入った。向かい側の窓ガラスが鏡のようになる。
そこに写っていたのは3人の女子高生だった。勿論「俺」の姿はない!!
左右の女の子が真ん中の女の子を心配そうに見ている。多分、おそらく、確実に…真ん中の女の子が、今の「俺」なのだろう。

トンネルを抜けても状況は変わらない。
視線を落とすと、膝の上には学生鞄。その下では俺の両足を紺色の布地が包んでいた。
左右の女の子達と同じ、女子校の制服…俺はスカートを穿いていた。

制服だけではない。
胸にはブラジャーが巻かれ、膨らんだ胸を包み込んでいる。
下半身を包んでいるのもトランクスではない。ピッタリとお尻を包み込んでいるのは女性用のパンティだ。
更に、脚には脚全体にぴったりと張り付くものがある。この年齢であれば、肌色のパンストではなく、黒タイツであろう。

興奮して硬くなる息子の代わりに、俺は股間にヌルリとした割れ目の存在を感じていた。ヌルリとしているのは「愛液」だろう。性的に興奮した結果のものである。
「大丈夫。何でもないから…」
と取り繕う俺の声は女の子の声以外の何物でもない。
「な、なら良いんだけど…」
「でさぁ、ナッチが…」と新たな話題が展開されてゆく。

 

ふと気づくと女の子達の声がなくなっていた。
椅子も違う。電車の振動は伝わって来ない。
「女子供じゃないだろう?泣いて済むとでも思ってるのか?」
(泣いている?)
言われて、今の自分の姿勢を確認した。
両脚を揃えて椅子に座り、顔を俯かせ、両掌を顔に当てている。目が熱い。頬や掌を濡らしているのは「俺」の涙か?
「自分の事をあたしとか言って…おかまなら、らしい格好をしておけよ。だとしても男が女子トイレに入ると言うのは犯罪行為だぞ。」

つまり「俺」は女子トイレで自分の事をあたしと言っていたと言う事なのだろう。
もし、俺がさっきまでの女子高生になっていた間、彼女が「俺」になっていたとしたら…
自分の姿を確認するために、鏡を探しただろう。彼女に馴染みの鏡と言えば女子トイレと言うのも頷ける。
女の子なのだから、自分の事はあたしと言うし、どうにもならない状況では泣くしかなかっただろう。
だが、それを言っても理解される事はないだろう。映画や小説にはあっても、心と体が入れ替わっていたなどと言えば一笑にふされるだけだ。

俺にできる事は一つしかないだろう。
男の立ち位置を確認すると、俺はスックと立ち上がった。
「すみませんでした!!」
と一礼すると、脱兎のごとく、逃げ出していった。

 

電車の中で(2/3)

会社に行く気分にもなれない。
体調不良を会社に連絡し、家に戻っていった。ひとつ考えついた事があった。
マンションとは名ばかりのアパートのドアを開けると玄関脇の窓の外に下げた傘の中に鍵を隠した。ドアの鍵は掛けるがチェーンは外したままにしておく。
次におもちゃの手錠を取り出す。自分の手に掛け、鍵を引き出しの中に入れると、そのままベッドに転がった。
目を閉じ、電車の中で俺と入れ替わった娘の事を想い返してみる…

 
「カ、カコ?」
「どうしたの?今日の貴女ヘンよ。」
急に立ち止まったからだろう。俺としては寝ている状態から、急に歩いている状態に移行したのでバランスを保つのに精一杯だった。
「ん。ああ、ゴメン♪何か体調が良くないみたい。今日は家に帰って寝てるから、先生に言っておいて。」
「付いてかなくて大丈夫?」
「それくらいは問題ないわ。じゃあね♪」
俺は反対側を向き歩き始めた。高校生ともなると、学生靴であっても男のものよりかかとが高くなっているようだ。ふらつく演技の必要もなく、足を突っかからせながら、俺は通学路を逆行していった。

