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2011年3月19日 (土)

実験台(前)

「できた…」
白髪の老人が試験管を手に呟いた。

老人は今では珍しいマッドサイエンティストだった。(その事を彼に言うと、決まって「わしは科学の魔法使いじゃ。そんな下賤な輩てはいっしょくたにせんでほしいな。」と反論される。胡散臭さにおいては甲乙付け難いとは思うのだが…)

「で、おじいちゃん。今度は何ができたの?」
取り敢えず聞いておいてやる。(どうやら、血の繋がった祖父である事には間違いないらしいのだ…)
「おお、真君。来ていたのか?今度こそ、夢の薬が完成したぞ。」
今度こそ…と言うくらい、おじいちゃんの発明品は成功した試しがない。惚れ薬などは序の口で、肉体強化薬ゃ透明人間になる薬、タイムリープを引き起こす薬…その失敗例は枚挙にいとまがない。
それでもおじいちゃんが研究を続けていられるのは、宏おじさんがこれらの失敗作がもっていた複次効果を巧く組み合わせて商品化したものが、結構売れているらしいのだ。その恩恵は親族にまんべんなく配分されているため、だれもおじいちゃんを止めようとしないのだ。
そんな訳で、毎度のようにタイミング良く現れる僕が最初の実験台になるのは、アニメやマンガでは当たり前のようだが、本人にとってこれ以上の迷惑はないと思う。
「死ぬような目にはあっても、決して死ぬようなことにならないよう十分に監視しているから、心配はないよ♪」
宏おじさんはそう言っているが…

 
「何の薬か言ってしまってはオモシロくない。もっとも読者諸兄の想像通りだがね♪」
と訳のわからない事を言いながら、試験管を僕に渡す。
さあ飲め!!
とおじいちゃんの目が言っていた。
僕はためらいつつも、試験管の中身を飲み干していた。

「何か変化はあるかね?」
「即効性なんですか?別に何ともありませんが…」
「体の奥が熱くなるとか、胸がチクチクするとか、頭皮がムズムズするとか…」
「何もありません!!」
「またしても失敗じゃったかな?悪いが、明日も来てくれないか?何か変化がないか見てみたいんじゃ。」
「ハイハイ♪」
今回は何もなかったかと安心して、僕は家に帰っていった。

 

 

おじいちゃんの薬の効果が現れたのは、夜になってからだった。
ベッドでうとうとしていた所、おしっこがしたくなった。そこまでは別に問題はなかった。しかし、トイレに入った時、ボクは無意識のうちにズボンを降ろし便座に座っていた。
最近は、小でも座って用を足す男性もいるようだが、ボクは男らしく立ったままする事にしていた。
そのボクが無意識の内に座っていたのだ。
最初のうちは、それがいつもと違う行動だとは気が付かなかった。噴水洗浄器のビデのスイッチを入れた後に、ペーパで股間を拭おうとしてようやく気が付いた。
(おじいちゃんの薬の所為か?)
思い付くのはそれしかなかった。
ボクにはペニスも存在しているし、バストが膨れてきた訳ではない。肉体的には「男」である。どうやら、行動が女性化しているみたいだ。
多分、おじいちゃんは性転換の薬を作ろうとしたのだろう。例によって、失敗した結果がこの状態に違いない。
行動がオカマっぽくなるとは思うが、実害はなさそうだ。いつものようにひと月もすれば効果は消えて元に戻るだろうと、ボクは再び眠りに就いた。

 

 
目覚ましの音に起こされる。いつもの事なんだけど、何かいつもと違った感じがした。
モソモソと起き上がり、洗面所で顔を洗う。ボサボサの髪の毛をブラシで整えた。
(?)
あたしの髪型ってこんなんだったっけ?近くにあったママのヘアピンでアレンジして、少しは可愛く見えるようになった。ついでにママの化粧水を借りて顔に叩き込んでおいた。
「お早う!ママ♪」と居間に降りて行くと
「…。ああ、昨日はおじいちゃんの所に行ったんだったわね。」
一瞬驚いたような顔をしたママだったけど、即にいつものママに戻っていた。
「今日もおじいちゃんの所に行くんでしょ?何着て行くの?」と聞かれた。
あたしはレースのいっぱい付いたワンピースが着たかったけど、男の子のあたしがそんな服持ってる訳なかった。
「昨日ので良いんじゃない?」と答えると、
「ママのお古で良ければ出してあげるわよ。」との提案に
「本当♪ママ大好き!!」と即座に飛びついていた。

