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2010年6月 4日 (金)

体験授業

俺達家族は妹の中学受験の説明会の為、聖華蘭女学園のチャペルにいた。兄の俺まで列席する必要もないのだが、これが済んだら久しぶりに外で食事をしようと言う事になり、仕方なく付いて行く事になったのだ。

礼拝の後、校長の挨拶が済むと細かな説明が続くとの事で父兄だけ残し、子供達は体験授業と言う事でチャペルから各教室へと誘導されていった。
「あなたもいらっしゃいな。」と係りの先生が俺を手招きした。
「付き添いで来ただけですから。」と断ったが、
「構いませんよ。体験してみるだけでもどうぞ。」と半ば強引に立たされていた。

誰もが勘違いするが、俺の方が妹より年上なのだ。しかし、妹の背丈は既に俺を抜いており、スポーツで鍛えた肉体は俺より遥かに逞しかった。
俺は少しでも格好良く見えるように、伸ばした髪を後ろで束ねているのだが、今日は「妹の為に少しは見栄え良くしろ。」と三つ編みにされてしまっているので、余計に女の子の間違われ易かった。
体格の差と、生来の童顔と相まって俺は彼女の「妹」と思われてしまったようだ。

 

「体験授業は体育です。持ってきた体操服に着替えてください。」と先生が言うと、俺の目の前で女の子達が服を脱ぎ始めた。妹もそうだが、皆若いながらも「女」の体をしている。特別な日だからと皆、気合いの入った下着を着けていた。
目の遣り場に困っている俺に…
「あなたは用意してきてないでしょう?予備の体操服を持ってきましたから、これに着替えましょうね。」と体操服が渡された。
「そうそう、あなたはまだブラもしてないでしょう?お姉さん達とのバランスもありますから、これを着けてくださいね♪」と、その上にスポーツブラがその上に乗せられた。
早い娘は既に着替え終わって準備運動を始めている。俺が戸惑っていると、
「遅れるといけませんから、お着替え手伝わさせていただきますね。」と強引にシャツが剥がされ、肌着も取られると、まっ平らな俺の胸にブラジャーが装着された。
「これはナイショね♪」とドラ焼状の肌色のクッションがブラのカップに詰められた。その上から体操服の上を被せられると、俺の胸は他の女の子と同じようにふっくらと膨らんでいるように見えた。

次にズボンが脱がされた。替わりに出されたのはブルマーだった。
「ごめんなさいね。今は短ズボンになってるんだけど在庫はこれしかなかったの。恥ずかしいかも知れないけど、ここには男の人の視線はないから気にすることないわよ。」
…あの~、ここにその「男」がいるんですけど…
俺にはそんな抗議さえできずに、ブルマーに穿き替えさせられていた。

皆が連れて行かれたのは広い体育館だった。中は様々なコーナーに分かれており、上級生のお姉さん達が学園のユニフォームを着て女の子達を待ちかまえていた。妹は早速、バスケやバレー等の球技のコーナーに走っていた。他には機械体操、新体操、チアリーディング、ダンス等のコーナーがあった。
「運動が得意でないのなら、ダンスの方に行ってみたら?ダンス部の方は結構激しいけど、研究会の方はおとなしいわよ。今日はフラダンスをやるとか言ってたかしら。」と、行き先を決められずにいた俺は、残った娘達と一緒にダンス研究会とやらのコーナーに連れて行かれた。
そこでは、既に4~5人の体操服の女の子にフラの衣装を着た上級生達が振り付けを教えていた。結局は俺も、彼女等に混じって振り付けの練習に参加してしまっていた。
「じゃあ、最後に通してみます。衣装を着けるから、ちょっと待ってて。」と部長さんが言うと、衣装の入ったカゴを手に部員達が集まってきた。あっと言う間に南国風のスカートを穿かされ、髪の毛に大きな花が飾られていた。
音楽がかかりダンスが始まると、俺は条件反射のように教えられた振り付けを披露していた…

 

