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2010年3月26日 (金)

掴まれた秘密(3/3)

俺は真新しい制服に包まれていた。
「とっても似合うよ。」と目の前の若い男が言った。彼もまた、真新しいスーツを着ていた。
これは、一週間の試行の評価の結果である。勿論、俺の評価ではない。彼女の男としての仕事の能力が評価されたのだ。
その結果、彼女は目出たく男性社員として迎え入れられた。逆に俺の能力では、俺は会社に不要と見做されてしまった。
が、彼女を迎え入れるついでに会社に残してもらえることになった。但し、女子社員として…
だから今、俺が着ているのはOLの制服であった。
「いつでも寿退社して良いからな♪」と、制服を渡す際に人事部長が囁いていた。

更衣室を出て職場のドアを開けた。部長に促され、皆の前に並ばされた。
「今日から、男として皆さんと一緒に仕事させてもらいます。よろしくお願いします。」と元気に挨拶する彼女=彼に続いて、俺も何か言うように促され「これまでと変わらずにお願いします…」とだけ言った。
パラパラと拍手があり、儀式が終わる。彼女=彼は昨日までの俺の席に颯爽と向かっていった。俺は机の列の最端に用意された席に付いた。
「貴女は何もしなくて良いからね。これでも読んで暇潰ししててね♪」と最も若い女の子から女性向け雑誌が手渡された。
今週は締め日があるので、新人には構っていられないという事だ。
パソコンはおろか、電話の一台もない机の上に俺は雑誌を広げていた。

「お昼、一緒にどう?」と声を掛けられた。俺は女の子達にぐるりと囲まれて、近くの喫茶店に座っていた。
「で、彼とはどこまでいったの?」と単刀直入に問われた。
「カミングアウトするからには、ヤルコトはヤッているんでしょ?」
俺は答えられずに下を向いてしまった。頬のあたりが熱くなっている。その真っ赤になった顔を見れば「やっぱりね」と見透かされる。
早々にその場を離れようと、さっさと食事を片付けたが、なかなか放してくれそうもなかった。
そこに、
「やあ、みんな元気してる?」と割り込んできた男がいた。
「済まないけど、彼女貸してくれないかな?」と清々しい笑顔を振りまく。
「あら、彼氏のご登場ね?」
「彼の頼みならね♪」
と、今度は俺を押し出すように立ち上がらせた。
「お勘定はあたしたちで出しとくから、今度ジックリと顛末を聞かせてね♪」の言葉を背に俺達は喫茶店を後にしていた。

「な、何の用だよ?」と俺は歩きながら彼に聞いた。
「午前中、暇にしてたみたいだからね。貴女に宿題をあげようと思って…」と近くのスーパーに入っていった。
「カゴを持ってて♪」と俺にカゴを押しつけ、化粧品のコーナーに向かった。最初から買うモノを決めていたのか、次から次へと品物をカゴに放り込んでいった。
「当面はこれで間に合うよな。貴女はオンナなんだから、身だしなみには気を付けないとね。使い方は雑誌にも出てるから参考にしてみてね。マニキュアくらいなら職場の自席で研究してても問題ない筈だよ。」
会社に戻ると、マニキュアと除光液、口紅をポーチに移し、レジ袋の化粧品達はロッカーに仕舞った。

その日の午後は爪を弄って過ごす事になった。
終業のチャイムが鳴る頃には、自分でもかなり満足できるくらいに綺麗に塗る事ができるようになった。
「どんな感じになった?」と聞いてきた彼に綺麗になった爪を見せた。
「良い感じじゃない♪」と褒めてくれた。何か言われるかな?とビクビクしていたが、その一言で気持ちが楽になった。
「明日は頑張って、お化粧に挑戦するんだな。一応、女子は素面不可って事になっているからね♪」
何故か明日は有給休暇をもらえる事になっていた。今日の爪の仕上がり具合から、まる一日あれば何とかなりそうな気がしていた。

 
鏡の中には特訓の成果が写し出されていた。レディース・スーツを身にまとい、真っ赤なルージュを引いた俺は、どこから見ても完璧なOLだった。
満員電車に揺られて会社に向かう途中で、お約束通りに痴漢に遭遇した。「ぁぁん…」と小さく喘いでやると、更に激しく攻めたててきた。
それなりにテクニックを持っているようで、俺は次の駅までの間、快感に揺られて過ごす事になった。

「おっ、今日は一段と美人だね♪」と彼に褒められ嬉しくなる。
「良かったら今夜付き合わない?」と早速のお誘いにOKを返した。
今日も仕事らしい仕事はなかったが、彼との夜が待ち遠しくて、あっと言う間に一日が過ぎ去っていった。
エスコートされてレストランで食事をした。いつもなら平気なワインも、少し飲んだだけで酔いが廻ってきた。
「上のラウンジで、もう少し飲もうか?」
俺はただ頷くだけだった。

エレベータを降りると、すぐに窓際の席に案内された。
「キレイ…」思わず口に出てしまうほど、街の輝きが夜の闇にキラキラと浮かんでいた。
「夜景より、今夜の君の方が輝いて見えるよ♪」
俺の中で酔いが一気に加速していった…

 

俺はベッドの上で全裸になっていた。
彼が覆い被さってくる。
「愛してるよ♪」
その一言に、蕩けてしまう。
彼の掌で胸の膨らみを揉まれただけで、もう何も考えられなくなる。

そして…
彼がアタシの中に入ってきた…

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コメント

身体が変わり、男性としての立場も奪われたけど彼女には新たな状況の方法がむいていたのかも知れませんね。
このまま行くと結婚→専業主婦→母親となって過去を懐かしむだけでしょうが、
あるいは別の仕事を始めれるかもしれません。
後日談出来たらお願いします。

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