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2010年9月18日 (土)

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その2-

 

街にモンスターが頻繁に現れるようになって久しい。
モンスターを退治する「フェアリー」の活躍も見慣れた光景となっていた。

どこから現れるのか、地面から湧いたかのように、モンスターは唐突にそこに存在してくるのだ。大きさは個体によって異なるが、大体5m前後。体重は不明だが、それなりの質量はあるみたいだ。
モンスターはどれも形状が異なっているので、同一種とは思えない。が、それらの行動バターンは殆ど同じであった。
学校の校庭や公園など、広めの所に出現し奇声を上げては木々をなぎ倒し、ベンチや街路灯など手近の構造物を破壊してまわるのだ。そして、天敵の女戦士=フェアリーが現れると破壊活動はピタリと止め、決着が付くまで彼女と戦い続けるのだ。
モンスターには通常の攻撃は効かない。警官の拳銃など、蚊に刺された程も感じていないようだ。(戦闘機のミサイルであれば効果はあるかも知れないが、住宅地の真ん中に向かって発射ボタンを押す訳にもいかない)
唯一、フェアリーの剣だけがモンスターを切り刻む事ができるのだった。

フェアリーが何者であるかを知る者はいない。
仮面を付けた彼女は、戦闘用の服装とは思えないヒラヒラの衣装をまとって現場に現れる。ヒラヒラの下はレオタード状になっており、彼女の謹製のとれた肢体がはっきりと判る。男達はモンスターから逃げる事も忘れて彼女に見とれ、仮面の下の美顔を想像して股間を固くしている事も珍しくなかった。
人間離れした跳躍力。キックやパンチは確実にモンスターにダメージを与えていた。
精巧なアンドロイド・ロボットかとも思われる事もあるが、モンスターの反撃に会い、全身を強打した際にあげるうめき声からも、彼女が生身の人間である事が窺えた。

やがて、モンスターの動きが鈍くなる。
万を辞して、彼女が剣の柄状のスティックを手にする。彼女の発するキーワードとともに、刀身が形成される。淡い光を帯びた剣が振り下ろされる。
軌跡にフェアリーダストが舞う。
モンスターは真っ二つになったかと思うと、グズグズと崩れ去り、塵となって消えていくのだ。

 

 
私は、いつものようにモンスターに荒らされた公園の後片付けで一日を終える。
疲れた肉体を癒す為に居酒屋に立ち寄る。独りカウンターで肴をつまんでいると…
「お隣、よろしいですか?」と声が掛かった。

そこに居たのは、フェアリー並にスタイルの良い美女であった。
「貴方、いつも公園の後片付けをして下さっているのでしょう?ご苦労様です♪」
美女は隣の席に腰を降ろすと、私に話掛けてきた。
「いやぁ、派遣切りに合いましてね。無職でブラブラしている自分に嫌気が差してしたんですよ。そんな時、モンスターを退治するフェアリーを見て、自分でも何かできる事があるはずだと思ったんだ。」
「正義感が強いのね?」
「そんな立派なものじゃないよ。まあ、子供の頃はTVのスーパーヒーローを見て憧れていた事はあったけどね。」
「良かったら、貴方もあたしと一緒に戦いませんか?」

彼女の言葉に私は絶句し、しばらくの間、マジマジと彼女の顔を見てしまった。

「あ、貴女がフェアリー?」
「正式なコードネームは存在しません。単にモンスター攻撃チームと呼ばれる事もあります。」
「私が?…一介のキモヲタの私に何ができると言うのですか?」
「これを…」
彼女が差し出したのは携帯型のゲーム機だった。画面は、私の十八番のシューティングゲームだった。
表示されているランキングリストの最上段に私のハンドル名が掲示されていた。
「貴方の技術と正義感を活かして欲しいのです。」

 

 

数日後、私はモンスターの前に立っていた。
「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」
私の全身に先頭用のコスチューム(放熱板と言われている)が展開された。
「いくわよ!!」
とフェアリーが私に声を掛ける。私はキャノンを抱え後に続いた。

キャノンにパワーが充填されてゆく。が、まだ十分とは言えない。ハンドガンでモンスターを牽制している間に、フェアリーが間合いに入る。
「街の被害を最小限にとどめたいの。このキャノンはモンスターの動きを一定時間封じ込める事ができるの。」
そう言って、このキャノンが手渡されたのだ。
「ゲームの要領で、タイミングを図って狙い撃って頂戴。貴方ならできるわ。」
そう言われ、私はフェアリー2号となった。

パワーの充填が完了する。
「いくわよ!!」
と1号に合図し、捕縛魔砲の起動キーワードを唱える。
「フレッシュ・ビューティー。セレクター=フリーズ♪レディ、シュ~トッ!!」
トリガを引くと、電磁捕網を仕込んだ弾丸が、フェアリーダストを尾のように曳きながら、モンスターに襲い掛かる。
捕網がモンスターを包み、動きを抑える。
有効時間は、ものの数秒である。
フェアリー1号は、すでにキーワードを唱え終え、剣の切っ先はモンスター届こうとしていた。

断末魔の叫びをあげ、モンスターが崩れ落ちてゆく。
剣を納めた1号が戻ってきた。
「上出来よ。次回もその調子で頼むわね♪」
「ハ、ハイッ!!」
「じゃあ、帰りましょうか。今日は貴女の初陣を祝って、サービスしてあげるわね♪」
彼女の指が、私の顎をクイと引き上げた。
仮面=フェイスプレートの裏側で、私は顔が真っ赤に染まってゆくのを感じていた。

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