« ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その3の裏-  | トップページ | 復讐? »

2010年10月 9日 (土)

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その3-

中央公園では陸上競技会が開かれていた。
モンスターはそこにも現れた。

競技会とあって、公園には普段以上の人々が集まっていた。
逃げ惑う人々を競技会の役員や選手達が誘導してゆく。
トラック競技に参加していた天野翔も先頭を切って誘導を続けた。先陣が安全圏に逃れると、取って返して第二陣、第三陣と誘導した。
その間にも、モンスター退治の人達が現れた。
人達と言っても、仮面を付けた女性が二人だけである。(それも二人目は最近増えたばかりだ)
特殊な火器で牽制しながら、もう一人が長剣でモンスターに傷を負わせてゆく。モンスターが現れだした当初は、警官も銃を打っていたが、一般的な武器が一切通用しない事が判ると、彼女達が現れるまで逃げ惑っているしかしなくなっていた。

大勢の誘導は、落ち着きを取り戻した警官達に任せ、翔は公園の中に逃げ遅れた客がいないかと駆け巡っていた。
木陰に小学生くらいの女の子が二人いた。姉妹なのだろうか、泣きじゃくる小さい子を、もう一人が必死になだめていた。
「どうした?」
翔が声をかけると
「ママとはぐれてしまったの。それでミカ…この子が泣き出しちゃって…」
姉の方がそう答えた。
「いつまでもここにいると危ない。とにかく、離れるんだ。」
「でも、ここにいないとママが…」
「片が付いたら戻って来れば良い。行くよ!!」
と翔は妹を抱え、公園の出口に向かった。

 

「捕縛魔砲!!」
女性の叫びが聞こえた。
「外れっ!!しっかり狙ってよね!!」
ともう一人の声。
その間にも、モンスターは位置を変え、あろうことか翔達の向かった先に進んでいた。

 
「なっ!!」
突然、翔の目の前にモンスターが現れた。
触手が振り下ろされてくる。
翔は抱えていた妹を姉に預けると同時に、脇の茂みに向かって二人を突き飛ばした。翔は囮になるようモンスターの視界から外れることなく、触手から逃げるようダッシュした。
二度、三度と触手を躱したが、一気に伸びてきた触手に足を絡め取られた。
翔は大きく態勢を崩した。足首が過負荷に悲鳴をあげる。ブチリと異様な音を翔の耳が捉えていた。
次の瞬間、翔の体が宙空に振り上げられる。翔は自らの足から感覚が遠退くのを感じていた。

「捕縛魔砲!!」
再び発射された弾丸は、今度こそ確実にモンスターを捉えていた。

翔の足から触手が離れる。翔の体が宙に舞い上がるのと入れ替わりに、女戦士の長剣が、モンスターを真っ二つに切り裂いていった。
落ちてくる翔を、もう一人の女戦士が抱き止めた。
「うっ、あ~~~っ!!」
翔は苦痛に叫び声をあげていた。

「この足は…」
無残にも翔の足は、足首から先が力なくぶら下がっているだけだった。
「たとえ、手術が巧くいったとしても、二度と走る事はできないだろうな。」
長剣を納めた女戦士は、翔を一瞥すると姉妹が飛ばされた茂みに向かった。
「もう大丈夫よ。」
と二人を立ち上がらせた。
「ミカ~、マイ~!!」
公園の入り口から、姉妹の母親らしき女性が駆け寄ってきた。
「この子達は大丈夫ね。問題は…」
長剣の女戦士は、翔を抱いているもう一人の女戦士を振り返った。
「とりあえず、連れて帰りましょう。専門家に診てもらわなければ、何もできないわよ。」

こうして、翔は二人の女戦士と伴に、中央公園から姿を消していた。

 

 

「貴方の足は、もう走る事はできません。競技者としてグラウンドに立つ事は不可能です。」
翔は医師から改めて再起不能を宣告された。が、医師はこう続けた…
「ただ、貴方が走る事を補助する技術を我々は持っています。貴方にその意志があれば、我々はその技術を貴方に提供する準備があります。」
どんよりと曇っていた翔の顔に、一瞬で生気が戻ってきた。
「その意志…って、僕は何をすれば良いのですか?」
「我々がモンスターと戦っている事は判っているね。君にこの世界の平和を守る意志があるのであれば、彼女等と伴にモンスターと戦ってもらいたい。我々の提供する装甲強化服をまとい、第三の女戦士となってもらえないだろうか?」

「走れる」その一言が翔の頭の中を埋め尽くしていた。そんな彼が、医師の台詞にあった重要なキーワードを聞き逃していた事など、誰も責められないだろう。
「やります!!」
と即答した翔に、医師は装甲強化服の説明を続けていった。

そして、手渡された黒い全身タイツ様のものを身に着け、翔は電磁溶液のプールに身を沈めていった。

 

「電磁溶液の充填は完了した。システムを起動するからこちらに来てくれ。」
痛めた足を引きずり、翔は医師の前に立った。
「システムが起動されれば、切断された筋肉が補完され、君の足は元通り…いや、それ以上のパワーと持久力を得ることができる。少し痛みを伴うかも知れないが、良いかね?」
翔はYESとばかり、大きく首を縦に振った。
「ではいくよ。」
システムが起動される。痛みは足ばかりではなく、全身を締めあげてきた。
翔は痛みを堪え、その場に立ち続けた。

