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2010年8月 8日 (日)

彼女?(1/3)

ヲリ(居裏)…
この名字と容姿の所為で幾度間違えられた事か…

 

小中学校で男女別に振り分けられる時、…何故かいつも男子が二人多くなっている…
出席番号が必ず男子の最後になる僕が、女子の側に回され人数の均衡が図られるのだ。
「あ」行の女子がいないクラスの時など、ヲリ…カキザキ…クマノ…と違和感なくつながってしまうため「出席番号女子0番」などと言われた事もあった。
当然と言う事か、フォークダンス等は男子より女子のパートの方ばかりを覚えてしまっていた。

 
高校に入ると圧倒的に男子の比率が高くなっていたので、人数合わせなどの心配はなくなった。が…
入学早々に運動会が行われた。何故か応援担当になり、応援合戦の振り付けを任されてしまった。流行のノリの良い曲を選び、基本は元歌の振り付けを継承し、所々に見せ場を設ける。
男子側はなんとかなったが、女子がイマイチノリが悪い。メインの演技者にはチアリーディングの衣装を模したユニフォームを提供するのだが、男子はそれこそ有志の集まりであるのだが、人数の少ない女子は、結局全員がヒラヒラの衣装を着る事になってしまう。
当然のように、拒絶反応をする娘もいる。更に、僕の振り付けに対する指導が細かいと文句が付けられる。
「そんなに言うなら、お前やってみろ!!」と言われ、小中で培われたダンスの才能故、簡単にクリアしてみせてしまった。
「「おおーっ」」とどよめきがはしる。
調子に乗って、難易度の高い技を繰り出す。
「凄い、スゴイ!!」
「これなら応援合戦は勝ち取ったも同然♪」
とおだてられ、気が付くと僕は女子のユニフォームを着せられ、センターに据えられていた。

当然のように応援合戦を勝利した。その勢いに乗り、後半戦はかなり頑張り、最後の選抜リレーに勝てば逆転優勝というところまで来ていた。
応援団は応援合戦のユニフォームのまま、応援を続けた。僕も女の子達と一緒に黄色い声を張り上げていた。

アンカーがゴールテープを切った瞬間
「ヤッター!!」
僕等は歓喜し、互いに抱き合って喜びを分かち合っていた。

 

「俺達の勝利の女神にカンパーイ!!」
未成年なのでアルコールなしの祝勝会となった。そこでの僕は「女神」に祀られてしまった。
皆は制服に着替えを済ましていたが、僕だけは優勝のシンボルとして、ユニフォームのままだった。
気が付くと有志での二次会、女の子達の三次会と流れてゆくのに付き合わされ、最後は応援団の中心となった三人の女の子で集まっていた。
場所はその中のひとりの娘の自宅…夜も遅いからと、そのままお泊まりする事になってしまった。

 

「おはよう…」
と起き上がったのは、クッションを敷き詰めた女の子の部屋の床の上だった。
貸してもらったパジャマで三人一緒にザコネしていたのだ。
「あっ!!」と言う僕の小さな叫びに視線が集まった。
「ヲリリン、どうしたの?」
昨日一日で女子の間では僕の事を「ヲリリン」と呼ぶのが定着してしまっていた。
「制服…学校に置きっぱなしだった…」
昨日は勝利に酔っていたため、平気でユニフォームのまま街を歩いていたが、一晩寝て気持ちが冷めた今となっては到底着て出歩ける筈もない。
「取りに行くしかないわね。でも、このユニフォームで街中は歩けないでしょう?あたしの服を貸してあげるわ。」
と彼女が取り出してきたのはヒラヒラしたワンピースだった。
「ジーンズとかないの?」
「う~ん?ワンピースなら多少のサイズの違いはごまかせるけど、ピッタリしたやつは難しいんじゃない?」
「それよりも制服の方が良いんじゃない?代休とはいえ学校に行くからには制服着用でしょう?」
「制服を取りに戻るのにそんなルール必要なの?」
「ピラピラのワンピースよりは抵抗ないんじゃない?少なくとも、言い訳にはなるわよ。」
結局は制服を着る事で落ち着いた。
が…
「ヲリラン?ちゃんと下着も着けないとおかしいわよ!!」とブラにキャミソールが与えられた。鏡に写すとブラウスから僅かに透けて、その存在があきらかになっている。

 

皆で学校の前まで来た。
「何で閉まってるのよ!!」
「代休だからじゃない?」
「僕の制服…」
「それは明日ね。授業があるから、本当に制服で来ないといけないわね。それまで制服はヲリリンに貸しとくわね♪」

当初の目的は果たせなかったものの、一応の結末を迎えたところで解散…となると思ったが
「駅前のお店に可愛い服があったの♪皆で見に行かない?」
僕に断る隙を与えず、集団は駅に向かって移動していった。
そのままブティックになだれ込む。そこには可愛い女の子の服が所狭しと並べられていた。
皆は次々と服を選ぶと試着室に入っていった。
「どう?」
「可愛い!!」
互いにコーディネートした服を誉めあっていた。
「ヲリリンも何か着てみなよ♪」
そうは言われても、僕は男の子で…現在、スカートを穿いているのも、それなりの事情があってで…

