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2010年9月18日 (土)

エプロンを着たら…(前)

 

「やぁ♪」
声を掛けられ振り向くと、親友の戸田浩司がいた。
「おはよう。」と返事をする。

いつもの光景、いつもの事…

しかし、それは表面的な事でしかなかった。
もっとも、いつもと違っていたのは「僕自身」なので、浩司がその事に気付く筈はなかった。
「どうした?元気ないじゃん。」
「そ、そんな事ないよ。」
僕はその変化を悟られまいとした。が…
「どこか具合でも悪いのか?顔も赤くないか?」
結局、僕には隠し通せる能力がない事が判明する。
「び、病気じゃないよ。」これは本当の事。
僕は浩司の顔を見る度に、顔が赤く染まってしまうのだ。
病名をこじつけるのなら「恋患い」だ。
夕べまでは、浩司の事は「親友」と認識していた事は確かだった。今朝になり、自分の肉体が女の子になっていたのに気付くと同時に、僕は浩司に「恋」しているのに気付かされたのだ。
自分の肉体が女の子になっているのを知られるのは、もちろん恥ずかしい。が、それ以上に浩司に恋愛感情を持ってしまった事を知られたくなかった。

病気ではないので、学校を休む訳にはいかないと思い、普段通りに制服を着て学校に来た。が、浩司に出会うなり意識してしまい、隠し通せるかは雲行きが怪しくなっていた。
「本当に何でもないよ。大丈夫だから!!」
と、自分の席にさっさと座るのが精一杯の解決策だった。

 

しかし、僕の努力も、そう長く保ってはいられなかった。
授業が始まってすぐに、下腹部がシクシクと痛みだしたのだ。
痛みは次第に大きくなる…
「先生!飛鳥君が調子悪そうなので、保健室に連れていってやって良いですか?」
浩司が立ち上がった。
僕はそんなに苦しそうな顔をしていたのだろうか?
浩司に腕を引かれ、立ち上がる。
教室を出ると、保健室には向かわずにトイレに直行していた。個室のドアが開かれ、送り込まれる。
「先ずはスッキリさせておけ。それから、コレを使うと良いよ。」
とハンカチに包まれたモノを渡された。

言われるがまま、洋式の便器に腰を降ろした。
溜まっていたモノが体の外に排出されていった。
いつもの大や小とも違う感覚は、僕が女の子になってしまったからなのだろうか?
いまだスッキリとは言えないが、多少は楽になった。ペーパーで股間を拭う。
いつもは在る筈のモノがないので、違和感が大きい…
「?????」
僕は叫びそうになるのを必死で堪えた。
僕の股間から血が垂れていた…
もちろん、何か怪我をした訳ではない。僕の、新たに存在を始めた「女の子」が、血にまみれている…これは「生理」という現象なのだろうか?

ふと、浩司が渡してくれたモノが気になった。
ハンカチの中から包まれているものを取り出した。

「何故、浩司がこれを僕に渡す事を思いついたか?それは何時か?準備をしていたと言う事は…」
聞きたい事はイロイロあったが、浩司の渡してくれたモノ=ナプキンは、今の僕が正しく必要としていたモノには違いなかった。

 

 
「ああ、それは、お前を女にしたのは俺だからな。」
浩司はあっさりと白状した。あまりにも、あっさりしていたので、僕は二の句が継げなかった。
「お前、男のくせにメチャ可愛いだろう?女にしたら、俺のストライクゾーンにドンピシャリに違いないと思ったんだ。」
「そ、そんな事言われても…」
何故か浩司の言葉に、心臓がドキドキする。
「思った通りだよ。この際、俺と付き合わないか?」
僕の顔から火が吹き出てるんじゃないかと思うくらい、顔が真っ赤になっているんじゃないだろうか?

血が頭に上り過ぎたのか、上体がフラリと揺れた。
倒れそうになるのを、浩司に抱え止められていた。
「しばらくは、肉体が不安定になる。今は、予定通り保健室に行こう。」

上着を脱がされ、ベッドに寝かされた。
ワイシャツの下に胸の膨らみがあるのが判ってしまうが、相手がそもそもの元凶と判っていれば、何も気にする必要はない。
「ズボンのベルトも緩めておいた方が良いぞ。なんなら、ズボンも脱いでしまうか?」
「バ、バカ。」
何故か笑みがこぼれてしまう。
浩司に対しては、怒りをぶつけても余りある事を行ったと言うのに…

 

終業のチャイムが鳴っていた。
窓の外は夕日で紅く染められていた。
「ほら、替えの下着を用意してきたぞ。」
浩司が枕元に紙袋を置いた。
「大分回復したんじゃないか?」
何故か、僕より僕の身体の状態に詳しい。まあ、全ては浩司の仕組んだ事なのだから、不思議ではないのだろう。
カーテンが閉められたので、毛布を剥いで起き上がった。
予想通りと言うか、ズボンは脱がされていた。
紙袋の中には、女物の下着と新しいナプキンが入っていた。ありがたく穿き替えさせてもらう。
ズボンを穿こうとしたが、見当たらない。上着を掛けておいた場所に女子の制服のブレザー・スカートが掛けられていた。これまでの流れから察して、着てみるとサイズはピッタリだった。
鏡がないので確認できないが、このまま外に出たら、誰も僕が男であるとは思わないだろう。実際、肉体は既に「女の子」になってしまっているのだ。
上履きを穿き、カーテンを開ける。
「うおおっ!!思った以上に可愛いじゃないか。これなら、何も問題はないな♪」
と、浩司は独りはしゃいでいた。
「何が問題ない…だ。この服や下着はどうやって手に入れたんだ?」
「勿論、俺が買っておいた。サイズは判っていたし、女の格好で行ったので、誰も疑問は抱かなかったようだ。」
「女の格好?」
「ああ、お前を女にする前に自分で試してみたんだ。その日のうちに生理になったのには慌てたよな。」
「い、今は男だよな?僕も、ちゃんと男に戻れるって事だよな?」
僕も浩司と同じように男に戻れる事が判り、ほっとした気持ちになった。が…
「俺がその気になったらな。時間が来れば元に戻ってしまうようでは、お前を女にした意味がないだろう?」
「意味…って、浩司と付き合うって事?じゃあ、明日の休日にデートでもすれば良い訳?」
「先ずは…だな♪」
「あ、後は?」
「お前の手料理が食べたい。」
「明日のデートには、お弁当を作って行くよ。」
「エプロン・ドレスなんかが良いな。帰りに買ってやる。」
「判った。それを着て行くよ。」
「ひざまくら…」
「何だってしてやる。」
「キッス」
「ファースト・キスでも何でも良いよ。」
「お前のハジメテを貰う。」
「良いよ、何だって……」
勢いに乗り過ぎて、何かとんでもない約束をしなかったか!?
「…って、浩司と…その…SEXするってこと…?」
浩司がニタリと嗤う。
「今、良いと言ったよな?」
「ち、違う!!今のナシ!!!!」
「男に二言なし…じゃなかったっけ?」
浩司は僕の口癖を真似る。
「そ、それは……今、僕、女の子だし…」
「じゃあ何か?付き合っている男と女が何もしないでデートを終わらせるのか?」
「で、でも…」
「判った。その代わり、お前がその気になるまで男になんか戻してやらないから♪」
「えっ?そんなぁ…」
「俺はいつまででも待っていてやるぜ♪その気になったら、声を掛けてくれ。」
出て行こうとする浩司の腕を、僕は必死に掴んでいた。
「わ、判った。な、何でもするから……でも、SEXだけは…」
「ま、まあ良いか♪じゃあ、明日の支度だ。エプロン・ドレス、エプロン・ドレス♪」
無邪気にはしゃいでいる浩司を見ていると、何故かクスリと笑みがこぼれてしまうのだった。

