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2011年9月 5日 (月)

人魚姫(1/4)

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※お詫び

話中で、名前を聞いて彼女を「人魚姫だ」とする記述があります。
本来であれば本家人魚姫の名前を使いたかったのですが、どうも名前を明示していないようです。
(最近の私の作品もなかなか人名が出てきませんネ;)
賛否両論あるとは思いますが、某著名アニメ作品から名前をいただくことにしました。
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剣を抜くと同時に、バサリと髪が広がる。

束ねていた髪が解かれた訳ではない。短く刈り込まれた俺の髪の毛が、一気に長く伸びていったのだ。
しかし、変化はそれだけでは済まなかった。
眩しい光に包まれた俺の体は空中高く吊り上げられ、その光の中で着ていた服が溶けるように消失した。
次の瞬間には、俺の肉体をピッシリと包み込む皮膚のような布が現れる。続いて様々な衣服の部分が宙空に現れては、その布の上に次々と装着されてゆくのだ。
手にはグローブが填まり、足にはブーツが履かされていた。

輝きが収まるとともに、俺は大地に降ろされる。
カツーン!!とブーツのかかとが高い音を発する。バランスを取るように腕が大きく回り、無意識のうちにキメポーズをとってしまっていた。

一気に恥ずかしさが俺を襲いだす。
太股が晒されているのでさえ気恥ずかしいのだが、腰の周りをヒラヒラと舞っている布は、どう見ても「スカート」にしか見えない。その下にはアンダースコートが穿かされ、お尻を被う所には可愛らしい襞が幾重にも重なっている。
下着ではない。見せる為に穿いていると言われても、男のスカートの中を見せるのに何の意味があるのだろうか?…厳密に言えば、今の俺は「男」とは言い難かった。
ヒラヒラの布は腰から肩に向かって俺の体を取り巻いているが、胸元だけは大きく開かれ、俺の素肌が晒されている。が、その胸には本来ありえない、大きな肉塊が現れていた。下半分は布に被われ、上半分の盛り上がりが晒されている。その二つの肉塊の間に、くっきりとセクシーな谷間が刻まれていた。

 
俺がこの魔剣を抜くと必ず起動する「変身」のプロセス…俺は魔剣を振るうにふさわしい姿に変えられてしまうのだった。
魔剣はいかつい「野郎」に振るわれるのを拒むのだ。契約により魔剣を振るう代償として、魔剣を振るっている間は美しい「女」の姿でいる事が要求されたのだ。

「我、契約に従い、汝、魔剣キュア☆ムラマサを振るう!!」俺は凜とした声で誓文を唱えた。
魔剣が輝きを増す。
「はーーーーっ!!」
俺はモンスターに駆け寄ると魔剣を一旋させた…

 

 

魔剣による姿変えは、魔剣を鞘に納めれば効果が消失するとは解っていた。…が、倒したモンスターと共に魔剣が断崖の遥か下で荒れ狂う海の底に落ちて行くとは思ってもみなかった。
モンスターの打撃にも耐えられる防御力、寸での所で躱すことのできる反射神経、なによりも宙空に浮き、自由に飛び回る事のできる飛翔能力。これらは全て魔剣がもたらしてくれる魔力だ。
魔剣と伴にあれば、この断崖に身を躍らせ、海中深くまでモンスターを追い続けただろう。しかし、今は宙に浮く力もなければ、海面に激突した衝撃を逸らす術もない。
変身を解く為には、地道に自らの手足を使ってこの断崖を降り下り、海中へと素潜りを慣行して魔剣を取り戻すしかないのだ。

俺は不安定なかかとの高いブーツを脱ぎ、断崖を降り始めた。
下から吹きあげてくる風がスカートを捲りあげ、尻を丸見えにさせるが、今は捲れるスカートを手で抑える訳にもいかない。(この恥ずかしさは一時のもの。魔剣が戻らなければ、俺は一生この恥ずかしい姿のままなのだ!!)と自らに言い聞かせ、羞恥に耐えながら断崖を降り進んでいった。

断崖の下には猫の額程の砂浜があった。
俺は息を整え、海に身を沈めようとした。が、体に纏う衣装に思い至った。最初に生成される皮膚のような衣服であれば何の問題もないのだが、他のひらひらの布切れは海中での抵抗となると考えられた。場合によっては、纏いつく生地に手足の自由が奪われ兼ねない。
幸いにもこの断崖の底までは第三者の目は届かないであろう。頑丈な生地が破れない事を確認した俺は、服を脱ぎ去り、全裸となった。
俺自身、始めて見る「女」の俺自身であった。服の上からでも確認できてはいたが、見事なプロポーションであった。

いつまでめ自分に見とれていられる訳でもない。俺は一気に海中に身を沈めていった。
女の肉体は男より耐久性に優れているようで、より長く、より深く潜る事ができた。
が、既に陽は傾き、海中に届く明かりも乏しくなってきていた。
それでも断崖の下に続く深い切れ込みに身を沈めてゆくと、キラリと刀身が輝いたように見えた。
目印を確認し、一旦海面に浮上する。肺の中に酸素を極限まで溜込め、目標に向かって一気に潜行してゆく。
先程確認した目印の先に、モンスターの輪郭が確認できた。
モンスターは完全に刺止めていた。身動きしない。そして、その腹に魔剣の輝き…

 
多分、俺は焦っていたのだろう。
突然に目の前が真っ暗になった。「何?」叫びそうになるのを必死に堪える。が、全身に気だるさが沸き起こり、息を止めていることが難しくなる。
口の中に海水が侵入してくるのを感じると同時に、俺は意識を失っていた。

 

人魚姫(2/4)

 
板が軋む音がした。
波が壁にぶつかる音もする。俺が寝かされているベッドが、部屋全体が、ゆったりと揺れていた。
多分、ここは船の中なのだろう。カーテンが掛かり窓の外は確認できないが、その先に海原が広がっている事は容易に想像がついた。

「旦那様、人魚姫さまがお目覚めになりました。」老女の声が伝声管を振るわしていた。
しばらくし、ミシミシと木製の階段を降りてくる音がした。ドアが開き、精悍な若者が姿を見せた。
「姫、声を出す事はできますか?」
俺は変身後の自分の容姿を理解していた。確かに、目の前の好青年と、この俺のツーショットは童話に出てくる王子と人魚姫のシチュエーションそのものだった。
「助けていただいたのですね。ありがとうございます。でも、この脚は元からのもの。魔女の薬は必要ありません。」
「そうか…ロマンチックな展開を期待していたんだがな?」
「ついでに付け加えておきますが、貴方をお見掛けしたのも初めてです。恋こがれてこの船に近づいた訳ではありません。」
「そ、そうか…」と彼は残念そうな顔をした。本当に女の俺と付き合う気でいたようだ。
「では、改めて君の名を聞かせてはもらえないだろうか?僕はこの船の船主兼船長のジン=ダ=ドレイク。王子ではないが、伯爵家の嫡男だ。」
「わたしは…」俺はどう答えるべきか迷った。魔剣もない今、俺の正体を言っても信じてもらえる筈もない。
「わたしの名はアリエル…です。」
「やはり、君は人魚姫だったんだな♪ようこそ。この船に歓迎しよう。」
「あ、ありがとうございます。」と返事をした。まあ、最後は泡と消える人魚姫でも良いか…何れにしろ、このアリエルという女は存在しないのだ。

「そろそろ、」と老女が割って入った。
「そろそろ、お食事のお時間になります。姫さまを食堂にお連れするのでしたら、お着替えが必要です。殿方は退散願えないでしょうか?」
老女の言葉に「おう、そうだった。」とジンは慌てて部屋を後にした。部屋に残されたのは老女と俺…
俺はようやく自分の姿に気が回った。俺は薄手の寝間着を着せられていた。今にも乳首が透けて見えそうなセクシーなものだった。
いくら俺でもこの服のまま食事はできないとは思った。が、老女が用意したのは古風を絵に描いたようなドレスだった。
コルセットでこれでもかと胴回りを締め付けられては、食事を腹に送り込むのは不可能ではないかと思える程だった。

髪を結いあげられ、髪飾りが填められた。顔には化粧が施され、様々なアクセサリーで飾りたてられた。
履かされた靴は「変身」で履かされるブーツよりも更にかかとが高く、船の揺れも加わり、流石の俺もまともに立つ事さえできなかった。

老女に支えられて食堂に入っていった。
ずらりと並んでいるのは船の乗組員であり、ドレイク伯家の家臣なのであろう。好奇の目を向けながらも静かにジンの言葉を待っていた。
「皆も知っていると思うが、彼女が本日より本船の客人となったアリエル姫だ。」と皆の視線が俺に集まる。
「わ、わたしは姫なんかではありません。」俺が彼に向かいそう言うと
「良いんじゃよ。若がそうおっしゃったんじゃ。この船の上では、あんたはお姫さまじゃ。そう成りきれば、ゆったりくつろげる筈じゃ。」近くに座る最長老のような男がそう言った。
「この船に乗っている間だけでも、王子とお姫さまでメルヘンの世界に浸っていなさいな。」

「さあ、アリエル♪お席にどうぞ。」とジンが隣の席に俺を座らせた。乾杯が唱えられ、食事が始まった。
流石に海の男達である。テーブルの上の食材は、あっと言う間に彼等の胃袋に消えていった。
「どうした?口に合わなかったか?」と俺の目の前にだけ残った食材を見てジンが言う。
コルセットの締め付けで思うように食べれないのだが、そう言う訳にもいくまい。
「女性には少し量が多いようですね。」と答え、ようやく一杯のスープを飲み干した。
「わたしには食べきれませんので、皆さんでお分けしていただけませんか?」実際、スープだけで俺の腹は満たされていたのだ。
「勿体ない。姫のものを下賎な輩に食わせるなど…僕が全部いただきます。」とジンは言葉通りに全てを彼の胃の中に送り込んでしまった。
その姿を、俺は羨ましく見ていた筈なのに、いつしか可愛く見えてしまっていた。
「やはり君には笑顔が似合う。君の過去について詮索する気はない。この船にいる間は皆の「姫」でいてもらいたい。」
彼の熱い眼差しに、俺の心臓が激しく動悸していた。
「か、考えておきます。」と、俺は席を立つと部屋に向かった。既に乗組員達は仕事に戻っており、ジンは唯一人だけポツリと食堂に残されていた。

 

 
何故、こんなにも女物の服が次から次へと出てくるのだろうか?
俺は着せ替え人形よろしく、様々な…それも俺の「女らしさ」を際立たせるような服ばかり、着させられていた。
「どうだ?船の生活は慣れたかな♪」船の揺れに足を取られそうになった俺をジンが抱き止めてくれる。
「ええ♪海の中程ではないにしろ、快適に過ごせておりますわ。」チャイナドレスに身を包んだ俺は半身をジンに委ねて、彼に笑顔を見せた。
その光景は絵本の挿絵のよう…俺は、王子に恋する人魚姫という役どころに、どんどん填まり込んでいっている気がしていた。

「島が見えました!!」伝声管から見張りの声が届いた。
ブリッジが慌ただしくなる。俺はキビキビと指示を出すジンの横顔をうっとりと眺めていた。
「どうした?僕のコト惚れ直したか♪」彼が俺の顔を正面から覗き込んでいた。
ドキリと心臓が脈動する。
「わたしは…わたしは…」次の言葉が出てこない。確かに、わたしはジンに恋する乙女…それは単なる「設定」だった筈なのに…

本気になっちゃった?