勿論、行き先はこの娘の家ではない。「俺」の所にまっすぐに向かっていった。

隠しておいた鍵を取り出し、ドアを開ける。
「俺」はベッドの上にいた。

「こんにちわ♪」
と「俺」に声を掛けてみる。
「俺」の目がカッと見開かれる。
「あ、 あ、 あ…」
たぶん(あたしがいる?)とでも言いたいのだろう。
「そうよ♪あたしはあなた。あなたはあたしね♪何の問題もないでしょ?」
問題は「大あり」に違いないのだが、それは脇に置いて俺は本題に入っていった。
「何故あたしがこんな事をするのか解る?」
当然、解る筈もない。
「気持ち良い事を教えてあげたかったのよ♪」
と「俺」のズボンを剥ぎ取った。更にトランクスも下ろすと、股間には見慣れたモノが現れた。
見る角度が違うからか、見慣れたモノであるのだが、余計にグロテスクに見える。
「あなたは何もしなくて良いから、快感に身を任していれば良いわ。」
と、俺は股間のモノに手を伸ばした。
理解できない事態に遭遇し、萎えたモノは茂みの中で小さくなっている。俺が触れるとピクリと反応した。
「怖がらなくても良いのよ♪」
と柔らかな吐息を吹きかけてやる。
「ぁ…」
と微かではあるが「俺」が反応したのを見て、俺は舌を伸ばしてその先端に触れてみた。
「ぁあっ…」
感じ始めたのだろう。緊張が融けてゆくのが解る。
口の中に納め、唾液を絡ましてやる。口蓋と舌全体で徐々に刺激を加えていった。
「あうっ、ああ…」
「俺」がうめく。俺の口の中ではペニスが十分な大きさと硬さを回復していた。
その間にも、俺の肉体の方の準備も進んでいた。股間の潤みはパンティを濡らすまでになっていた。
「これならOKね♪」
ペニスから口を離し、態勢を立て直す。スカートの中に手を入れ、濡れたパンティを黒タイツと供に脱ぎ去った。
「じゃあ、次イクわね♪」
俺は「俺」の上に跨った。勃起したペニスの場所を確認し、その上にお尻を…俺の股間を下ろしてゆく。
スカートに隠れて良く見えないが、片手でペニスの先端を俺の膣口に誘導していった。

ソコにペニスの先端が触れているのが解った。腰を下ろしてゆくと十分に濡れた肉洞が、ペニスを呑み込んでゆく。
しっかりと腰を落としきると、俺の膣にはぎっしりとペニスが詰まっていた。男には経験できない感覚だ。ペニスの先端が押し上げているのは子宮口…そして子宮そのものなのだろう。
「じゃあ、次は…」と次の行動に入ろうとすると、
「ま、まって!!動かないで!!これ以上何かしたら、ヘンになっちゃう!!」
「ヘンじゃないよ♪世の中の男性は皆ヤッている事だよ。だから、もっと気持ち良くなろ♪」
と下半身の筋肉を刺激して、膣を絞めあげてみた。
「あっ!!駄目っ!!何か出ちゃう!!」
言っている側から、膣の中のペニスが脈動した。
どくどくと、俺の膣の中に精液が送り込まれてくる。精液は膣を満たし、一部は膣口から股間に溢れ出ている。

(そんなに気持ち良いとは言えないか…)
「俺」のペニスは今だ硬さを維持していた。そこで、そのまま腰を揺すってみた。
クチョクチョと溢れた精液が結合部で音をたてている。肌が擦れあうが、そこからも快感のようなものは得られない…

「あっ…」

「俺」のペニスが膣内のある部分に触れた。その刺激は「快感」であった。
もう一度、そこを刺激するように腰を揺する。
「ああっ、ああん♪」
俺の声は女の喘ぎ声そのものになってきた。
(これが「オンナ」の快感に違いない!!)
俺は重点的にソコを責めたてた。快感がどんどん大きくなる。
「ああん、あん。ああっ!!」
俺の艶声も大きくなり、艶声を出すことにより快感が高まる。
快感が俺を支配してゆく。無意識のうちに両手が胸に届く。掌で乳房を包み、揉みあげると更に快感が増す。
頭の中が快感で白く塗り込められてゆく…

「あっ、あっ、あっ…」
(これがイクッてことなのだろうか?)

「駄目っ、また…」

膣の中でペニスが膨らむ。(ま、まだよ…)膣口に力が入り、ペニスの暴走を抑える。
快感の最後の扉が開かれようとしていた。

「あん♪ぁああ…」
「俺」がうめく。
堰を切ったように、精液が俺の中に押し入ってきた。その衝撃で最後の扉が全開する。

「あああ、ああ~~~ん!!」

俺は嬌声をあげ、快感の渦に呑み込まれていった…

 

電車の中で(3/3)

気がつくと、俺はベッドの上に寝ていた。
下半身を剥き出しにし、「俺」の精液と女の愛液にまみれさせている。手には手錠が填められていて、ようやく自分の肉体に戻った事に気が付いた。

傍らには制服の女子高生が転がっていた。今だ絶頂の余韻に身動きがとれないのだろう。
だからと言って、このまま放置しておく訳にもいかない。彼女が自由に動きだし、騒ぎたてれば、「俺」は「犯罪者」とされてしまうだろう。
(もう一度、彼女と入れ替わるか?)
少なくとも、このままこの部屋に彼女を置いておく訳にもいかない。俺は彼女になると、気だるげな体を起こした。
股間にはまだ「俺」の精液が溜まっている。シャワーでも浴びたいところだが、滴り落ちてくるものをティッシュで拭うだけにした。
脱ぎ取ったパンティとタイツを穿き、制服の乱れを直す。靴を履き、ベッドに転がっている「俺」を一瞥した。
「じゃあね♪」
とドアを開け外に出る。夜道を駅に向かい、入ってきた電車に乗った。

 

俺はいつの間にか自分の体に戻っていた。
起き上がり、手錠を外す。
電車の中で目覚めた彼女は、どんな反応をしたのだろうか?その場で騒ぎだしたか、電車の中である事に気付き自制したか?

