« バレンタイン・プレゼント | トップページ | B/A 1-2 »

2010年2月16日 (火)

B/A 1-3

「コレッ!!ていうターゲットなんてそうそう見つかるもんじゃないわよねェ。」
と愚痴をこぼしていたのはADの七瀬薫だった。

今日はターゲットを探しに展示会に潜り込んでいた。やはり…というか当然のように、そこにはコンパニオン狙いのカメラ小僧(小僧と言うよりはオッサンばかりだ)がゴツイ一眼を手にうろつきまわっていた。
「画的には、ああいうキモオタ君が良いのはわかってるんだけどねェ…」と愚痴る薫だったが、やはりプロ根性が備わっているのか、その視線は絶えず場内を巡りターゲットを探していた。

 

「あの~」
と薫に声を掛けてきた男がいた。
「お姉さんの写真を撮らせてもらっても良いですか?」
「へッ!!あたし??」
突然の申し出に素っ頓狂な声をあげてしまった薫だったが
(この辺で妥協しとくかな?)と即座に本来の任務と結び付けていた。
「あ、あたしはコンパニオンさんじゃないんだけど…」
「判ってます。でも、どうしてもお姉さんを撮りたいと感じているんです。」
「わかったわ。でも、あたしも仕事柄いくつか条件を付けさせてもらうけど、それでも良い?」
「はい♪勿論です!!」とキモオタ君は即答していた。

 
「ココじゃ何たから場所を換えるね。」
「はい、どこにでもついて行きます。」
少々うっとおしいが、これも仕事だから…と薫は局の空きスタジオを予約した。

薫の運転する車は海岸沿いの倉庫街に入っていった。
地下の駐車場に車を置き、エレベータでスタジオに直行する。スタジオ側の準備は既に整っていた。
「スゲーッ!!本格的なスタジオじゃないですか♪」
はしゃぐキモオタ君を連れて中央に向かった。スポットの当たる場所に立ち、説明してやる。
「後ろのスクリーンには様々な背景が投影できます。ハワイの海岸も、アルプスの山々も、ニューヨークの街角も。実際は後で電子合成されるけど、雰囲気が出るからって評判は良いわよ。」
リモコンを渡してやると、様々な画像をスクリーンに出して喜んでいた。
「それから、衣装も用意しておいたわ。」とスクリーンの脇のカーテンに仕切られた一角を示した。
「一通りのものは揃ってるから、好きに選んで良いわよ。」
そして、薫は一呼吸置き、先を続けた。
「最後にこれね♪このヘッドセットを付けてあたしに指示を出してくれれば良いわ。撮影時間は3時間。自動的にスイッチが切れるようになってるから。」
薫は彼の頭にヘッドセットを装着し、
「じゃあ、後はよろしくね♪」
と言ってスイッチを入れた。

 
ヘッドセットは薫の体内に埋め込まれた受信機に装着者の意図を伝える事ができる。言葉で伝えるよりも正確に意図が伝わる…まるで装着者自身が薫そのものになったかと錯覚される程である。

これは薫によるターゲットのトレーニングの第一段であった。
キモオタ君には、被写体を撮るより被写体となって撮られる快感を覚えてもらうのだ。
薫は黙って彼に肉体の主導権を明け渡していた。しかし、彼女に向かってフラッシュが焚かれる度に、できうる限りの快感を彼の脳にフィードバックさせていた。

いつの間にか、彼は被写体を撮影する事を放棄していた。カメラは三脚に固定し、タイマで一定間隔にシャッターが切れるようになっていた。勿論、構図等何も考えていない。薫の体にフラッシュを浴びさせるだけの仕組みでしかない。
彼はレースクイーンの衣装を着、スタジオの真ん中で様々なポーズをとっていた。それは薫自身でも考えが及ばなかった淫らなポーズの連続であった。
薫は嫌悪感を感じてはいたが「仕事のため」と割り切る。キモオタ君は撮られる快感の虜となっていった…

「どうだった?」
3時間が経ち、肉体の主導権を取り戻した薫が彼に聞いた。
「なんか凄かったです。時間もあっと言う間で…」
薫はニヤリと嗤った。
「この紙にサインをもらえれば、好きな時にこの快感を得られるようになるわよ♪」と紙とペンを差し出す。
彼はほとんど内容も確認せずにサインをしてしまった。「OK」とサインを確認すると、薫は自分に埋め込まれたものと同様なチップを彼の耳の中にねじ込んだ。
「さあ、先ずはダイエットからね♪」と薫は対となっている端末装置から彼のダイエットプログラムの第一弾を送信した。

 

3週間後、見事なプロポーションとなった「元」キモオタ君がスタジオに現れた。
「良く頑張ったわね。」と労うが、99%は耳に装着した装置からの指示で強制的にやらされた結果だった。その中には、永久脱毛や女性ホルモンの服用も含まれているが、見た目には彼が率先してチャレンジしているように映るよう計算されていた。

「何を着る?」薫がカーテンで仕切られた一角に案内すると、彼女はあの時と同じレースクイーンの衣装を手にした。

 

「すごい…」
薫は少し離れた所からフラッシュに包まれる彼女を見ていた。フラッシュの閃光にスカートの中のショーツがキラめいている。彼女の股間には愛液が溢れかえっているのだろう。
彼女の興奮が伝染したのか、薫の股間も潤み始めていた…

 
「こうして、撮られる悦びにいつでも浸れるようになった彼女は、現在モデルとしての職も手にして順風満帆な人生を謳歌している所です。」
薫はプレゼンテーションを締めくくり、マイクを司会者に戻した。

フラッシュの嵐が消えると、元キモオタ君の顔が不満げに歪む。
「まだ、ステージの上よ。」と薫が耳打ちすると「見られている」と言う認識が彼女に快感を取り戻させたのか、妖艶な笑顔が復活していた。

司会者の手招きに応じて二人はステージの袖に行き司会者と並んだ。
「相当痩せられましたね。」司会者の言葉とともに昔の写真の貼られたブラカードがアシスタントに運ばれてきた。
「トレーニングのほとんどが、贅肉を落としては弛んだ皮膚を引き締める事に費やされました。ただ、胸だけは脂肪を落とさずに、逆に今までよりも大きくなるようにしました。」
彼女はヒップからウエストに手を滑らせ、絞られたクビレを強調した後、豊かな胸を持ち上げてみせた。
「それにしても形の良いオッパイですね。」
「そうでしょ?あたしの自慢なんです♪これもみんな薫さんの指導の賜物なんです。薫さんには感謝してもしきれません。」
彼女は眼にうっすらと涙を浮かべていた。
場内のあちこちからバチパチと控えめな拍手が起こっていた。

« バレンタイン・プレゼント | トップページ | B/A 1-2 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: B/A 1-3:

« バレンタイン・プレゼント | トップページ | B/A 1-2 »

無料ブログはココログ