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2010年9月18日 (土)

エプロンを着たら…(前)

 

「やぁ♪」
声を掛けられ振り向くと、親友の戸田浩司がいた。
「おはよう。」と返事をする。

いつもの光景、いつもの事…

しかし、それは表面的な事でしかなかった。
もっとも、いつもと違っていたのは「僕自身」なので、浩司がその事に気付く筈はなかった。
「どうした?元気ないじゃん。」
「そ、そんな事ないよ。」
僕はその変化を悟られまいとした。が…
「どこか具合でも悪いのか?顔も赤くないか?」
結局、僕には隠し通せる能力がない事が判明する。
「び、病気じゃないよ。」これは本当の事。
僕は浩司の顔を見る度に、顔が赤く染まってしまうのだ。
病名をこじつけるのなら「恋患い」だ。
夕べまでは、浩司の事は「親友」と認識していた事は確かだった。今朝になり、自分の肉体が女の子になっていたのに気付くと同時に、僕は浩司に「恋」しているのに気付かされたのだ。
自分の肉体が女の子になっているのを知られるのは、もちろん恥ずかしい。が、それ以上に浩司に恋愛感情を持ってしまった事を知られたくなかった。

病気ではないので、学校を休む訳にはいかないと思い、普段通りに制服を着て学校に来た。が、浩司に出会うなり意識してしまい、隠し通せるかは雲行きが怪しくなっていた。
「本当に何でもないよ。大丈夫だから!!」
と、自分の席にさっさと座るのが精一杯の解決策だった。

 

しかし、僕の努力も、そう長く保ってはいられなかった。
授業が始まってすぐに、下腹部がシクシクと痛みだしたのだ。
痛みは次第に大きくなる…
「先生!飛鳥君が調子悪そうなので、保健室に連れていってやって良いですか?」
浩司が立ち上がった。
僕はそんなに苦しそうな顔をしていたのだろうか?
浩司に腕を引かれ、立ち上がる。
教室を出ると、保健室には向かわずにトイレに直行していた。個室のドアが開かれ、送り込まれる。
「先ずはスッキリさせておけ。それから、コレを使うと良いよ。」
とハンカチに包まれたモノを渡された。

言われるがまま、洋式の便器に腰を降ろした。
溜まっていたモノが体の外に排出されていった。
いつもの大や小とも違う感覚は、僕が女の子になってしまったからなのだろうか?
いまだスッキリとは言えないが、多少は楽になった。ペーパーで股間を拭う。
いつもは在る筈のモノがないので、違和感が大きい…
「?????」
僕は叫びそうになるのを必死で堪えた。
僕の股間から血が垂れていた…
もちろん、何か怪我をした訳ではない。僕の、新たに存在を始めた「女の子」が、血にまみれている…これは「生理」という現象なのだろうか?

ふと、浩司が渡してくれたモノが気になった。
ハンカチの中から包まれているものを取り出した。

「何故、浩司がこれを僕に渡す事を思いついたか?それは何時か?準備をしていたと言う事は…」
聞きたい事はイロイロあったが、浩司の渡してくれたモノ=ナプキンは、今の僕が正しく必要としていたモノには違いなかった。

 

 
「ああ、それは、お前を女にしたのは俺だからな。」
浩司はあっさりと白状した。あまりにも、あっさりしていたので、僕は二の句が継げなかった。
「お前、男のくせにメチャ可愛いだろう?女にしたら、俺のストライクゾーンにドンピシャリに違いないと思ったんだ。」
「そ、そんな事言われても…」
何故か浩司の言葉に、心臓がドキドキする。
「思った通りだよ。この際、俺と付き合わないか?」
僕の顔から火が吹き出てるんじゃないかと思うくらい、顔が真っ赤になっているんじゃないだろうか?

