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2010年3月26日 (金)

あたしは誰?(4/4)

「…ゃん、美香ちゃん。」
誰?あたしを呼ぶのは?
それは男の人の声。でもパパじゃない…ああ、寿人か…
「ん~~っ♪」と伸びをする。どうやら、いつの間にかソファで寝てしまっていたようだ。
「もう帰る時間?」とあたしが聞くと、寿人が何か不思議そうな顔をしている。
「あたしの顔、何か付いてる?」
「それは大丈夫だ。時間もまだある。それよりも美香ちゃんに聞いておきたい事があるんだ。」
「何?」
「目が覚めた時、何か違和感はなかった?どこか不自然だとか。」
「そんな事ないよ。まあ、いつもより気持ち良い感じがしたくらいかな?」
「じゃあ、工藤晃良と名前を知ってるか?」
「あれっ?誰だっけ。知ってる筈なんだけど思い出せないヨ♪」
「そうか…」と言葉を切る。
「じゃあ、最後の質問だ。君と俺の関係は何だったかな?」
「当たり前じゃない。親友でしょ…て、男と女の間で親友はないか。それに歳も離れてるのにね。友達よりも親密な関係…ズバリ!! 恋人よね♪」

何故か、寿人があたしの恋人だっていう事が、たった今確定したような気がした。
あたしがまだ高校生だからって言って肉体的な関係はないけど、一緒に旅行だってしたよね?

「ああ、工藤晃良って人、あたし達が旅行に行った時に一緒だった人でしょ?どこかオタクっぽい感じの人♪」
「いや、彼の事はもう良いんだ。それより、もう時間だから送っていこう。」
って、何かはぐらかされた気がする…

 

いつもは玄関で別れるのに、今日はパパとママに話があるって上がり込んでいた。
あたしを部屋に追いやって何か深刻な話を始めていた。
あたしは部屋に入るとクローゼットを開けた。あとでもう一度寿人に合う時に、いつもの制服じゃ味気ないものね♪
休みの日に会う時には私服だけど、今夜はもう少しオシャレしてみたい感じ。ベッドの上に広げてあれこれ悩んだ末、ピンクのフワフワ・ワンピースに決めた。

「美香~、寿人さんが帰るわよ~」とママが呼んでくれた。
「は~い♪」と返事して、もう一度鏡に写しておかしくないか確かめた。
「す~みと♪」と彼に抱きつく。
「美香。親の目の前で何ですか、はしたない。」とパパ。
「じゃあ見てなければ良いのよね♪」とあたしはサンダルを履くと寿人の腕を引っ張った。
「それではお休みなさい。」という寿人の挨拶もそこそこに玄関の扉が閉められた。
「どう?この服。可愛いでしょ?」とモデルのように回転した。
「お前が選んだのか?」
「結構悩んだんだけどね。お化粧もしてみたんだよ。」と顔を見せる。
「可愛いよ♪」と寿人の顔に笑みが浮かぶ。
「ありがと♪」とあたし。そして、あたしの顔を覗き込むようにしている寿人の首に腕を回した。

寿人の顔を近づける。
少し首を傾げて、もっと引き寄せる。
あたしは瞼を閉じて、寿人の唇に触れた…
寿人の腕があたしの背中に廻った。そのままギュッと抱き締められる。
(良いよね♪)
あたしが舌を伸ばすと、寿人の舌が絡み付いてきた…

 

それから数日後、工藤晃良さんのお葬式が行われた。あたしは寿人と一緒に親族の席の後ろに座っていた。
納棺にも立ち会った。菊の花を彼の耳元に置いてあげた。
「ありがとう」と寿人が言った。

 

 

「パパ、ママ。今日まで育ててくれてありがとう。」
あたしはウェディングドレスに包まれていた。
「幸せになるのよ。二人分の…」
「小夜子…」パパがママに声を掛けた。
「その事は美香には…」
「そうね。寿人さんは良い人だから、すべてを任せられるわね。」
ママの目がウルウルしているのが判った。

あたしは今日、あたしの二十歳の誕生日に寿人のお嫁さんになります。
「どんな事があっても、君を愛し、守ってあげるからね。」
そう言ってくれた寿人が祭壇の前で待っている。あたしがパパの腕に手を掛けると、大きな木製の扉が開いた。
その向こうには、彼に向かって真っ直ぐに敷かれたバージンロードが待っていた…

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