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2011年9月 5日 (月)

霧の中の館(3/5)

その日は珍しく雨が降っていた。
外に出る事もできず、努めて自分を保とうとしていた。が…

聞き慣れぬエンジンの音に意識が戻る。鏡の中の女はいつもより濃いめの化粧をしていた。服もシックなドレスに変わっていた。
玄関の扉を開けると、闇の中、館の前でUターンしようとする車があった。開けた扉から漏れ出す明かりに気付いたか、車を停め運転手が降りてきた。
「今からこの道を戻るのは危険です。もう夜も遅いですし、この館で一晩お休みになっていきませんか?」
録音されていたかのように彼に声を掛けていた。
「このような大きな家です。空いている部屋はいくつもありますから、気にせずにどうぞ。」
あの日の光景が思い出される。立場は逆転し、今度は男を部屋に案内していた。

「なあ♪」男が声を掛けてきた。「この館にはお姉さん独りきりなのかい?」前回とは違う展開が始まる。
「ずっとご無沙汰だったんじゃないのか?」とベッドに押し倒された。
「いつも、そんな化粧で男を誘っているのかい?」男の唇に口が塞がれる。更に舌が割り込んできては口の中で暴れまわる。
「むむん…」塞がれた口では言葉を発することもできない。拒絶する声も、胸を弄られ喘ぐ声も同じに聞こえる。
ようやく解放された口をついたのは「ぁぁ…」と声にもならなかった。
「こちらに蜘蛛の巣は張っていないかな?」と四つ這いにさせられ、スカートが捲られた。
何も抵抗できぬうちに下着が剥ぎ取られた。
「程良い濡れ具合かな?」胸を弄られただけで、股間を濡らしてしまっていた。

「ヒャン!!」
男の指が股間を撫で上げた途端、思わず叫んでいた。
「良い淫声(こえ)じゃないか♪」と、今度は指を突き立てた。
男には存在しない器官=膣=に異物が侵入してくるのを感じた。男であれば知る事のない感覚…それが「快感」として脳を揺さぶる。無意識が快感を求め、体を悶えさす。
「それでは♪」男は憤り勃ったペニスを膣に挿入してきた。
「ああん、ああ~~~!!」快感に嬌声をあげていた。
男が腰を震わす度に快感が押し寄せてくる。その波はどんどん高まり、幾度となく意識を手放してしまう…

 

 

ベッドから起き上がった。股間は男の精液にまみれていた。それは膣の中まで続く…
男の姿はなかった。
裸のまま、股間に精液を滴らせながら玄関に向かう。
車は無かった。男と共に館から消えていた。
単に、夜が明け明るくなってから立ち去っただけかも知れない。
もし、その車に乗せてもらえたなら、あのトンネルを抜けられたかも知れない。いや、車を使えば抜けられるのだ。前にここに居た女がそうしたように…

多分、残された男は同じように「女」にされ館に囚われるのだろう。新たな車が現れ、自由を手に入れられるまで…

 

 

雨が待ち遠しかった。
雨が降り出すと、ドレスに着替え、入念に化粧を始める。運転手をスムーズに館に連れ込む手順をおさらいする。
闇が訪れた。

エンジンの音が聞こえ、玄関に向かった。
「今からこの道を戻るのは危険です。もう夜も遅いですし、この館で一晩お休みになっていきませんか?」
車から降りてきた運転手に声を掛けた。
「このような大きな家です。空いている部屋はいくつもありますから、気にせずにどうぞ。」

「ありがとう。助かるわ♪」
運転手は女だった。
女相手に色仕掛けは通じない。が、女がシャワーを浴びている隙をつければ良い。
女を残し部屋を後にする。最後にもう一度姦りたかったと思うが、チャンスは今しかないのだ!!
シャワーの音を聞きながら車に向かう。
エンジンを掛け、館を離れる。トンネルまでの道は目を瞑ってでも行ける程、繰り返し通ったものだ。

車はあっという間にトンネルを抜けた。
そこがトンネルの向こう側である事は即にわかった。そのまま車を進めてゆく。
やがて霧が出て視界を塞ぐ。焦っても仕方がない。そこで車を止め、霧が晴れるのを待った。

夜明けと共に霧が晴れた。あたしはブレーキを外し車を進めた。
その背後に開いていた筈のトンネルの口が跡形もなく消えていたのにも気づかずに…

 

 

「あのォ…」
あたしは何故かその男性に声を掛けずにはいられなかった。
「もしかして、山の中でお会いしませんでした?」そう言ってから、自分が何を確認しようとしたのか不安になった。(今のあたしがあたし自身では無かったかも知れないなんて…)
「もしかして、君は僕だったヒト?」
「僕だった?」
「ああ、そうなんだ。記憶の混乱があるようだね。君の体を奪ってしまった事は済まないと思ってる。けど、君だってその娘の体を奪ったのだから、オアイコで良いんじゃないか?」

あたしはもっと詳しい事が聞きたくなり、彼の家についていった。彼の名前も知らない筈なのに、彼の家への道を覚えていた。
「デジャビュ?」思わず口にでる。
「違うよ。君自身の記憶だよ。言ったろ?君は僕だったんだ。」

アパートが見えた。その二階の奥に住んでいた…あたしのものでない記憶が蘇る。隠し場所から鍵を取り出し、ドアを開けた。
「お邪魔します?」
「お帰り♪かな?どっちに座る?椅子とベッド。」
あたしの足は勝手に部屋の奥に向かっていた。いつものようにベッドの上にあぐらをかき、背中を壁にもたれかす…
「あっ、イヤ!!」
思わず叫んでいた。何であぐらなんか…スカートを穿いてるのよ。それも男の人の前で!!パンツしっかり見られたわよね?
「気にするなと言っても無理だよね。だけど、君は僕…この間まで男だったんだ。自分の家に戻った事で記憶が戻ってきたんだと思う。」
「あ、あたしは生まれた時から女の子よ。小学校からの思い出だってちゃんとあるわ。」
「それは、その体の記憶だ。君自身の記憶じゃない。さあ、周りを見てみるんだ。記憶が蘇ってこないか?」
あたしは部屋の中を見渡した。あたしが知る筈のない…記憶が蘇ってきた。

 

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