「行こうか?」とジンに促される。
船は港に着いていた。ジンとともに甲板に出ると、桟橋に向かってタラップが下ろされていた。
「たまには揺れないベッドで寝かせてあげたいんだ♪」

港街をジンにエスコートされてゆく。初めてジンの船の乗組員以外の目に、今の自分の姿が晒されている。
「どこか変?」好奇の視線にジンに尋ねた。
「皆が見ているのは、君が美しいからさ。それに僕との美男美女のカップルなんて、滅多に見られるモノじゃないからね♪」

確かに好奇の視線ではあったが、それらは皆好意的なものであった。街にたむろする野郎ばかりではなく、店のカウンターから覗いている女性店員など、男女にかかわらず同じような暖かな視線を送ってきていた。
「宿に向かう前に、ちょっと寄って良いかな?」
「ええ。」と答えると、一軒のブティックに連れ込まれた。
大分慣れてしまった着せ替え人形状態を耐え抜くと、街で多く見かけられたカラフルでゆったりとしたドレスに着替えさせられていた。
「南の島の女性達の正装でもあるんだ。」と、生花が髪に差し込まれた。
「お似合いですよ。」と店員。これをどうぞと、生花のレイを首に掛けてくれた。
ジンも船上の衣装から地元の男性達と同じような格好になっていた。

衣服が街に溶け込んだ所為か、好奇の視線は少なくなったようだ。
それで気が緩んだのか、続いて誘われたレストランで食事とともに飲んだアルコールが早々に廻ってしまっていた。
ジンに抱き抱えられて宿に連れられてきていた。そのままベッドに寝かされる。
「おやすみ♪」とキスされた… そのまま深い眠りに落ちていった。

 

人魚姫(3/4)

大地の上で寝たのは幾日ぶりだったろうか?その時の俺は「男」だった…
モンスターと戦い、魔剣と離れ離れになり、ジンの船に助けられ…

と、物思いに耽っていた俺は、ようやく隣で寝息をたてている男の存在に気づいた。
そう…「隣」だ。一つのベッドに肌を触れ合うようにして寝ている男がいた。
(男同士で寝てもな…)との考えを、俺は一瞬後に改めた。
今の俺は「女」だったのだ。だから、男と女が一つのベッドに寝ているという事は…
俺は慌てて起き上がった。隣で寝ているジンは全裸であったが、俺は昨夜の服を着たままだった。
不自然な乱れもなく着ていたという事は、ジンは俺に手を出さなかったという事か?
(こんなイイ女を前にして、あんた不能なの?)と怒りのようなものがこみ上げていた。

俺の目には全裸のジンが映っている。俺が起きた時に毛布がはだけ、彼の全てが晒されていた。
その股間に俺の視線が止まる。
彼が不能でない事は良く解った。これだけ立派なモノを持っているのだ。これまで幾人の女を昇天させてきたのだろう。
俺の中に嫉妬の炎が立ち上がったのを感じた。…男として彼に嫉妬したのか、女として彼に抱かれた女に嫉妬したのか…
俺は彼のモノに顔を近づけていた。

目の前に聳え勃っている。彼のペニス。独特な香りが俺を包み込んだ。
体が…下腹部が熱くなる。汗が湧き…股間が潤ってゆく。
俺は何を考えているのか?…いや、何も考える事などできはしない…本能が俺の肉体を支配する。
目の前にあるのは…愛しい彼自身…そして…あたしはオ・ン・ナ♪

「ん、んん…」ジンがうめいていた。
あたしは一所懸命に口に咥えた彼に刺激を与え続けた。
「アリエル?」彼があたしの名を呼ぶ。あたしは動きを止め、彼を見つめた。
「アリエル。よかったら、僕も君を気持ち良くさせてあげたい。」

あたしは一旦彼から離れて着ているものを全て脱いでいった。
再びベッドに戻ると、あたしはジンに組み伏せられた。嫌ではなかった。あたしの濡れた股間がジンを待っている。
「アリエル♪」ジンが声を掛け、あたしが頷く。ジンの腰がゆっくりとあたしの上に
降りてくる。
彼の先端が触れ………中に入ってきた……

 

 

 

お、俺は…
俺は何をしていたのか??
いまだ痛みを響かせる股間は何をも否定できない。俺は「女」としてジンに抱かれていたのだ!!
が、そこには何の嫌悪感も存在しなかった。彼に抱かれた「悦び」だけが俺を…あたしを支配していた。
俺は「男」であった事を失い始めていた。既にその多くを失っているのかも知れない。
その失われた箇所が「女」で満たされてゆく。あたしを「女」として完成されたものになるのに、そう時間は掛からないと思う。
今も鏡に向かい、ごく自然に化粧を施している。彼が好むと思われる女の顔を造っている。
何故そうしているのか?自分でもわからない…

いや、答えは明白だ。
それは、俺が…あたしが彼を愛しているからだ。

 
人魚姫は「声」を失う事で王子様の愛を手に入れようとした。
俺は…あたしは「男」を失う事で王子様=ジンの愛を手に入れた。
(ああ、ジンはもう一度あたしを抱いてくれるかしら?)
あたしはジンの為にお化粧し、愛らしい服に身を包む…

「お待たせしました♪」あたしが身支度を整え終わり、ジンの前に立った。
「女性は支度に時間が掛かるものだ。何とも思っていないよ。それよりも、僕の為に綺麗になろうとしてくれているのだろう?ありがとう。そして可愛いよ♪」
ああ、心臓が爆発してしまいそうだ。まともに彼の顔を見る事ができない…
彼の腕がぎゅっとあたしを絞めつける。
そして、彼の顔が近づき…あたしが目を閉じると、唇が重ねられ、濃厚なキスが始まる…

ああ、シアワセ♪

 

人魚姫(4/4)

「ここだったね♪」
わたしはジンとともに深淵を覗き込んでいた。

ここは、わたしがジンに助けられた場所。そして、この海の底にはわたしが倒したモンスターと伴にわたしの剣…魔剣が眠っている。
魔剣はモンスターに対する最強の武器だ。が、魔剣はそれを振るう者に代償を求める。
わたしは魔剣と契約し、魔剣を振るう際にこの姿と恥ずかしい衣装に変わる事を受け入れた。わたしが今だこの姿を保っているという事は、今以て契約は有効である…という事だ。

 

稀に見ぬ強力なモンスターが出現した。
いくつもの街を破壊してきた。モンスターは普通の武器での攻撃では倒すことはできない。物理的にその行動を抑止できたとしても、一時的なものでしかないのだ。
モンスターを倒すには魔道具が必要であった。が、魔道具にも能力差があり、へたな魔道具ではこのモンスターに敵う筈もない。
対抗できるのはわたしの魔剣くらいだろう…

わたしが再び魔剣を手にした後、ジンとの関係を今まで通り続ける事は無理だと思う。
(自分の幸せを最優先するなんて、なんて自分勝手な女なんだろう)
自らを卑下したとて、事態が変わる訳でもなかった。

港町にもモンスターが近づいていた。
わたしはジンの船の上で見知った街並みが破壊されてゆくのを、優しくしてくれた街の人々が逃げ惑うのを見ていた。
それは「正義感」等でない事は十分に承知していた。しかし「あの剣が欲しい!!」との思いは確かなものだった。

 

覗き込んだ海底に、魔剣の輝きを認めたわたしは、そのまま海中に身を躍らせていた。
「魔剣よ、まだ契約は有効か?」
「然り」わたしの掌の中で魔剣が応える。
「キュア☆ムラマサ!!」わたしが叫ぶと、お馴染みね衣装がわたしを包んでいった。
「飛翔!!」
わたしの体は海面へと向かい、更に空中高くに飛びあがっていった。
「島」を発見した。
わたしはモンスターに向かって急降下してゆく。
「一気にいくわよ!! 我、契約に従い、汝、魔剣キュア☆ムラマサを振るう!!」凜とした声で誓文を唱える。
魔剣が輝きを増す。
「はーーーーっ!!」
わたしは真上からモンスターに魔剣を突き立てた…

 

 
「ジン…」
モンスターを倒した後、わたしは山の中に身を隠した。
モンスターは倒した。これで魔剣を鞘に納めれば、何事もなかったかのように「男」に戻れるのだ。
しかし「アリエル」としてジンと過ごした日々を思いだし、魔剣を納めるのを躊躇い続けている。

「おヌシ、男のクセに、そんなにあの男が好きになってしまったのかい?」魔剣が語り掛けてきた。
「わたし…俺…あたしはもう女なのよ。ジンに抱かれ、貫かれて悦んでるの。彼の為にお化粧し、着飾って…そして、それが一番の幸せだと感じているの。だから、男に戻ってしまったら、もう二度とあの幸せに触れられることはなくなってしまう!!」
「なら、納めずに隠したら良いのではないか?」
「隠す?」
「呪文を教えよう…」
魔剣に続けて呪文を唱える。魔剣はゆらめくようにして宙に溶けていった。同時にあたしの服も元に戻る。
「手に負えぬモンスターが現れた時、私を呼び出すが良い…」
魔剣はそう言い残した。

