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2010年10月 1日 (金)

「俺」という存在(5/5)

 
仕事は以前とは変わらない。俺が女だという事で野郎共が何かと支援してくれる。
そのお礼にと、夜の誘いにも付き合う。最初は順子から、お酒の席での女の子の所作を教わっていたが、何度か繰り返すうちに独りでも大丈夫とのお済付きをもらった。
部長に誘われた時は賀茂医師と三人だったが、賀茂さんが途中で席を離れてしまい、俺と部長の二人きりになってしまった。
「良かったら、この上のラウンジで飲み直さないか?」
との提案に断る理由もなかったので、ホテルの最上階に向かった。
そこは、夜景が綺麗との評判が高いとは聞いていた。
「綺麗…」
俺は思わず、そう口にしていた。
綺麗、美味しい、可愛い…女になってから、感情が即に口に出てしまうようになっていた。
「君も凄く綺麗になったよ♪」
キザっぽく、そう言って部長がカクテルのグラスを差し出してきた。

「少し酔ったみたい…」
雰囲気に呑まれたのか、アルコールの廻りが早く感じられた。
「じゃあ、こっちで少し休もう♪」
と連れてこられたのは、ホテルの一室だった。
「部長?!!」
俺が声をあげると
「何を驚いているんだい?君も男だったんだから、こういうシチュエーションがどういう事かは判っているんじゃないかね?」

確かに俺は男だった。
今も心の一部は男のままであると考えている。
その「男」の意識はホテルに女を連れ込めた時のシュミレーションがはっきりと目に浮かんでいた。と同時に、ターゲットである「女」が俺自身である事に気づく。
俺が男に抱かれる…「男」の意識は、即座に拒絶反応を示す。
「イヤッ!!」
俺はそう叫んでいた。

(受け入れてしまえば楽になるわよ…)
賀茂医師の言葉が甦る。

俺は「女」なんだ…
部長になら抱かれても良いと思っている…

俺は大きく深呼吸した。
「そうよね。ココまで来てオアズケは無いわよね。」
そう言って服を脱いでいった。
「でも、あたしとしてはハジメテなんだから、優しくしてくださいね♪」
俺が全裸でベッドによこたわると、ゆっくりと伸し掛かってきた。

部長は女の子の扱いには慣れているようで、俺の性感帯を的確に責めたててきた。部長の手が動く度に、俺は悶え、艶声をあげてしまう。
それ程の時間も掛からずに、俺の股間は濡れ始めていた。
「ひとりエッチは経験したのかな?」
「ぁあん♪そんなコトは聞かないでください!!恥ずかしいです。」
部長は言葉でも俺を興奮させた。
興奮が高まると共に愛液の量が増してゆく。
「おや、お前の股間はもうヌルヌルじゃないか。初めてだからとローションも用意していたが、必要はないようだね♪」
いよいよ俺の膣に本物のペニスが挿入されるのだ。
グロテスクに勃起した部長のペニスは、俺が持っていたものより、遥かに太く、大きかった。
(こんなモノがはたしてすんなりと入るものなのだろうか?)
俺がそんな事を考えている内にも、ペニスの先端が俺の股間…膣口に触れていた。
「イキまないように。努めてゆっくりと呼吸するんだ。」
言われるがまま、意識して呼吸する。
(吸って、吐いて、吸って、吐いて…)
その時、スルリとペニスが俺の膣に入り込んできた。
「呼吸を続けて♪」
呼吸のリズムに合わせて、ペニスはどんどん奥に入っていった。

(??)
また別の感覚があった。
「これは子宮口だね。わたしのペニスが膣の最も奥まで届いたと言うことだ。痛くはないかい?」
俺は頭を左右に振った。
「じゃあ、動かすからね♪」

その直後、滅茶苦茶な快感が俺を襲ってきた。

 

そのまま、俺は幾度となくイかされた。
快感とともに、男に愛されているという幸福感に満たされてゆく。
俺は自分が「女」である事を実感していた。これから先、俺は男に抱いてもらえない事を不満に感じるのだろう。
男に抱かれる事は当然の事であり、より良い男に抱かれる為に女を磨いてゆくのだろう。美しくあり、愛されるために愛し、甘える。
俺はもう、女らしくなることを躊躇うことはないだろう。

 
再び部長の愛撫が始まった。彼がより興奮するよう…そして、俺自身がより快感を得られるよう、俺は淫らに悶え、艶声を漏らす。
そして、高みに向かうにつれ、何も考えられなくなる。嬌声を発し、俺はただ、ただ、高みを目指し、昇り詰めていった…

 

 

 

 

 
「結局は他人なのかしらね?」
俺は「俺」の墓の前で手を合わせていた。
「もう来ない事に決めました。あたしはあたしとしての人生を歩く事にします。」

昨夜、俺は彼氏からプロポーズされた。
今の俺は「女」なのだ。愛される事に幸せを感じる。もちろん、プロポーズは受けるつもりでいた。
だからこそ、その前に俺は「俺」と決別すべきだと考えたのだ。

今こそ、俺は俺の内にある「俺」の全てを、この墓の中に置いてゆこうと思う…

 

「俺」は離れてゆく女が電話する声を聞いていた。

(うん。あたし♪昨夜のお話、受ける事にします。そう、答えはYES。今後ともよろしくお願いします♪)

フフフッという笑い声が遠退いていった…

 
-了-

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コメント

突然の余命宣告。
そして、その訳が開かされて、変わり行く環境。
静かに流れていく時と環境。
いいですね、まるで、習作のドラマを見ているようでした。
でも、コレを演じれる役者っているかしら?

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