エプロンを着たら…(後)

「これ、本当にお前が作ったのか?」
美味しそうにお弁当を頬張る浩司を見ていると、幸せな気分になる。
「料理は好きだし、母さんにも色々教えてもらったからね。」
「良く出来たお母さんだ。お前、良い嫁さんになるぞ♪」
「そ、そんなぁ…」と誉められて頬を赤く染め…
「だ、誰が嫁さんになるだ!!僕はお嫁さをを貰うの♪」
公園にはレジャーシートを広げて、僕たちと同じように昼食を食べてる人達が大勢いた。そんな中で「僕は男だ!!」と叫ぶ訳にもいかず、当たり障りのない範囲で抗議するしかなかった。

「じゃあ、次は膝枕な♪」
と、お弁当を全て平らげて広くなったシートにゴロリと寝転がると、頭を僕の膝に乗せてきた。
クークーと即に寝息が聞こえる。
騒がしさが消え、木陰に流れる風が、遠くではしゃぐ子供達の声を囁くように届けてきた。
(こんなのも、良いのかなあ?)
大きく深呼吸すると、木々の間を流れてきた風と共に、幸せが胸いっぱいに満たされてゆくような気がした。

 
チュッ♪
唇が音をたてていた。
気が付くと、目の前に浩司の顔があった。
「これでキスもゲットだな♪」
と笑っている。
(今のが僕のファースト・キス?)
「な、何だよいきなり!!少しはこっちにも準備させろよな。今のはナシだ。もう一度だ!!」
「別に俺は構わないぜ。何度でもやってやる…が、何だよそれは?全然色気がないじゃないか。少なくとも、目は閉じておけよ。」
僕はファースト・キスの決定的瞬間を見ていたかったが、言われた通りに瞼を降ろす(が、少しだけ薄目を開けておいた)。
浩司の腕が僕の背中に回され、斜めになって顔が近づいてくる。…そして、唇が重なった…。見ていようと思ったが、いつの間にか目を閉じてしまっていた。その分、神経が唇に集中する。
湿り気を帯びた唇が触れ合う。少し開いた口の中から、空気が吸い取られてゆく。
その次に、浩司の舌が侵入してきた。僕の舌に触れ、上顎に触れ、歯の裏を撫であげてゆく。唾液が絡まり、それもまた吸い取られてゆく。
頭の中がボーッとしてきた…

「じゃあ、次行こうか?」
いつの間にかシートが片付けられ、浩司に手を引かれて、僕は立ち上がった。

映画館に行き、喫茶店でお茶を飲み、ショッピング・モールを散策した後、ゲームセンターでゲームをした。
「少し疲れたね。休憩して行こう♪」
外はもう陽が暮れていた。街の建物はきらびやかな電飾に飾られていた。
「疲れたろう?少し横になると良い。」
部屋の真ん中にあるベッドに導かれた。
「楽になった方が良いよ♪」
エプロンが外され、ドレスのファスナーが降ろされていった。
僕は下着姿でベッドに寝転がった。

シャワーの音がしている。浩司が使っているのだろう。
(僕も浴びようかな?)
ベッドの上でうとうとしながら、そんな事を考えていた。
しばらくして、音が止み、バスタオルで身体を拭きながら浩司が出てきた。
「あ、起きていた?」
と浩司が僕に声を掛ける。
「キャッ!!」
何故か、僕は叫び両手で顔を覆っていた。
覆った手の指の隙間から彼を窺う。肩にバスタオルを掛け、仁王立ちになり僕を見ていた。
「何やってるんだ?まぁ、女の子らしくて可愛いから良いけど♪」
(女の子らしい?)
僕が指の間で見つめていたのは、浩司の股間…ペニスだった。
興味がない訳ではない。が、あからさまに興味を示すのはハシタナイ…
ハシタナイって…これって女の子の感覚じゃないのか?僕は身体だけではなく、考え方まで女の子になってしまったのか?

「お前もシャワー浴びてくるか?」
と言われ、先ほどまで僕が考えていた事だったのを思い出した。
シャワーの湯滴が肌を打つ。心地よい刺激にゆったりとした気分になる。
胸の谷間を流れ落ちた水流が、股間を撫であげてゆく。経験した事のない快感が、そこから伝わってくる。
(これがオンナノコの身体…オンナノコの敏感なトコロ…)
自然と指が、股間に伸びてゆく…
「ぁ…」
がくがくと膝が折れ、タイルの床にしゃがみ込んでしまった。
指先がちょっとだけ触れただけだった。
(なんて強烈な快感なんだ…)
息を整え、立ち上がった。ふらつく身体でシャワーを止めた。
壁に寄り掛かるようにして、バスタオルを身体に巻き付けた。
「もう少し休ませて。」とベッドに倒れ込む。
浩司のにやついた顔が目に入ったが、僕にはそれを気にしている余裕がなかった。

「本当♪理想通りだよ。」
ベッドの端に浩司が腰を降ろした。
「ぁん♪」
浩司の手が、僕の首筋に触れた。くすぐったさに、変な声をあげてしまった。
「止めてよ。変な所、触らないでよぅ。」
「別に嫌がってる風には見えないんだけどなぁ…」
確かに嫌じゃない。くすぐったいけど気持ち良い…
だけど、この快感に流されてしまったら、自分がどうなってしまうか想像もできなかった。
「あん、ああん♪」
浩司に触れられて、僕が発する声は、どう見ても女の喘ぎ声だった。
キュン、と下腹部の内で疼くものがあった。乳首が勃っている。股の間に湿り気が出てきた。
(今の僕は、女のようにカンジていると言う事なのか?)