 

 
「アリエル~!!」
ジンは我先に船から飛び降りてきた。
「ごめんなさい。わがままを言って。」
「何も言うな。君は僕のところに戻ってきてくれた。それだけで良い♪」
彼の力強い腕に抱き締められる。
あたしの目から雫が落ちた。
…それは多分、うれし涙…

 

 

 
その島を中心として、現れるモンスターを退治する美女が度々目撃されている。
が、彼女の正体を知る者は誰もいなかった。

霧の中の館(1/5)

どこで道を間違えたのだろう?
走っていた道は、どんどん山奥に分け入ってゆくようである。何故かカーナビは一向に現在位置を表示してくれない。
いつしか宵闇が訪れる。街路灯もなく、ガードレールもまばらな道をヘッドライトだけを頼りに進んでゆく。

(戻ろう)
と思った時には、既にUターン可能な場所がなくなっていた。この闇の中でバックを続けるのは自殺行為の何物でもない。
更に雨も降り始め、辺りは完全に闇に閉ざされてしまった。


木立の合間に明かりが見えた。
人家があるのか?
ゆっくりと車を進めると、道はその明かりに向かって続いているようだった。

その館の前には車をUターンさせられるスペースがあった。ここで向きを変え、来た道を戻れば良い。
幸いにも、雨は止んでいる。車の向きを変えるために空きスペースの最奥に進め、ギアをバックに入れ替えるため、一旦停止した。

その時、玄関の扉が開き、光が漏れてきた。
その光の中にロングスカートを穿いた女性のシルエットが浮かんだ。慌ててギアをニュートラルに入れ、ブレーキを掛けると車の外に飛び出た。
「すみません。」と玄関の女性に声を掛けた。
「道を間違えたようで、ここでUターンさせてもらっています。」深々と頭を下げた。
「それは構いませんが…」優しそうな中年女性の声だった。
「今からこの道を戻るのは危険です。もう夜も遅いですし、この館で一晩お休みになっていきませんか?」
彼女の提案に心が動く。
「このような大きな家です。空いている部屋はいくつもありますから、気にせずにどうぞ。」
そこまで言われては…と、車のエンジンを切り、彼女に導かれて館の中に入っていった。

 

中は外見に違わず立派な造りになっていた。エントランスの左右から二階に続く螺旋階段を上り、客間の一室に通された。
高級ホテルのようなシックな柄のカバーできちんとメイクされたベッドに圧倒される。クラッシックなドレッサーには、女性客用に様々なコスメが並べられていた。
「お湯も使えますから。」と部屋に備え付けのユニットバスも案内してくれた。

ありがたくシャワーを浴びさせてもらい、体を拭くのもそこそこに、バスローブのままベッドによこたわると、瞬間に睡魔に引き擦り込まれてしまっていた。

 

静かな朝だった。
何の物音も聞こえない。冷たさこそないが、凍りついたように動きを止めていた。
そう、ゆうべはカチカチと音をたてていた柱時計が午前零時で止まっていた。朝の光を和らげる真っ白なレースのカーテンも空気の流れを失い、ピクリとも靡くこともない。
窓の外の木々も、風がないようで葉を揺らすこともできないでいるようだ。
起き上がり窓を開けてみたが、外の空気もまた重く、一向に流れる気配を見せていなかった。
ドアを開け、階下に降りてみた。
ゆうべ招き入れてくれた女性を探すが、彼女はおろか、人の居る気配がしない。それどころか、寝ていた二階の部屋以外の全ての部屋には、うっすらと埃が積もっていた。もちろん一晩で溜まる量などでありはしない。
それは、毎日使われるであろう食堂や、その奥の調理場も例外ではなかった。

エントランスに戻り、玄関のドアを開ける。鍵を外すのに手間が掛かったが、何とか外した。
目の前に山の緑が広がる。その緑の壁と館の間に車をUターンさせられる空間がある。
綺麗に小石が敷き詰められていたが、その空間には車は無かった。車が通れば小石の上に轍の跡が残る筈…が、綺麗に整えられた小石の表面は何も語ってくれなかった。

ジャリッと音がする。
裸足にもかかわらず足を踏み出していた。
人間の体重でさえ、跡が残るのが確認できた。そこには最初から車などなかったと結論付けられてしまいそうだ。
車を置いた場所まで歩いた。
が、そこに何もない事が確認できただけだった。

霧の中の館(2/5)

足の裏の痛みに耐えられなくなり、一旦館に戻った。足だけでなく、バスローブの下には何も着ていなかった事を思い出した。
二階の部屋に戻った。

(?)

何時の間にかベッドが片付けられ、綺麗にメイクされていた。
別の部屋に入ってしまったか?と思ったが、左右の部屋には埃が積もっており、この部屋には間違いがないようだった。
しかし、この異変を追求するより先に服を着なければならない。

昨夜の行動を思い出し、シャワーを浴びる前に脱いだ服を置いた場所に視線を動かす。半ば想定はしていたが、そこに脱いだ服はなかった。
続いてユニットバスに向かう。当然のようにそこも綺麗に片付けられていた。ぐるりと部屋の中を見渡したが、どこも綺麗になっていて、余計なものは残されていなかった。
残るは壁と一体となったクローゼットの中しかない。
扉を開けると数多くの「服」が掛かっていた。が、そのどれもが長いスカートのドレスばかりである。

結局、着替えるべき服はどこにもなかった。
バスローブだけでも寒いとは感じなかったが、如何せん、その下は全裸なのだ。常識的に、このままで良い訳ではない。が、男として、はいそれではと安易に女性の衣服…下着を含めて…を着るのも憚られる。
「ふう」とため息をついてドレッサーの前の椅子に腰を下ろした。

当然だが、目の前に鏡がある。
鏡に映っているのは自分の顔の筈である…
(こんな顔だったか?)
記憶にある顔が霧の中に埋もれてしまったように、なかなか現れてこない。しかし、その顔が自分のものでない事は確かだ。
薄い眉毛に広い額。ふっくらとした頬からつながる顎のどこにも髭の跡さえ見られない。思わず吸い付きたくなるような唇…それは、どう見ても「女」の顔だった。

男の体に「女」の顔では不自然極まりない。
が、鏡に映る「女」に不自然さは微塵もなかった。バスローブの中から現れた腕は白く、細く…指先には形の良い爪に至まで女らしさに満たされている。
そう、鏡に映っている人物は「女性」そのものだった。バスローブにくるまれた胸が、内側から盛り上がっている。その下にある形の良いバストを想像させる…

ふと、視線を落とした。
(!!)
鏡の中の女と同じように、自分の胸元のバスローブも膨らんでいるではないか!!

ごくりと唾を飲み込み、バスローブをはだけると、想像に違わない形の良いバストが存在していた。
手も指も…鏡の中の女と同じものがそこにあった。
立ち上がるとバスローブが足元に落ちてゆく。鏡の中には全裸の女性が映っている。
そして、それは今現在の自分自身なのだ。

手を股間に這わせた。鏡の中の女も同じ行動をしているのだが、もう鏡を意識する事はなかった。
指は肉の割れ目を捉えていた。そこにあるべき突起が存在していない事も確認する。
これは正真正銘「女」の肉体であった。


女の体であれば、女の衣服を身に着けるのが当然の事となる。
いつまでもバスローブのままでいる訳にもいかない。更に言えば、今の自分は完全に全裸なのだ。

クローゼットに歩み寄る。手近のワンピースと下着を取り出し、身に着けてみた。
この体に合わせた服が用意されていたのか、服に合うように体が変えられたのか…服は体にピッタリと填った。背中のファスナーも難なく上がり、服を着終えると、再びドレッサーの前に座り、化粧を始めていた。
もちろん、これまで化粧をした事など一度もない。当然、化粧水と乳液の違いも知る筈もない。が、無意識のうちに的確な瓶や道具を取り出し、顔に塗り込んでいた。
唇にルージュが引かれ、化粧が終わったのだろう。鏡の中の女は、その美しさを数段程アップさせていた。

 
化粧が終わった事で、無意識に任せた所作も終わりとなった。
(何をすべきか?)
やるべき事は二つ。この館に他に誰がいるのか突き止める事。そいつならば、元の姿に戻る術を知っている可能性が高い。
もう一つは、一刻も早くこの館を離れること。この館にいる限り、何が起きるかわかったものではない。最悪、自分というものを失ってしまう可能性がある。
両方を行う事はできない。ならば、姿は変わっていても、自分を失わないでいる間に、館を立ち去る事を選ぶ。

なるべくかかとが低めの靴を探し、手近のものをいくつかバッグに詰めて館を出た。
敷き詰められた小石を踏んで敷地の外に出た。来た時の事を思うと、何者かに出会うまでには相当な距離を歩かなければならないのだろう。
トンネルを越える。
一向に道は狭いまま…その先に一軒の家=館が見えてきた。
(いつの間にか道を逆行していた?)

向きを変え、来た道を戻ってゆく。
トンネルに入る。
出た所で辺りを確認する…何故かトンネルの中で逆戻りしていたようだ。
二度、三度とトンネルを往復するが、どうやってもトンネルの向こう側に出る事ができない!!

