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2010年11月24日 (水)

暴走

(コース・クリア)
AIが告げてきた。
俺はタイミングを計り、空間遷移のトリガを引いた。
メビウス回路が唸りを上げ、俺の宇宙艇を亜空間に放り込む…
推進機の出力を上げると、宇宙艇は光速の何十倍もの速さで空間を突っ切っていった。
(目標到達まで百秒です)
再びAIが言ってくる。
俺は推進機の出力を絞り、メビウス回路が停止するのを待った。

 
恒星の密集する宙域では、こまめに亜空間を出入りしなければならない。
これを無視して暴走すると、とんでもない事になる。とんでもない事をしでかした「俺」が言うのだから間違いはない。

今でこそ、安全第一の軽便貨物の配達屋をしているが、数年前までの俺は、仲間とつるんで暴走行為に明け暮れる日々を送っていたのだ。
宇宙艇を横一列に並べて衛星をフライバイさせる。もちろん安全基準など守る意思はない。艇自体も透明装甲で中を丸見えにし、オンナとヤりながらアステロイドをかっとばすのだ。

何かに「反対」しているだけで気分が高揚する。「若者」らしいといえばそれまでであるが、何故禁止されているのかを深く考えていなかったのは確かであった。

俺はオンナを乗せ、恒星密集宙域の連続遷移を敢行した。隣接した遷移ポイントの解放タイミングがシンクロした瞬間に、一気に駆け抜ける荒技だ。
当然通過する遷移ポイントが増えれば難易度も上がる。8ポイントをGETしていた俺は、英雄視されていた。

今回はオンナを乗せていたので、5ポイントと難易度を下げていたが、それでも十分に危険な行為だった。
タイミングがシンクロする一瞬に、全てのパワーを推進機に送り込む。
「キャー!!キャー!!」とポイントを通過する度にエクスタシーを感じるのか、オンナが叫ぶ。

一瞬の狂いだった。

オンナが俺を締め付けた。4っつ目を通過した瞬間、これまでにない力で締め付けられ、俺の手元がブレた。
最後のポイントに突入するタイミングが僅かに遅れた…

 

ビーッ、ビーッ!!
警報が鳴っていた。
脆弱な透明装甲に亀裂が入っていた。抜け出す酸素を止めるべく補修ゴムがそこかしこに吹き付けられている。
遷移事故…
昔は良くあったと聞く。だからこそ、規制が設けられているのだ。

俺はゆっくりと起き上がった。
身体に異常はないようだが、何か違和感を感じていた。それは、いつの間にか俺が全裸となっていた事とも違う…何か根本的な所に問題があるようだった。

艇内を見渡す。
そいつは、後部座席に頭をめり込ませていた。簡易宇宙服がそこかしこで破れている。頭のめり込んだ座席は流された血で黒ずんでいた。
(死んでる?)
俺は動こうとしない肉体に触れた。
腕があり得ない角度に曲がる。動かない肉体がゆっくりと座席から離れた。
半分潰れた顔が露になる。

それは…
「俺」の顔だった。

 

 

 
程なく、救命艇が駆けつけてきた。
「俺」の身体にシートが掛けられ搬送されていった。
俺は毛布にくるまれ、女性係員とともに艇を後にした。

俺はまともに喋れなかった。事故のショックによる一時的なものだと医者は言っていた。
俺が何かを言えるようになった時には、事故の整理が終わってしまっていた。
事故は「俺」の暴走行為によるものであり、その償いは自らの命で支払いを済ませた事になっていた。俺は単なる同乗者で「俺」の行為の一方的な被害者とされていた。
「貴女も付き合うなら、もっとまともな男と付き合いなさいな。」
と、病院を出る時に忠告された。

 

事故を起こしてしまったが、それを理由に俺の宇宙を飛ぶという欲求が衰える事はなかった。
俺が新たな身体で、再び免許を取り直して宇宙に出るまでには、そう時間は掛からなかった。ノウハウは全て持っていたし、事故の記録は「俺」に付されただけで、「今」の俺の記録には一点の曇りもないのだ。
免許取得の最短記録に並ぶかのこの身体は、更に新たな観点からの宇宙の素晴らしさを俺に教えてくれた…

 

 

(10、9、8…)AIが目標到達までのカウントダウンに入った。
俺は俺の艇の中、パイロットシートに座り、じっとしていた。その瞬間を待ちわびるかのように、俺の股間では膣が震えている。トロリと愛液も出ていた。

この身体が殊更に敏感なのかは定かではないが、空間遷移の度に性的な快感を感じるのだ。

(3、2、1…)
「っあ、ああ~ん♪」
亜空間からの復帰と同時に、俺はオンナのように艶声をあげてしまう。
今の俺は「女」なのだから、その表現は正しくないかも知れないが、俺の内面は今だ「男」なのだ。
その俺が「女」の快感を受け入れてしまう程、この快感には代えられないものがあった。

メビウス回路の停止を確認し、俺は次の遷移ポイントに艇を流した。
しばらくの間、自由落下が続く。俺はパイロットシートをリクライニングさせた。

「俺」は今、宇宙に居る…
窓の外…無限の空間を見ながら、俺の手は自然と股間に向かう。
軽宇宙服の上から、快感の余韻を引き戻す…

「ぁん、ぁあん…♪」
俺の…
オンナの喘ぎ声が、宇宙に漏れ出してゆくのだった…

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コメント

TSF好きのkazuです。奈落さんのTSFは最高です。
今回の作品は、連作のプロローグに、感じました。
続編を楽しみに、しています。

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