僕が抵抗しないでいると、浩司の触れ方が大胆になってきた。
首筋から二の腕に留まっていた手が、胴体に移ってきた。脇腹から腰、お臍の周り、太股からふくらはぎ…
様々な部位を触れてまわるが、大事な所には触れないでいた。それでも、そこかしこに性感帯があったようで、僕は快感に悶えまくっていた。

ようやく、浩司の手が胸に辿り着いた。
それでも乳首に触れたのは最後の最後。じっくりと乳房を揉みあげ、僕の快感を十分に引きずり出してからだった。
「もっと、もっと♪」と、僕はせがんでいた。
「何が欲しいんだい?」
「解っている癖に、意地悪なんだから♪」
「ちゃんと言わなきゃ解らないよ。」
「僕を…、僕をもっとカンジさせて♪」
「こうかい?」と言って、乳首を口に含み、吸いあげた。
「あん、ああん♪」と僕は悶える。
「それも良いけど、もっと他のもの……下…も弄って欲しいの…」
「良いのかい?」と浩司。
僕は「うん」と頷いた。
僕の股間は、既にヌルヌルに濡れてしまっていた。

浩司がベッドの上に上った。俺の脚の間に割り込み、股間を開かせた。
「すごいな、コレは♪」
彼が指摘したのは、股間を濡らした愛液の量に違いない。
「み、見ないでよぅ!!」
しかし、僕の抗議は口だけでしかなかった。本当に嫌なら、膝を閉じるなり、掌で隠すなりの行動をした筈である。
僕は只、股間をさらけだし、陰唇をヒクつかせているだけであった。

「見ちゃだめなのかぁ…。なら、ヤるしかないな♪」
「え?」
浩司の言った意味を理解するより先に、現実があった。
ヌルリと僕の中に入り込んで来る。
僕の内に足りないモノが満たされてゆく感じ…幸せな気分に満たされてゆく。
浩司が腰を動かすと、僕の中でペニスが動きまわり、様々な刺激を与えてくれる。それらは全て快感となって、津波のように僕の意識に打ち寄せてくる。
「あぁ、ああ、ああ~~ん♪」
無意識のうちに、僕は嬌声をあげていた。

 

 

僕はエプロンを着けて、浩司の家の台所に立っていた。
「何ができるのかなぁ~」
と浩司の首が台所を覗き込む。
「それは、できてからのお楽しみだって言ったでしょう。向こうで静かにTVを見て待ってて頂戴!!」
そう言って浩司を下がらせると、まな板の上の食材に包丁を入れ始めた。

今夜は浩司の両親が旅行で留守にしているらしい。良い機会だから、家で手料理を作ってもらえないかとの浩司の頼みを断れる筈もなく、ノコノコやってきた僕だった。
さっそくエプロンが渡される。それも、着ている服を脱いで、エプロンだけで調理しろと言う。
「裸エプロン」というやつだ。浩司の気持ちも解らないではないので、調理中は邪魔をしない事を条件に、やってやる事にした。

最初はカレーでも作って済まそうかとも思ったが、予想以上に浩司が大人しかったので、肉じゃがに変更した。
ご飯も炊け、わかめの酢の物と、きんぴらゴボウの小鉢を付けて今夜の夕食が出来上がった。
裸エプロンのまま、食卓に着く。
浩司はもの凄い勢いでご飯を食べすすむ。あっと言う間に三杯もご飯をお替わりしてしまった。
「お袋のより美味しいぞ♪これから毎日、作ってくれないか?」
「無茶を言うなよ。いくら近いといっても、食事の度にこの家に来るのは大変だよ。

「じゃあ、この家で一緒に住めば良い♪」
「何か、それってお嫁さんに来るみたい…」
「嫌か?」

「…僕は、男に戻るんだよ…」

「本当に戻りたいのか?」
浩司の言葉が、僕の頭の中でこだましていた。
そして…
「違うかも…」
僕はそう呟いていた。
浩司と一緒に過ごしてきた日々…男同士の親友としての日々より、より濃厚だった男と女の恋人としての日々がそこにあった。

「戻らなくても良い…」
僕は浩司を見つめた。
「このまま、女の子のままでいたい…」
浩司が微笑んでいる。
「僕…僕が浩司のお嫁さんになっても良いの?」

「何を今更言ってるんだ。俺の伴侶はお前しか考えられないと言っているだろう?」
浩司の言葉に、僕の目が霞む…
何故か、涙が、次から次へと僕の目から溢れてゆくのだった。

「俺と結婚してくれるね?」
浩司が聞いてくる。
僕はゆっくりと口を開き、はっきりと宣言した。

「ハイッ♪」

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その2-

 

街にモンスターが頻繁に現れるようになって久しい。
モンスターを退治する「フェアリー」の活躍も見慣れた光景となっていた。

どこから現れるのか、地面から湧いたかのように、モンスターは唐突にそこに存在してくるのだ。大きさは個体によって異なるが、大体5m前後。体重は不明だが、それなりの質量はあるみたいだ。
モンスターはどれも形状が異なっているので、同一種とは思えない。が、それらの行動バターンは殆ど同じであった。
学校の校庭や公園など、広めの所に出現し奇声を上げては木々をなぎ倒し、ベンチや街路灯など手近の構造物を破壊してまわるのだ。そして、天敵の女戦士=フェアリーが現れると破壊活動はピタリと止め、決着が付くまで彼女と戦い続けるのだ。
モンスターには通常の攻撃は効かない。警官の拳銃など、蚊に刺された程も感じていないようだ。(戦闘機のミサイルであれば効果はあるかも知れないが、住宅地の真ん中に向かって発射ボタンを押す訳にもいかない)
唯一、フェアリーの剣だけがモンスターを切り刻む事ができるのだった。

フェアリーが何者であるかを知る者はいない。
仮面を付けた彼女は、戦闘用の服装とは思えないヒラヒラの衣装をまとって現場に現れる。ヒラヒラの下はレオタード状になっており、彼女の謹製のとれた肢体がはっきりと判る。男達はモンスターから逃げる事も忘れて彼女に見とれ、仮面の下の美顔を想像して股間を固くしている事も珍しくなかった。
人間離れした跳躍力。キックやパンチは確実にモンスターにダメージを与えていた。
精巧なアンドロイド・ロボットかとも思われる事もあるが、モンスターの反撃に会い、全身を強打した際にあげるうめき声からも、彼女が生身の人間である事が窺えた。

やがて、モンスターの動きが鈍くなる。
万を辞して、彼女が剣の柄状のスティックを手にする。彼女の発するキーワードとともに、刀身が形成される。淡い光を帯びた剣が振り下ろされる。
軌跡にフェアリーダストが舞う。
モンスターは真っ二つになったかと思うと、グズグズと崩れ去り、塵となって消えていくのだ。

 

 
私は、いつものようにモンスターに荒らされた公園の後片付けで一日を終える。
疲れた肉体を癒す為に居酒屋に立ち寄る。独りカウンターで肴をつまんでいると…
「お隣、よろしいですか?」と声が掛かった。