「あぁ、ソレなんか良いんじゃない?」
と言われたのは、先ほどから僕の視線の先にあった一着のワンピース…そのデザインに気になっていたが、決して自分が着たいと思っていた訳ではない。
「サイズも良いみたいよ。」
とハンガーから抜き取られ、僕の手の中に押しつけられた。
試着室のカーテンが開けられ、背中を押された。

「わぁ♪スゴク似合ってる。」
「ヲリリン以外に似合う娘はいないわね。」
「値段も手頃だから、あたしたちから勝利の女神にプレゼントしてあげる♪」
あれよあれよと言う間に、値札が外され、脱いであった制服が紙袋に詰められていた。

「ショッピングを楽しんだ後はお茶にしない?」
と、そのまま喫茶店に入っていった。
皆で話していると
「おはよー♪」と声を掛けられた。
クラスの女の子が一人、また一人と喫茶店に集まってきた。
「わぁ、ヲリリン可愛い♪」と僕にも声を掛けてくる。
「写メでもそう思ったけど、実際、違和感ないわよね。」
「写メ?」
その一言が引っ掛かる。
「ゴメン♪あまりにも可愛かったから、皆に送っちゃった。」
と携帯の画面が見せられた。
「皆…て?」
「クラスの子全員ね♪」
ふと見ると、窓の外から中を覗いているクラスの男子達に気づいた。
「男子にも?」
喫茶店の中は女の子ばかりなので、恥ずかしくて入るに入れない男子達が、店の外から覗いているのだ。
「女神の艶姿をあたし達だけで楽しんでちゃ悪い気がしたからね♪」
「あ、艶姿って…そんなんじゃナイでしょ!!」
「でも、結構気に入ってるんじゃない?」
「そうそう♪もう少し抵抗するかと思った。」
「ア、アンタ達ねぇ。ヒトの事、何だと思ってるの?」
「勝利の女神…女神サマ…皆のアイドル…あたし達のオモチャ♪」
「な、何よ?その論理は!!」
「ちょっと強引だけど、間違っちゃいないわね♪」
クラスの女子一同の合意の下、僕は彼女等のオモチャである事が決定した……って、そんな事、認める訳にはいかない!!

「イイ加減、帰らせてもらいます!!」
と僕が席を立つと…
「おぉ…」と窓の外がどよめいていた。
僕が立ち上がった事で、これまで上半身だけだったのが、全身を彼等の前に晒すことになったのだ。

「コレはアリだな?」
「アリ、アリ♪」
と男子達の間で何かが合意されたようだが、今の僕にはそれを知る術はなかった。

実際、これ以上ここにいると、更に余計な事に巻き込まれそうな気がした。
「今日のお茶代は出しといてあげるからね♪」の声に振り返る…
「当然でしょ!!」
と言い残し、僕は喫茶店を後にした。

 

 
翌日、制服ではないが黒っぽいズボンとワイシャツで登校した僕に、クラスの皆は落胆した思いを隠そうとはしなかった。
更に…HRでは、
「ヲリ君、制服が違うようだね?」と担任に指摘された。
着替えられずにいた事を言うと、
「早く更衣室で着替えてきなさい。」と言われた。
(更衣室?)
うちの学校は男子は教室で着替え、更衣室が使えるのは女子だけの筈だった。
(もしや…)と思い、袋の中に入れておいた制服を確認する。
(……)
想像した通り、そこにはスカートが…女子の制服にすり替えられていた。
「時間がないから、早くしなさい。何も問題ないから♪」
と笑みを浮かべる担任…(あんたもか…)
諦めきった僕は、堂々と女子更衣室に入るとスカートに穿き変え、教室に戻っていった。

その日は、朝のドタバタ以外は、本当に何事もなく進んでいった。
運動会の疲れが残っているのか、授業を受ける生徒達は気力を保つ事はできず、だらけた雰囲気に支配されている以外、いつもと変わるところはなかった。
教師もそれについて厳しく言うこともなく、僕のシャツがブラウスに変わっているのにも気づいているんだか…
指名され黒板の前に立った時でさえ、僕がスカートを穿いているのを見ても、何ら違和感を感じていないようだった。

放課後にはいつものように女の子達が集まり、寄り道の相談をしている。何故か、その輪の中に僕もいた。
傍らを通りすぎる男子達も、それがいつもの光景であると一瞥するだけだった。

結局3年間を女子として過ごす事になってしまった。
最後の卒業式に詰め襟を着ていったが、違和感アリアリ…その時になって、ようやく僕が男子であった事に気付いた教師も少なくなかった筈だ。

 

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