 
「起動は完了した。戦闘時はマックスまでパワーを上げるが、今は最小限に抑えてある。足は動かせるかね?」
全身の痛みが引くとともに、足の痛みも消えていた。
翔はゆっくりと一歩を踏み出した…
「スゴイ!!痛みが何も感じられない♪」
そう言った翔は自らの声がいつもと違っているのに気が付いた。
「フェイスプレートで喋れなくなっているから、発声装置を動作させているんだ。こちらに鏡がある。見てみないかね?」
鏡に向かって数歩あるいただけだが、翔は持ち前の運動神経で即にバランス良くあるけるようになっていた。
そして、鏡の前に立った…

そこには、仮面を付けた女戦士が、真裸で立っている姿が写っていた。
「こ、これがボク…ですか?」
「戦闘時は放熱板が展開されて、あのようなコスチュームとなるのだが、平時は普通の女性と変わりがない。彼女達も普通に服を着て生活している。」
「…」
「勿論、装甲強化服を脱げば元の姿に戻れるのだが、君の場合、足の問題があるから、そうそう脱ぐ事もできないだろう。そこらへんの不便は我々でバックアップしてあげるから問題ないよ。」
「ボ、ボクはこの先ずっと女の格好をしていなければならないのか?!」
「装甲強化服がなくても歩けるようになるまではね。大丈夫、君はまだ若いから、即に慣れるよ。」
「女として生活することに慣れたくはありません!!」
「いや、若いから傷も早く治るよと言いたかったんだ。」
「…」
「それより、いつまでも裸でいる訳にもいくまい。第一、我々も目のやり場に困る。」
「ボ、ボクは男です。そんな目で見ないでください。」
「わ、悪かった。服はこの中に入っているから…」

 

着替えの終わった翔は、どこかの女子高生と言ってもおかしくはなかった。
「なんですか?この制服っぽい服は?!」
「すまんが、制作者の趣味なんだ。我慢してもらえないだろうか?」
「もしかして、ボクが少し走ってみたいと言うと、ブルマとかが出てくるんじゃないですか?」
「おお、良く判ったね♪」
「…付き合いきれませんね。」
「そう言わずに…、そうだ、平時はフェイスプレートは外せるからね。普通に呼吸したり、飲み食いも可能になる。が、発声装置が生きているから、不用意に喋ると男声と女声が同時に出てみっともないからな。細かい事は先輩達に教えてもらいなさい。」

「ハーイ♪」と声が掛かった。
振り向くと二人の女戦士がそこに立っていた。見慣れたコスチュームではなく、普通の格好をしていた。
もちろん仮面=フェイスプレートを外し、素顔を曝している。
「よろしくね♪あたしはアリス。こっちはイブよ。」
「君の名前はウェンディだ。」
「あリス、いブ、うェンディ…、四人目はえリザベスですか?」
「なかなか鋭いね。四人目が現れるかはまだ判らないよ。」

「お喋りはその位にしておきましょうね♪ウェンディもフェイスプレートを外して楽になりましょう。」
アリスが割って入った。
アリスの手が翔=ウェンディの顔に伸びると、パカリとフェイスプレートを外した。
「あら?」
とイブ
「これなら、お化粧もいらないかも♪」
翔自身、自分の童顔にはコンプレックスを抱いていたが、首から下が女性の姿になっている事もあり、彼=彼女の顔は女性としての違和感が全くなかった。
「それでも口紅だけはしておきましょうね♪」
とのアリスの指示に従い、イブが桜色のグロスをウェンディの唇に塗った。
「「これがボク?」」
鏡に映っていたのは、どこから見ても「女の子」だった。
「声だけは気をつけてね。男の声を出さないように練習しなくちゃね♪」
「それまでは、人前で声を出さないようにね。」
後ろから鏡に割り込んできた美女達に圧倒されていた翔だったが、
「「今、口を開けないで喋ってました?」」
と、その違和感を口にしていた。
「わたし達も発声装置で喋っているのよ♪」
「って言う事は…」
「「俺達も中身は男だという事だ。」」

「「ははは…」」
翔は乾いた笑いをあげるしかなかった…

 

 

「いったわよ!!」
長剣の女戦士が三人目に声をかける。
「任せて♪」
華麗なフットワークでモンスターの行く手に回り込んだのは、双剣の女戦士=ウェンディだった。
「はあーーっ!!」
高々と跳びあがった。フェアリーダストが彼女の軌跡に散りばめられる。モンスターの脳天に二本の剣が振り下ろされた。
重力に従い、地面に向かう。彼女の手に握られた双剣は、そのままモンスターを三分割してゆく。
地面に辿り着く直前で反転し、綺麗に着地したウェンディの背後で、モンスターはゆっくりと倒れていった。
「任務終了。撤収するわよ♪」
長剣の女戦士=アリスの宣言でウェンディの初陣は成功裏に終わった。

 

 

ターン!!
青空の下、貸し切りとなった競技場で、イブがピストルでスタートの合図を送る。
ウェンディ=翔は、白線の引かれたトラックを、気持ち良く駆け抜けていった…

« ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その3の裏-  | トップページ | 復讐? »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その3-:

« ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その3の裏-  | トップページ | 復讐? »

無料ブログはココログ