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2011年12月 9日 (金)

境界を越えて…(2/5)

 
「あん♪ああ~ん♪」
艶めかしい声で喘いでいるのは、俺自身だった。
AVでしか見た事がないような展開が、この寝室の中で繰り広げられている。そして、その主演のAV女優が俺自身だったのだ。
俺は俺の意図を離れて奴に抱かれていた。「男」としての意識が奴に抱かれる事を必死に拒絶しているのだが、奴に操られた体が易々と奴に抱かれる事を許していた。
「こうやって、女の子らしさを体で覚えてもらう事になるんだ♪」
奴のペニスが俺の体を貫いている。
嫌な筈なのに…
「あぁ、良い♪…ィ、イ、イクッ!イッちゃう~~!!」
俺は快感に激しく悶えていた。
頭の中が真っ白に塗り込められてゆく。本当に女の子としてイかされてしまう…
「あん、ああん。あ~~~~♪」
それは、俺自身があげた嬌声なのかも知れない。強烈な快感とともに意識を手放していた。

 

 

いまだに股の間に奴のペニスが挟まっているような気がする。
が、それが俺の思い過ごしである事は確かだ。奴は今、俺の隣の席で車のハンドルを握っている。
「どこまで行くんだ?」
「女の子らしさが足りなければ、モーテルに立ち寄りかな?」
「ど、どこまで行くのよ。」俺は慌てて言い直した。
女として抱かれ、イかされてしまう屈辱に較べれば、語尾をらしく変えるだけの対応くらいはしてやっても良い。
俺はそう割り切る事にした。
しかし「屈辱」が原動力かと言えば違うのだろう。それは、俺が「男」である事を正当化する方便にしか過ぎないと感じてもいた。
奴に抱かれ、イかされるのは嫌ではない。俺の体はそれを求めている。そして「俺」の精神までもがそれを求めてしまうようになる事を俺は恐れていた。
(素直におねだりしてしまった方が良いわよ♪)
俺の内から聞こえてくる「女の俺」の声に、俺は必死に抵抗していた。

「どこへって聞かれても、特に目的地を決めている訳じゃない。」
奴が俺の問いに答えてくれているようだ。
「お前に実験の内容について、言葉で説明するよりは実際に経験してもらった方が良いと思ってね。」
「経験…って、変な事にはならないんだろうな?…ならないわよね?」
「多分、言っても理解は難しいと思う。限界領域では、記憶の途絶が発生すると考えられている。領域外に出てしまっても、しばらくは行動が可能な設定になっているが、…」

突然、奴の言葉が途切れた。

「何っ?」
「たった今、領域内に戻った所だ。」
俺は気を失っていたのだろうか、窓の外の景色に違和感を感じた。
「進行方向が逆なんだ…」
「そう。今は帰路についている。君には、あの場所からUターンして戻って来るまでの記憶が失われている筈だ。」
「失われ…って、単に気を失っていただけじゃないのか?」
「君はかなりの間、意識を保っていたね。結局説明が二度手間になるが、領域内に戻った事で本体からの情報伝達が回復する。その際、義体の方は本体側で保有する最新情報で上書きされ

る事になる。」
「何でそんな事するの?」
「義体はあくまでも本体の複製だという事だ。緊急回避的に領域外でも行動できるようにしてあるが、それは本人の意思によるものではない。本人にとって関係のない記憶などあるだけ邪

魔だとは思わないかね?」
「だからって、記憶が消されるのは…」
「それは、現在の君の記憶ではないのだ。領域外に出たことで、君という存在が二つに分かれるのだ。君本来の存在は本体に依存するものであるから、もう一つの存在など無かったことに

しても何の問題もないだろう?」
奴の説明に釈然としないものを感じながらも、俺達はそのまま帰途についていた。

 
「これからが本題だ。」
俺達は領域境界にある広大な駐車場にいた。俺は車の中で最後の説明を受けていた。
「ここからは徒歩で境界を確認してもらう。状況は逐次携帯から連絡してくれ。」
「わかったわ。」
俺はそう言って車を降り、携帯からコールした。
「話ながらでも構わないわよね?」
「無論、違和感がない限りな♪それは最近の女の子の行動と照らし合わせても問題はない筈だ。」
「じゃあ行くわね。」
と俺は境界に向けて真っ直ぐに歩き始めた。

「って何?」
車からは大分離れたとは認識していた。
「何で前に車が見えるの?」
「ようやく領域内に戻ったな。」
「つまり、もう一人の俺…あたしが領域の外に出て、戻ってきたって事ね。」
「そう言う事だ。今度は少しジグザグに歩いてみてくれないか?」
「そんな事したら目立つんじゃない?」
「そこはお前の方で適当にフォローしてくれ。」
「何だよ。人使いが荒いわね!!」
そう応えつつも、俺は駐車中の車の間を縫うようにして、再び境界に向かっていった。

領域内に戻った瞬間なのだろう、急に見えている景色が変わる。動作は記憶が切り替わる前からの繋がっているので、その途端に転んだりはしなかったが、一瞬だけ判断に遅れがでる。
「これは結構辛いわよ。どこで領域を出たかが判らないから、戻るタイミングが掴めないのよね。」
「それにしては不自然な動きは見られないようだが?」
「これまでの経験から、おおよその境界の位置を想定してるのよ。多少ズレはあるけど、何とか対応できているわね。」
「その調子で頼む♪」
「って、何時間やらせるのよ?」
「義体は疲れを知らない筈だが?」
「精神的にね♪記憶の欠落が繰り返されるのが、こんなにも辛いとはね。」
「判った。今日はこのくらいで帰ろう。もう戻ってきても良いよ。」
「嫌。もう動きたくない。あたしの場所は判ってるんでしょ?迎えに来てよ♪」
「しょうがないなぁ。ウチのお姫様はワガママだから♪」
「お姫様って何よ!!」
俺は朦朧とした頭で、自分が無意識のうちに女の子のような喋り方をしていた事に気が付いた。
が、それ以上の事を考えるには精神的に疲れ過ぎていた。奴の車が近づき俺の前に止まると、俺は後席に転がり込み、そのまま意識を失っていた。

 

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