そこに居たのは、フェアリー並にスタイルの良い美女であった。
「貴方、いつも公園の後片付けをして下さっているのでしょう?ご苦労様です♪」
美女は隣の席に腰を降ろすと、私に話掛けてきた。
「いやぁ、派遣切りに合いましてね。無職でブラブラしている自分に嫌気が差してしたんですよ。そんな時、モンスターを退治するフェアリーを見て、自分でも何かできる事があるはずだと思ったんだ。」
「正義感が強いのね?」
「そんな立派なものじゃないよ。まあ、子供の頃はTVのスーパーヒーローを見て憧れていた事はあったけどね。」
「良かったら、貴方もあたしと一緒に戦いませんか?」

彼女の言葉に私は絶句し、しばらくの間、マジマジと彼女の顔を見てしまった。

「あ、貴女がフェアリー?」
「正式なコードネームは存在しません。単にモンスター攻撃チームと呼ばれる事もあります。」
「私が?…一介のキモヲタの私に何ができると言うのですか?」
「これを…」
彼女が差し出したのは携帯型のゲーム機だった。画面は、私の十八番のシューティングゲームだった。
表示されているランキングリストの最上段に私のハンドル名が掲示されていた。
「貴方の技術と正義感を活かして欲しいのです。」

 

 

数日後、私はモンスターの前に立っていた。
「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」
私の全身に先頭用のコスチューム(放熱板と言われている)が展開された。
「いくわよ!!」
とフェアリーが私に声を掛ける。私はキャノンを抱え後に続いた。

キャノンにパワーが充填されてゆく。が、まだ十分とは言えない。ハンドガンでモンスターを牽制している間に、フェアリーが間合いに入る。
「街の被害を最小限にとどめたいの。このキャノンはモンスターの動きを一定時間封じ込める事ができるの。」
そう言って、このキャノンが手渡されたのだ。
「ゲームの要領で、タイミングを図って狙い撃って頂戴。貴方ならできるわ。」
そう言われ、私はフェアリー2号となった。

パワーの充填が完了する。
「いくわよ!!」
と1号に合図し、捕縛魔砲の起動キーワードを唱える。
「フレッシュ・ビューティー。セレクター=フリーズ♪レディ、シュ~トッ!!」
トリガを引くと、電磁捕網を仕込んだ弾丸が、フェアリーダストを尾のように曳きながら、モンスターに襲い掛かる。
捕網がモンスターを包み、動きを抑える。
有効時間は、ものの数秒である。
フェアリー1号は、すでにキーワードを唱え終え、剣の切っ先はモンスター届こうとしていた。

断末魔の叫びをあげ、モンスターが崩れ落ちてゆく。
剣を納めた1号が戻ってきた。
「上出来よ。次回もその調子で頼むわね♪」
「ハ、ハイッ!!」
「じゃあ、帰りましょうか。今日は貴女の初陣を祝って、サービスしてあげるわね♪」
彼女の指が、私の顎をクイと引き上げた。
仮面=フェイスプレートの裏側で、私は顔が真っ赤に染まってゆくのを感じていた。

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-その2の裏-

それは、とても「装甲強化服」とは思えない形状をしていた。
ベースになっているのは全身タイツ状のモノであった。これに織り込まれたカーボンナノチューブに特殊な電磁溶液を注入し、システムにマックス・パワーを指示すると、立派な「装甲強化服」となるのである。
その効果は、何度もこの目で見てきたのだ。が、これを私が着て実戦に出てゆくなど、数日前までは思いもしなかった事だ。

 

何事にも、長所・短所がある。それは私も理解している。
システムを起動した装甲強化服の外観が、美しい女体である事も我慢しよう。外観に合わせ、男性である私が変声装置の助けを借りて、女性の振りをするのもある程度は納得している。
しかし…

装甲強化服はフェイスプレートを閉じれば、完全に肉体と外界とが遮断される。空気も自前で補給できるよう、超小型の酸素ボンベを内蔵している。
しかし、酸素は有限であり、肉体は水分や食糧を要求する。その為、装甲強化服を脱がないまでも、フェイスプレートは外さない訳にはいかない。が、安全性を考慮し、電磁溶液を100%注入した状態ではフェイスプレートは外せない仕様となっていた。
電磁溶液の排出には、特殊な装置が必要であった。装置から伸びるホースの先端を、装甲強化服の股間にあるアタッチメントに装着し、電磁溶液を吸引してゆく…
のだが、その際に装着者の肉体に強烈な刺激がフィードバックされるのだ。
それは、限りなく性的な快感…それも、女性が感じている快感そのものであった。電磁溶液を排出している様は、触手に責められ、快感に悶える淫女にしか見えないのである。

 
訓練の初日は、先輩である大神さん=コードネームはアリス=と一緒に処理を行った。私自身の痴態が見られてしまうと言う恥ずかしさはあったが、それよりも、快感に悶えまくるアリスを見ていると、もう何も言えなかった。
私も同じ態を晒しているのだろうと冷静に見ていたのは、ほんの一瞬だった。快感が押し寄せてくるなり、アリスの事を意識する余裕はなくなっていた。
初めて経験する強烈な快感で、意識を失うまでにそう時間はかからなかったと思う。
意識を取り戻すと、アリスが私の股間のアタッチメントからホースを抜き取っ手くれた。
一緒にシャワーを浴びる。アタッチメントまわりの洗浄をアリスが指導する。シャワーの下で、彼女の手が私の股間に伸びてくる。
「自分でもできます。」と言って拒絶するのだが、一向に受け合ってくれない。
「あ、ああん♪」
アリスの指がアタッチメント付近の突起に触れる。
「イブちゃんは感じ易いのね♪」
機械が与えてくれる快感とは、また違った刺激であった。私の肉体の特性を知っているかのように、あらゆる性感帯が刺激される。
膝から力が抜け崩れ落ちる私を、アリスが抱き止めてくれる…が、電磁溶液を抜かれている状態のアリスでは、支えきる事はできなかった。
そのまま、床の上にずり落ちる。私は彼女の膝の上に抱かれる形になっていた。
彼女の豊かな胸の膨らみが、私の背中に押しつけられている。
私の意識の中では、股間を勃てずにはいられないのだが、装甲強化服の内側では、何も反応している様子がない。
「ヒャン♪」
腰から回されたアリスの手が、再び私の股間を捕らえ、縦の筋に沿って指で撫でられた。
「コレって何か解る?」
と指先が私の目の前に差し出された。
「シャワーのお湯でも、ましてや電磁溶液の残りでもないわよ♪」
それは、性的な快感に私の「女」の肉体から染み出てきた…愛液であった。

 

バスタオルで体を拭きながら、部屋に戻った。
「イブちゃんは筋が良いわ。続けて次のレッスンに移りましょう♪」
「次ですか?」
「そう…」
カチャリとアリスはフェイスプレートを外した。
「ボンベの酸素量も有限だし、あたし達も生身の人間だから、飲み食いも必要になるでしょう?」
そう言って私のフェイスプレートを外した。
「鏡を見て」と促される。