それより気になるのは、入れ替わりが突然に戻ってしまった事だ。最初の時もそうだが、唐突に元の体に戻っていた。
彼女に騒がれるのを防ぐためであれば、ずっと入れ替わり続ける事も考えていた。が、俺の意思に反して入れ替わりが戻ってしまうとなると、それもできない。
…いや、戻る事ができない状態を作れば良いのでは?
たとえば、入れ替わった状態で「俺」が死んだら…

この先、俺には犯罪者として生きてゆく自信はない。
俺が抱えるリスクは、「俺」の死とともに俺自身も死んでしまうことだけだ。やってみる価値はある。

俺は再び手錠を掛けると、ガスの栓を開いた。
そのままベッドに横たわる。

そして、彼女との入れ替わりを念じた…

香里(1/6)

交差点の電信柱の脇に花束が置かれていた。
確か、数日前には無かったと記憶している。多分、その間に事故があったのだろう。
その花束はここで亡くなった人に捧げられたものに違いない。

「…あのぉ~」
微かな声に振り向くと、そこには今にも消えてしまいそうに影の薄い女の子が立っていた。
「…あたしの声、聞こえます?あたしの姿、見えますか?…」
と恨めしそうな目で俺を見ている。
(関わるな!!)
本能が告げていた。彼女は幽霊だ。多分、その花束が捧げられた当人に違いない。
…が、俺は彼女と目を合わせてしまった。

その途端、陽炎のように佇んでいた彼女の輪郭が、くっきりと現実帯びていた。
「良かった~♪あたしの事がわかる人に出会えて。あたし、工藤香里といいます。」
と恨めしそうな顔が、一瞬で満面の笑顔に変わっていた。
(カワイイ♪)と思わずときめいてしまった。
「あたし、気が付くとココにいて、それからどこへも行けなくなってしまったの。前を往く人に声を掛けても誰も知らんプリで、あたし、どうして良いかわからなくなってしまって…」
と泣きそうな顔になる。どうにも、彼女に黙ってこの場を離れる事はできそうになくなってしまった。
「あのぉ~、あたしの手を掴んで引っ張ってみてもらえませんか?」
と差し出された手を、思わず掴んでしまった。
ひんやりとした感触が伝わって来る。幽霊ではない、彼女の実体がそこにあるように感じられた。
「良いかい?」
と聞くと、彼女は大きく頷いた。

それほど力を入れた訳ではない。手を引くと彼女は一歩、俺に近づいた。
彼女の顔に笑顔が戻った。
「どこまで行けば良い?」
交差点から大分離れた所で彼女に聞いた。
「あっ、すみません。」と慌ててつないでいた手を離した。
「大丈夫みたいです。ありがとうございました。」
深々と頭を下げる。
「まあ、俺も大した事をした訳じゃない。じゃあな♪気を付けて帰るをだぞ。」
俺は彼女に手を振って背中を向けると、本来の目的地に向かって歩き始めた。

 

 

 

「…あのぉ~」

しばらくして、俺は再び彼女の声を聞いた。
振り向くと、いまだそこに彼女が立っていた。
「すみません。別に、後をついてきた訳じゃないんです。歩かなくても、貴方が動くと同じように動いてしまうんです。」
(あちゃーっ!!)
俺は心の中で叫んでいた。これって幽霊に憑かれたっていう状況ではないでしょうか!!
「ちなみに、俺はここに立っているから、俺から離れるように動いてみてくれないか?」
俺が言うと「あ、はい。」と素直に従おうとする。が、
「だめみたいです。さっきまでと同じようにどこにも行けません。」
と済まなそうに俺の顔を窺う。…仕方がないか…
「わかった。もう良いよ。こうなったからには、君が成仏できるよう協力してあげよう。」
「あのぉ、成仏って、あたしって死んじゃったんですか?」
「気づいてなかったのか?」
「あたしもオカシイとは思ってたんですけど。そうか、死んじゃったんだ…」
「何なら、お前ん家に行ってやろうか?線香の一本でもあげてあげるよ。」
「そんな…良いんですか?」
「まあ、暇だしね♪」

 

俺は彼女の住所を聞いた。

その家はひっそりとしていた。
工藤という表札。両親の名前に続いて香里の名前もあった。
チャイムを鳴らすと、廊下を歩いてくる気配がした。
ガチャリと扉が開く。
「どなた?」
と中年の女性が現れた。

