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2011年10月 1日 (土)

戦いの中で…(前)

人類が宇宙を飛び廻る時代になっても、戦争が根絶される事はなかった。
今も、宇宙のどこかで戦争が続けられている…

 
「γ-セクタ17。巡洋艦鈴風は航路を東に向けセクタ6の応援に回れ。」命令だけが次々と暗号解読装置から吐き出されてくる。
搭載艇のパイロットである加藤祐司は出撃の命令がいつ下るのかと操縦桿を握る手を汗でぐっしょりと濡らしていた。
「ユウちゃん♪もっと気楽に構えてないと続かないぞ。」対個人通話回線から聞こえてきたのは、搭載艇のパイロット仲間の西村幸造だった。
「作戦中だぞ。私語は…」
「硬いコト言うな。まだ無線封鎖はされてないんだから♪」幸造の楽天的な頭を羨ましく思いながらも、祐司は自分の事で精一杯になっていた。
「シュミレーション通り操れば問題無いって言われてるだろ?」
(けれど、今度は実戦なんだ…)祐司は言葉を返すこともできず、いまだ何も映していないモニターを見つめていた。

 
「接敵!!」
鈴風のブリッジが慌ただしくなった。
「セクタ6に僚艦の艦影なし。敵艦は無傷。」
「戦闘行為の痕跡もなしか?まんまと罠に填ってしまったようだな。」
「艦長、指示を!!」
「搭載艇を両舷に展開。できるだけ広範囲をカバーさせるんだ。本艦はこのまま、正面から突っ込む。」艦長の言葉にブリッジがざわめく。
「敵艦隊との距離を読み上げろ。」冷静な艦長の声にあたりが鎮まる。オペレータの声だけがブリッジに響く。「搭載艇の展開終了。」
「搭載艇には私から直接指示を出す。マイクを繋いでくれ。」
カチカチとリレーが接続を切り替えてゆく。「どうぞ」とのオペレータの声に艦長が口を開いた。
「我々は敵の用意した罠の中にいる。君達はどんな事をしてでも生き延びてくれ。」マイクを離し伝声管に「機関全速!!」と告げる。
「搭載艇は限界速度で戦闘宙域を離脱しろ。以降は各自の判断に任す。」そして
「艦内要員は緊急ワープに用意。シートベルトを確認、立ってる者は何でも良いからしっかりと体を支えていろ!!」と艦長の声が艦内に響き渡った。
オペレータの読み上げる彼我の距離が一気に短くなる。
「敵艦、砲撃開始!!」
「応戦は考えるな!!」
「8、5…」
「ワープ開始!!」
オペレータのカウント・ゼロは誰の耳にも届かなかった…

 

「ユウ…聞こえるか?」
祐司の耳に対個人通話回線からの幸造の声が届いていた。
「鈴風は?」祐司には何が起きたのかが皆目解らなかった。
「ワープが成功したかは俺にもわからん。だが、相当数の艦艇ん時空の歪みに落とし込んだのは間違いない。敵艦隊が無事なら、こんな所をうろついている俺達など、早々に掃き捨てられているよ。」
「こんなのシュミレーションには無かった…」
「お前は臨機応変という言葉も知らんのか?」
「言葉…は知ってるよ。けど…」
「ったく。何でこんな奴が前線に出て来れるんだ?」
「そんなコト、僕に言われても…」
「お前に言ってるんじゃない。単なる愚痴だ。気にするな♪」
「解った…」

しばらくの沈黙
祐司がぼーっとしている間にも、幸造は対策を考えていた。
「ユウ。MAPは読めるか?」
「それは習ってるから大丈夫だよ。」
「お前の現在位置は判るか?」
「セクタ6の3-8。」
「良かった。近いぞ。お前はそのまま現状を維持していろ。俺の方から接近する。」
「判った。待ってるよ♪」
幸造は搭載艇から武器・弾薬を排出し、身軽になると、一気に祐司の搭載艇に接近した。

 

