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2011年9月 5日 (月)

EIENN(1/4)

 
私の肉体が朽ち果てようとしていた。

既に、目も耳も機能を失っている。私はこの部屋に据えられたカメラを通してモノを見、マイクロホンに集められた音を聞いている。
カメラのレンズは天井から「私」を見下ろしていた。
幾本もの管につながれ、辛うじて「生きて」いるだけだ。既に肺は潰れており、交換装置にて酸素を補給している。
心臓も自ら動く事はない。外部からの電気刺激により、規則正しく動かされている。

「私」は「生きている」と言えるのだろうか?

 
「じゃあ、死にたいの?」
どこからともなく、少女の声が聞こえた。
部屋のドアが開いた形跡はない。が、カメラの視野にその少女がゆっくりと姿を見せた。

ゴスロリと言うのだろうか?ワンピースのドレスは、黒に近い濃紺のビロードの生地に真っ白なレースで縁取られていた。エナメルの靴に、これもレースで飾られた白いショートソックス。スカートとの間の生足は健康的かつ官能的に輝いていた。
服と同じ布でできた小さな帽子の下には金色の巻毛が綿飴のように少女の頭部を覆っていた。
彼女の顔がゆっくりと天井のカメラを見上げた。
その顔は人形のように整っていた。白い肌に赤みのある頬。小さな唇に光が照り返る。
そして、大きな瞳の碧い輝きは何もかもが吸い込まれそうであった。

「死にたくないのなら、新しい身体をあげるわ。絶対に死なない優れ物よ。」
この少女は天使か悪魔なのだろうか?そのような事を言う者は人外の輩しかいない。
「死があるからこそ人間なんだ。別に死を望んでいる訳ではないが、少しでも死から遠ざかろうと足掻く事で、人は進化してきたんだ。」
「でも、不老不死を望む人は沢山いたわ。」
「それを望んだとしても、それに向かって努力を続けている限りは人間として存在していると言える。だが、それを実際に手に入れてしまった瞬間から、そいつは人外の物となるのだ。」
「ふ~ん。そういう考えもあるのかァ。まあ、あたしが人間じゃないって事は合ってるけどね♪」

「お前は何を求めてここに来た?」
悪魔であれば「魂」か?天使ならば何を望む?
「天使は神様の暇潰しに走り廻っているわね。何か面白いコトがあれば神様が喜ぶそうよ。」
「なら悪魔なのか?」
それ以前に彼女は私の発していない言葉に反応した?
「そうね♪あたしは貴方の心が読めるわ。無理に言葉にしなくても良いのよ。」
「ではもう一度聞く。お前は何を求めるのか?」

「あたしは悪魔でも天使でもないわ。どちらかと言えば神かな?」
「…」
「驚かないのね?」
「神を名乗る者は数多いる。ご託は良い。私の質問に答えなさい。」
「んもう、面白味がないんだから♪」
(= =)
「い、意識だけで睨まないでくれる?判ったから。答えますよぉ。あたしの目的は神様と同じで面白い事を見たいと言うこと。神様と違って、あたしには手下の天使がいないから、自分で面白くなる状況を作らなくちゃいけない訳!!判った?」

「判った。私に不死の身体を与える事で起きる様々な事象を観察して楽しみたいという事だな。」
「そ、そういう事よ♪」
「私は不死の身体などはいらない。だが、このままじっと死を待つのも考えものだ。しかし、死を望んでいる訳ではない。その身体が不死でなければ、お前の話に乗ってやろうじゃないか。」
「OK。不死でなければ良いのね♪ではこれをもって契約締結とします。明日の朝には新しい身体が手に入るから、それまで待っててね♪」
そう言って、一瞬のうちに彼女は私の視界から消えていた…

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