「マ、ママ!!」
香里が叫ぶ。
が、その声は「俺」の口を突いて出た。
母親の顔が不審に歪む。
「あ、あたし…香里よ。」
俺の口からこぼれる声は「俺」のものではなかった。口調も声質も若い女の子そのものだった。
「ほ、本当に香里なの?」
そう言う母親の顔が、俺の目の前にある。確か、身長は俺の方が高い。先程まで彼女を見下ろしていた。
が、屈んでもいないのに、同じ高さに彼女の顔がある?!俺の背が一気に縮んだとでも言うのだろうか?
「とにかく、上がって頂戴。」と促され、玄関を上がる。
靴は何もしなくてもスッポリと抜け落ちた。服もぶかぶかになっている。動き辛い…と感じたそばからズボンの裾を踏み、バランスを崩す。
「キャッ!!」と叫んで俺は廊下に倒れてゆく…

 

香里(2/6)

どうやら、俺は気を失っていたようだ。
布団に寝かされているようだ。天井が見えた。視線を巡らして部屋の中を確認する。
片側は壁だった。男性アイドルの写真が何枚か貼られていた。
逆側には勉強机と大きな窓。窓にはレースのカーテンが掛かり、両脇に束ねられたカーテンはピンクの花柄だ。
机の上は片付けられていたが、パステル調の色彩の文房具が多いように見えた。
どう見ても、ここは女の子の部屋だ。つまり、香里の部屋なのだろう。

転んで気を失ったにしてはどこにも痛みは感じなかったので、起き上がってみることにした。
上体を起こすと、更に部屋の様子が解る。
壁に掛かったセーラー服は香里の通う学校のものであろう。床のカーペットの上には、愛らしいぬいぐるみが佇んでいた。
部屋の一角に鏡の付いたタンスがあった。
ベッドを降り、その鏡を覗き込んでみた。

ある程度、予想はしていた。
が、実際にその事実を目にして、動揺しないでいることはできないだろう。
鏡に写っていたのは、パジャマすがたの女の子…香里だった。

そこには「男」の俺の姿はどこにも存在していない。俺が目にした幽霊の香里の姿が、そこに実体化していた。
「俺」が手を上げれば、鏡の中の「香里」も手を上げる。いや、そんな確認をしなくとも、鏡の中の「香里」と同じパジャマを「俺」が着ているのだ。
視線を落とせば、俺の胸に膨らみが存在しているのが解る。股間に手を伸ばさずとも、そこに在るべきものが無くなっているのはハッキリしている。
どういう仕掛けなのかは解らないが、今の俺は「香里」そのものなのだ。

 
取りあえず、意識が戻ったことを母親に知らせるべきであろう。
が、パジャマ姿のままでこの部屋を出るのも不巧いと思う。
俺はタンスを開けると、Tシャツとジーンズのズボンを見つけて、それを着た。

「ごめんください。」
と居間の扉を開けた。
そこには香里の両親が待っていた。
「取りあえず、そこに座りなさい。」
と彼等の向かい側の椅子に座らされた。
「単刀直入に聞こう。君は何者なんだ?」
そう言う父親と香里の姿をした俺を、母親は交互に見ている。
「香里さんは亡くなっています。が、あの事故のあった交差点で、何もできずにずっと佇んでいました。彼女は自分の死を受け止められずにいました。」
俺は居間にある仏壇の脇に飾られた香里の写真を一瞥した。
「そして彼女は、彼女に気付いた俺に憑いてしまったようです。もともと俺にそういう体質があったかはわかりませんが、彼女とは波長のようなものが合ったのではないのでしょうか。」
「その姿になったのも、その所為だと言うのか?」
「俺には解りません。お母様の顔を見て、香里さんの感情が物凄く高ぶったのは感じました。自分の肉体が自分のものと感じられない感じがしていました。」
「今、香里は君の内に居ると言うのか?」
「たぶん…、今は気配が感じられませんが、彼女はいまだ成仏できていない筈です。」
「信じられない話だが、そう考えるしかないのだろう。香里が現れたら、私達と話をさせてもらえないだろうか?」
「俺には異存ありませんが、彼女がどうするかは彼女次第です。」
父親ははたして俺の話で納得できたのだろうか?彼がどう考えたかは俺の知る由もない。

「お話はよろしいですか?」
母親の声で滞っていた空気が攪拌された。
「香里は…貴方の名前は聞いていなかったけど、その姿でいる間は香里と呼ばせてね♪…香里はもう少しお部屋で休んでいなさいな。ママはご飯の支度をしていますから。勿論、香里の大好物ばかりを用意しますからね。」
俺は…と言うより、俺の内に居る香里が、一刻も早く父親の前から離れたがっていたようで、俺はせかされるように香里の部屋に戻っていった。