血が頭に上り過ぎたのか、上体がフラリと揺れた。
倒れそうになるのを、浩司に抱え止められていた。
「しばらくは、肉体が不安定になる。今は、予定通り保健室に行こう。」

上着を脱がされ、ベッドに寝かされた。
ワイシャツの下に胸の膨らみがあるのが判ってしまうが、相手がそもそもの元凶と判っていれば、何も気にする必要はない。
「ズボンのベルトも緩めておいた方が良いぞ。なんなら、ズボンも脱いでしまうか?」
「バ、バカ。」
何故か笑みがこぼれてしまう。
浩司に対しては、怒りをぶつけても余りある事を行ったと言うのに…

 

終業のチャイムが鳴っていた。
窓の外は夕日で紅く染められていた。
「ほら、替えの下着を用意してきたぞ。」
浩司が枕元に紙袋を置いた。
「大分回復したんじゃないか?」
何故か、僕より僕の身体の状態に詳しい。まあ、全ては浩司の仕組んだ事なのだから、不思議ではないのだろう。
カーテンが閉められたので、毛布を剥いで起き上がった。
予想通りと言うか、ズボンは脱がされていた。
紙袋の中には、女物の下着と新しいナプキンが入っていた。ありがたく穿き替えさせてもらう。
ズボンを穿こうとしたが、見当たらない。上着を掛けておいた場所に女子の制服のブレザー・スカートが掛けられていた。これまでの流れから察して、着てみるとサイズはピッタリだった。
鏡がないので確認できないが、このまま外に出たら、誰も僕が男であるとは思わないだろう。実際、肉体は既に「女の子」になってしまっているのだ。
上履きを穿き、カーテンを開ける。
「うおおっ!!思った以上に可愛いじゃないか。これなら、何も問題はないな♪」
と、浩司は独りはしゃいでいた。
「何が問題ない…だ。この服や下着はどうやって手に入れたんだ?」
「勿論、俺が買っておいた。サイズは判っていたし、女の格好で行ったので、誰も疑問は抱かなかったようだ。」
「女の格好?」
「ああ、お前を女にする前に自分で試してみたんだ。その日のうちに生理になったのには慌てたよな。」
「い、今は男だよな?僕も、ちゃんと男に戻れるって事だよな?」
僕も浩司と同じように男に戻れる事が判り、ほっとした気持ちになった。が…
「俺がその気になったらな。時間が来れば元に戻ってしまうようでは、お前を女にした意味がないだろう?」
「意味…って、浩司と付き合うって事?じゃあ、明日の休日にデートでもすれば良い訳?」
「先ずは…だな♪」
「あ、後は?」
「お前の手料理が食べたい。」
「明日のデートには、お弁当を作って行くよ。」
「エプロン・ドレスなんかが良いな。帰りに買ってやる。」
「判った。それを着て行くよ。」
「ひざまくら…」
「何だってしてやる。」
「キッス」
「ファースト・キスでも何でも良いよ。」
「お前のハジメテを貰う。」
「良いよ、何だって……」
勢いに乗り過ぎて、何かとんでもない約束をしなかったか!?
「…って、浩司と…その…SEXするってこと…?」
浩司がニタリと嗤う。
「今、良いと言ったよな?」
「ち、違う!!今のナシ!!!!」
「男に二言なし…じゃなかったっけ?」
浩司は僕の口癖を真似る。
「そ、それは……今、僕、女の子だし…」
「じゃあ何か?付き合っている男と女が何もしないでデートを終わらせるのか?」
「で、でも…」
「判った。その代わり、お前がその気になるまで男になんか戻してやらないから♪」
「えっ?そんなぁ…」
「俺はいつまででも待っていてやるぜ♪その気になったら、声を掛けてくれ。」
出て行こうとする浩司の腕を、僕は必死に掴んでいた。
「わ、判った。な、何でもするから……でも、SEXだけは…」
「ま、まあ良いか♪じゃあ、明日の支度だ。エプロン・ドレス、エプロン・ドレス♪」
無邪気にはしゃいでいる浩司を見ていると、何故かクスリと笑みがこぼれてしまうのだった。

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