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2011年7月 7日 (木)

逆転(1/3)

ある日、僕の彼女が「男になりたいなぁ…」と漏らした。

「君が男になったら、僕の立場はどうなるんだい?」と聞くと
「替わりにあんたが女の子になれば良いんじゃない?」

その答えに、僕は男になった彼女と女の子になった僕が一緒に歩く姿を想像してみた。

 
…違和感がない?
元々、部活で知り合った彼女は、僕より背が高く活動的で、彼女から声を掛けられて付き合うようになったのだ。
そんな彼女が男になったら、それこそハンサムを絵に書いたようなものだ。
逆に僕はと言えば、普段から、そのままスカートを穿かせただけで女の子に間違えられるんじゃないかと言われる程、男性的な魅力に乏しかった。

そんな貧相この上ない僕に彼女が何で声を掛けたのか、これまでずっと謎だった。が、この一言で合点がいったような気がする。
「男になりたい」と思う彼女が他の女の子達と友達になっても、「女の子」の会話に彼女自身が追いていけなかった事が容易に想像できた。
また、男子達と男友達になろうとしても、その体格差から対等な気分にはなれなかっただろうし、男子達もついつい彼女を「女」として扱ってしまったのだろう。
だから、「男」を意識させない僕とであれば対等な付き合いができると考えたに違いない。
確かに、僕と彼女の関係は「男女交際」と言うより「友達同士」に近い。ともに自分達が男であるか女であるかなどを意識せずに付き合える関係だった。

 

「今度、夏合宿があるだろう?」
僕等の所属する部は、部員間の親睦を深めるためにと夏合宿を行うのだ。目的が「親睦を深める」であるからして、そこで「部」本来の活動などする筈もない。毎日遊び呆けるだけの「合宿」なのだ。
「少しは服を買っておこうと思うんだ。付き合ってくれない?」
僕はなんの躊躇もなくOKしたが、確かに彼女の私服はTシャツとジーパン以外に見た事がない。やはり女の子なのかな?少しはお洒落をしようと考えたのだろうか?
などと、先の発言も忘れて、僕はそんな事を考えていた。

 
「ついでにこっちのサイズも測っておいてくれない?」と彼女が店員に話掛けると「失礼します♪」と僕の体にメジャーが当てられた。
「ぼ、僕は買うつもりはないよ?」と言ったが、「ついでよ、ついで♪」とかなり細かい所まで測られたような気がする。

「ふーん?」とメモを手に紳士物のコーナーを巡り何点か集めてきたものを僕に渡した。
「買うつもりはないよ。」もう一度そう言うと、「試着はタダよ。あたしが選んでいる間の暇潰しと思いなさいな♪」と試着室に送り込まされた。
確かに、彼女のコーディネートのセンスは抜群のものがあった。(これなら一着くらい…)と思わなくもない程、鏡に写る自分を見ていて飽きる事がなかった。

「ねえ、これなんかどう?」
僕が試着している間に彼女が選んできた服を今度は彼女が試着する番だった。が、僕の服を選んだセンスに比べると、自分自身に合わせるには少々無理があるようにしか見えなかった。
「すごく可愛いよ。」とは言ったが、その服が可愛過ぎて彼女の背丈にはかなり難があるように見えた。
そんな僕の負の気持ちが顔に現れたか「そうよね。あたしには可愛過ぎるわよね。」
と次の服に移っていった。

最後に彼女が試着したのは、最初に僕が試着したのと同じコーディネートだった。勿論、サイズは彼女の体に合わせてある。
「これでペアルックなんて良いんじゃない?」
実際、同じ服を着てしまうと(勿論、紳士物だ)本当に男か女か解らなくなってしまうのではないだろうか?
「君がそうしたいのなら…」と優柔不断な僕は、結局OKしてしまうのだった。

 

合宿の当日「絶対に着てきてね♪」と念を押されて先日買ったペアルックで集合場所にやって来ると、意外にも彼女はスカート姿で来ていた。
「あんたって服に無頓着じゃない。こんな時くらい良い格好しなきゃ♪」とは彼女の弁。ペアルックとでも言わないと僕が服を買う事などないと確信しているようだ。
が、僕の姿よりもスカート姿の彼女の方が部員達の話題の中心になってしまった。
「まだ出発まで時間あるわよね?あたしのスカート姿でこれ以上騒がれるのもウザいから着替えてくるわ。」と僕を従えてロッカー室に入った。
彼女が着替えたのは、あのペアルックだった。が、同じ服を着た二人の姿を鏡に写してみた彼女は…
「これはこれで騒ぎのネタになるわね。あんたも着替えない?」と提案してきた。
「あんたの着替えも用意してきてるから、荷物を取りに戻る必要はないわ。」と服の入った袋が渡された。
奪うように僕の服を脱がすと「時間がないから早くね♪」とロッカー室の入り口に移動してしまった。
袋の中に入っていたのは、さっきまで彼女が着ていた服…と同じだが、サイズが違っているようだ。彼女は僕に黙ってもうひと揃いのペアルックを用意していたのだ。

が、これはスカート…女物の服である。
僕は良く女の子に間違われる事があるが、これまで女装したことなどないし、女装したいとも思った事もない…

「急いで!!時間になったら裸のまま連れ出すわよ♪」
彼女がそう言ったら、確実に実行してしまう。仕方なく、僕はスカートに足を通した…

 

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