 
「ごめんネ♪あたし、パパが苦手なの。」
部屋に戻ると、香里が再び俺の肉体を支配し始めた。
机に座り、引き出しからスタンドミラーを取り出して俺の前に置いた。少しでも「俺」と会話をしている感じを出したかったのだろう。
俺は鏡の向こう側にいる香里の話を聞く格好になった。
「今のパパはママの再婚相手で、あたしの本当の父親ではないの。普段は威厳のある父親顔してるけど、やはり血の繋がりがない所為か、時々好色なオヤジ顔であたしを見ているの。」
と一方的にだが、彼女の話を聞いてやっていると、食事の準備が終わったのだろう、彼女を呼ぶ母親の声がした。
「はーい。今行くぅ♪」と答えると、鏡越しに「後はよろしくネ。」と彼女は消えてしまった。

 
出てきた料理はどれも美味しかった。香里の肉体になっている所為か、味覚も違って感じているのかも知れない。
嬉々として料理を出して来る母親とは対照的に、父親はテーブルの反対側で苦虫を潰したような顔をしながら、独り手酌でお酒を飲んでいた。
「もう食べられません。お母さんも席についてください。」
「香里ちゃん?ママって呼んでくれないの?」
俺はちらりと父親を見た。彼はプイと視線を背けている。
「マ、ママも座ってよ。ご飯が冷めちゃうでしょ?」
「そ、そうね♪」
とエプロンを外して母親も食べ始めた。
「ねえ、今日は一緒にお風呂入らない?」
見ると父親のギラついた視線が突き刺さってくる。
「え、遠慮させていただきます。姿は香里さんでも、俺は赤の他人ですから。第一、本体は若い男ですよ!!」
「また~、香里ちゃんは変なコト言って。」
「とにかく、ママとは入れません。独りで入らせてください。」
と言うと、彼女の顔が恨めしそうになる。交差点で見た香里の顔と重なるのは流石母娘。
俺はこの顔に弱いようだ。が、流されそうになる前に
「ママも良い加減にしておくんだ。」
との父親の言葉で、事なきを得たようだ。

 

香里(3/6)

「ふう~~♪」
と湯舟に浸かりリラックスしているのは香里だった。
「何でママと一緒に入らなかったの?」
風呂場にも鏡があった。鏡越しに香里が聞いてくる。
(香里の母親であっても、俺には赤の他人じゃないか。そんな女性の裸を見たり、ましてや触れ合うなんて…)
「なら、あたしは良いの?赤の他人の女の子の裸をこんな間近で見てるし♪」
(そ、それは不可効力だよ。君の想いが実体化しているんだ。俺に非はない!!)
「でも、男性なら興味はあるでしょう?貴方は女性の生の裸を見慣れているとは思えないものね♪」
(バ、バカを言うな!!)
「でも、今ならピチピチの胸を触り放題よ♪」
と香里は自分の胸を揉み上げた。
(あ、あはん?!)
何か感じてしまい、俺は変な喘ぎをあげてしまった。
「そっか。男性は経験する事ないもんね?ちょっとの刺激でも感じちゃうみたいね♪」
と胸に当てていた手が乳首を摘む。
(あひっ?!こ、これって…や、止めろ!!)
「だ~め。面白いから止めないもん♪」
鏡に写る香里の顔は、風呂でのぼせるのとは違った意味で赤く上気していた。
「やはり、ココよね♪」

彼女の指が股間に伸びてゆく。勿論、ソコには憤り勃ったペニスなど存在しない。
割れ目に指が這わされる。関節が曲げられると、指先がズブズブと肉壁の内に没してゆく。
俺は腹の中に異物が侵入するのを感じていた。
胸であれば、膨らんではいないまでも、肉体的に対応する部分が存在する。乳首にしてもそうだ。
が、股間となると様相は一変する。尻の穴と、かろうじて陰核がペニスと対応付けられるが、膣口より先は完全に未知の領域である。
膣内に侵入した指があちこちを刺激する。膣口が締まり指を圧し包む。
本来は指ではなく、男のペニスがそこに在るのだ。

俺は「男」に責められていた。
逞しいペニスが俺の膣を貫いている。
(あん、ああん♪)
俺は「女」の声で喘ぎ、彼の行為に応えている。
「香里。良いよ♪」
男も喘いでいる。
(ああ、先輩♪あたしも…)
俺は更に膣の奥へと先輩のペニスを送り込む。
先輩の先端が膣の奥、子宮口に当たっていた。
(先輩、来て♪先輩の熱いセーエキをあたしのナカに頂戴♪あたしはそれで先輩とヒトツになれるの!!)
「あ、ああ…香里…イクよ!!」
グピリと先輩のペニスが脈打ち、俺の膣に…子宮の中にまで、彼の精液が放たれていた。
(あ、あっ、ああ~~ん!!)
同時に俺は四肢を痙攣させるように身悶えると、快感とともに意識を失っていた…

 

 