 

まるで悪夢の中にいるようだった。
既に、この体が「女」になっている事からして、常識では考えられない事態が展開されているのだ。トンネルの向こう側に抜けられないなど、微々たる事なのだろう。
館の中も確認した。他には誰もいない。が、しばらく部屋を離れていると、部屋の中は元通り綺麗に片付けられている。他の部屋も、再び訪れた時には、積もった埃が復活しているのだ。
絶対にこれは人為的なものではない。出れないトンネルといい、超自然的なものが関わっている事は確かだった。
唯一、わかった事と言えば、館の中に長時間居ると「自分」を失う確率が高いという事だった。部屋で何もすることなく、ぼーっとしていると、いつの間にか手の中に編み棒が握られ、レース編みにいそしんでいる自分に気付く事が度重なっていた。
流石に寝るのは館の中となるが、天気さえ許せば、無駄とは知りつつも「外」に抜けられる場所がないか、探してあるいていた。

 

霧の中の館(3/5)

その日は珍しく雨が降っていた。
外に出る事もできず、努めて自分を保とうとしていた。が…

聞き慣れぬエンジンの音に意識が戻る。鏡の中の女はいつもより濃いめの化粧をしていた。服もシックなドレスに変わっていた。
玄関の扉を開けると、闇の中、館の前でUターンしようとする車があった。開けた扉から漏れ出す明かりに気付いたか、車を停め運転手が降りてきた。
「今からこの道を戻るのは危険です。もう夜も遅いですし、この館で一晩お休みになっていきませんか?」
録音されていたかのように彼に声を掛けていた。
「このような大きな家です。空いている部屋はいくつもありますから、気にせずにどうぞ。」
あの日の光景が思い出される。立場は逆転し、今度は男を部屋に案内していた。

「なあ♪」男が声を掛けてきた。「この館にはお姉さん独りきりなのかい?」前回とは違う展開が始まる。
「ずっとご無沙汰だったんじゃないのか?」とベッドに押し倒された。
「いつも、そんな化粧で男を誘っているのかい?」男の唇に口が塞がれる。更に舌が割り込んできては口の中で暴れまわる。
「むむん…」塞がれた口では言葉を発することもできない。拒絶する声も、胸を弄られ喘ぐ声も同じに聞こえる。
ようやく解放された口をついたのは「ぁぁ…」と声にもならなかった。
「こちらに蜘蛛の巣は張っていないかな?」と四つ這いにさせられ、スカートが捲られた。
何も抵抗できぬうちに下着が剥ぎ取られた。
「程良い濡れ具合かな?」胸を弄られただけで、股間を濡らしてしまっていた。

「ヒャン!!」
男の指が股間を撫で上げた途端、思わず叫んでいた。
「良い淫声(こえ)じゃないか♪」と、今度は指を突き立てた。
男には存在しない器官=膣=に異物が侵入してくるのを感じた。男であれば知る事のない感覚…それが「快感」として脳を揺さぶる。無意識が快感を求め、体を悶えさす。
「それでは♪」男は憤り勃ったペニスを膣に挿入してきた。
「ああん、ああ~~~!!」快感に嬌声をあげていた。
男が腰を震わす度に快感が押し寄せてくる。その波はどんどん高まり、幾度となく意識を手放してしまう…

 

 

ベッドから起き上がった。股間は男の精液にまみれていた。それは膣の中まで続く…
男の姿はなかった。
裸のまま、股間に精液を滴らせながら玄関に向かう。
車は無かった。男と共に館から消えていた。
単に、夜が明け明るくなってから立ち去っただけかも知れない。
もし、その車に乗せてもらえたなら、あのトンネルを抜けられたかも知れない。いや、車を使えば抜けられるのだ。前にここに居た女がそうしたように…

多分、残された男は同じように「女」にされ館に囚われるのだろう。新たな車が現れ、自由を手に入れられるまで…

 

 

雨が待ち遠しかった。
雨が降り出すと、ドレスに着替え、入念に化粧を始める。運転手をスムーズに館に連れ込む手順をおさらいする。
闇が訪れた。

エンジンの音が聞こえ、玄関に向かった。
「今からこの道を戻るのは危険です。もう夜も遅いですし、この館で一晩お休みになっていきませんか?」
車から降りてきた運転手に声を掛けた。
「このような大きな家です。空いている部屋はいくつもありますから、気にせずにどうぞ。」

「ありがとう。助かるわ♪」
運転手は女だった。
女相手に色仕掛けは通じない。が、女がシャワーを浴びている隙をつければ良い。
女を残し部屋を後にする。最後にもう一度姦りたかったと思うが、チャンスは今しかないのだ!!
シャワーの音を聞きながら車に向かう。
エンジンを掛け、館を離れる。トンネルまでの道は目を瞑ってでも行ける程、繰り返し通ったものだ。

車はあっという間にトンネルを抜けた。
そこがトンネルの向こう側である事は即にわかった。そのまま車を進めてゆく。
やがて霧が出て視界を塞ぐ。焦っても仕方がない。そこで車を止め、霧が晴れるのを待った。

夜明けと共に霧が晴れた。あたしはブレーキを外し車を進めた。
その背後に開いていた筈のトンネルの口が跡形もなく消えていたのにも気づかずに…

 

 

「あのォ…」
あたしは何故かその男性に声を掛けずにはいられなかった。
「もしかして、山の中でお会いしませんでした?」そう言ってから、自分が何を確認しようとしたのか不安になった。(今のあたしがあたし自身では無かったかも知れないなんて…)
「もしかして、君は僕だったヒト?」
「僕だった?」
「ああ、そうなんだ。記憶の混乱があるようだね。君の体を奪ってしまった事は済まないと思ってる。けど、君だってその娘の体を奪ったのだから、オアイコで良いんじゃないか?」

あたしはもっと詳しい事が聞きたくなり、彼の家についていった。彼の名前も知らない筈なのに、彼の家への道を覚えていた。
「デジャビュ?」思わず口にでる。
「違うよ。君自身の記憶だよ。言ったろ?君は僕だったんだ。」

アパートが見えた。その二階の奥に住んでいた…あたしのものでない記憶が蘇る。隠し場所から鍵を取り出し、ドアを開けた。
「お邪魔します?」
「お帰り♪かな?どっちに座る?椅子とベッド。」
あたしの足は勝手に部屋の奥に向かっていた。いつものようにベッドの上にあぐらをかき、背中を壁にもたれかす…
「あっ、イヤ!!」
思わず叫んでいた。何であぐらなんか…スカートを穿いてるのよ。それも男の人の前で!!パンツしっかり見られたわよね?
「気にするなと言っても無理だよね。だけど、君は僕…この間まで男だったんだ。自分の家に戻った事で記憶が戻ってきたんだと思う。」
「あ、あたしは生まれた時から女の子よ。小学校からの思い出だってちゃんとあるわ。」
「それは、その体の記憶だ。君自身の記憶じゃない。さあ、周りを見てみるんだ。記憶が蘇ってこないか?」
あたしは部屋の中を見渡した。あたしが知る筈のない…記憶が蘇ってきた。

 

霧の中の館(4/5)

再び目の前の男に視線が戻る。
そして…目の前に「僕」がいた…
「僕」が話し始める。
「どうだい?思い出したか?君のように肉体に同化して記憶が塗り替えられるのは珍しいケースのようだね。僕も昔の僕に会いに行ったが、彼も記憶は鮮明に残っていたし、その前の人も同じ感じらしい。もしかすると女性の体になった事が影響しているかも知れない。」
僕は自分の体を見直した。さっきまでは何の違和感もなかったが、改めて「男」の意識で見ると覿面に「女」である事が思い知らされる。
「ほら、鏡を見てみな♪」
渡された手鏡に今の自分の顔が写る…
「これが…ボク?」

「ハッハッハ!!」と彼が笑った。
「一度、本物が聞きたかったんだよな♪」
「本物?」
「知らなければパスしといてくれ。それより、滅多にできないケイケンをしてみたくないか?」
「滅多にできない?」
「誰だって一度は考えてみた事はあるんじゃないか?…自分自身とのSEX♪」
そう言ったのは目の前の「僕」…僕が「僕」=自分自身と?

その時、山の中での記憶がフラッシュバックした。この肉体にはSEXの記憶はなかったが、館で男に抱かれた記憶が蘇る。男に抱かれ、貫かれ、僕は快感に悶え、嬌声をあげ、膣に男の精液を注がれる度に幾度となくイッてしまったのだ。
蘇ってきた快感の記憶に、今の「女」の肉体が反応した。肉のあわせ目から、とろりと愛液が漏れだしてきた。
相手が誰であろうと、僕の肉体は「男」を欲していた。

「僕」が伸し掛かってきた。僕はベッドに組み敷かれた。彼の手がスカートの中に入り、ショーツを引き下ろす。
「自分に姦られると思うと興奮するだろ?」彼の指が股間を撫であげる。僕は快感に身を任せた。
「あん、ああぁん♪」媚声をあげる。
彼はズボンを下ろすと、一気に突っ込んできた。

「!!!!ッ」
あたしは処女であった事を忘れていた。
めくるめく快感を期待していたところに、猛烈な痛みが襲ってきた。
訳がわからないうちに彼が動きだす。あたしのナカでペニスが動いている。
知らない筈なのに、その快感を知っている。あたしは「誰」なの?
痛みがあたしを襲う。そんな筈じゃなかったって言っているのは誰?

痛みが引き金となって、あたしの記憶がぐちゃぐちゃに崩れてゆく。あたしは男で、僕は処女で…だけどオンナの快感は十分に知り尽くしている。
あの館に閉じ込められて、百年近く経っていたかしら?
ここがあたしの部屋?
僕を犯ってるのは誰?

 

僕の膣に精液が放たれていた。
少しも気もち良くない。彼だけが満足げにニタついている。

「シャワーを浴びさせて!!」と僕は浴室に飛び込んだ。
服を脱ぎ冷たいままのシャワーを股間にあてる。膣の中から奴の精液を洗い流そうと必死になっている。
何故?と自問する。
答えは即に出る。妊娠したくないからだ。僕の肉体は正常な成人女性なのだ。避妊を怠れば結果は目に見えて現れてくる。
そんな事も知らないで「最低」の男!!と奴を評価する。奴は「僕」だが、その中身は赤の他人である。そんな奴になど妊娠させられたくはない!!

