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2011年9月 5日 (月)

霧の中の館(4/5)

再び目の前の男に視線が戻る。
そして…目の前に「僕」がいた…
「僕」が話し始める。
「どうだい?思い出したか?君のように肉体に同化して記憶が塗り替えられるのは珍しいケースのようだね。僕も昔の僕に会いに行ったが、彼も記憶は鮮明に残っていたし、その前の人も同じ感じらしい。もしかすると女性の体になった事が影響しているかも知れない。」
僕は自分の体を見直した。さっきまでは何の違和感もなかったが、改めて「男」の意識で見ると覿面に「女」である事が思い知らされる。
「ほら、鏡を見てみな♪」
渡された手鏡に今の自分の顔が写る…
「これが…ボク?」

「ハッハッハ!!」と彼が笑った。
「一度、本物が聞きたかったんだよな♪」
「本物?」
「知らなければパスしといてくれ。それより、滅多にできないケイケンをしてみたくないか?」
「滅多にできない?」
「誰だって一度は考えてみた事はあるんじゃないか?…自分自身とのSEX♪」
そう言ったのは目の前の「僕」…僕が「僕」=自分自身と?

その時、山の中での記憶がフラッシュバックした。この肉体にはSEXの記憶はなかったが、館で男に抱かれた記憶が蘇る。男に抱かれ、貫かれ、僕は快感に悶え、嬌声をあげ、膣に男の精液を注がれる度に幾度となくイッてしまったのだ。
蘇ってきた快感の記憶に、今の「女」の肉体が反応した。肉のあわせ目から、とろりと愛液が漏れだしてきた。
相手が誰であろうと、僕の肉体は「男」を欲していた。

「僕」が伸し掛かってきた。僕はベッドに組み敷かれた。彼の手がスカートの中に入り、ショーツを引き下ろす。
「自分に姦られると思うと興奮するだろ?」彼の指が股間を撫であげる。僕は快感に身を任せた。
「あん、ああぁん♪」媚声をあげる。
彼はズボンを下ろすと、一気に突っ込んできた。

「!!!!ッ」
あたしは処女であった事を忘れていた。
めくるめく快感を期待していたところに、猛烈な痛みが襲ってきた。
訳がわからないうちに彼が動きだす。あたしのナカでペニスが動いている。
知らない筈なのに、その快感を知っている。あたしは「誰」なの?
痛みがあたしを襲う。そんな筈じゃなかったって言っているのは誰?

痛みが引き金となって、あたしの記憶がぐちゃぐちゃに崩れてゆく。あたしは男で、僕は処女で…だけどオンナの快感は十分に知り尽くしている。
あの館に閉じ込められて、百年近く経っていたかしら?
ここがあたしの部屋?
僕を犯ってるのは誰?

 

僕の膣に精液が放たれていた。
少しも気もち良くない。彼だけが満足げにニタついている。

「シャワーを浴びさせて!!」と僕は浴室に飛び込んだ。
服を脱ぎ冷たいままのシャワーを股間にあてる。膣の中から奴の精液を洗い流そうと必死になっている。
何故?と自問する。
答えは即に出る。妊娠したくないからだ。僕の肉体は正常な成人女性なのだ。避妊を怠れば結果は目に見えて現れてくる。
そんな事も知らないで「最低」の男!!と奴を評価する。奴は「僕」だが、その中身は赤の他人である。そんな奴になど妊娠させられたくはない!!

 
シャワーを浴び終わり、部屋に戻ると奴はベッドの上で鼾をかいていた。
僕は奴を無視して引き出しからパンツとTシャツ・ジーパンを取り出した。無意識のうちに着てしまったが、今の僕にはぶかぶかな事に気付いた。
「僕の服」なのに…今の僕が「僕自身」でない事を思い知らされる。
脱いだ服を紙袋に詰め、僕は「僕の家」を後にしていた。ここはもう僕の家ではないのだと言い聞かせる。僕が帰る場所は…

 

「おはよう♪」
僕はいつものように女友達に声を掛けた。
僕は「あたし」としての日々を過ごしている。もう「僕」に戻る事はできないのだ。それに、「あたし」として生きる為の記憶は、この体が全て持っていた。
この生活を続ける事に何の問題もない。…ただ一つ、この体の本来の持ち主が現れた時、僕はどう対処すれば良いか?結論はいまもって出ていなかった。

女友達とショッピングを楽しむ。自分なりにファションセンスも上がってきたと思う。「あたし」ではなく、僕自身が自分を可愛らしく飾りたててゆく。
皆とお茶を飲みながら、他愛もないお喋りに夢中になる。最初は皆のお喋りを聞いていただけだったが、自然とお喋りの中に入っていた。
そこには、「あたし」ではなく「女」を満喫している僕がいた…

 
マンションの前でうろついている男がいた。身なりはしっかりして、顔も悪くはない
…と言うより、僕の好みに近かった。
「不審者」と片付けてしまうのが悪い気もする。が、彼が僕を見た瞬間…
僕は「その時」が来たのを感じた。

「貴方、あたしなのね?」
彼が首を縦に振る。
「入って。」
と僕は彼をマンションに入れていた。

 

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