「あたしのお胎には、先輩との新しい命が芽吹いていたの…」
あれは、香里の記憶を追体験したという事なのだろう。俺自身が男に抱かれるという事だけでも想像したくはない。
「でも、事故であたしと一緒にこの子も死んじゃったのかなぁ…」
少なくとも、男に貫かれ、自分から快感に喘いだり、嬌声を上げるなど…ましてや、女のようにイッてしまう筈などない!!
「もしかして、それがあたしが成仏できない理由なのかなぁ?」
たとえ、肉体が女のモノだとしても、俺の精神は「男」なのだ。この先、どんな事があろうとも、男に抱かれようと思うことなど、絶対にあり得ない。
「もう一度…もう一度、先輩に会って…抱いてもらえたら良いのかな?SEXして、もう一度妊娠しないといけないのかな?」

(って、ヲイ!!俺の体で男に抱かれる?!更には妊娠したいだと?)
「あたしが成仏するのを手伝ってくれるんじゃなかったの?それに、抱かれるって気持ち良いわよ。さっきも感じていたでしょ?」
(感じていたのはお前なんだろう?俺は単にお前の過去を追体験しただけだよ。)
「違うわ。その前の話。あたしが指でオナニー始めた時、貴方も感じていたのでしょう?あん、ああん♪って可愛い媚声も聞こえたわよ。」
(そ、それは不可効力だ!!)
「でも、あたしが成仏しないと、この姿のままなんでしょう?あたしとしては、ちゃんと結婚してママになりたいな♪」
(勝手にしろ!!)と俺はサジを投げてしまった。
この肉体は彼女の方が主導権が強いので、いくら俺が抵抗しても「先輩」に抱かれる事を阻止できるものではないのだ。

 

香里(4/6)

朝になり、香里が起き上がる。
パジャマを脱ぐと、ブラジャーを着け、タンスから取り出した服を着てゆく。女の子らしいコーディネートだ。
「お早う、ママ♪」
と台所に声を掛けたところで、肉体の主導権が俺に渡された。
居間には既に父親が起きて座っていた。
「無理に香里のふりをしなくても良い。私達も香里が死んだ事を受け止める必要があるからね。君の事は一夜の夢として片付けておきたい。」
再び彼の向かい側に座らされた。
「死んだ筈の人間が、この家に居る事をどうご近所に説明すればよいか…それに、君には君の生活もある筈だ。できれば、昼前には出ていってもらいたい。」
俺の奥で香里が息を呑むのを感じた。(けれど、これは仕方のないことなんだよ)と言ってやる。
「勿論、君のその体だ。服など必要なものは香里のものを持って行けば良い。足りないものがあれば送ってあげよう。しかし、私達ができる事はそこまでだ。」
「解っています。それでも十分過ぎるくらいです。」
俺は立ち上がると香里の部屋に戻っていった。

 

「これ…」
と母親から紙袋が渡された。
「貴方が来た時に着ていた服や靴が入っているわ。」
「ありがとうございます。」
俺は香里のブーツを履き、ぎゅうぎゅうに着替えなどを詰めたキャリーバックを引いて、香里の家を後にした。

行き先は「俺」のアパートである。
元のズボンから取り出した鍵を鍵穴に入れる。カチャリと鍵が外れ、ドアを開けた。
ムアッ!!
異臭が鼻を突く。
「こんなに臭かったことはないんだけど…」
ブーツを脱ぎ捨て、部屋に上がると窓を開放した。玄関のドアも開けてあるので、風は通る筈だった。
(あまり効果はないかもね。)
と香里
(これって「男」の匂いよ。部屋に染み付いているから簡単には消えないわね♪)
「自分の臭いには気付かないってやつかぁ。我慢するしかないんだね。」
と開けた窓とドアを閉める。

他人が見たら、どう思うだろう。男の部屋に荷物をもった女の子が独りぽつりと佇んでいる…
誰がその女の子が住人の男=本人であると想像できるだろうか?
「取り敢えず、荷物を片付けさせてね♪しばらくはこのままなんだから、貴方のタンスを借りるわよ。」
香里は肉体の主導権を奪い取ると、タンスの引き出しの中のものを空いていたダンボールに詰め込んでいった。
そして、空いているスペースに彼女が持ち込んできたモノを詰めてゆく…
(まさか、俺のタンスの引き出しにブラジャーやパンティが入るとは思わなかったよ。)
「そもそも、女の子の体になっている事から考えられないわよね。でも、こうして着られる服が用意できたのは幸運じゃないの?」
(確かに…この体で俺の服しかなかったら、どうにもならなかったろうな。)
俺の服の詰まったダンボールが部屋の隅に積み上がった。その分、女物の服が俺の部屋を占拠したという事なのだろう。
「机の上も良いわね?」
と俺の机に鏡が立てられ、アクセサリーと化粧品がその脇に並べられた。
「貴方も覚えておいた方が良いから♪」
と机に座ると、化粧品の名前をひとつひとつ確認し、やりかたを説明しながら化粧を始めた。
「家では素面だけど、外に出る時、特に先輩の前では恥ずかしい姿を見せられないからね♪」

