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2010年2月26日 (金)

貴方に知っていて欲しい…

「くだらないね。」
彼は切って捨てるように言った。
何が気に入らないのか判らない。正直な気持ちを聞かせてもらいたいだけなのに…
何故かあたしの目に涙が浮かぶ。
「ほら、すぐに泣く。だから女って奴は面倒なんだ。泣き止むまで俺の前に顔を見せるんじゃないぞ!!」
そう言って彼は外に出ていってしまった。多分パチンコでもするのだろう。あたしが阻止する隙も与えず、財布からお金を抜いていったのだ。

他人に話せば即に別れろと言われるに違いないが、優しい時の彼はすごくあたしに優しくしてくれる。彼もあたしなしでは生活できないのは目に見えている。
第一、彼はあたしの一番の秘密を知っているし、その上であたしを「女」として扱ってくれる♪

彼は、あたしが「男」なのを知っている只ひとりの人なのだから…

 

 
ま、ウジウジしていても始まらない。あたしは部屋の中を片付けると、冷蔵庫の中を確認した。まだ買い足しはいらないと判断すると、仕事に出かける前に彼の夕食の準備を始めた。
あたしは仕事の合間に食事をするが、彼はその日の気分で家で食べる事が多々ある。
しかも、疲れて帰ったあたしが、それから作り始めていては「遅い!!」と彼が暴れだしてしまうのだ。

そうこうしている内にあたしも落ち着きを取り戻した。まだ少し目が赤いが、仕事に差し支える事はないと思う。濃いめの化粧をし、ミニのワンピースで出勤する。行き先は夜の仕事の定番…男のあたしが女として働ける場所は、そう多くはない。結局は水商売に行き着いてしまう。
彼との出会いもこの店だった。あたしにヒトメボレしたようで足繁くお店に通ってくれていた。
ある日、デートのお誘いを受けた。あたしは自分が普通の女ではないので即に断ったが、彼は諦めず事ある度に誘ってくれる。次第に周りからも一度くらいは付き合ってあげなさいよとの声が強くなり、結局次のオフにデートする事になった。

青空の下に「女」を曝すのには勇気がいったが、今更後には引けない…と思っていたのは彼に会うまでの事だった。デートは楽しく、そんな事を考えていた事など、どこかにフッ飛んでしまっていた。
あたしは彼とのデートに時の経つのも忘れていた。
夜が訪れる。大人同士のデートの流れでは、避ける事はできない…あたし達はホテルのベッドにいた。
あたしはあらかじめ決めていた台詞を口にした…
「今日はダメな日なの。お口でするから、それで許してくれる?」あたしは、初めて男の人のペニスを口に入れた。
「あぁ、良いよ。凄く気持ちイイ。」そう言って彼はあたしの口の中に精液を吐き出した。AVの女優になったつもりで、あたしはそれを美味しそうに飲み込もうとしたが、失敗してむせてしまった。
「無理はしなくて良いよ。」と彼が優しく言ってくれた…
 
 
何故か、あたしは彼からのデートの誘いを断れなくなっていた。
二度目のデートは何もせずに終わることができた。三度目はまた、口で済ませた。
けれど、四度目となっては告白しない訳にはいかないと思った。
「じゃあ、裸になってみろ!!」と彼が言った。
「隠すな。両手は下ろして脇に揃えるんだ。」彼の前にあたしの裸体が晒される。
「これのドコが男なんだ?体毛のない白い肌。丸みを帯びた肩や腰。くびれたウエストに豊かな胸の膨らみ…」
「それはホルモンを射ってるからで…」と、何とか口にする。そして、あたしは無意識のうちに「女」の肉体にはあってはならないモノを掌で隠していた。
「その手の下のモノは何だ?それが男のモノだって言うのか?バカ言うんじゃない。女ならクリトリスがあって当然だろ?その向こうには男を迎え入れようとしてヒクついている膣口があるじゃないか♪」と、あたしのお尻の穴に指を突き立てた。

その夜、あたしは初めて男を受け入れ、正真正銘の「女」になった。

 

なし崩し的に、彼との同棲生活が始まっていた。
彼の存在はあたしの「女度」を上げてくれたようだ。「彼女」という立場に「主婦」という肩書きが加わり、あたしが「女」でいられる証が確固たるものになっていった。
仕事場でも「綺麗になったね」と言われた。

が、同棲を始めれば彼の欠点も見えてくる。これも、どの女だって経験する事だと我慢していた。

「どうしたの?目が赤いじゃない。」
今日のお客さんにも即に気を使われてしまった。
「この目薬を注してごらん?」渡された容器には商品名などの表示は何もなかった。
「害はないから。」と人の良さそうな笑みを浮かべている。
内装の鏡に映るあたしの目は確かに赤くなっていた。これ以上何とかなっても同じ事…と、目薬を注してみた。スーッと眼が涼しくなった気がした。鏡に映るあたしの目は今まで以上に白く輝いていた。
「お医者さんなんですか?」とのあたしの問いに、
「まあ、似たようなものだよ。」と答えた。実際、お医者さんに接したときと同じ安心感があり、何故かあたしは彼との事を包み隠さず話してしまっていた。
「じゃあ、彼氏に少しお灸を据えてみましょうか?」と一包の薬袋を取り出した。
「晩酌のビールにでも混ぜて飲ましてご覧なさい。少しは女心を理解してくれるようになりますよ♪」

