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2010年11月24日 (水)

代役(2/2)

俺は分娩室に運び込まれた。
月が満ちたのだ。
俺はこの姿のまま臨月を迎えていた。
分娩台の上、これ以上もない痛みの中で、俺の股間から赤ん坊が産まれ出ていった。

一瞬後、あたりが静寂に包まれた。
赤ん坊の産声ばかりか、俺のまわりを取り囲む機器の音、人々の息使いさえ遮断されていた。
「ご苦労様。あたしの代わりに産んでくれて。」
声のした方を見る。
そこには助産婦に抱かれた赤ん坊がいた。
ギョロリとした目で俺を見ると、ニヤリと笑った。
「もう用は済んだわ。あなたを解放してあげるわね♪」

 

 

音が戻ってきた。
と同時に出産の痛みが俺を襲ってきた。
俺は痛みに腹を抱え、その場に蹲っていた…

「どうしました?」と男の声がした。
「ぁあっ。」と俺は顔を上げた。
そこにあったのは、なつかしい「俺」の顔だった。目の前に「俺」がいるという事は俺は今だ「俺」ではないという事なのか?俺はまだ女の姿のままだと言うのか?
「俺…わ、私は誰に見えますか?」
そう言って、自分は何を聞いているのかと自己嫌悪に陥る。
「大丈夫ですか?」と「俺」が声を掛けてくる。この「俺」には何の罪もないのだ。
やっとの事で俺は笑顔を返してやった。
「大丈夫です。ありがとう。」そう言って立ち上がる。今の俺はいまだ「女」であったが、妊婦ではなかった。お腹に胎児のいる感覚に馴れていたので、立ち上がった拍子に少しふらついた。
「俺」が時計を見ている。たぶん、いつもより一時間以上も早い筈だ。しばらく考えた後、
「近くにお店があります。そこで休みましょう。」と言ってきた。
「ありがとう…」
俺は「俺」に連れられて、近くの喫茶店に入っていった。

 

 

「あん、ああ~ん♪」
俺はベッドの上で嬌声をあげていた。
俺を抱いているのは「俺」である。「俺」の勃起したペニスに俺自身が貫かれているのだ。

俺は訳が判らなくなっていた。
喫茶店で落ち着いた後、俺がしばらく過ごした屋敷に向かった。
…が、そこにあったのは廃工場の錆び付いた鉄骨の骨組みだった。
あの公園にも行った。
二日間彼女を待ち、その後も何度か散歩に訪れたのだ。が、彼女を待って座っていたベンチの場所には、自動販売機が置かれていた。
そこには、俺が妊婦として過ごした事を連想されるものが、ことごとく失われていた。

それ以上に
…今日は何時なのだろうか?

「俺」の行動を見る限り、俺が彼女の代わりをさせられた「その日」としか思えなかった。
俺が「妊婦」として過ごした「時間」さえもが失わされてしまったというのだろうか?

 
途方に暮れ、泣き乱れている俺に「俺」はずっとつきあってくれていた。
日も暮れた。「俺」に誘われるまま食事をした。「俺」にしてみれば、小洒落たレストランだった。
好い雰囲気のまま、アルコールが入り、ホテルに誘われた。
今の俺が「俺」好みの容姿をしている事に思い至った。ここまでしてくれた「俺」に何か応えてやらなければと思い、誘われるがままにベッドに入ったのだ。

「あん、ああん♪」
俺のあげる媚声は、何もサービスしている訳ではない。本当に気持ち好かったのだ。
そう言えば、妊婦でいた間も男に抱かれた事はなかった。そもそも、彼女の「夫」なる男とは顔を合わせたことさえなかった。
出産を経験したにもかかわらず、これが俺の「初体験」に他ならなかった。

「あああ、ああ~ん♪」
次々と快感が襲ってくる。
その先に快感の頂きが見えてきた。
「ぁあ…、イクゥ~、イッちゃうよォ…」
俺のうわごとに「俺」が反応する。
責めたてる勢いが一段上がる。
そして「俺」にも変化があった。
「お、俺も…出そう…」
「ぁあ、出して頂戴。あたしのナカに♪」
「い、いくよ…」
「ええ♪」

「俺」の精液が勢い良く俺の膣に放たれたのを感じると同時に、俺は絶頂に達し、気を失っていた。

 

 

その部屋には俺独りしかいなかった。
しかし、俺は俺自身とSEXした事は確かな事なのだろう。
床の上には、男と女の服が一着づつ、脱ぎ散らかされていた。
そして俺の股間は、俺自身の精液と愛液の混ざった名残に汚されていた…

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