「「あ゙」」

そこには、まんま「男」の私の顔があった。
「一つはお化粧を覚えてもらう事。眉毛を整えてちゃんとすれば、男だとは解らなくなるわよ。」
「「は、はい…」」
「もう一つは、その声ね。発声装置はそのままだから、意識して喋らないと男声と女声が同時に出てしまうの。男の声はボンベに口を塞がれているつもりで出さない事。そして女の声に合わせて腹話術の人形のように口をパクパクさせるのよ。最初は口は閉じたままで良いわ。」
「は、はい…」
私は口を閉じ、女の声で返事をした。
「上出来じゃない。あとは、どういう状況でもそれができるかね♪」
そう言って、私をベッドに押し倒した。
「「な、何をするんですか??」」
「言ったでしょう?いつでも女の子の声を出せるようにする訓練よ♪」
「「そ、それは…」」
「ほら、声、声!!」
「それは解りますけど…」
「「キャッ、ハァン!!」」
「ほらほら、もう元に戻ってる。男の声で喘いでもキモイだけよ♪」
「い、言わないで下さい。解ってますから…ぁあ~ん♪」
「そうそう、そんな感じ♪貴女なら上手くやれそうじゃない?」
「あん♪ああ~ん。気持ち良いのは良いのですけど、いつまでヤってれば良いのですか?」
「あら、もう女の子の感覚に染まっちゃったの?そんなに早くイきたい?」
彼女の指は私に最大級の快感をもたらすが、最後の一線を絶妙に超えないでいる。イきたいのにイけない状態を延々と続ける事ができるみたいだ。
が、私は男として、女の快感に流される訳にはいかない。
「だ、大丈夫です。まだ頑張れます!!」

「あん、あん、ああ~~ん♪」
私は女の声で嬌声をあげ続けた。

「女」の快感は私を「女」に染めあげてゆく。
女の声に口を合わせ、女のように喘いでいる…
いや、私は既に「女」だった。

「ああん。もうダメ… お願い♪イかして頂戴!!」
私はとうとう、そう懇願していた。
「解ったわ。それじゃあ、イかしてあげるわね♪」

その直後。私の意識はプツリと途絶えていた。

 

「これが最後の訓練ね♪」
一通りのお化粧も覚えた私は、セクシーなワンピースを着て、アリスとともに街に出ていた。
「ここで待っていれば、向こうから声を掛けてきてくれるから♪」
と私一人をカウンターに座らせ、アリスは去っていった。
ここは、私がアリスにスカウトされた居酒屋だった。アリスが手配した男がやってきて、私に声を掛けてくれる事になっている。
私は男に従い、どんな状況でも「女らしく」行動できる事が求められているのだ。
その中には、もちろんSEXも含まれている。私は初めて「男」に抱かれるのだ。
その事を考えただけで、私の股間は熱を帯び、しっとりと潤み始めるのだった。

「お隣、よろしいですか?」と声が掛かった。
そこに居たのは、結構イケメン風の男だった。男は隣の席に腰を降ろすと、私に話掛けてきた。
「アリスさんから紹介されて来ました。今夜は最後までお付き合いお願いしますね♪」
キラリと輝く白い歯に、クラリと来るものを感じた。
「こ、こちらこそお願いしますね。」
多少ぎこちないように思えるが、なんとか及第点は貰えたと思う。
「そんなにカタくならないで良いですよ。」
とは言われたが、男に抱かれると思うと緊張してしまう。
「先ずは、二人の出会いに乾杯♪」
私はここが居酒屋である事も忘れ、彼の瞳に魅入っていた。
グラスがカツンとささやかな音をたてた。
たった一口で私は酔ってしまっていた。

彼にエスコートされ、夜の街を歩いていた。
ネオンが綺麗に輝いていた。
そこがラブ・ホテル街である事に気付くまで、時間が掛かった。
「さぁ♪」
と彼に促され、部屋のドアを開ける。
華やかな装飾が施された室内。中央にレースのカーテンの掛かった天蓋付きのベッドがあった。
彼の手が私が着ているワンピースを手際よく脱がしてゆく。
あっと言う間に、私は全裸でベッドの上に組み敷かれていた。
「ぁあん♪」
彼の舌が私の全身を舐めあげてゆく。私は快感に喘ぎ声をあげる。
「あ、ああ~ん♪」
胸が揉まれ、乳首が刺激され、喘ぎ声は艶声に変わった。
「ああん、ああん…」
M字に脚を開かされ、彼が内に入ってくる。
「あん、あん、あん…」
突かれる度に、私は媚声をあげる。
やがて、高まりを迎え、
「あ、あ、あ~~~~ん♪」
彼のペニスから迸る精液が、私の膣を満たす。
私は嬌声をあげ、快感の中に没していった。

 

「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」
今日もまた、モンスターが現れた。
フェイスプレートを装着し、電磁溶液が満たされると、高らかに変身のキーワードを唱える。
私はキャノンを抱えてフェアリー1号の後に続いた…

2010年9月 4日 (土)

兄弟

「一弘君を僕にください。」
親友の桂大基は、俺の家に上がり込むなり、親父に向かってそう言い放った。
一弘とは、俺の弟であり、当然「男」なのだが、どこでどう間違ったのか四六時中、女の子の格好をしているのだ。
大基の斜め後ろで神妙に正座して成り行きを見守っている女の子が、我が弟の一弘だった。
知らない人が見れば、ありきたりの「娘さんをください」の現場である。勿論、大基も親父も「それ」を前提としたこの一場面であった。
が、弟はあくまでも「男」であり、現在の法律では正式に結婚する事はできない。
それを二人が解っているかは甚だ疑問が残っている…

「解った。」
と親父がぼそりと言う。
「だが、一弘はまだ未成年だ。成人する迄待つ事が前提だ。」
俺は親父の隣で、開けた口を塞げなかった。
「も、勿論です。」と大基。そして、後ろを振り向くと…
「カズちゃん。お許しが出たぞ♪」
その視線の先にいる我が弟は、目にうれし涙を浮かべていた。

「父さん、良いのかよ?」
俺が声を掛けると、
「もう、諦めたんだよ。いや、お前の時に覚悟しておくべきだったんだ。」
「お、俺の方に振られる訳?」
「このご時世、何があっても逆らわない方が良いとは思わないか?お前も覚悟を決めて、結婚を考えた方が良いぞ。お前は一弘とは違い、ちゃんと子供を産める身体なんだから。」
「俺の事は放っておいてくれ!!」
俺は席を立つと二階の自室に向かった。

 