珍しく、あたしはそこから先の記憶を失っていた。気が付くと、あたしの家の扉の前にいた。

 

既に彼は帰っていて、ビールを飲みながらビデオを見ていた。
あたしの帰りに気づいた彼は、画面から目を離さずに「メシ、早くしろ。」とだけ言った。あたしはあの薬をエプロンのポケットに移していた…
「ご飯、出来たわよ。」と彼に声を掛ける。
彼は「ああ」とだけ言うと、箸と茶碗を取る一瞬だけテーブルの上を見たが、その視線は即に画面に戻っていた。当然、あたしの方は向かないし、あたしの目が赤いか白いかなんて気づく訳もない。
あたしは空になったグラスに「薬」を入れ、ビールを注いでいた。
 
「寝るぞ。」
それは睡眠をとるための合図ではない。SEXを始める合図である。
「あたし、疲れてるんだけど…」と言っても許す彼ではないのは承知している。
「何か、いつも以上にヤりたい。体調も良いし一晩中ヤり続けても良いかな?」などと言っている。もしかして「薬」の所為で興奮しているの?
「早く脱げよ。」とせかされ、あたしは化粧も落とさずにベッドに上がっていた。
裸になった彼が伸し掛かってくる。脚を開かせジェルを擦り込んでくる。彼の指があたしの穴に入ってくる。
「ぁあん」と条件反射のように喘ぎ声を上げてしまう。まだ、快感には程遠いのに…

指が抜かれる。いつもなら、その直後に「いくぞ!!」と憤り勃ったベニスを一気に突っ込んでくる…が、今日は様子が変だ…
「ぉい…ぅそだろ…」と彼が呟いている。「ヤりたいのに、ヤりたいのに…」
あたしは彼を見た。あたしの脚の間で、彼は膝立ちのまま固まっていた。
いつもなら、股間に握られた彼の手の中から、勃起したペニスが雄々しい姿を見せているのだが…
「どうしたの?」あたしが聞くと
「無いんだ。ヤりたい、挿れたいのに、俺のが無くなってるんだ。」
彼が手を退かすと、露になった彼の股間にはペニスがなく、代わりに女のような溝ができていた。良く見ると、内股に光るものがある。性的に興奮している女のように、愛液が滴っているのだ。

「挿れたい…挿れたい…」と呟く彼の視線があたしの股間に注がれた。
彼の手が、あたしのクリ…ペニスを包んでいた。彼の頭が降りてくる。あたしのペニスが彼の口の中に納まってしまった。
「だ、だめよ!ソレは…」これまでフェラチオどころか、他の人に弄られた経験のないあたしのペニスは、何年かぶりに勃起していた。
十分な硬さが得られたところで、彼は体を起こすと、あたしの腰の上に跨ってきた。
「挿れるんだ、挿れるんだ…」と彼が呟いている。
彼の腰が降りてきて… あたしのペニスを呑み込んでいた。
「ああ、ああ、ああ…」
腰を振り、女のように喘いでいる。彼の膣からは愛液が溢れてくる。
彼の喘ぎ声の音程が、次第に高くなると伴に彼の胸が膨らんでいった。彼が体を揺する度に、彼の胸が揺れる。彼は無意識のうちに自らの胸に手を当て、揉みあげては快感の媚声を上げている。
彼はすっかり「女」に変わっていた。

幾度か絶頂を味わった後、力尽きた彼はあたしの脇に体を横たえると、愛らしい寝息をたて始めていた。

 

 

「いらっしゃいませ♪」愛らしい笑顔もようやく板に付いてきたようだ。
彼の女性化は一時的なものとはならはなかった。もしかしたら、あたしが本物の「女」で、あの時のSEXが女同士のもので終わっていたら何事もなかったかも知れない。
しかし、いくら姿を偽っても結局のところ、あたしは「男」だったのだ。彼が妊娠している事がわかった時、彼は「女」として生きる事を決意した。

あたしが何を言っても言い訳にしかならない。ホルモンをやっていたにも拘わらず、あたしのザーメンの中に活きの良い精子が混じっていた事は事実である。彼の股間に膣ができていたと同時に、子宮や卵巣など、女として必要なものが全て造られ、正しく機能するようになっていた事を知らなかったと言っても始まらない。

けれど、あなしは彼程割り切る事はできなかった。自分が欲しくて止まなかった「女」の体を得たのは「彼」だったのだ。
彼が「女」としてあたしを求めて来れば、あたしは「男」に戻ってしまう。男の精を彼の中に吐き出し、歓喜に打ち震える彼を見ながら自己嫌悪に陥る。
(そこに横たわっていたかったのは、あたしの方なんだからね)

 
子供が産まれても、あたしは夜の仕事を止めなかった。
周りにはどう見られているか知らないが、あたし達の子は二人のママに育てられている。
あたしが仕事をしている夜は、彼が面倒をみている。昼間、あたしが面倒をみている間は、なんと、彼はパートタイムのアルバイトをするようになっていた。

パチンコに明け暮れていた彼の変わりようを見ると、あの「薬」も満更悪いモノではなかったのかも知れない。
子供を抱いて彼の働くスーパーのドアを開けた。
「いらっしゃいませ♪」彼の明るい声が、店内に響き渡っていた。

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