一通り化粧が終わると外に出てゆく。
(これから「先輩」の所に?)
「今は食料の買い出しよ。さっき見たら、冷蔵庫には何も入ってないじゃない。先輩に会うのは明日ね。」
(いつもホカ弁かコンビニだからなァ…まさかとは思うが、俺に料理を…)
「女の子の嗜みは、みんな覚えてもらうわよ♪」

 

香里(5/6)

その日は体力と言うよりは精神的にくたくたになっていた。
風呂を出ると、パジャマを着るのもそこそこに布団に潜り込んでしまった。
「俺の匂い?」
大分慣れたが、布団にはこびりつくように臭いが残っていた。
(「男」の匂いは女の子をリラックスさせる成分が入ってるのよ。拒絶しないで、受け入れてみてごらんなさい♪)
香里のアドバイスに従い、大きく深呼吸して「俺」の匂いを吸い込んでみた…

ほかほかと体が暖かくなったような気がする。
力強い腕に囲われ、何物からも守ってくれる。全てを委ねてしまいたくなる…

俺は「男」に抱かれていた…

嫌な感じはしなかった。
「ぁあん♪」
首筋をくすぐられたような感じがして、思わず艶めかしい声をあげてしまった。
(乳首、勃ってるわよ♪)
言われて胸に手を伸ばす。が、敏感になった胸の先端はパジャマの生地に擦られて痛みを訴えてきた。
ボタンを外し、直接掌で触れてみる。確かに固く膨れていた。
指先で摘む。
「ああぁん♪」
快感に艶声が漏れる。
ジッと膣から染みでてくるものがある。濡れているのか?
(確かめてみたら♪)
片方の手が股間に伸びる。
指先がソレに触れた。
その指が奥へと向かう。
「あん♪ああぁん…」
(布団にはね♪)
香里が…
(男の人の匂いだけじゃなくてね…)
いや、香里が俺の体を動かしている訳ではない。
(フェロモンも沢山吸い込んでいるの。だから、それを嗅いだオンナは欲情せずにいられなくなるのよ♪)
俺自身が、快感を求めて指を動かしていた。
快感を与えるのも俺、快感に悶え、喘いでいるのも俺だった。
俺は「オンナ」の快感に飲み込まれていった…

 
朝になり、目覚めた時から香里が主導権を取っていた。
昨日買い出した食材でサラダを作り、簡素な朝食を摂った。
服を着て、化粧を済ませる。
(今日こそは先輩の所に?)
「ええ。とにかく会ってみないと始まらないから。」
(大丈夫か?)
「とは思うけど、万一の場合はあとを頼むわね。」
(あと…って、俺がそいつに抱かれるってことか?)
「ちゃんと妊娠してくれるとベストだけどね♪」
(無理を言うな!!)
「昨夜のように淫乱になれれば大丈夫よ♪」

俺は返す言葉を失っていた。
実際、オンナの快感に酔い痴れて3度はイッていたと記憶している。自分の指だけでこうなのだ。男に抱かれて俺がどう反応するかを考えただけでも…
(濡れちゃうのよね♪)
…香里の指摘に誤りはないのだが…

 
香里の言う「先輩」は、その日も以前と変わらずにテニスコートに立っていた。
周囲には香里と同じような可愛い娘が幾人も取り囲んでいる。
(モテるんだね?)
「でも、先輩はあたしを選んでくれたわ。君だけだよ♪って言ってデートしてくれたんだもの。」
「先輩」が本当に香里<だけ>を想っていたかは怪しいものだとは思いつつも、香里に気付かれないように「先輩」を値踏みしてみた。
確かにイケ面である。テレビに顔が出ていてもおかしくはない。テニスを始めスポーツ全般もそつなくこなすのだろう。
が、これだけ女の子達にもてはやされていて、天狗にならない程人間が出来ているようには見えない。

彼の練習時間が終わる。荷物をバッグに詰めて彼がクラブハウスに消えると、そこにいた女の子達も散り散りになっていった。
(彼を待たなくて良いのかい?)
「先輩は神出鬼没なの。いつの間にか出口を出てしまってるの。」
(テニスのあとに付き合ったりしなかったのか?)
「先輩の部屋で待っていることになってるの。その日はいつも携帯にメールが来るわ。」
そう言えば、女の子の一人が携帯を見ていたのを思い出す。その娘は最後まで居ずに、いつの間にかいなくなっていた。
(彼の住んでいる所はどこ?)
「っえ?ああ、こっちよ。」
と香里が歩きだした。そう遠い所ではない。
マンションの階段を上ってゆく。
「?」
と香里がドアの前で躊躇いを見せた。
(どうした?)
「先輩の名前じゃない…」
(引っ越したと言うことかな?かまわないからチャイムを鳴らしちゃいなよ。)
「うん。」と首を縦に振り、香里がボタンを押した。