ベッドに横になる。
俺の部屋…
ごく普通の男子大学生の部屋である。が、去年まではカレンダーの貼ってある壁にはセーラー服がぶら下がっていたのだ。

三年前…
俺は流行り病で入院を余儀なくされた。そして、家に戻った時…
俺の部屋にはピンク色のカーテンが掛かり、ベッドにはクマのぬいぐるみ、クローゼットにはヒラヒラしたワンピースやスカートが納められていた。

俺の罹った病はTS熱という奴だった。若い男性に発症し、高熱を発した後、一晩で肉体を女性化させてしまうというものだ。
病院に隔離されていた一ヶ月の間に、部屋の模様替えが行われ、学校からは女子の制服であるセーラー服が届けられていた。
退院したといっても、俺の自意識は「男」のままである。「女の子」として生活する事にはとことん抵抗した。
何とか自分の部屋は元の姿を回復し、男物のズボンやシャツも手に入れた。しかし、学校に通う時には「セーラー服を着用する」事だけは呑まざるを得なかったのだ。
しかし、それも高校を卒業するまで。今の俺は完璧に「男」を取り戻していた。

 
そんな俺に「子供を産め」等と言われると、自分の肉体はまだ「女」のままである事を思い知らされるのだ。
TS熱は男から女に変わるだけで逆のパターンは存在しない。罹患者は戸籍の性別も変更され、女として生きてゆく事になるのだ。

 
「結婚…か…」
俺は呟いてみる。
今まで、考えてみた事がなかった訳ではない。いや、考えてしまったからこそ、その考えを振り切る為に、俺は「男」であり続けようとしたのだ。

ウェディングドレスを着た俺…
その隣に立っていたのは大基だった。

親友に対してそんな想いを抱いてしまった事に罪悪感を感じてしまったのだった。
しかし、一弘は簡単にその障壁を乗り越えてしまったようだ。

以前からちょくちょく家に遊びに来ていたので、元々知らない仲ではなかった。
丁度、一弘の高校入試の勉強を手伝ってやっていた時期に俺が入院する事になってしまい、代わりを大基に頼んだのだ。
その一ヶ月の間に、一弘が大基に恋したようだ。

一弘は高校に入学した後も、大基と付き合っていた。自分としてはデートの気分でいるのだが、見た目は男同士である。
一弘は俺のクローゼットに眠っていたワンピースやスカートに目を付けた。女物の服に関心のない俺が、クローゼットから数着なくなったとしても気づく筈もなかった。

やがて、女装して大基とデートしている事が明るみに出ると、一弘は開き直り、家の中でも女装するようになった。
俺とは逆に、学校では詰め襟を着るが、それ以外は女の格好で押し通した。
「何でお兄ちゃんは良くてアタシは駄目なの?」
そう言われると、誰も反論できなくなってしまうのだ。

果ては、卒業式に俺のセーラー服を着て出席してしまった。卒業写真には女生徒に混じって写ってきたそうだ。

 

高校を卒業したその足で、大基とともに家に帰ってきて「娘さんをください」状態になっていたのだ。
居間では大基と親父が酒を酌み交わしているのだろう。笑い声が響いてくる…

トントンとドアがノックされた。
「お兄ちゃん、良い?」
一弘だった。
「ん?開いてるよ。」と言って俺はベッドから起き上がった。
「お兄ちゃん…」
一弘が床に正座し、深々と頭を下げた。
「お兄…お姉ちゃん。ごめんね。大基さんを奪うような形になってしまって。でも、あたしには大基さん以外のヒトは考えられなかったの。ごめんなさい…」
俺は小さく蹲る弟=妹を見ていた。
「別に良いよ。謝る必要なんてないんだ。俺と大基は単なる親友…それだけだよ♪」
「お、お姉ちゃん…」
一弘が顔を上げる。

俺の…わたしの可愛い妹…

「大丈夫。大丈夫だから。先に下に降りていて。すぐに行くから♪」
一弘が出ていった後、わたしはクローゼットの扉を開き、奥から大切に仕舞っておいた、ライトグリーンのワンピースを取り出した…

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)

「これが、新たに開発した[軽量化装甲強化服]だ。」
と目の前に出された黒いモノは、中世の鎧の方が何百倍も強固に見える代物であった。
「君にはいつも通りにコイツを試験・評価してもらいたい。」
これが「仕事」でなければ、俺はこの場から逃げだしていただろう。
「どう見ても、[全身タイツ]にしか見えませんよ!!」
「そこが[新開発]の目玉なんだ。この全身を被うカーボン・ナノチューブに電磁溶液を流し込み、磁界をコントロールする事で、鋼鉄の一億倍の強度を生み出す事ができるんだ。更に筋電位を検知して、強力なスプリングのように、筋動作を補助してくれるんだ。」
どうだ、優れ物だろう♪と自慢気に全身タイツにしか見えないモノを高々と差し上げていた。

まあ、俺には拒否権がない事には違いないのだ。出されたモノを着用し、評価するしかないのである。
「わかりました。やってみましょう。」
俺は新型の装甲強化服を受け取り、早速着て…
「待った、待った。こいつはデリケートなんだ。服は勿論、下着も脱いでから着てもらわなくちゃ!!できれば、体毛も全部剃りあげてもらえると、100%の効果が期待できるんだがね♪」

ここは全裸で装着すると言う所で話を付けた。
足を入れ、腕を通す。頭の部分を被ると、顔面を除き、全身が装甲強化服?に被われた事になる。
「制御装置は胸の所に集中配置してある。表示は全て鏡文字にしてあるから、手首の内側にある鏡で容易に確認できる筈だ。」
宇宙服に採用された伝統的な技術に関心しながらも、不安は隠せない。
「胸部は装甲を厚くするから、心配はないよ。剥き出しの顔面も、フェイスプレートを別途準備してある。超小型の酸素ボンベが開発できたので、邪魔にならずに装着可能になっている。」
酸素ボンベから延びた管を口に咥え、フェイスプレートが装着されると、思うように喋れなくなってしまった。

電磁溶液を注入するから。と、風呂場に連れて来られた。
バスタブには灰色のドロドロした溶液が満たされていた。
「一時間程、浸かっていてくれ。浸透度合いを確認してから引き上げるから。」と、風呂場に一人残された。
溶液には適度な暖かさがあった。風呂に入っているのと同じで、ついウトウトとしてしまう…

気が付いた時、俺の頭が押さえ付けられ、溶液の中に頭から浸されていた。抵抗しようにも全身タイツが固まったかのようで、指一本動かす事ができなかった。
突然の事でパニクッたが、酸素マスクから新鮮な空気が送られており、窒息する事はない事に思い至った。

しばらくすると、バスタブから溶液が抜き取られた。
「これから回路を作動させる。慣れるまではパワーをノーマルに抑えさせてもらう。先ずはシャワーで残った溶液を洗い落としておいてくれ。」

ピンッと音が聞こえた。スイッチが入れられたのだろう。
あれ程固かった全身タイツだったが、ストレスなく手足を動かせるようになっていた。
皮膚には溶液の残りが貼り付いている感覚がフィードバックされていた。全身タイツなど存在せず、全裸の肉体が溶液に塗れているように錯覚してしまう。