 
何故かママにはゴスロリのコレクションがあった。
「流石、ママの子よね。ママの若い頃そっくり。」あたしはママと背丈が変わらないので、ドレスを着るのには何の問題もなかった。
「若い頃は何の抵抗もなく着れたんだけどね♪」と言うママも一緒になってドレスを着ていた。
ワイワイはしゃぎながら、二人でファッションショーを繰り広げた。
散々迷った末、あたしは最終的に選んだたドレスに身を包み、おじいちゃんの所に向かった。

 

「こんにちわ♪」とおじいちゃんの所に顔を出すと、
「はて?お嬢さんはどちら様で?」と、あたしがわからないようだった。
「真君ですよ。」と宏おじさんがフォローしてくれた。
「ああ、真君かぁ。昨日の薬が効いたようだね?」
「そんなぁ、何も変わっていないわよ。おじいちゃんはあたしの事女の子に間違えたみたいだけど、あたしは男の子のままよ♪」
「真君は自分の考え方が変わってしまった…内面が女の子のようになっている事には気付いていないのかい?」
「どう言う事?あたしは男の子のままだと自覚しているわよ♪」
「君の一人称は僕だった筈だが?」
「え?あたしって、むかしからあたしって言って……なかったわよね。なんか、言葉遣いもおかしくなってないかしら?」
「君の今の姿には、十分に似合っているから、無理に戻さなくても良いよ。君がそれを着ると、本当に姉さんにそっくりだから恐れいるよ。」

話はうやむやのまま、あたしは研究室で薬の効果を確認された。
恥ずかしかったが、ドレスは着たままで、下半身だけ診ることになった。
ベッドに寝かされ、腰の所てカーテンに仕切られる。カーテンの向こうのおじいちゃん達の姿は見えないけど、話し声はしっかり聞こえていた。

「男性器も含め、変化は見られませんね。このままなんでしょうか?」
「う~む。変化が表面に現れていないだけの可能性もある。もう少し様子を見た方が良いかも知れないな。」
と、あたしの敏感な所を弄りながらおじいちゃん達が会話してある。ソんなトコを刺激し続けたら感じてきちゃうじゃない…
「ぁん…」
と、とうとうあたしは小さな喘ぎ声を出してしまった。
「おや、これは済まない。」と手が離されたが、あたしの中に生まれた疼きは静まりそうになかった。
「顔が赤いね。下半身を冷やしてしまったかな?」
「そ、そんなんじゃナイけど…」
「取り敢えず、ベッドに移しましょう。」と宏おじさまがあたしを抱えあげた。
俗に言う「お姫様だっこ」だ。あたしはおじさまの首に腕を掛け、少しでも負担が減るようにしてあげた。

運ばれてきたのは、診察室のベッドではなく、居住区の…おじさまの部屋のベッドだった。
おじさまは独身で、まだ若く、ハンサムなので女性達からよく声を掛けられる。中には、このベッドで一夜を伴にした女性もいるだろう。
彼女達とあたしを比較して、あたしが有利なのは、おじさまがママの弟であたしの小さい頃からあたしの事を見ていてくれているってことくらい。
…あたしは何を考えているのだろう?確かにおじさまの事は大好き…でも、あたしは男の子で、おじさまの恋愛対象になる筈なんかないのよ!!

などと自分に言い聞かせても、あたしの肉体はどんどん熱を帯びてゆく。
ああ、熱い…
どうにか、この熱さを鎮めて欲しい…
(おじさま…)
心の中で呼びかける。
「あたしを抱いてください。」

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