「誰?」
ガチャリとドアが開いた。
「げっ!!香里?」
出てきた男は慌ててドアを閉めようとした。俺は咄嗟に足を挟み、隙間を残した。
男は「先輩」ではない。さえないゲームオタクのようだ。
(うそ…)
多分、隙間から部屋の中を見たことからだろう。
(先輩の部屋のままだったんだね?)
(うん…)
「先輩と香里の事について少々聞かせてもらえるわよね?」
男は幽霊でも見たかのように、顔面を蒼白にしていた。
「香里が死んだことは知っているようね♪安心しなさい。あたしは幽霊じゃないから。」
(あたしはここにいるけどね。)
香里も幾分かショックから回復が進んだようだ。
「ここは元々貴方の部屋だと言う事で宜しいかしら?」
部屋に上がり込み問い正すと、いろいろと解ってきた。
想像通り「先輩」は香里だけの相手をしていた訳ではなかった。ここと同じように、幾人かの男友達の部屋を自分の部屋と称して女の子を連れ込んでいたのだ。
香里の前にも数人の女の子とやっていたらしいが、香里が死んでからはこの部屋を使う事はなかったらしい。
(今も別の部屋で女の子を抱いているのかも知れないのね?)
それが確実である事は言わないでおく…

香里が妊娠していた事は、この男も知っていた。先輩は堕そうとしない香里を鬱っとおしいと思っていたようだ。
そこに、あの事故である。何の憂いもなくなり、先輩の女の子関係も元のペースに戻ったそうだ。

(まだ、先輩に抱かれたいと思ってる?)
(それは、もう無いわ。)
「この匂いって、貴方のものだったのね♪」
(な、何を言い出すんだよ?)
「僕ってそんなに臭い?」
「そう言う訳じゃないの。先輩に抱かれていた時、布団の匂いに違和感があったの。あたしは貴方の匂いの方が好きだわ♪」
「誘っているのか?」
(お、おい。待てよ。今、ここでこいつに抱かれるのかよ?)
「そうね♪貴方の事、気に入ったわ。貴方のなら…貴方のじゃなきゃ駄目なの♪」
と香里は男を布団に押し倒していた。

香里(6/6)

ズボンのベルトが外され、トランクスの中からペニスを引き出す。
「ああ♪この匂いよ。」とペニスを口に咥えた。
「お、おい…」と男も制止を試みるが、それも口先だけに終わる。
「あ、ああっ!!」
口の中で硬さを増したペニスが、男のうめきとともに大きく脈打った。

口の中に彼の放出した精液が溜まった。
ごくり
と音をたてて香里はそれを飲み込んでしまった。
「随分濃いいのね♪これなら大丈夫ね。」
(お、おい!!今、ここで妊娠しようとしてるのか?)
(あたしが成仏するには、赤ちゃんが必要なの!!)
(それにしても、付き合ってもない、こんな男の…)
「良いの!!あたしはこの男性に決めたのよ!!」

「ど、どうしたんだい?」
突然叫び声をあげた香里を不審に思ったか、男が声を掛けてきた。
「何でもないわ。それより、貴方もちゃんと姦りたいわよね?」
と香里は服を脱いでいった。
「キテ♪」
と布団の上に転がる。
「準備は出来ているわ。」
膝を立て、股を広げる。
「ナマでも大丈夫だから♪」

男がゆっくりと香里の上に伸し掛かっていった。
ペニスの先端が股間に触れ、ズズッと膣の中に入ってきた。
(な、何だコレ?指でヤるのとは全然違う。即にでもイッてしまいそうだ♪)
「ああん!!イイ~♪もっと、モット激しく…オネガイ♪」
香里の言葉に男が激しさを増す。
(ああ、もう何も考えられない…)
「ああ♪ああん、あああ~っ!!」
(ああ♪ああん、あああ~っ!!)
嬌声をあげているのが香里なのか、自分自身なのかもわからなくなっていた。
「あうっ!!」と男がうめく。
ペニスから精液が放たれ、膣を、子宮を満たしていった…

 

 

 
心地よいまどろみ…男の腕の中で俺は目覚めた。
香里の気配が感じられない。今の行為だけで満足し、成仏したのだろうか?
しかし、俺の姿は香里の…女の姿のままであった。

 

 
その後、あたしは妊娠している事がわかった。香里が望んでいた事が現実のものとなった。あたしはこの先も「女」として「母」として生きる覚悟をした。
勿論、あたし独りではやっていける訳もないが、この子の父親である彼も一緒に支援してくれると申し出てくれた。
あたしは今、分娩台の上にいる。
産まれ出ようとしているこの子が女の子だとわかった時、香里と名付けようと決めていた。
「さあ、いきんで!!」
助産婦さんの声に従う。
やがて、あたしの股間から赤ちゃんが産まれ落ちた。

香里は大きな声で泣いていた。

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