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2011年3月19日 (土)

エンドレス(前)

鞄の中には女の死体が詰まっていた。
俺の愛人にしていた女だ。
些細な事から口論になり、気が付くと、俺は女を絞め殺していた。

 

「兄さん。オモシロイものがあるんだが、買わないかね?」
宛もなく街を歩いていた俺に、いかにも胡散臭げな老人が声を掛けてきた。
「その鞄、重たいじゃろ?この薬は血肉、骨を消し去り皮だけにしてしまう事ができるんじゃ。まるで全身タイツのようにな♪」
「あ、あんた…何を知ってるんだ?」
俺は背中を冷たいモノが這い落ちてゆくのを感じていた。
「何、わしは兄さんを楽にしてやろうと言っているのだ。鞄の中のモノにこの薬を注入すれば、驚く程軽くなるのだよ♪」
兎に角、この老人から早く離れろと本能が言っている。何かを売りつけようとしているようなら、言い値で買ってやってでも良い…
「…で、いくらなんだ?」
「おお、兄さんは話が早いね。これでどうだ?」
と掌を広げた。
「5万か?」
「いや、5千円じゃ♪」
「ほら、釣りは良いから、これ以上俺に関わらないでくれ!!」
と万札を渡した。
「へへ、毎度♪」
俺が代金と引き換えに渡された箱から視線を戻した時には、もう老人の姿はなかった。

 

電車を乗り継ぎ、都内のビジネスホテルで一夜を明かす事にした。
前金で支払いを済ませ部屋の中に鞄を運び入れると、早速老人から買い取った「薬」を使ってみる事にした。
箱の中には薬瓶と、注入用の専用針が入っていた。薬瓶を針にセットして、女の腕に突き立てた。
瓶の中の薬液が一気に女の中に注ぎ込まれた。
…すると、風船が萎むように、女の肉体が潰れ始めた。肉だけでなく骨も失われ、ペラペラの皮だけが残されてゆく。
頭も潰れ、老人が言ったように女の皮を模した全身タイツにしか見えなくなった。手に取るとヒラヒラとなびく。これだけ軽くなれば移動も楽になる…

 

一息ついたところで風呂に入った。
風呂から上がると、ベッドの上に広げられた女の皮が目に入った。それは老人が言ったように全身タイツにしか見えない。
俺は皮から目が離せなくなっていた。
魅入られたように…
俺は皮を手に取ると、口を広げた。その中の空洞に、俺の肉体を押し込んでいた。
女の皮が第二の皮膚のように俺の身体に貼り付いた。サイズの合わない所が伸び、俺の体型にデフォルメされた女の肉体が鏡に写っていた。
頭髪がまるまる残っている女の頭部を被った。目鼻の位置を合わせる。最後に唇が合わさった。

ドクリ!!

心臓が大きく脈動した。
と同時に、何かのスイッチが入ったかのように、「皮」が俺の全身を締め付けてきた。
手足が指先から絞めつけられ、腕・脚か絞りあげられる。余った肉が胸にあつめられ、そこだけ緩く造られているのか、萎びたバストを膨らませていった。
顔の上でも「皮」が余計な贅肉を追いやっているようだ。目付き、鼻筋が補正され、鏡の中には俺の愛した…俺が殺した女が甦っていった。

下を見ると盛り上がったバストの先端に乳首が突き出ていた。
更にその下、股には俺のモノが膨らみを作っていたが、淡い茂みの先はすっきりとしていた。
好奇心からソコに手が伸びてゆく。指先が潤み始めた割れ目の存在を確認した。
俺は更に指を進めた。指は穴の中に入ってゆく。それは尻の穴ではない。男には存在しない筈の穴に指が入ってゆく。そして、俺の股間からも侵入してくる指の存在が伝えられてきた。

「んあん!!」
思わず叫び声が出た。「女」の敏感な所に触れたのだろう。
しかし、それ以上に驚かされたのは、俺の叫び声だった。「皮」に喉を締め付けられ、喉仏が平らになってしまったから…というのは後から付けた理屈でしかない。
俺の叫び声は正しく「女」の艶声だったのだ。

指を動かすと、ソコから快感が湧き出てくる。快感に合わせて自然と艶声が出てゆく。
股間には汁が溢れ、クチャクチュと卑猥な音が立てられる。
俺はベッドの上で「女」の快感に溺れ、女のように身を悶えさせていた。
何度かの絶頂の後、俺は意識を飛ばしてしまっていた…

 

時計は午前三時を示していた。
俺は自分が何をしていたかを思いだし、背筋が凍る思いがした。
「先ずは皮を脱いで、汚れを落とさないとな…」
俺は鏡の前に座り、「皮」を外そうと口の周りを撫でまわした。
(??!!)
繋ぎ目が無い?
どうやっても剥がすべき「皮」の端が見つからなかった。
「ど、どうやったら剥がれるんだ?」
俺は薬瓶が入れられていた箱を手に取った。何かヒントが書かれていないかと探す…

[素肌に直接着用すると剥がれなくなる場合があります。充分にオイル等を塗って皮膜を…]

俺は頭の中が真っ白になっていた。
この皮を脱ぐ事ができないだと?俺はこの先、この姿のままになってしまうのか?
俺は鏡に写る「女」を見つめた…

(そんな時化た顔すんなよ)
俺は女に言った。
「どんな顔すれば良いのよ?」
鏡の中の女がそう答えたように聞こえた。
(ちっとは笑ってみたらどうだ?)
俺がそう言うと…
「こんな感じ?」
と女が微笑んだ。
(女は笑顔が可愛けりゃ、何とかなるもんだぜ♪)
「そうなの?」
(そうさ♪何も気にする事はない。そのまま外に出ても問題はないぜ!)
「でも、着るモノがないわ。」
(お前の服なら、家にあるじゃないか)
「取ってきてくれるの?」
(…)

確かに、女の服は家にある。
今の「俺」が着るのには何の問題もない…が、この部屋に残されているのは「俺」の服だけである。
取り敢えず、ブカブカのスーツを着てみた。他人が見たら何と思うだろう?今は、まだ夜の内である。タクシーを飛ばせば、日の出前には辿り着けるだろう。
幸いにも、支払いは済ませてある。カードキーも使い捨て仕様だ。
俺は荷物を鞄に詰め、人目に付かぬようにホテルを出た。

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