すべらないように慎重に立ち上がった。
全裸ではない事は制御装置が胸に掛かる重のように、その存在を伝えてきていた。
シャワーヘッドを手に持ち、コックを捻った。シャワーの水流が足元を流す。
黒かったタイツが灰色の溶液を含んだもの…の筈が、白い素肌のような色に染まっていた。
つるつるの肌。足先は指が一本一本分かれていて、指先にはピンク色の爪が形作られていた。

…不安に駆られる…

俺は一気に頭の上からシャワーを浴びせた。
「な、なんじゃコリャあ??」
声を出せない筈なのに、俺は叫んでいた。
その声が異常に甲高い事にも気付かない程のショックに打ちのめされていた。

洗い流された溶液の下から洗われたのは、女の裸体以外の何物でもなかった。
制御装置の納められた胸の膨らみは、どう見ても乳房にしか見えない。
フェイスプレートに描かれた顔は、女の顔である。ロングのストレートヘアが頭を飾っている。
あり得ない事に、腰には艶めかしいクビレが生まれ、手足は本物の女のように細くしなやかになっていた。
「ど、どうなっているんだ?」
俺はようやく、発せられた声もまた、女のように甲高くなっているのに気が付いた。

「洗い終えたかね?」
外から声が掛かった。
「どう言う事なんですか?!」
俺が風呂場のドアを開けると奴が立っていた。
「それが新型の軽量化装甲強化服だよ。デザインはかなり制作者の趣味に走ってしまっているようだがね♪」
「そ、そう言う問題ですか?!」
「まあ、そう熱くならずに…  スペックについては説明したな?パワーを上げれば、並みの装甲強化服以上のものがある。胸部の制御装置まわりの装甲が厚くなってしまったが、旨く偽装できているだろう?」
「そ、装甲が[厚くなった]という問題ですか?」
「着用者の要求でBからHまで厚さをカスタマイズできるそうだ。あと、フェイスプレートや発声装置もカスタマイズ可能らしい。」
「発声装置?」
「そう、君の声を出そうとする咽まわりの筋電位の変化を読み取って発声させているんだ。訓練すれば武器としても使える超音波を出す事もできるそうだ。」
「まだ他に聞いていない[スペック]があるんじゃないですか?」
「あ、ああ…マックスパワーにすると、装甲強化服が熱を帯びるため、放熱板が周囲に展開されるのだが…そのデザインも制作者の趣味で、見た目が魔法少女のコスチュームみたいに…」

俺は胸の制御装置を操作し、パワーをマックスに上昇させた…

 
「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」
発声装置が勝手に叫び、体が強制的に変身ポーズを描いてゆく。
全身が光輝き、霧のようなものに包まれたかと思うと、放熱板とは決して思えないヒラヒラの布がまとわり付いていた。

鏡を見ようと浴室に続くドアのノブを掴んだ。
ノブは水飴のようにひしゃげた。
「半端なパワーじゃないのだから注意してくれ。」
とは言われても、冷静さを欠いている俺に、手加減などできるものではない。そのままドアを突き破っていた。

 

「この格好で試験をしろと言うのか?」
「そ、装甲強化服の実地試験のために君に来てもらったのだから…そう言う事になる。」
「その[制作者]やらと言うのも来ているのか?」
「ああ、何台もカメラを持ち込んで来ている。」
…俺は、俺の戦う姿が編集され、どこかに流通してゆく様が目に浮かんでしまった。
「これが俺の仕事だから仕方がない。が、他に隠しているスペックはないのだな?」
たとえあったとしても、マックス・パワーの俺の前で迂闊な事を言える筈もなかった。

ザ・パワードスーツ(装甲強化服)-裏-

「ふう…」
戦闘評価が終わり、一息ついた。
肉体的と言うよりは、力を加減する為に神経を使った事による気疲れが大半を占めていた。
装甲強化服としての評価は申し分なかった。その軽さは装着している事を忘れるくらいである。動きにもストレスがなく…デザインの一点を除けば、理想を絵に描いたようなできばえであった。

「君は本当に大神君なのかね?」
報告の際に評議員の一人にそう聞かれた。
「はい、本人です。」
と答えたが、出てきた声は女の声であったため、本当に理解していたのか甚だ疑問が残った。

 
「で、こいつを脱ぐにはどうすれば良いんだ?」
部屋に戻ると即座に尋ねた。
「先ずはパワーをノーマルに戻してくれ。その後、シャワーで充分に洗浄しておいてくれ。その間に準備をしておくから。」
そう言われ、俺はコスチュームの胸の隙間に手を突っ込むと、制御装置を操作した。
コスチュームが霧散し、俺は全裸になった。実際は装甲強化服を装着しているのだが、そのデザインが女の裸体そのものなので、全裸と表現するしかなかった。

シャワーを浴びて戻って来ると、見知らぬ女性が待っていた。
バスローブを渡されたので羽織ると、別に用意されたタオルで長い髪が器用に頭の上にまとめられた。
「そこのベッドに寝て頂戴。」
と指示された。
「これで電磁溶液を回収します。」
と彼女の手に握られたホースを見ると、その先端は何故かペニスの形状に模されていた。
「これも制作者の趣味か?」
「まあ、そう言う事です。では膝を曲げて両脚を開いて下さい。」
俗に言うM字開脚だ。
「な、何故こんな格好を?」
「理由は、溶液の排出アタッチメントが股間にあるからです。あまりにも刺激的な形態になりますので、男性の方々には退席していただきました。」
そう言って、ホースの先端が俺の股間に充てがわれた。

ヌッ!!

とホースの先端が挿入された。
その形状がペニスである事から、見た目はSEXそのものである。男の俺が女の立場で、股間の穴=膣にペニスを受け入れている…
倒錯的な展開に思考が付いていけなかった。

「あん、ああん♪」
更に発声装置が勝手に女の喘ぎ声を出している。
「気持ち良いですか?」
と問われると、
「ああん♪もっと~~」
と勝手に答えている。
「作動させますね♪」
と彼女がスイッチを入れると
「あアンッ!!!!」
俺は思わず叫んでいた。
股間から発せられた強烈な快感に、叫ばずにはいられなかったのだ。膣の中でペニスが蠢きまわっている。
実際はアタッチメントの中でホースの先端が溶液を吸い出しているのであるが、俺の脳に伝わる感覚は「快感」以外の何物でもなかった。
身を捩り、激しく悶えながら、快感に打ち振るえるオンナのように、俺は嬌声を上げ続けていた。
何度も快感の絶頂に達する。
「アアン♪イクゥ、イッちゃう~~!!」
溶液が漏れているのか、俺の股間は愛液をあふれさせたかのように、ぐしょぐしょに濡れていた。

 
気が付くと、俺はベッドの上に寝かされていた。
既に股間からはホースが抜かれていた。手を伸ばすと、汚れは綺麗に拭い去られているようだった。

ビクリッ!!

