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2010年12月31日 (金)

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その5-

 

「お空けなさい!!」

凜とした少女の声が境内に響き渡った。

ごったがえす人込みの中に一本の路が真っ直ぐに神殿の正面へと伸びていった。
その路を、海を渡るモーセのように、一人の女の子がシャナリと進んでいった。
襟や袖にふんだんにレースをヒラつかせたド派手な振り袖。結い上げた黄金色の髪には、これでもかと言うくらいに髪差しが差し込まれていた。
その後ろには明らかに護衛と思われる黒服の男が二名、恐る恐るといった感じで付き従っていた。

「ほらっ!!」
神殿の正面に辿りついた少女が手を伸ばす。
「お賽銭!!」
少々凝れた感じで黒服の男達に命じる。
仕方ないか…といった風情で懐から財布を取り出すと…少女はあっと言う間に男の財布をひったくっていた。
「シケてんのね~♪」
と万札だけを抜き取り、財布を投げ返した。

カランカラン
と、清らかな鈴の音は奉ぜられた賽銭の多少には拘わらずに境内に響き渡っていた。

 

 
「キャ~~ッ!!」
と女の悲鳴が上がった。
少女に向けられていた参拝客の視線が、一斉に声の方に向かう。
その先には、いつの間にかモンスターが現れていた。
締め縄のような触手を振り回して、参拝客に襲い掛かろうとしていた。

「チッ!!」
振り袖の少女が舌を打つ音は、パニックに陥った群衆の雑音に聞こえる事はなかった。
が、
「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」
同じ口から、高らかにキーワードが唱えられた。

少女の全身が光輝く。燐粉のようなきらめきが少女を包み、戦闘モードへの変身が進んでゆく。
振り袖はちりぢりに砕け散り、その下のレオタード状の下着に包まれた少女のヌードラインをさらけ出す。
燐粉が少女にまとい付き、新たな衣装を形作ってゆく。

「はあっ!!」
とジャンプする。
燐粉が軌跡なぞる。
高々と舞い上がったその頂点で、大きく腕を振るうと、その先端から幾筋もの光の軌跡が伸びてゆく。
ザッ
ザザッ
と、モンスターの触手にナイフのようなものが突き刺さり、逃げ惑う参拝客に届く直前で、地面に縫い止められていた。

タン!!
とモンスターの前にフェアリーと同じようなコスチューム=装甲強化服に包まれた少女が降り立った。
「オリンピア参上♪ってとこかしらね?」
と、再度大きく腕を振るうと、先ほどより幾分か太めの光の筋がモンスターに伸びてゆく。グルリとモンスターの周りを旋回し、光の筋がモンスターを締めあげた。
光の筋は極細のチェーンだった。燐粉が飛び散り、光が褪せるとそこに銀色のチェーンが姿を表していた。
オリンピアがチェーンを締めあげると、モンスターが悶絶する。
「良い様ね♪このまま締め切ってあげましょうか?」
とオリンピアがチェーンを揺すると、モンスターの外側にあった触手の数本が、ボトリと地面に落下していった。

モンスターが絶叫する。
その声に被さるように
「「「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」」」
とアリス達の声が響いた。

「遅くてよ♪」
オリンピアが更にモンスターを締めあげる。
「ボクより目立たないでよね!!」
とウェンディが双剣を振るうが、波打つチェーンに阻まれる。
「邪魔すんなよ!!」
「そっちがトロいだけよ。それに今時ボクッ娘なんて流行らないですわよ。これからは姫娘の時代ですわ♪」
モンスターの絶叫は、オリンピアの主張を肯定させられているかのように聞こえた。

「集中してっ!!」
とアリスの声が飛ぶ。
切断された触手が、いまだに参拝客を襲おうと蠢いていた。イブとエリザベスは避難誘導に忙殺されている。
アリスが一本づつ長剣を振るって触手に留目を差してゆくが、なかなか追いついて行かない。
「触手を千切っても、意味はない。本体を殺らなきゃ!!」
「わ、わかっておりますわよ!!」
とチェーンの動きが緩む。
「はあーーっ!!」
双剣がモンスターに突き刺さりV字にえぐられる。
「はっ!!」
オリンピアのチェーンが輪をつくり、その切れ込みに填まった。
チェーンの輪が高速で回転を始めると、一気にモンスターの体を二分した。
それぞれが地面に倒れるまでの間に、ウェンディの双剣とアリスの長剣がモンスターの残骸を粉々に切り裂いていた。

 

「貴女が五人目という事ね♪」
アリスが握手を求めて手を差し伸ばしたが、オリンピアはそれを無視して変身を解除していった。
「貴女達と馴れ合うつもりはありませんわ。今回はたまたまわたくしの居る場所に現れたので仕方なく対応しただけよ。」
彼女を包む電磁流体が先ほどと同じ振り袖を形作っていた。

「お空けなさい。」
フェイスプレートを外したオリンピアが前に立つアリス達にそう言った。
気圧されたようにイブとエリザベスが動くと、正面に空いた隙間を通って歩きだしていた。
アリス達が振り返ると、オリンピアの後ろにいつの間にか現れた黒服の二人組の男が従っていた。
「な、何者なんだ、あいつは?」
「五人目には違わないようね。オリンピアと言っていたかしら?」
ウェンディの後ろ姿を見ながらそんな事を言っていると、二人組の男の一方がアリス達に向かってきた。
「申し後れました。」
と頭を下げ、一枚の紙切れを渡すとオリンピアの下に戻っていった。
紙切れは名刺だった。角が丸められ、花柄の地の可愛らしいものだ。
「相川唯」
と丸文字で印刷されている。

「相川…相川ってことはあいつの娘…いや、息子か?」
アリスが呟く。
「多分ね…」
エリザベスも肯定した。
「な、何なんだよう。二人だけで解ってても意味なくない?」
そう騒ぐウェンディの頭を撫でるのはイブ…
「さて、どうなりますかね?」
そう言ってオリンピアが消えたあとも、じっとその先を見つめていた。

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