「お疲れ様でした。記念にこれをどうぞ♪」と紙が渡された。いつの間に撮られたのか、衣装を着けてフラダンスをしている時の写真だった。それぞれ渡された人だけが写っている。
「へ~、綺麗に撮れてるじゃん♪」と俺の手から写真が奪われていた。取り返そうにも、相手は運動神経抜群の我が妹だ。
「恥ずかしがって破かれるといけないから、あたしが預かっとくね。あとで皆で見ようね♪」と俺に抗議する暇も与えずに、バックの中に仕舞ってしまった。

辺りを見るとほとんどの子達が着替えを終わらせていた。そして、フラダンスをしていた子達も皆、着替えの為に体育館から消えていた。
「諒ちゃんも早く行った方が良いわよ♪」と妹に急かされる。
「諒ちゃんなんて呼ぶなよな!!」とだけ言い残し、俺も着替えに戻っていった。
しかし、そこで待っていたのは、係りの先生だった。
「ごめんなさい。時間が圧しているの。着替えは後にしてチャペルに戻ってくれないかしら?」と紙袋が手渡された。その中には俺の着替えが入っていた。

このまま戻ればブルマ姿を晒す事になる。皆が体操服なら目立たなかったが、チャペルに戻れば体操服は俺一人だ。注目を浴びない筈がない。
躊躇っている俺の目の前を、最後の一人が着替えを終えてチャペルに向かっていった。
「体操服だと恥ずかしいのね。」と先生も察してくれたようだ。
「予備の制服のスカートと、上はベストで良いかしらね♪」
結局は女装だった。元の服に着替えると言う選択肢はないらしい。注目度を考えれば、スカートを穿くしかないようだ。

「最後のお嬢さんが戻られました。」
俺がチャペルに入ると壇上からの声に、結局は皆の視線が集まってしまった。両親は既に妹から話しを聞いていたようだ。
「良かったらここに入り直す?」とまで言われてしまった。
チャペルでの説明が終わると、学校案内と言う事で、数グループ毎に学園内の各施設を巡る事になった。またしても着替えるタイミングがない。校内を巡る間も俺はスカートを穿いたままである。
「結構溶け込んでいるんじゃない?このまま編入させてくれるかもよ♪」
「姉妹で通えたら素敵よね♪」
その間も好き勝手な事を言われ続けていた。

全てのイベントが終わり、ようやく着替える時間が取れた。元の服に戻り、借りた服は畳んで紙袋に入れた。これを返そうとすると、
「汗付いてるんでしょ。洗濯してお返ししなくちゃ。」と母さんが紙袋を取り上げた。
係の先生にそう言うと、
「わざわざ返しに来ていただかなくても結構ですよ。良かったら学校見学の記念に差し上げますよ。」と言われ、その後の食事会まで、紙袋は俺が持つ事になってしまった。

 

「いらっしゃいませ♪」
レストランの扉が開くと正装した男が満面の笑顔で迎えてくれた。
「可愛らしいお嬢様達に囲まれて、お幸せでいらっしゃいますね♪」とレストランの人まで俺の事を女の子と間違えている。俺が手にしている紙袋に印刷された学園のロゴの所為なのだろうか?
「なかなか良いお店ね♪」と評価する女性陣。確かに悪くはなかった。
…俺を女の子扱いするのだけは止めて欲しいのだが…

椅子が引かれ、皆が順に席に着いていった。
「今日はお疲れ様。なかなか良い学校だと思うよ。」
「諒ちゃんも気に入ったみたいだしね♪」
「俺が気に入ろうが入るまいか、関係ないだろう?」
「ダンスも出来たし、言う事ないんじゃない?」
「衣装を着てのダンスでしょう?後でもう一度写真見せてね♪」
「そんな写真、早く捨ててくれないか?」
「勿体ない。折角綺麗に撮れているのに…」
「俺は男だ。綺麗だとかは関係ない!!」
「でも、今日の諒ちゃん、本当に可愛いわよ。」
「花飾りがとっても素敵よね♪」

花飾り?

俺は頭の中が真っ白になった。
店の中に配置された鏡に顔を写す…

フラダンスの時に髪に挿された花は、いまだに俺の頭にあった…

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