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2011年9月 5日 (月)

人魚姫(1/4)

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※お詫び

話中で、名前を聞いて彼女を「人魚姫だ」とする記述があります。
本来であれば本家人魚姫の名前を使いたかったのですが、どうも名前を明示していないようです。
(最近の私の作品もなかなか人名が出てきませんネ;)
賛否両論あるとは思いますが、某著名アニメ作品から名前をいただくことにしました。
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剣を抜くと同時に、バサリと髪が広がる。

束ねていた髪が解かれた訳ではない。短く刈り込まれた俺の髪の毛が、一気に長く伸びていったのだ。
しかし、変化はそれだけでは済まなかった。
眩しい光に包まれた俺の体は空中高く吊り上げられ、その光の中で着ていた服が溶けるように消失した。
次の瞬間には、俺の肉体をピッシリと包み込む皮膚のような布が現れる。続いて様々な衣服の部分が宙空に現れては、その布の上に次々と装着されてゆくのだ。
手にはグローブが填まり、足にはブーツが履かされていた。

輝きが収まるとともに、俺は大地に降ろされる。
カツーン!!とブーツのかかとが高い音を発する。バランスを取るように腕が大きく回り、無意識のうちにキメポーズをとってしまっていた。

一気に恥ずかしさが俺を襲いだす。
太股が晒されているのでさえ気恥ずかしいのだが、腰の周りをヒラヒラと舞っている布は、どう見ても「スカート」にしか見えない。その下にはアンダースコートが穿かされ、お尻を被う所には可愛らしい襞が幾重にも重なっている。
下着ではない。見せる為に穿いていると言われても、男のスカートの中を見せるのに何の意味があるのだろうか?…厳密に言えば、今の俺は「男」とは言い難かった。
ヒラヒラの布は腰から肩に向かって俺の体を取り巻いているが、胸元だけは大きく開かれ、俺の素肌が晒されている。が、その胸には本来ありえない、大きな肉塊が現れていた。下半分は布に被われ、上半分の盛り上がりが晒されている。その二つの肉塊の間に、くっきりとセクシーな谷間が刻まれていた。

 
俺がこの魔剣を抜くと必ず起動する「変身」のプロセス…俺は魔剣を振るうにふさわしい姿に変えられてしまうのだった。
魔剣はいかつい「野郎」に振るわれるのを拒むのだ。契約により魔剣を振るう代償として、魔剣を振るっている間は美しい「女」の姿でいる事が要求されたのだ。

「我、契約に従い、汝、魔剣キュア☆ムラマサを振るう!!」俺は凜とした声で誓文を唱えた。
魔剣が輝きを増す。
「はーーーーっ!!」
俺はモンスターに駆け寄ると魔剣を一旋させた…

 

 

魔剣による姿変えは、魔剣を鞘に納めれば効果が消失するとは解っていた。…が、倒したモンスターと共に魔剣が断崖の遥か下で荒れ狂う海の底に落ちて行くとは思ってもみなかった。
モンスターの打撃にも耐えられる防御力、寸での所で躱すことのできる反射神経、なによりも宙空に浮き、自由に飛び回る事のできる飛翔能力。これらは全て魔剣がもたらしてくれる魔力だ。
魔剣と伴にあれば、この断崖に身を躍らせ、海中深くまでモンスターを追い続けただろう。しかし、今は宙に浮く力もなければ、海面に激突した衝撃を逸らす術もない。
変身を解く為には、地道に自らの手足を使ってこの断崖を降り下り、海中へと素潜りを慣行して魔剣を取り戻すしかないのだ。

俺は不安定なかかとの高いブーツを脱ぎ、断崖を降り始めた。
下から吹きあげてくる風がスカートを捲りあげ、尻を丸見えにさせるが、今は捲れるスカートを手で抑える訳にもいかない。(この恥ずかしさは一時のもの。魔剣が戻らなければ、俺は一生この恥ずかしい姿のままなのだ!!)と自らに言い聞かせ、羞恥に耐えながら断崖を降り進んでいった。

断崖の下には猫の額程の砂浜があった。
俺は息を整え、海に身を沈めようとした。が、体に纏う衣装に思い至った。最初に生成される皮膚のような衣服であれば何の問題もないのだが、他のひらひらの布切れは海中での抵抗となると考えられた。場合によっては、纏いつく生地に手足の自由が奪われ兼ねない。
幸いにもこの断崖の底までは第三者の目は届かないであろう。頑丈な生地が破れない事を確認した俺は、服を脱ぎ去り、全裸となった。
俺自身、始めて見る「女」の俺自身であった。服の上からでも確認できてはいたが、見事なプロポーションであった。

いつまでめ自分に見とれていられる訳でもない。俺は一気に海中に身を沈めていった。
女の肉体は男より耐久性に優れているようで、より長く、より深く潜る事ができた。
が、既に陽は傾き、海中に届く明かりも乏しくなってきていた。
それでも断崖の下に続く深い切れ込みに身を沈めてゆくと、キラリと刀身が輝いたように見えた。
目印を確認し、一旦海面に浮上する。肺の中に酸素を極限まで溜込め、目標に向かって一気に潜行してゆく。
先程確認した目印の先に、モンスターの輪郭が確認できた。
モンスターは完全に刺止めていた。身動きしない。そして、その腹に魔剣の輝き…

 
多分、俺は焦っていたのだろう。
突然に目の前が真っ暗になった。「何?」叫びそうになるのを必死に堪える。が、全身に気だるさが沸き起こり、息を止めていることが難しくなる。
口の中に海水が侵入してくるのを感じると同時に、俺は意識を失っていた。

 

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