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2010年6月 4日 (金)

出会い(1/2)

「すみません。公会堂って、この先で良いのかなァ?」
その男はやたら軽い口調で道を尋ねてきた。手にしたチラシは現在公会堂で上演している劇のものだった。
「ちょっと判り難いかも知れませんね。丁度通り道ですから、案内しますよ。」僕はそう言って、男の前に立って歩き始めた。
この街の道は簡単な地図では平行に見える道も、かなり斜めに走っているので、一本間違えるとなかなか辿り着けなくなるのだ。それでもしばらく歩けば公会堂の茶色の建物が見えるようになる。
「ほら、あれが公会堂です。」
「ありがとう。助かったよ。そうだ!まだ開演まで時間がある。良かったら、そこの喫茶店でお茶でも奢らせてくれないか?」
僕は、やや強引に男に腕を引かれて喫茶店に連れ込まれた。
「コーヒーで良い?」
と男は勝手に注文していた。まあ、金はこの男が払ってくれるのだから文句は言えない。男は運ばれてきたコーヒーに勝手に砂糖とミルクを入れてしまった。
「ああ、この砂糖はカロリーオフだから気にしなくて良いヨ~♪」
と勝手に話を進めてゆく。
「君みたいな可愛い娘に道案内してもらえるなんて、俺って幸せ者だね♪」

…ああ、またか…
何故か、僕はよく女の子に間違えられる。そして、その度に間違いを正してやっているのだ。
僕は手にしたカップからコーヒーを一口飲み込み、喉を潤してから言った。
「すみませんが、僕は男なんです。ナンパなら他をあたってもらえませんか?」

男の表情が一瞬固まる。
しかし、その顔を僕はそれ以上見ていられなかった。
何故か、辺りに霞のようなものが立ち込め、辺りの音が遠退いていった。
僕は気を失っていた。

 

 
そこはベッドの上のようだった。
但し、まともな状態ではなかった。両手首、両足首に紐が巻かれ、大の字に固定されていた。更に、服も剥がされて全裸になっていた。毛布なども掛けられていないので、僕は股間を晒していた。
「お嬢ちゃん。目が醒めたんだね?」と男の声がした。
「見れば判るでしょう。僕は男です!!」
「判ってるよ、そんな事わぁ。折角の薬が無駄になっちゃったんだ。現実を直視してたらヤんなっちゃうダロ?」
「薬って?」
「女の子を思い通りにして、アンな事やコンな事をさせてくれる有り難いお薬だったんだァ。それが、飲ませた相手が可愛子ちゃんだと思ったら、野郎だとォ?悔しいからホテルに連れ込んで、女の子の替わりをしてもらったんだァ。」
と親指を挟んで僕の方に突き出した。
「余計なモノさえ見ないようにすればァ、アンタのオ○コは締まりが良くて最高だったゼイ♪」
僕はようやく、先ほどから気になっていたお尻に存在する違和感の正体が判った。薬の所為で僕はこの男の言いなりになって、尻の穴を差し出してしまったのだろう。
「でも何で?そんな事を言う為に僕を縛り付けているの?まだ薬が効いているうちに放り出してしまえば良かったのに。」
「アンタ、結構頭が良いなァ。それをしなかったのには二つの理由があ~る。第一にホテルを出る時に独りと言うのは、女に逃げられたように見られる。勿論、男同士でいる所など論外だ。俺のイメージの問題だけどネ♪入る時は巧くいったケド、出る時も巧くいく可能性は…低いダロ?それに、第二の理由…」
男は言葉を切ると、大きく咳払いした。

 
「アンタに惚れてしまったッ!!」
 

「な?僕は男ですよ!!」
「俺も男同士なんか嫌ダ。だ~から、アンタは女だという事にスる!」
僕は二の句が継げなかった。
「今、手下に服を用意させているネ。もちろん可愛らしいドレスだ。先ァずはそれを着てホテルを出~る。行き先はァ俺のダチの美容師の所だ。誰が見ても女に見えるようにメイクしてくれるネ。」
どうやら僕には選択肢はないみたいだ。

