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2011年9月 5日 (月)

人魚姫(4/4)

「ここだったね♪」
わたしはジンとともに深淵を覗き込んでいた。

ここは、わたしがジンに助けられた場所。そして、この海の底にはわたしが倒したモンスターと伴にわたしの剣…魔剣が眠っている。
魔剣はモンスターに対する最強の武器だ。が、魔剣はそれを振るう者に代償を求める。
わたしは魔剣と契約し、魔剣を振るう際にこの姿と恥ずかしい衣装に変わる事を受け入れた。わたしが今だこの姿を保っているという事は、今以て契約は有効である…という事だ。

 

稀に見ぬ強力なモンスターが出現した。
いくつもの街を破壊してきた。モンスターは普通の武器での攻撃では倒すことはできない。物理的にその行動を抑止できたとしても、一時的なものでしかないのだ。
モンスターを倒すには魔道具が必要であった。が、魔道具にも能力差があり、へたな魔道具ではこのモンスターに敵う筈もない。
対抗できるのはわたしの魔剣くらいだろう…

わたしが再び魔剣を手にした後、ジンとの関係を今まで通り続ける事は無理だと思う。
(自分の幸せを最優先するなんて、なんて自分勝手な女なんだろう)
自らを卑下したとて、事態が変わる訳でもなかった。

港町にもモンスターが近づいていた。
わたしはジンの船の上で見知った街並みが破壊されてゆくのを、優しくしてくれた街の人々が逃げ惑うのを見ていた。
それは「正義感」等でない事は十分に承知していた。しかし「あの剣が欲しい!!」との思いは確かなものだった。

 

覗き込んだ海底に、魔剣の輝きを認めたわたしは、そのまま海中に身を躍らせていた。
「魔剣よ、まだ契約は有効か?」
「然り」わたしの掌の中で魔剣が応える。
「キュア☆ムラマサ!!」わたしが叫ぶと、お馴染みね衣装がわたしを包んでいった。
「飛翔!!」
わたしの体は海面へと向かい、更に空中高くに飛びあがっていった。
「島」を発見した。
わたしはモンスターに向かって急降下してゆく。
「一気にいくわよ!! 我、契約に従い、汝、魔剣キュア☆ムラマサを振るう!!」凜とした声で誓文を唱える。
魔剣が輝きを増す。
「はーーーーっ!!」
わたしは真上からモンスターに魔剣を突き立てた…

 

 
「ジン…」
モンスターを倒した後、わたしは山の中に身を隠した。
モンスターは倒した。これで魔剣を鞘に納めれば、何事もなかったかのように「男」に戻れるのだ。
しかし「アリエル」としてジンと過ごした日々を思いだし、魔剣を納めるのを躊躇い続けている。

「おヌシ、男のクセに、そんなにあの男が好きになってしまったのかい?」魔剣が語り掛けてきた。
「わたし…俺…あたしはもう女なのよ。ジンに抱かれ、貫かれて悦んでるの。彼の為にお化粧し、着飾って…そして、それが一番の幸せだと感じているの。だから、男に戻ってしまったら、もう二度とあの幸せに触れられることはなくなってしまう!!」
「なら、納めずに隠したら良いのではないか?」
「隠す?」
「呪文を教えよう…」
魔剣に続けて呪文を唱える。魔剣はゆらめくようにして宙に溶けていった。同時にあたしの服も元に戻る。
「手に負えぬモンスターが現れた時、私を呼び出すが良い…」
魔剣はそう言い残した。

 

 
「アリエル~!!」
ジンは我先に船から飛び降りてきた。
「ごめんなさい。わがままを言って。」
「何も言うな。君は僕のところに戻ってきてくれた。それだけで良い♪」
彼の力強い腕に抱き締められる。
あたしの目から雫が落ちた。
…それは多分、うれし涙…

 

 

 
その島を中心として、現れるモンスターを退治する美女が度々目撃されている。
が、彼女の正体を知る者は誰もいなかった。

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コメント

最初の変身シーンに皮モノ要素もあるのがちょっとツボでしたね。

強力なダメージを受けたら皮膚が裂けて中身が・・・っていうのはさすがになさそうですけど。

GAT・すとらいく・黒 さん
コメントありがとう

「皮」というよりは「柔らかな装甲(甲冑)」の位置づけですけどね。
魔剣が折れたらどうなるかは…

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