 
シャワーを浴び終わり、部屋に戻ると奴はベッドの上で鼾をかいていた。
僕は奴を無視して引き出しからパンツとTシャツ・ジーパンを取り出した。無意識のうちに着てしまったが、今の僕にはぶかぶかな事に気付いた。
「僕の服」なのに…今の僕が「僕自身」でない事を思い知らされる。
脱いだ服を紙袋に詰め、僕は「僕の家」を後にしていた。ここはもう僕の家ではないのだと言い聞かせる。僕が帰る場所は…

 

「おはよう♪」
僕はいつものように女友達に声を掛けた。
僕は「あたし」としての日々を過ごしている。もう「僕」に戻る事はできないのだ。それに、「あたし」として生きる為の記憶は、この体が全て持っていた。
この生活を続ける事に何の問題もない。…ただ一つ、この体の本来の持ち主が現れた時、僕はどう対処すれば良いか?結論はいまもって出ていなかった。

女友達とショッピングを楽しむ。自分なりにファションセンスも上がってきたと思う。「あたし」ではなく、僕自身が自分を可愛らしく飾りたててゆく。
皆とお茶を飲みながら、他愛もないお喋りに夢中になる。最初は皆のお喋りを聞いていただけだったが、自然とお喋りの中に入っていた。
そこには、「あたし」ではなく「女」を満喫している僕がいた…

 
マンションの前でうろついている男がいた。身なりはしっかりして、顔も悪くはない
…と言うより、僕の好みに近かった。
「不審者」と片付けてしまうのが悪い気もする。が、彼が僕を見た瞬間…
僕は「その時」が来たのを感じた。

「貴方、あたしなのね?」
彼が首を縦に振る。
「入って。」
と僕は彼をマンションに入れていた。

 

霧の中の館(5/5)

彼は部屋の中をきょろきょろと見回した。
「大分変わってしまったわね。それだけの時間があったのよ。もう、あたしがあたしなのよ。」
「わかってる。ただ、確認せずにはいられなかったんだ。あたしがあたしであった事を…」
「なら、じっくりと見ていけば良いわ。」
僕は彼を残し、台所に立った。夕食はまだだったし、食材は充分にあったので、彼の分まで作る事にした。

彼は「あたし」の卒業アルバムを見ていた。アルバムを見ながらぼろぼろ涙を溢れさせていた。
(男の癖に…)と思ったが、彼は僕とは反対に中身が女の子なのだ。僕は彼をそのままに、食卓に二人分の夕食を並べていった。

「美味しい♪あたしじゃココまで美味しくできなかったわ。」
彼が僕の料理を美味しそうに食べてくれるのを見ているだけで、何故か幸せな気分になれた。
「やはり、あなたはもうあたしじゃないのね。あたしだったあたしは古いアルバムの中にしかいない…」
「いい加減、過去に捕らわれるの止めたら?」僕は言わずにはいられなかった。
「べ、別にそんな事はないわよ…」
「貴方…男性としての貴方の過去は貴方のアルバムの中にしか存在しないのよ。」
「で、でも…」
「他人の体を奪う…その事はあたしも貴方も同罪ね。あたしはこの体を得た時、過去も含めてあたし自身になる事にしたの。中途半端にあたしになるなんて、あたしの過去を否定するようなものですものね♪」
「自分の過去を否定する?」
「あたしが過去に犯した過ちを、それは自分がやったんじゃないと言っても誰も信じてくれないわ。結局その報いは現在のあたしが受けることになるの。」
僕は立ち上がると服を脱いでいった。
「この傷も、この傷も皆知っているわ。だって、皆あたしの不注意が招いたものだから。」
全裸になった「あたし」が彼の目に晒されていた。彼の目が女を見る「男」の目に変わっていた。
「これが今のあたしよ。少しは魅力的になったかしら?」僕は彼の股間が膨らんでいるのを見た。
「貴方は男である事を自覚しなければならないわ。」
「そ、そんな事わかってるわ。」
「なら、何でこんなイイ女を前に何もしないの?それとも、自分自身とのSEXに抵抗あるのかしら♪」
僕は彼をベッドに誘った。彼は男の本能には逆らいきれなかった。

 

 
彼はどんな思いで「あたし」を抱いたのだろう?「自分自身」を抱いたのか、単に「女」を抱いたのか…
僕は、これまでに「僕」以外の男とのSEXも経験している。彼は女を抱いた経験はあるのだろうか?記憶に残っていたものではなく…
「あたし」を抱いた事で、彼は「男」として生きる踏ん切りがついたのではないだろうか?
彼はどんな思いで「あたし」を抱いたのだろう?「自分自身」を抱いたのか、単に「女」を抱いたのか…
僕は、これまでに「僕」以外の男とのSEXも経験している。彼は女を抱いた経験はあるのだろうか?記憶に残っていたものではなく…

「あたし」を抱いた事で、彼は「男」として生きる踏ん切りがついたと思いたい。彼は僕を抱いているうちに、僕をひとりの「女」として責め始めていたと思う。

「あん、ああん♪」快感に僕が艶声をあげると、彼の奮いが増す。
更に媚声をあげて彼を掻き立てる。僕も次第に昇り詰めてゆく…
「あ、ああ~~ん♪」彼の精液が膣の中に放たれると同時に、僕もイッていた。

 
あたし…僕の胸に顔を埋めて、彼が寝息をたてている。僕は彼を愛しく思っている。
そう…「女」として…

 

 

 
「どうしても戻りたいの?」僕はもう一度、彼に尋ねた。
「ええ…」と彼。
僕は愛する人の望みを叶えさせてあげたいと思う。そして、それができるのは僕しかいないのだ。
フロントガラスの向こうでは、夕闇の中にトンネルが口を開いていた。僕が助手席から降りると、彼の車はトンネルの中に消えていった。

僕はもう一台の車に移る。その車はギリギリまで路肩に寄せ、対向車とすれ違う事ができるようにしてある。
夜中…午前二時を過ぎた頃、トンネルの奥からエンジン音が聞こえてきた。彼の車だ。
勿論、運転しているのは彼ではない彼…当然、僕の事など覚えていない。

彼の車が通り抜けると同時に、トンネルは忽然と姿を消していた。
僕はここで、再びトンネルが開くのを待つのだ。車には一ヶ月分の水と食料を積み込んでいた。次にトンネルが現れるのがいつになるかなど知る筈もない。
「まあ、一週間といった所かしらね?」と彼は気楽に言っていた。
しかし、待機はゆうに一週間を超えていた。僕は昼間は寝て過ごし、夕方から深夜までただトンネルが現れるのをボーッと待っていた。

 

ふと気付くと、目の前にトンネルが開いていた。慌ててエンジンを掛け、トンネルの中に車を進めていった。
霧の向こうに懐かしい館が見えて来た。既に玄関の扉は開かれ、ロングスカートの女性の姿がそこにあった。
「待っていたわ♪」

(この女は本当に彼だったのだろうか?)嫌な疑問に支配されそうになる。
「さあ、体を交換しましょう♪」と僕を部屋に上げる。背後でエンジンの音がした。彼が館を離れてゆく…
いえ、もう「彼」ではないのだ。先程までの僕であった本来の体に戻ったのだろう。僕の体がこの館に合った姿へと変わっていくのがわかった。

 
再び、何の変化もない毎日が戻ってきた。
しかし、それはそれで良いのかも知れない。あたしがトンネルの向こうに行こうとしない限りは、何の問題も起きないのだ。
たまに来る男性とはSEXを楽しみ、女性が来たら少しばかりお話をして帰ってもらう。
あたしはもう、男に戻りたいとも思わないし、他の女に成り代わるのも面倒だと思っている。
考えようによっては、あたしは不死を手に入れたのかも知れない。食事をしなくとも死ぬ事はないようだ。痩せもせずに同じ体型を維持し続けている。怪我も一晩過ぎれば傷跡も残っていない。
多分、歳もとらないのだろう…

 

空には重い雲が立ち込め、館の周りが霧で包まれた。陽が沈み、辺りが闇に閉ざされる。やがて、車の音が近づいてきた。
「よろしければ、お入りになってくださいな♪」あたしが運転手に声を掛けると、中から若い男が降りてきた。
(今夜は一晩中愉しめるかも…)

あたしは内心ウキウキしながら、男を二階に導いていった。

無題

俺が今いる所は「仮想世界」と呼ばれる場所だ。
本来の俺自身の肉体はベッドで眠っている。額に貼られた電極が、俺と仮想世界を結んでいるのだ。
ベッドに寝ている「俺」にとっては「夢」を見ているだけだが、仮想世界はそこぬつながっている人達全てがこの「夢」を共有しているのだ。

仮想世界は夢みたいなもので「何でもアリ」みたいな所ではあるが、皆がこの場を共有しているために、ある一定のルールがあった。
その一つがアバタと呼ばれる「姿」を持つ事である。基本的には、現実世界の自分自身を反映させるのだが、いくらかの自由はある。
容姿にコンプレックスがある人はそれなりに修正を加える。中には年齢や性別を変えたり、人外のものになる人もいる。
(人外とは言っても人間型ていう制約はある。犬猫や蝶などになる事はできない。耳を尖らせたり、おしゃれな尻尾を生やすなどのレベルだ)

 
俺はコンプレックスはあるものの、現実世界の姿をそのまま使っている。
が、親友の槇則夫はかなりな変更を加えていた。

 
「仁~!!」と俺を呼んで近づいてきたのが、その本人だ。
年齢を10歳近く若返らせ、性別を反転し、猫の耳と兎の尻尾を付け、更には妖精の羽まで装着している。
(何でもアリの世界なので、当然だがその羽で飛ぶこともできる)
「よう、則夫。元気だったか?」
「仁ったら、いつになったらあたしの事を理緒って呼んでくれるの?」
と脇腹に肘鉄を送り込んできた。

そう。仮想世界では現実世界とは別の名前を名乗る事が多い。
俺はまんま「武藤仁」と名乗っているが、奴は「牧野理緒」と言う名を使っている。
しかし、現実世界の「則夫」を知っていると、なかなか仮想世界での名前を使えるものではない。
いかに、その姿が現実世界のものとかけ離れていようとも…だ!!