ピロロンと男の携帯が鳴った。
「構わずに入って来い。4階だ。」
どうやら男の「手下」とやらが来たようだ。男がドアを開けしばらくすると、紙袋を抱えた少年が入ってきた。
「兄貴ぃ、えらいベッピンさんですねぇ。」手下の少年はちらりと僕を見てそう言った。どうやら、僕が男だとは気付いていないようだ。
「こいつは中を見ずに処分しておけ。」と中身を出した紙袋に僕が着ていた服を詰め込んで手下の少年に渡した。
手下の少年が出ていくと、
「さてと。俺は手荒な真似はしたくはないんだ。判るよね?アンタの着ていた服はもうない。しかァし、ここには新しい服がある。判るよねェ?」
他に選択肢はない。僕が頷くと、男は僕の手足を固定していた戒めを解いてくれた。テーブルの上に置かれているのが女物の服である事は間違いない。僕はベッドから起き上がると、一番上に乗っていたブラジャーとショーツを手に取った。

僕の着させられた服は「ゴスロリ」と呼ばれる黒を基調として、白いフリルをあしらった少女趣味のドレスだった。厚底のブーツは歩き難く、男の手を振りほどいて逃げ出すことも難しそうだ。
ホテルを出ると手下の少年が運転するクルマが待っていた。

そう遠くない所でクルマを降りた。
モデルや芸能人のような女の子達が鏡の前に並んでいた。僕達は奥の個室に通された。
「アンタが潤ちゃんのハートを射止めた幸運なお嬢さんね?化粧っ気がなくて、と言う事は肉体の相性がばっちりだったんだ。任せときなさい。アタシがばっちり潤ちゃん好みの顔を造ってあげるから♪」と、ゴスロリ付属の帽子を外した途端、絶句して男=潤ちゃんを振り返った。
「これから俺好みのオンナに仕立ててゆくんだ。惚れちゃったんだ仕方ないだろ?」
「よくも臆面もなく惚れたとかヌかせるわね?任しときなさい!見違えるようなオンナにしてあげるからネ♪」

 
鏡の中の女の子が僕自身とは、到底思えなかった。
「じゃあ、次行くぞ。」と潤が僕の手を引いてゆく。店の前に停めていたクルマに乗り込んだ。手下の少年が再びクルマを走らす。
着いた所は病院だった。厭な想像が頭をよぎるが、僕にはどうする事もできない。
「ココのセンセイが、俺の知り合いでサァ、あの薬もセンセイから分けてもらってるんダなぁ。」
誰もいない待合室を通り越し、どんどん奥へと入ってゆく。
最奥の扉を開けると、白衣の老人がパソコンの画面を食い入るように覗き込んでいた。その画面には全裸の美女達が卑猥なポーズで並んでいた。
「よお、センセイ♪元気してるゥ?」
「おう、潤か。今日は何の用だ?くすりはあと3日しないと手に入らないぞ。」
「薬の件は判~ってルよ。それより、この娘を診てやってくれないか?股間にヘンなものがあるんだ。チョン切ってもらえな~い?」

やはり、そう来たか…病院に連れて来られたからには、性転換手術を受けさせられる事は想定しないでもなかった。
「ふ~む。切っちゃって良いのか?」
「是非、是非♪」
「お前の事だから、このコの意見など、到底聞いてはいないのだろう?」
「俺が決めた事だ。文句~アルかなぁ?」
「一つだけ確認させてくれ。手術と薬とどっちが良い?外科的に処置しても良いが、最低でも一週間はオアズケになる。しかし、薬を使えば3日で綺麗になるぞ。もちろんオアズケなしだ。それでも切る方が良いと言い張るならヤってやるがな♪」
「何だヨ~ッ。そんなイイもんあるんなら、先に言ってくれなくちゃ♪」

僕はベッドに寝かされた。手の甲に点滴の管が付けられ、点滴と一緒に薬が体内に取り込まれるのだ。
「眠くなると思う。無理しないで眠ってしまいなさい。その方が薬が効き易くなる。」
僕は「ハイ」と言って目を閉じた…

 

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