「作戦はこうだ。」
搭載艇間を乗り移ってきた幸造が祐司に説明した。
「とにかく今は、戦線を離脱する事が先決だ。しかし、その後の事も考えなければいけない。」
艇の状態は祐司の艇の方が良い事が判った。幸造の艇と同様に武器・弾薬を投棄する。開いた空間に幸造の艇から食料・水・空気の備蓄を持ち込んだ。同様に燃料も移し込む。
「これで何とかなるだろう♪」
「でも、シュミレーションにない事ばかりだよ。大丈夫なの?」
「今現在の状況自体、想定外なんだ。何にでもハジメテというものがある。まあ、俺を信じてくれと言うしかないな♪」
「わかったよ。次は何をすれば良い?」
「行き先を決めて舵を切るってとこかな?ユウちゃんはドコに行きたい?」
「セ、セクター17じゃないの?本隊に合流するんでしょう?」
「あ?丸腰で戦場に戻ってどうすんだよ。艦長も言ったろ?もう戦場に戻って来るなと。」
「そ、それは拡大解釈し過ぎだ!!」
「まあまあ、興奮するなよ。とにかく、戦場からは離れる。そして味方のいる宙域で適当な大きさの船に掬ってもらう。それで良いな?」
「う、うん…」
祐司が頷いたのを確認して幸造は自動操縦装置をセットした。

 

「出来たよ♪」と晩メシのカップが幸造の手に渡された。
艇の中では暗黙のうちに作業分担が出来上がっていた。幸造が航法と機関を担当し、それ以外の細々した事を祐司がこなしてゆく。
「同じ戦時食餌でも、ユウちゃんが作ると美味しいんだろう?やっぱり愛情が隠し味ってやつ?」
「幸造は全てに於いていい加減なんじゃない?設定温度、復元時間をちゃんと守ってた?」
「そ、それを言うなよ。とにかく飯はパッパと済ませてヤりたい事したいじゃないか?」
「そんなんで僕まで変な物を食べさせられたらたまったものじゃない。当分は僕が食事当番するからね。」
「ああ、よろしく。ユウちゃんは良いお嫁さんになれるよ♪」
「ぼ、僕は男だ!!」
どうやら祐司の一番気にしているコトを突いてしまったようで、しばらくは何も返事が返って来なかった。

 

「今どこら辺なの?」
幸造の肩越しに祐司がMAPを覗き込んできた。
「セクタ77って、どうしてこんな辺境にいるの?」
「戦闘宙域からできるだけ離れて…」
「こんな所じゃ救援を待っても意味ないじゃないか。食料にも限界があるんだよ!!」
「判ってる。ちょっと実験がしたかったんだ。」
「何だよ、実験て?その為に救援も間に合わなくなるなんてヤダよ!!」
「大丈夫だ。実験が失敗した事が確認できた。艇は即に救援の居そうな場所に向かわせるよ。」
「失敗?良いのそれで?」
「ああ、実験を続ける条件が作りだせなくなってしまったからね♪」
幸造がどんな実験をしていたのかは祐司は知らなかったが、救援が得られそうな場所に向かう事になったので、とりあえずは一安心できたようだ。
一方、幸造の方は…
「参ったな。失敗するにしても俺としては最悪の結果じゃないのか?」と再び、自らの胸に手を当てた。
軽宇宙服の上からでは判別し辛いが、幸造の胸には微かな膨らみがあった。

パイロットシートの脇には、幸造が熱心に読んでいた本があった。タイトルには「限界環境に於ける肉体の変化」との記載があった。
彼等の種族は遠い昔、遺伝子改造が施されていた。宇宙空間に適応した強靭な肉体を造ると伴に、種としての存続を命題とした改造が施されていた。
それが「限界環境に於ける肉体の変化」であった。
今では殆ど忘れ去られた特質であった。そもそも限界環境を作る事が困難になっていたのだ。
ここで言う「限界環境」とは、孤立した空間に単独の性別の人間しか存在しない状況で、長期にわたり救援が得られない危機的な状態が発生した事だった。
幸造には、まさに実験に都合が良い状態だったのだ。
幸造は何事にも良く気が付き、甲斐甲斐しく働く祐司を限界環境に置く事で肉体変化…種を保存する為に、そのうちの一個体の性別を反転させる…で彼を女にし、同時に自分の「女」にしようと画策したのだった。

しかし、結果は幸造自らが女性化してしまったのだった。
肉体の変化は即に判った。伸縮性に乏しい軽宇宙服の中で乳房が成長すれば、当然のように胸が圧迫される。
それ以上に腰回りがきつくなったのは骨格自体が変化してしまったのだろう。性器の変化を直接確認した訳ではないが、それだけでも充分な判断要素であった。

 