肘鉄が容易に外されることを見越していたのか、奴はそのまま流れるように腕を絡めてきた。
体を密着させると、奴のバストが俺の腕に押し付けられ、変形する。
俺の肉体が奴の「女」に反応し掛けるのを必死で堪える。
「またぁ♪我慢してるんでしょう?」見透かしたように奴が言う。
「バカな事言うなよ。俺には男を押し倒す趣味はない。」
「あたしは、いつだって良いのよ。あたしがSEXしたい相手は仁だけなんだからね♪」
と、空いた手で俺の股間を撫であげる。
そこが俺の意思に反して大きく膨らんでいりのは、触らずとも明らかであった。
俺は現実世界の則夫の姿を思い出し、何とか鎮めようとするが、なかなか思うようにはいかない。
「んもう♪意思が強いのは認めるけどね…でも、今日こそはあたしの望みを叶えさせてもらうわ。なんてったって、最高のアイテムを手に入れたんだからね♪」
と、人気のない薮の中に俺を引きずり込んでいった。

 

 
そこだけがポッカリと空いていた。
ご丁寧に、クッションに丁度良い長さに生え揃った芝がその空いている場所を覆っていた。
「じゃあ、やるわね♪」と則夫。
「言ってるだろう。俺はお前を抱くつもりはないぞ。」
「良いわよ♪仁はそのままでも。でもね、このアイテムを使うとね?」

辺りが光に包まれる。アイテムが発動したようだ。
まぶしさに立っているのが辛くなる。
「な、何をしたんだ?」
そう言った途端、猛烈な違和感を感じた。
その声は「俺」の声か?

光が収まる。
俺は地面に座り込んでいた。
「どうなっているの?」

目の前に足が見えた。則夫は立ったままでいられたようだ。
則夫?…そこにいるのは則夫の筈だ…が、その足はズボンに包まれていたか?
則夫は艶めかしい太股をむき出しにした短いスカートを穿いていた筈だ。

俺はスボンから上に視線を上げていった。上半身も違っている。
則夫は豊満な胸を強調するように、胸元が広く開いた服を着ていた。
今の彼が着ているのは、俺と同じ地味なワークシャツである。胸の膨らみなど判別がつかない。
…いや、彼の胸は先程まであった膨らみが消え、平らになっている?更にその上に乗っている顔は

…「俺」…だった。

「どうだい仁♪女の子になった気分は?」
「あたしが女の子?」
違和感の正体はこの声だった。
女の子の様に甲高い声…そして「俺」と言った筈なのに「あたし」と言っている。
「則夫なの?」俺は「俺」の姿をした男を見上げて言った。
「そうさ♪僕と仁の身体を入れ替えたんだ。仁がなかなか姦ってくれないんで、僕の方から姦ってあげようと思ってね。」

「姦る」と言う言葉に俺の肉体が反応していた。
ジュン♪と体の内側から染み出した体液が、俺の「女」の器官を潤してゆく。
「な、何をスルのよ…」俺は則夫から離れようとしたが、脚が言う事を聞かない。
「何で動けないの?」
「それは、仁が女の子だからさ♪」そう言って則夫の手が俺の胸元に伸びて来る。
上着に手を掛け、引き下ろすと、形の良い乳房が露となった。
無意識に胸を隠そうと腕が上がったが、半端に脱ぎ掛けの上着に邪魔されて目的を達する事ができないでいた。

「キャッ!!」
芝の上に転がされ、女の子のように叫んでいた。
則夫が…「男」が伸し掛かってくる。俺の意識は拒絶しようとするが、肉体は期待に奮えている。
スカートが捲られ、ショーツが剥ぎ取られた。則夫が濡れたショーツを見せつける。
「仁美ちゃんは淫乱なのかな?」
「仁美?」
「その姿で仁はナイだろう?僕が書き換えておいてあげたよ♪」

俺は慌てて自分のプロフィールを呼び出した。確かに名前が変えられている。
それ以外にも性別や性癖など、何箇所かが変えられていた。
「な、なによ!!この淫乱娘っていうのは?」
「そうか?今のこの状態にこそふさわしくないか?」
そう言って俺の胸の先端にある乳首を捻りあげた。
「あ、ああん♪」俺の意思に反して、甘い喘ぎ声をあげてしまう。
そして、その後から快感の疼きが全身に広がっていった。
「その肉体は、僕に抱かれたくて我慢しきれない位になっているんだ。抵抗なんか無駄だよ♪」
ズボンを下ろしてゆく則夫の股間に、俺の目は釘付けになっていた。
(早く、それを頂戴♪)俺の肉体からの「声」が痛いくらいに俺の脳にぶつけられる。
則夫がパンツを下ろす。
「あ、ああ…」無意識に声がでてくる。
「さあ、仁美ちゃん♪最初は何をするんだったかな?」
最初に?と俺が何をすべきかを思い出そうとするより先に、肉体が動いていた。

むっくりと起き上がり、自分の顔を則夫の股間に近づけてゆく。
そこには太いが、いまだ勃起していないペニスが垂れ下がっている。
俺は手も使わずに、そいつを咥え込んでいた!!

うっとりと快感に浸っている自分をどうする事もできなかった。
則夫のペニスは俺の口の中で硬さを増していった。
その間、俺は舌と口で刺激し続けていた。どうすれば良いかは肉体が知っていた。
俺は肉体の指示に従えば、快感が得られる事を刷り込まれていくように感じていた。

「良いぞ、仁美ちゃん♪それじゃあメインイベントといこうか?」
俺の口からペニスが外され、俺は再び芝の上に寝かされた。脚が抱えられ、股間が広げられる。
「仁美ちゃんの娘は、待ち遠しくてピクピクお口を震わしてるぞ。」
「ああん♪それより、早く頂戴♪♪♪」
俺は則夫にそう言っていた。俺自身が則夫ねペニスに貫かれたいと願うようになっていた。
「じゃあ、いくよ♪」

則夫のペニスが俺の肉体に侵入してくる。
俺の膣が則夫のペニスに満たされてゆく。
「ああん、あ~ん♪」
俺は肉体と同化し、快感をむさぼるように身悶えする。
「ああ、仁美ちゃんのナカは最高だ!!」
「あ、あたしも…イ、良い…カンじちゃう~♪」

俺の膣内で則夫のペニスが暴れまわり、何度も精液を放出し、膣口から溢れさせた。
それ以上に俺はイき続け、幾度となく快感に意識を失っていた…

 

 
「仁~!!」
と手を振って則夫が駆け寄ってきた。
「あっ理緒♪」と俺も手を振り返す。
「でも、この姿のときは仁美って呼んでよね!!」
俺はアバタの姿をまるっきり変えてしまっていた。
女の快感の虜になった俺は「女」として最も快感を得易い姿に変えたのだ。
「理緒は今日も元気ね?」と腕を絡めた。
理緒はスカートのお尻の穴から飛び出た尻尾がプルプルと震えている。
そして、スカートの前はペニスの形に膨らんでいる。
それん見た俺の肉体は即に反応し、俺の「女」の器官を一気に潤す。
「仁美ちゃんも準備OKのようね♪」彼女の嗅覚はそれこそ動物並みだった。
「ねえ、即にシよ♪」二人ないつもの薮の中に向かう。

「あん、ああん♪」
スカートを捲り、ショーツを下ろして四つ這いになると、理緒のペニスが入って来る。
彼女もまた、スカートを捲っただけで股間の逸物を露出させていた。
俺は高々と尻を上げ、理緒を受け入れる。胸の双球が悶える度にむき出しになり、芝の葉先でくすぐられる。
「あ、あ…イくよ♪」理緒の声と共に精液が俺の女性器を満たしてゆく。
「あん、ああ~~ん♪」俺もまた絶頂に達する。

「今度は仁が抱いてよね?」と理緒が下になる。
俺はバックからアイテムを取り出した。
「またそれ?」と理緒は良い顔をしないが、それも一時のこと。即に艶声をあげてゆく。
アイテムとは言っても特別なモノではない。女同士が結ばれるための双頭のディルドウだ。
これであれば理緒を姦ると同時に、俺も女の快感を得ることができる。
互いの性感帯を責め合って、快感の坂道を一気に駆け上がってゆく。
「「あ、ああ~~!!」」二人の嬌声がひとつになって響き渡る。
理緒は萎えていたにもかかわらず、ペニスから精液を撒き散らしていた…

 

「そろそろ戻りましょうか?」理緒の頭を撫でながら耳元で囁いた。
「嫌。ずっとココにいたい。こうやって仁と一緒に…快感に溺れていたいよォ♪」
「仮想世界に永遠に留まる事はできないのよ。」
「でもゥ…」
「良い事を教えてあげるわ。明日、現実世界のあたし…武藤仁の部屋にいらっしゃいな。良いものを見せてあげるから♪」

理緒が戻ると、俺も現実世界に戻っていった。
現実世界に戻れば「現実」が舞い戻って来る。股間の痛みは続いている。それでも則夫に見せられるようにはなっている筈だ。
風呂に入り、汚れを落とし身を清める。則夫が来た時にと決めていた服に袖を通す。じっくりと時間をかけて準備を済ませる。
後は則夫が来るのを待つだけだ。

もう一度鏡を見る。

そこには仮想世界の「仁美」が完璧に再現されていた。
そう。この肉体は女性そのものだ。やがて則夫が現れ、俺は現実世界でも「女」になる…
そう考えただけで、もうショーツがぐっしょりと濡れてしまっていた。

EIENN(1/4)

 
私の肉体が朽ち果てようとしていた。

既に、目も耳も機能を失っている。私はこの部屋に据えられたカメラを通してモノを見、マイクロホンに集められた音を聞いている。
カメラのレンズは天井から「私」を見下ろしていた。
幾本もの管につながれ、辛うじて「生きて」いるだけだ。既に肺は潰れており、交換装置にて酸素を補給している。
心臓も自ら動く事はない。外部からの電気刺激により、規則正しく動かされている。

「私」は「生きている」と言えるのだろうか?