と衝撃が走った。
アタッチメントの付近をうろついていた俺の指が、敏感な部位に触れたようだ。
位置的には、女性のクリトリスの場所である。僅かな突起がそこにあり、それに俺の指が触れてしまったようだ。
それは「衝撃」ではあったが、決して不快な感覚ではなかった。
俺がゆっくりとそれに触れると、そこからは快感が沸き起こってきた。
「ハアハアハア…」
息が粗くなる。
股間に伸ばした手とは反対側の手が、無意識のうちに胸に乗せられていた。
指を動かし、揉みあげると、そこからも快感が生まれてきた。
「ああん、あああん♪」
一度、快感に媚声をあげてしまうと、喘ぎ声を抑えることができなくなるらしい。
俺はベッドの上で自為に耽るオンナのように、喘ぎだしていた…

「結構慣れたかしら?」
突然の女の声に
「キャン!!」と可愛らしい悲鳴をあげてしまった。
「続けてても構わないわよ。制作者の楽しみが増える事になるけどね♪」と柱ね陰から窺っているカメラのレンズを指し示した。
「も、もしかして…全部観られていた?」
「ビデオにも記録されているわ。あたしとしては、それが編集されて市場に出回る事のないように祈ってあげるだけだけどね♪」
俺は慌てて股間に挟み込んだ手を抜きとっていた。

「どう?結構感度良いでしょう♪」
そう聞かれても、俺には比較できる尺度を持っていなかった。少なくとも「男」の快感とでは比較にならない。
「もっと気持ち良くさせてあげるけど、どうする?」
俺の心の片隅には、更なる快感を味わってみたいと思う気持ちがあったが、この快感に麻薬のように浸されてしまいそうな恐怖心の方が大きかった。
「とにかく、早くこの装甲強化服を脱ぎたいんだがな。」
「それは残念ね♪今回は特別に評価項目が増えているの。まだ、しばらくはそのままでいてもらうから♪」
「まだ試験があるのか?それなら…」
若干の気だるさを振り払い、俺はベッドの脇に立つと、マックスパワーにすべく、制御装置を操作した…

「変身はできないわよ。電磁溶液を抜きとっているから。今の貴女には、普通の女の子が出せる程度の力しか出せなくなっているわ。」
「じゃあ、何を評価すると言うんだ?」
「う~ん、もう少し待っていて。今、準備しているから♪」
俺は訳が解らず、再びベッドに腰を下ろした。

トントン
とドアがノックされた。
入ってきた若い男は、俺の姿を見るなり、
「し、失礼…」
と目を背け、外に出ようとした。
「待ちなさい。」と彼女に呼び止められる。
「試験の内容は聞いているのでしょう?あの娘が相手よ。」
と、俺を振り返る。
「貴女も場末の娼婦じゃないんだから、女らしく恥じらいを持ったらどう?膝を広げて座ってると、大事な所が丸見えよ。」
そう言われ、慌てて脚を閉じた。
しかし、全裸で男の前に居るなど、場末の娼婦と大差はないように思えるが、敢えて口にする事はやめておいた。

「じゃあ、よろしく♪」
と彼女は男を残して立ち去ってしまった。
残された男は爽快を絵に描いたような笑顔を浮かべ、俺に近づいてきた。
「アリスちゃん…て言ったっけ?大丈夫。怖がらないで♪全て僕に任せてくれれば良いから…」

な、何だ?「アリスちゃん」て言うのは?
俺が何の反応もできないうちに、ベッドに押し倒されていた。
男の唇が俺の口を塞いだ。
何をするっ!!
と叫ぼうにも声は出ず、奴を振りほどこうにも、女の子程度の力しか出ず、簡単に押さえ込まれてしまった。
(喘ぎ声くらいしか出ないよう、発声装置にフィルターを掛けさせてもらっています。)
耳の奥から女の声が聞こえてきた。
(オンナとして、どれだけ感じられるかが、本試験のテーマです。こころゆくまで感じてみて下さいね♪)
バ、バカを言うな!!
俺は「男」だ!!!!
男に抱かれる趣味はない!!!!!!

俺の叫びは漏れることなく…
「あ…あん♪」と勝手に喘ぎ声が漏れるだけだった。

「おや?もうこんなに濡らして♪僕の事が待ち切れずに自分でシていたんだね?」
男は俺の股間を撫であげて、指に絡み付いた愛液を舐めあげた。
「じゃあ、僕もサービスしてあげないとね♪」
と、俺の下半身側に移動すると、肩に担ぐように太股を抱きあげた。
「ヒャン!!」
異様な感覚に俺は変な叫び声をあげていた。
奴が俺の股間を舐め始めたのだ。あふれてゆく愛液を舌で舐め取り、割れ目の奥の肉襞やクリトリスを刺激する。
「あん、ああ~ん♪」
思わず艶声を上げてしまう。
「ダ、ダメェ。ソコは汚いヨ…」
奴は俺の肛門にまで舌を差し込んできた。
「アリスちゃんはどこを舐めても美味しいよ。」
男はインターバルを置き、今度は足の指を舐め始めた。
「や、やめて♪くすぐったいっ!!」
そう訴えたが、俺には彼から与えられる刺激の全てを「快感」として感じてしまっていた。

 
男はいつの間にか全裸になっていた。
彼のペニスが俺の膣壁を擦りあげる。
俺は快感に呑まれていた。
「あぁ、ダメェ~。イク…イク…イッちゃうよ~~♪」
叫んでいたのは俺自身だった。快感にオンナのように喘いでいる事に、違和感を感じなくなっていた。
「それじゃあ、これでフィニッシュだ。」
彼の腰の動きが激しくなり、ペニスの先端が幾度も子宮口を叩いていた。
「ううっ!!」
と男がうめき、俺の膣に精液が放出された。
「あ、ああーーー!!」
俺は快感の絶頂にイき、淫らに叫んでいた…

 

 

 
再びシャワーを浴び、汚れを落とした。
バスローブを羽織り、タオルで長い髪をまとめる。
出てきた俺の前に何か書かれた紙を持った彼女が立っていた。
「まだ、何かあるのか?」
俺が聞くと、
「これで終わり…の筈だったんだけど、状況が変わってしまったの。首都に巨大モンスターが現れたらしいの。済まないけど実戦に出てくれない?

俺は戦場に向かうバンの中で電磁溶液の再充填を行った。
モンスターの前に立ち、胸に手を充て、マックス・バワーを呼び出す。

「フレッシュ・ビューティー。モード=マックス♪セットア~ップ!!」

俺はそう叫ぶと、巨大モンスターに向かって斬り掛かっていった。
こうして、俺の戦いの日々が始まったのだった。

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