 
「食事ができたよ♪」と祐司がやってきた。
「何だか良い香りがしない?」カップを手渡しながら祐司がそう言った。
「多分、それは俺の匂いだ。が、間違っても変な気を起こすなよな?」
幸造には自ら発っせられた「女」の匂い…フェロモンが祐司の「牡」を刺激していると判っていた。自分が「女」になった事を隠し通せたとしても、牡の本能で押し倒される可能性を否定できなかった。
本来であれば、宇宙船のような閉鎖空間では、常に微量ではあるが両性のフェロモンが散布されているため、性衝動の制御が可能であった。が、幸造が限界環境を造り出すため、武器・弾薬とともにフェロモンの発生装置も投棄していたのだ。
男だけしかいなかった閉鎖空間…そこは男性フェロモンにのみ満たされていた。そこに女性フェロモンを撒き散らす存在が現れた。
(はたして祐司に男の本能が抑え込めるのだろうか?)
幸造の心配はその一点となっていた。が、幸造は見落としていた。自分自身が男性フェロモンにあてられ、女の本能を露にしてしまうという事を…

「匂いが気になるならシャワーを浴びてきたら?これまで殆ど使ってないから、ゆっくり入っても大丈夫だよ♪」
食事が終わり「匂い」の話を思い出した祐司が提案してきた。
「まだしばらくは救援してもらえないのでしょ?今のうちにリフレッシュしておいた方が良いよ♪」
と半ば強引に幸造をシャワー室に送り込んだ。
ここまでされてはシャワーを浴びない訳にはいかないと、幸造は腹を括り軽宇宙服を脱ぎ始めた。
胸がはだける。そこには適度に育った乳房がこぼれ出た。ぷくりと飛び出した乳首に、これが自分の物だとは思えずにいたが、実際に触れてみると、そこが敏感な器官である事が判る…
「あふァ?!」
思わず女の喘ぎ声のようなものが幸造の口から漏れ出ていた。(これが女の肉体なんだ…)
そんな感想を漏らした幸造であったが、まだそれが序の口である事には気付かなかった。

きつくなった腰を抜けると、さっさと脚を抜いて軽宇宙服を脱ぎ去った。幸造の興味は、下着の…パンツの下の変化を確認する事に移っていた。
先ほどの胸先への刺激で下半身が熱を持ち始めていた。ムレムレと股間の湿度が高まっていたのだ。(濡れているのか?)幸造は一気にパンツを脱ぎ去った。
淡い茂みの向こうに縦に刻まれた深い溝があった。そこには見慣れた男性器は存在しなかった。幸造は恐る恐る、その肉の合わせ目に指を伸ばしていった。
(濡れてる?)指先にヌルッとした感触を捉えていた。
そのまま割れ目の中に指を押し込んでゆく。(本当に女になってしまった…)

グイッと更に指を押し込んだ時
「あがっ!!!!」
強烈な刺激が脳天を貫いていった。
「どうかした?」叫び声に反応して祐司が声を掛けてきた。
「な、何でもないぞ。」と物音を打ち消すようにシャワーの水を放った。
湯滴が膨らんだ胸に打ちつけられる。胸だけではなく、皮膚全体が刺激に敏感になっているようだ。幸造はしばらくそのまま、新鮮な感覚に身を任せていた。

シャワーの間にも幸造の女性化が進んだのか、再び自分の軽宇宙服を着ようとしたが腰が引っ掛かってどうにもならなかった。別サイズの宇宙服など用意されている訳もない。
シャワー室から出てしまえば、その身を隠す事などできない。せいぜいバスタオルで体を包む程度である。祐司には女の体を隠し通せるものではないと決心した。
「祐司。これから俺の実験の結果を見せてやる。が、何も言うなよ!!」
「あ、あぁ…」多分、あまり判っていないのだろうが、シャワー室の前で待っているのが判ると、幸造はバスタオルを女がするように体に巻き、扉を開けた。
「何も言うなよ。」
再度、念を押す。
「実験の失敗で、俺の体は女になってしまった。どんな実験をしていたかは、今は聞くな。問題はこの体に合う服がないと言う事だ。服が調達できるまでは、こんな格好で過ごす事になるが…」
幸造は祐司の瞳を見つめた。
「絶対に襲うなよ!!」

 
祐司は「問題ないよ」と涼しく答えた。
が、それを聞いた幸造は(俺のセミヌードを見て何も思わないなんて…)と、訳も判らずに独り憤慨していた。
その時の幸造は、自らも意識していなかったが、視線の先には祐司の股間があり、その反応を窺っていたのだった。

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