 
「じゃあ、死にたいの?」
どこからともなく、少女の声が聞こえた。
部屋のドアが開いた形跡はない。が、カメラの視野にその少女がゆっくりと姿を見せた。

ゴスロリと言うのだろうか?ワンピースのドレスは、黒に近い濃紺のビロードの生地に真っ白なレースで縁取られていた。エナメルの靴に、これもレースで飾られた白いショートソックス。スカートとの間の生足は健康的かつ官能的に輝いていた。
服と同じ布でできた小さな帽子の下には金色の巻毛が綿飴のように少女の頭部を覆っていた。
彼女の顔がゆっくりと天井のカメラを見上げた。
その顔は人形のように整っていた。白い肌に赤みのある頬。小さな唇に光が照り返る。
そして、大きな瞳の碧い輝きは何もかもが吸い込まれそうであった。

「死にたくないのなら、新しい身体をあげるわ。絶対に死なない優れ物よ。」
この少女は天使か悪魔なのだろうか?そのような事を言う者は人外の輩しかいない。
「死があるからこそ人間なんだ。別に死を望んでいる訳ではないが、少しでも死から遠ざかろうと足掻く事で、人は進化してきたんだ。」
「でも、不老不死を望む人は沢山いたわ。」
「それを望んだとしても、それに向かって努力を続けている限りは人間として存在していると言える。だが、それを実際に手に入れてしまった瞬間から、そいつは人外の物となるのだ。」
「ふ~ん。そういう考えもあるのかァ。まあ、あたしが人間じゃないって事は合ってるけどね♪」

「お前は何を求めてここに来た?」
悪魔であれば「魂」か?天使ならば何を望む?
「天使は神様の暇潰しに走り廻っているわね。何か面白いコトがあれば神様が喜ぶそうよ。」
「なら悪魔なのか?」
それ以前に彼女は私の発していない言葉に反応した?
「そうね♪あたしは貴方の心が読めるわ。無理に言葉にしなくても良いのよ。」
「ではもう一度聞く。お前は何を求めるのか?」

「あたしは悪魔でも天使でもないわ。どちらかと言えば神かな?」
「…」
「驚かないのね?」
「神を名乗る者は数多いる。ご託は良い。私の質問に答えなさい。」
「んもう、面白味がないんだから♪」
(= =)
「い、意識だけで睨まないでくれる?判ったから。答えますよぉ。あたしの目的は神様と同じで面白い事を見たいと言うこと。神様と違って、あたしには手下の天使がいないから、自分で面白くなる状況を作らなくちゃいけない訳!!判った?」

「判った。私に不死の身体を与える事で起きる様々な事象を観察して楽しみたいという事だな。」
「そ、そういう事よ♪」
「私は不死の身体などはいらない。だが、このままじっと死を待つのも考えものだ。しかし、死を望んでいる訳ではない。その身体が不死でなければ、お前の話に乗ってやろうじゃないか。」
「OK。不死でなければ良いのね♪ではこれをもって契約締結とします。明日の朝には新しい身体が手に入るから、それまで待っててね♪」
そう言って、一瞬のうちに彼女は私の視界から消えていた…

EIENN(2/4)

眩しさに私は目を細めた。
それが窓から差し込む朝日である事を即に理解していた。
(目を細める?)
それは、私が新しい肉体を手に入れた事に他ならない。

私はベッドの上で五感を確認した。ここしばらくは機械の世話になっていたため、自らの五感を使うことはなかったのだ。
目を閉じて「音」を聞く。小鳥のさえずり、風が葉を揺らす音…
風は開かれた窓から私の頬を撫であげてゆく。風に乗り、微かに花の香りが届いた。
味覚は後の楽しみとして、ゆっくりと瞼を上げた。
光…そして形。「自分」の目で物を見るなど何年ぶりだろうか?
それも、眼鏡も掛けずに物がはっきりと見えるのだ。

窓の外には木々が生い茂っていた。
開かれた窓にレースのカーテン。窓の両端には洒落た花柄のカーテンが纏められている。
内装も精錬されていたが、どこか少女趣味が垣間見えた。それを象徴するのが、大きな鏡を備えたドレッサーだった。
本体の装飾もさる事ながら、並べられた化粧品…カラフルなマニキュアの列がその事を物語っていた。

私はゆっくりと起き上がり、ドレッサーの鏡に自分を映してみた。
半ば予想していた通り、私の新しい身体は若い女性のものであった。
奴は「面白い事」を求めていた。年老いた男が若い女性の肉体で目覚めた時の反応は、奴の求めたものの一つであろう。
しかし、ある程度の予測がつけば、少なくともパニックに陥ることはない。私は歩く度に揺れるという「胸」の感触を確かめながら、ドレッサーの前の小椅子に腰を降ろした。

新しい自分の顔を確認する。
「どのくらいの付き合いになるか判らないが、ヨロシクな♪」
鏡の中の娘に掛けた言葉は、やはり甲高い女の声だった。
(化粧は追々覚えるとしても、先ずは言葉だな。こんな愛らしい声で男言葉では怪しまれる事間違いなしだろう。)
「コンニチハ♪あたらしい、あ・た・し。」
にっこりと微笑むと、何とか様になったようだ。

今着ているのは寝間着であろう。下着もショーツしか穿いていないようだった。
立ち上がり寝間着を脱ぎ落とすと、鏡には女の裸体が映し出されていた。理想的な体系である。私がもう少し若ければ、即に股間を硬くして彼女を押し倒していただろう。
しかしながら、この年では性欲もままならず、ましてやこの身体では勃つモノもナイのだ。
私はそのままクローゼットに向かい、並べられたドレスの中から適当に一枚を取り出した。ブラジャー、キャミソールと女物の下着を着けてゆく。肌色のストッキングに足を通す。
私の長い人生で見てきた女が服を着る行為を思い出す。まさか、自分がこれらを身に着けるとは思ってもいなかった。
この身体は柔軟性が高く、ドレスの背中に付いたファスナーも難なく閉じる事ができた。同様に腰に巻かれたリボンも背中側で綺麗に結べている。
鏡に姿を映し、変な所がないか確認した。服装に問題はないが、何か物足りない気がした。
化粧だと即に気づく。が、ファンデーションがどうのこうのと話は聞いた事があるが、実際に自分の顔を造る自信は皆無であった。
口紅だけでも…と試しに塗ってみた所、何とからしくなったようだ。

鏡を身ながら、女は化粧以外にも装飾品を身に付けている事を思い出した。
耳に穴は開いていないのでピアスではないようだ。ドレッサーの上の箱にイアリングがあったので付けてみた。
首にネックレスを巻く。それ以上の装飾はもう少しセンスを磨いてからにした方が無難なような気がした。
慣れないハイヒールを履いて室内を歩いてみた。何とか倒れずに歩けそうだ。
クローゼットの脇に並んでいたハンドバックから一つを手に取り、私は外に出ていった。

 

私が向かおうとしていたのは「私」の所だった。
私がこの身体を手に入れた事で、元々の「私」は死んだ事になっている可能性が高い。実際にはどのようになっているかを確かめたかったのだ。

電車を乗り継いで奥多摩にやってきた。ここから先はタクシーを使うしかない。
行き先を指示して凡そ30分。見慣れた研究所の外観を目にする事ができた。
私の記憶にある研究所はもう少し垢抜けていたが、これも私の生き続けた歳月の現れなのだろう。私は「私」が置かれていた部屋の辺りを仰ぎ見ながら、研究所の入り口に向かった。

 

「お嬢さん。ここは関係者以外立ち入り禁止なんですよ。事前にアポがなければ館内に入れる訳にはいかないのです。」
「でも、例外がありますよね?たとえば…」
私は守衛の耳元に口を寄せ、予め決めておいたキーワードを囁いた。
「え?」と守衛が聞き返した。
「他にも幾つか例外があるけど、その全てが必要かしら?」
「い、いえ。とんでもありません。」と敬礼して硬直した守衛は、固まった身体のまま私に入り口を開けてくれた。

エレベータに乗り最上階に向かう。とは言っても四階建てのビルでは即に到着してしまう。「私」の部屋は正面に続く通路の奥にあった。

カチャリ
ドアには鍵は掛かっておらず、何の抵抗もなく部屋に入る事ができた。
確かにそこは見慣れた「私」の居た部屋であった。が、今その部屋には何もなかった。
「私」も「私」の寝ていたベッドも。「私」の身体から管でつながれた様々な機器もが、全て無くなっていた。

「私を探しているのかな?」
不意に男の声がした。
振り向くと、そこに「私」がいた。それは朽ち果てようとしていた「私」ではなく、生気に満ち、老いて干からびかけた肢体ではあるが正常に機能していた。
「あんたが不死を望まなかったおかげでね♪年は取ってはいるが、不死の身体を貰う事ができたんだ。まあ、それと一緒にあんたのものだった莫大な資産も私…俺の自由にすることができるんだ。」
「別に…資産も、その身体にも未練はないわ。勝手に使っていただいて構わないわよ。」
「なら、何でココに戻って来た?」
「単に確認に来ただけよ。」
「本当かね?あんたの才覚が失われた事で、あんたの財閥が破綻していないかを確認したかったんじゃないのか?現に、俺が動き出してからは財閥はまともに機能しなくなったな。既に2~3の中堅企業がネを上げている。」
私は離別した筈の焦燥感に捕らわれていた。
「で、相談なんだが、あんた俺の下で秘書として働かんか?悪いようにはしないぞ♪」

EIENN(3/4)

私は再びコンソールの前に座っていた。
最初の数日の操作で傾きかけた中堅企業は勢いを取り戻した。他にも気掛かりなところがあり集中して対応したが、若い身体は疲れる事がなかった。
若い身体には余力があったので、操作が軌道に乗ると「秘書」としての仕事も始めた。
私は「私」の専任秘書と言う名目であるが、「私」である奴は仕事らしい仕事はしない。まあ、奴に仕事をさせないようにするのが「秘書」としての仕事のようなものだった。
あとは奴の元に来る客への対応だ。奴は仕事はしないが、客とは頻繁に会っている。
(当然、仕事とは関係のない客だ)客が来た時の取り次ぎとお茶出し。帰った後の片付けが私の「秘書」としての仕事なる。

しかし、奴の「客」が私の悩みの種になってきていた。
奴の「客」は原則が若い女である。それも身体を売るプロのお姉さん達だ。執務室の奥にあるベッドの上で、奴はSEX三昧の日々を送っているのだ。
コンソールに座る私とは壁一枚の隔たりがあったが、途切れる事のない「女」の淫声は閉ざしようもない。
以前の私であれば、何の問題もなかったのだが、今は若くて健康な肉体である。性的刺激に反応しない筈もない。
昔は抜いてしまえばそれで済んだものだが、今の私は女の体である。「抜く」行為そのものが不可能なのだ。
壁の向こうから淫声が届いて来ると、途端に下腹部が熱を帯びてくる。多分そこは子宮なのだろう。ジンジンとせつなく疼きだす。
ジンワリと股間の肉壁に染み出てくるものがある。やがてそれはショーツをしっとりと濡らす程に溜まってくる。
私はモジモジと内股を擦り合わせて耐え忍ぶが、淫声が激しくなるに連れ、私も我慢ができなくなる。
タイトスカートをズリ上げ、脚を開き気味にする。左手をソロリとスカートの中に潜り込ませる。パンストのクロッチの上から、指で股間の濡れ具合を確認する。
「女」の声は嬌声に変わる。奴に貫かれ、どんどんと高みに向かって昇っているのだ。
私の指がショーツの中に入り込む。濡れそぼる肉壁に指を進めてゆく。身を屈め、二本の指を膣内に送り込んだ。
「あん、ああん、あん♪」
壁の向こうの女の息とシンクロしてゆく。彼女がそうであるように、私の膣も男のペニスに貫かれていると錯覚する。
私のナカでペニスが暴れている。それは抜け出ようかとすると思うと、激しく子宮の入り口を突き上げてくる。
私は奴に抱かれている女と一緒に昇り詰めてゆく…
「あ、あ、あ、あ~~ん♪」

こうして、私は彼女達と一緒に果てる事でしか身を鎮めることができないでいた。

 

 

「ねえ、合コンに行かない?」
珍しく、他の秘書仲間に誘われた。秘書として復帰した当初は忙しさを理由に全て断っていたので、声を掛けられる事もなくなっていた。
最近は仕事にも余裕ができたし、女としての振る舞いも板に付いてきたので断る理由が見つからないでいた。そうこうしているうちに、私は会場に連れ出されてしまっていた。

「初めまして♪」
爽やかな笑顔で自己紹介が続いていた。向かい側に並んだ男性陣はなかなかの「粒揃い」と言うのだろうか、皆好感がもてた。
私に声を掛けてきた女性が場を仕切っていた。確か社長付きの第三秘書だったと記憶していた。
彼女のおかげで、十分に楽しい時間を過ごす事ができた。
食事も美味しかったし、飛び交う話題もちゃんと節度をわきまえているにも拘わらず、私の興味を引き、気が付くと私もその話題の中に入り込んでいた。
話題の中心にいた男は一見、優男に見えたが確固たる芯が存在していた。かと言って頭でっかちかと言うと、武道の心得もあるなかなかの漢だった。
気が付くと店の外では彼と私の二人だけが取り残されていた。
「少し歩きませんか?」と彼が声を掛けてきた。
このまま独り帰るのも何か物足りない気がしていたので
「ご迷惑でなければ…」と答えていた。

女として街を歩く事に違和感を持つ事はなくなっていたが、男性と二人だけで並んで歩く事など初めての事だった。
やはり周りからは恋人同士に見られているのだろうか?若い頃の私は仕事に追われこのような男女の時間など持ったことはなかった。
小洒落たバーでカクテルを味わう。男だった頃は洋酒と言えばブランデーしか飲んでいなかった事を思いだした。カラフルで甘ったるいカクテルは「女」が飲むものと決めつけていた。
そして今、女となった私がカクテルを飲んでいる。スピリッツのようにガツンと来る訳ではないが、これはこれでアリだと思った。

 
自分が酔っていた事に気付いたのは、ホテルの一部屋でシャワーの音を聞いていた時だった。
大人の男女であれば、それは自然の流れなのだろう。私は彼に連れられてホテルに入っていた。
目的がSEXである事はわかりきっている。
部屋に入り、立ったまま抱き絞められ、唇が塞がれ…舌を絡めあうようにして長いキスをしていた。
解き離され、彼はシャワーを浴びに行った。独り残されたことで落ち着きを取り戻したのだろう。私はようやく現状を認識できるようになった。
(どうする?)
姦るかor逃げるか
勿論、姦るとは言っても私の方が一方的に姦られることになる。
が、女としてこれは避ける事のできない事象である事は確かなのだ。私の肉体的年齢の女性であれば、結婚し子供を産む事を考えない訳にはいかない。
その前提となるのが男とのSEXだ。仕事中に火照った身体を鎮める時にはそのようにイメージしていたではないたか?
それが、現実のものとなるだけだ。彼のペニスが私を貫いてくれるのだ。強姦に合い、醜い輩に犯られるのを思えば「彼」に不足はない。
彼は女としての私の好みである事には間違いない。今日だけの付き合いではなく、この先も一緒の時間が持てればと思っている…

カチャリと音がした。
いつの間にかシャワーの音が途切れていた。ドアが開き、下半身をタオルで巻いた彼が姿を現す。
「どうぞ♪」と私にシャワーを浴びる事を促す。

「ありがとう。」
私はそう言って服を脱いでいった…

 

 
「あ、ああん♪あ~~~ん!!」
それは想像以上の快感だった。
単に貫かれているだけではない。彼の手は隅々まで私を愛撫してくれる。耳元で囁かれる睦言に更に感じる私がいた。
「んあぁ…イ、イクぅ…あ、あ、あ~~ん♪」
私は幾度となく、昇り詰めた。
彼もまた、私の中に精液を放出している。
「もう限界だよ。」と言う彼の上に跨り、私は私の膣の中にある彼のペニスをいつまでも感じていた。

EIENN(4/4)

 
彼との交際は3年続いた。
結局分かれる事になったのは、私に結婚の意思がなかったからだ。
当初は私も「結婚」を考えたが、私の身体がそれを困難にしている事に気付いてしまったのだ。結婚すれば、その先に出産が見え隠れする。
生物として子孫を残す事は求められて当然である。しかし、私は子供を産む事ができなかったのだ。
恥ずかしい事に、私は自分に生理がない事に気付いたのは、彼と付き合い出してからだ。本来が「男」である私が生理に関する知識が乏しい事を誰が責められようか?
彼に聞かれ、生理がない事が発覚した。当然、彼は私が妊娠したのだろうと思った筈だ。しかし、私はこの身体になってから、一度も生理を体験したことがないのだ。
私は彼を落胆させないよう、生理が遅れていた風を装った。その後も定期的に生理を装う。その裏で、私は妊娠の可能性を確認してみた。

医者の診察結果は、私の女性器は良好な状態を保っているとの事だった。
では、何故生理がないのか?

私はこの「身体」について調べてみた。

この「身体」が与えられた時「不死」は拒否した。
調べた結果からも「死」を無くするようなものは見つからなかった。が「不老不死」の「不老」の部分は活きていたのだ。
「老化」しない。つまり子宮は常に良好な状態のため、生理になる必要がなかったのだ。また、良好な状態はこれが次の段階に進む事も拒絶している。受精卵が着床したとしても、そこで胎児が成長することはないのだった。

「不老」の効果は妊娠できない事だけではない。本来の意味で、私は歳を取らないのだ。10年後20年後もこの若い姿のままなのだ。
結婚し、夫が長生きしたとしても必ず老衰は訪れる。その脇で若い姿のままの妻が寄り添う図も一興ではあるが、何を言われるか事が知れている。
災いは避けるに越した事はない。

彼と別れた後、私は断続的に男性との付き合いを行っている。が、皆1年以内の付き合いであり、彼との3年を超えるものはない。
それ程、私は女として彼を愛してしまっていたのだろう。ただ、彼に教えられた女の快感だけは忘れられず、男と付き合う事になっていた。

 

一方、元の「私」=奴は「不死」ではあったが、老化は着実に進んでいた。当初は強力な強壮剤で若さを保っていた。(即座に心臓発作を起こすようなものでも奴は死ぬ事はないのだ)
更には老化して脆くなった骨を特殊セラミックで補強したり、筋力を補う為のモーターを埋め込んだりと、肉体の改造を続けていた。
どんな無茶をしても「死ぬ」事はないのだ。がしかし、何れにも限界がある。
「死」に至る事はないにしろ、脆くなった血管はあちこちで破断し、皮膚下に血を染ませていた。それは、脳内にも進行し、元々まともではなかった奴ではあるが、更に正常な思考…いや、思考そのものができなくなっていた。
奴の肉体だけがプログラムされたロボットのように女を抱き続けた。が、奴の身体から腐臭が漂い始めると、奴に抱かれる女もいなくなっていった。
私はとうとう奴に「人形」を宛がってやったが、奴には人間と人形の区別も付けられず、飽きることなく人形を抱き続けていた。

 

奴が財閥に悪影響を与える事がなくなったと判断した私は、ここで「秘書」を続ける意味もなくなっていた。
私は仕事を止め、旅に出る事にした。
見知らぬ土地にしばらく逗留し、適当な男と親密な関係になり「女」の欲求を満足させる。そして、頃合いを見計らってひっそりと去ってゆく。
その繰り返しを続けていた。

私は不死ではないが、死のうと思わない限りは永遠に生き続けるのだ。
それは私が忌意した姿ではあるが、やはり自ら死を選ぶ事はできないでいた。
私にこの身体を与えた神とも悪魔とも言えない者は、このような私を見て本当に満足しているのだろうか?

 
「こちら、よろしいですか?」
パリに向かうTGVの中で、私の向かい側に座ろうとした若い男はモロに私の好みだった。
「構いませんよ♪」と答えると、流れるような仕草で腰を下ろした。
「ご旅行ですか?」と男が声を掛けて来る。
下心があるかは判別できなかったが、私は彼とのお喋りを楽しむ事にした…

 

「ああん♪あ~~ん!!」
結局、私はその夜には彼に抱かれていた。
スーツの上からでも、彼の逞しい筋肉は確認できていた。彼のモノも筋肉に劣らず逞しかった。
彼のモノが私を貫く。
快感に全身を震わして、私は彼に応える。

「あ、あ、あ……」

その快感は飽きる事はない。
私は嬌声をあげ、絶頂を迎えるのだった…

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